最後に本研究の重要性について述べて終わる事にする。CSFTの作用の数学的構造がCS 理論のそれに似ていることは、良く知られたことである。しかしこれまでこの類似性を真 剣に受け止めた研究は無かった。またタキオン凝縮解の発見に触発されて近年古典解の構 築が盛んであるが、本研究のように解の背後にある構造を探求し、解の間の関係を見通す ような研究は例を見ない。弦の場の理論は弦理論の指導原理になるべきなのであるから、
世界面の理論を再現できること、複数の世界面の理論を統一的に扱えること以上のものを 目指さなければならない。世界面では見えない新しい予言をCSFTから行わなければい けない。そのためにはCSFTの理論ならではの構造を探ることが必要なのである。
謝辞
本論文は筆者が京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士後期課程在籍中 の研究成果をまとめたものです。修士課程の頃より辛抱強くご指導頂いた畑さんにとても 感謝しています。同じ素粒子論研究室の皆様の研究姿勢には多くの影響を受けました。弦 の場の理論の研究会で議論して下さった皆様のおかげで、自身の研究内容および弦の場の 理論に対する理解が深まりました。最後に、私が研究に最大限の時間を費やせるようにい つも配慮してくれる家族に感謝の意を表します。
本研究の一部は日本学術振興会科学研究費(特別研究員No.24.1601)によりました。
A Reference 弦理論のヒルベルト空間
ここで弦座標Zのヒルベルト空間について記号の定義も兼ねて簡単にまとめておく。
モード展開
conformal weight hのprimary場のモード展開を φ(z) = ∑
m
z−m−hφn, φn = I dz
2πizn+h−1φ(z) (A.1) とする。開弦とゴーストのモード展開は以下の通りである。
Xµ(z,z) =¯ xµ−iα0pµlog|z|2+i
√α0 2
∑
m6=0
αµm m
(z−m+ ¯z−m)
(A.2)
→Xµ(σ) = xµ+i√
2α0∑
m=1
1
m(αµm−αµ−m) cos(mσ) (A.3) Pµ(σ) = −i δ
δXµ(σ) = 1 π
(
pµ+ 1
√2α0
∑
m=1
(αµm+αµ−m) cos(mσ) )
(A.4)
∂Xµ(z) = −i
√α0 2
∑
m
αµm
zm+1 (A.5)
pµ = 1
√2α0α0µ (A.6)
b(z) = ∑
m
z−m−2bm, c(z) =∑
m
z−m+1cm (A.7)
xµ、pµはそれぞれ弦の重心座標と重心運動量である。これらのモード同士の交換関係は [xµ, pν] =iηµν , [αmn, ανm] =nηµνδn+m,0 , {bn, cm}=δn+m,0 (A.8) エネルギー・運動量テンソル
Tm(z) =−1
α0 :∂Xµ∂Xµ : (A.9)
Tgh(z) =: (∂b)c:−2∂ :bc:=−: (∂b)c:−2 :b∂c: (A.10) : :はnormal orderと呼ばれ二つの演算子のOPEのsingularな部分を除いた量として定 義される。
Xµ(x)Xν(y) =:Xµ(x)Xν(y) :−α0ηµνlog(x−y)2 (A.11)
b(x)c(y) =:b(x)c(y) : + 2
x−y (A.12)
エネルギー・運動量テンソルのモード展開 T(z) =∑
n
z−n−2Ln (A.13)
によりVirasoro演算子Lnを定義する。Virasoro演算子はVirasoro代数 [Lm, Ln] = (m−n)Lm+n+ c
12(m3−m)δm+n,0 (A.14)
を満たす。weight h のprimary場φ(z)のモードφnとVirasoro演算子の交換関係は [Lm, φn] = [(h−1)m−n]φm+n (A.15) である。free bosonとゴーストの場合のVirasoro演算子をモードで書くと
Lm0 =α0p2+
∑∞ m=1
αµ−mαµm, Lmn = 1 2
∑∞ m=−∞
:αµn−mαµm: (A.16) Lgh0 =
∑∞ m=−∞
m :c−mbm :−1, Lghn =
∑∞ m=−∞
(2n−m) :bmcn−m : (A.17) 但し: :は演算子のnormal orderingを表し、(A.12)のものとは区別する。
Conformal vacuum
conformal weight hの演算子φ(z)のモード展開をφn =H dz
2πizn+h−1φ(z)で定める時、
φn|0i= 0 (n ≥1−h), h0|φn= 0 (n≤h−1) (A.18) で定義される。h0|は|0iのエルミート共役な状態である。具体的に書けば
αn|0i=cn+2|0i=bn−1|0i=Ln−1|0i= 0 (n≥0) (A.19) h0|αn=h0|cn−2 =h0|bn+1 =h0|Ln+1 = 0 (n≤0) (A.20) である。L−1, L0, L1は世界面の大局的なSL(2,R)変換を生成するので、真空|0iはSL(2, R) 不変であることが分かる。
BPZ共役 一般座標変換
I : z → −1
z (A.21)
を考える。これは共形変換に含まれる。この時演算子φ(z)によって生成される状態|φi= φ(0)|0iのBelavin-Polyakov-Zamolodchikov (BPZ) 共役は
hφ|=|φibpz =h0|I◦φ(0) (A.22) で定義される。conformal vacuumに対するBPZ共役はエルミート共役と同じとする。
(|0i)bpz=h0|= (|0i)† (A.23) モードφnに対するBPZ共役はφ(I(z))[dI(z)]h =φ(z)dzhより
(φn)bpz=I◦φn =− I
CL
dI(z)
2πi [I(z)]n+h−1φ(I(z))
= (−1)n+h I
CL
dz
2πiz−n+h−1φ(z)
= (−1)n+hφ−n= (−1)n+hφ†n (A.24) で与えられる。†はエルミート共役である。第一行目の積分の前のマイナス符号はI(z)座 標における時計周りの定義がz 座標の時計周りCLの逆向きだからである。(A.24)より Fock vacuum |Ωi=c−1|0i のBPZ共役はエルミート共役と一致することが分かる。
複数の演算子積のBPZ共役は
(φ1φ2· · ·φn|0i)bpz=h0|(φ1)bpz(φ2)bpz· · ·(φn)bpz (A.25) となる。これは演算子がグラスマン数の場合も同じである。エルミート共役は(φ1φ2· · ·φn)† = (φn)†· · ·(φ2)†(φ1)†と順番を入れ替える操作であり、(A.25)がこれと異なることに注意す べきである。
|ki=eikX(0)|0iのBPZ共役は正則化したeikX(ε)|0iを用いて定義しておく。
hk|= lim
ε→0
(eikX(ε)|0i)bpz
= lim
ε→0
(1 ε2
)α0k2
h0|eikX(−1/ε) (A.26) 実際に内積を計算する際には |ki との内積より
eikX(−1/ε)eipX(ε)
= (2π)dδd(k + p) (−1/ε−ε)2α0k·p ∝ε2α0k2 の寄与が出て来るので、(A.26)の特異な寄与と相殺する。
BRST電荷QBのBPZ共役は、QBがweight 1 のBRSTカレントjB(A.29) のゼロモー ドとして定義されるので((A.30))
(QB)bpz=−QB (A.27)
となる。BPZ共役I(z)は共形変換なので、T(z)のSchwartz微分が消えT(z)はh= 2と して振る舞う。よってVirasoro演算子に対するBPZ共役は
(Ln)bpz= (−1)nL−n (A.28) となる。
BRST電荷
世界面の二次元の一般座標変換不変性に付随して、量子化する際に Becchi-Rouet-Stora-Tyutin (BRST)対称性が残る。BRST対称性によるNoetherカレントは
jB =:cTm : + :bc∂c: +3
2∂2c (A.29)
である。第三項目は全微分形なのでBRST電荷には効かないが、jBがh = 1のprimary 場になるように付け加えられている。BRST電荷QBは
QB = I
0
dz 2πi
(
c:Tm: (z) + 1
2 :cTgh: (z) )
=:
∑∞ n=−∞
c−n
(
Lmn + 1
2Lghn −aδn,0
) :
=
∑∞ n=−∞
c−nLmn + 1 2
∑∞ n,m=−∞
(n−m) :b−m−ncmcn :−ac0 (A.30)
となる。BRST電荷の冪例性を調べると Q2B = 1
2{QB,QB}= 1 2
∑∞ m,n=−∞
c−mc−n([Lm, Ln]−(m−n)Lm+n) (A.31) が得られるので、central charge cがゼロの時、今の場合だと時空の次元が26次元の時 BRST電荷は冪例性を満たすことになる[38]。
BRST電荷をゴーストのゼロモードを顕わに括りだして表示しておく。即ち
QB =c0L+b0M +Qe (A.32)
但し
L=α0pµpµ+
∑∞ n=1
{αµ−nαnµ+n(c−nbn+b−ncn)} −1 (A.33)
M = 2
∑∞ n=1
nc−ncn (A.34)
Qe=QB
b0=c0=0
=∑
n6=0
c−nLmn +1 2
∑
n6=0,m6=0,n+m6=0
(n−m) :b−m−ncmcn : (A.35) である。
境界変更演算子
本論文では開弦は両端をNeumann(N)境界条件に取っているが、一般にはそれぞれの端 で別々の境界条件を選んでよい。ハミルトニアンやスペクトラムは境界条件に依存する。
0 φ(αβ)i
α β
図 29: 原点に挿入されたBoundary condition changing operator (bcco). bccoはVirasoro
表現のindex (i)に加え、左側の境界条件(α)と右側の境界条件(β)の三つの足を持つ。
このため真空には本来境界条件の添え字を付けて表記すべきである(両端Nの場合もあえ て書くなら|0iN N)。開弦の両端を異なる境界条件(α及びβ)に取った場合、上半面のz = 0 で不連続性が発生する。動径量子化においてこの状態は真空であるが、その真空はもはや L−1で消えない。よってこの状態はconformal vacuum|0iに境界演算子φ(αβ)i (0)が作用し ている状態と見なせるだろう(図.29) 40。ここでiはVirasoro表現の添え字、α, βは境界 条件のラベルである。境界条件は即ち境界演算子の挿入に等しいのである。これがCardy の得たアイデアであった[39, 40]。境界に挿入される演算子の事をこの意味で“boundary condition changing operator (bcco)”と呼ぶ。
B sliver 座標における代数
B.1 (3.13) の証明
[L0,L†0
]
= I
Cz
dz 2πi
I
Cw
dw
2πiArctan(z)(1 +z2)Arccot(w)(1 +w2)T(z)T(w)
= I
Cz
dz 2πi
I
Cw
dw
2πiF(z)G(w)
{ 2T(w)
(z−w)2 + ∂T(w)
z−w +O(z−w) }
= I
Cw
dw
2πiG(w){2T(w)∂F(w) +F(w)∂T(w)}
= I
Cw
dw
2πi{G(w)∂F(w)−F(w)∂G(w)}T(w) +∂(F(w)G(w)T(w))
= I
Cw
dw
2πi{F(w) +G(w)}T(w)
= I
Cw
dw
2πi(1 +w2) (Arctan(w) + Arccot(w))T(w)
=
(L0+L†0
)
=Lb0 (B.1)
40無限遠にも双対な境界演算子φ¯(βα)i が挿入されており、境界条件は無限遠で再びβからαに変更され る。
但し以下の関係を用いた。
F(z) = (1 +z2)Arctan(z) , G(z) = (1 +z2)Arccot(z) (1 +z2)∂Arctan(z) = (1 +z2) 1
(1 +iz)(1−iz) = 1 (1 +z2)∂Arccot(z) = (1 +z2)
( −1 (1 +iz)(1−iz)
)
=−1 (B.2)
さてここでL0+L†0の被積分関数に含まれるArctan(z) + Arccot(z)は Arctan(z) + Arccot(z) = π
2ε(Re[z]) =
{−π/2 Re(z)<0
+π/2 Re(z)>0 (B.3) となることから
Lˆ0 =
∫
CL
dξ
2πi(1 +ξ2) (−π
2 )
T(ξ) +
∫
CR
dξ
2πi(1 +ξ2)π
2T(ξ) = π
2(−K1L+K1R) (B.4) と書ける。但し積分路CL, CRは本文中では図.11で与えられているが、ここでは図.11を UHPへ写像した経路のことを指すとした。
B.2 (3.27) 導出に必要な公式
UrL†0Ur−1 = 2−r
r L0+ 2
rL†0 (B.5)
Ur−1L†0Ur = r−2
r L0+ r
2L†0 (B.6)
Ur†L0Ur†−1 = r
2L0+r−2
2 L†0 (B.7)
Ur†−1L0Ur†= 2
rL0+2−r
2 L†0 (B.8)
UrUs=Urs/2 (B.9)
UrUs†=U†
2+2r(s−2)U2+2
s(r−2) (B.10)
eβLb0 =U2†−2βU2−2β (B.11)
C 相関関数の公式
この章では幅sの無限に伸びた円筒上の相関関数の公式をまとめる。
hc(z1)c(z2)c(z3)is = (s
π )3
sinπ(z1−z2)
s sinπ(z2−z3)
s sinπ(z1 −z3)
s , (C.1)
hBc(z1)c(z2)c(z3)c(z4)is = s2 π3
{
z4sinπ(z1−z2)
s sinπ(z1−z3)
s sinπ(z2−z3)
s (C.2)
−z1sinπ(z2−z3)
s sinπ(z2−z4)
s sinπ(z3−z4)
s (C.3)
−z3sinπ(z1−z2)
s sinπ(z1−z4)
s sinπ(z2−z4)
s (C.4)
+z2sinπ(z1−z3)
s sinπ(z1−z4)
s sinπ(z3−z4) s
}
. (C.5)
h∂X(z)∂X(z0)is= π2 2s2
(
sinπ(z−z0) s
)−2
, (C.6)
∂X(z) ¯∂X(¯z0)
s= π2 2s2
(
sinπ(z−z¯0) s
)−2
, (C.7)
hX(z,z)∂X(z¯ 0)is=−π 2s
(
cotπ(z−z0)
s + cotπ(¯z−z0) s
)
, (C.8)
X(z,z) ¯¯ ∂X(¯z0)
s=−π 2s
(
cotπ(z−z¯0)
s + cotπ(¯z−z¯0) s
)
(C.9) (C.5)よりただちに
2 RehBc(0)c(L1+iy)c(L1)c(L1+L2)is=∑
±
hBc(0)c(L1±iy)c(L1)c(L1+L2)is
=−s2 π3
(
sinh πy s
)2(
L2sin2πL1
s −L1sin2πL2 s
)
, (C.10)
および
hBc(0)c(L1+iy)c(L1−iy)c(L1)is = is2 π3
(
sinhπy s
)2(
L1sinh2πy
s −ysin2πL1 s
) . (C.11) が得られる。
gz及びgz¯((6.15)、(6.16)) の相関関数は hgz(z,z)¯is = π
s [
cotπ(z−z)¯
s + cotπ(z0−z)
s + cotπ(¯z0−z) s
] ,
hg¯z(z,z)¯is =−π s
[
cotπ(z−z)¯
s −cotπ(z0−z)¯
s −cot π(¯z0−z)¯ s
]
. (C.12)
となる。
D 第 6 章における EOM-terms の評価
本論ではΓ含むEOM-term 1 2
∫
Ψ∗Γ−
∫
(GΨ)∗Γ +
∫
γLΓ, (D.1)
を無視して議論を行った。このAppendixではK = 0およびK = ∞のための正則化が されている多重ブレイン解Ψεη(表1) のEOM-term(D.1)がゼロになっていることを確か める。
(5.31)より多重ブレイン解n0,∞= 0,±1では(D.1)の第一項目は消える。そこで残りの 二項を評価しよう。n∞ = 0のG(K)を持つ解に対するEOM-termの評価は、[25]によっ て既に行われている。(但し本論でも述べたように、[25]の中のχLはγLに直さなければ ならないが。) 但しこのAppendixで行う評価は、本論でも強調したように、全ての相関 関数の計算を実行した後に(s積分を実行した後に)、Λ→ ∞とδ →0の極限を取るとい うもので、[25]の評価法とは異なることに注意が必要である。しかしn∞ = 0のG(K)の
EOM-termの結果に関しては、ここで述べる結果と[25]のは同じになる。
具体的な評価に入る前にΓ (6.24)を次のように二項に分解する。
Γ =QBΨεη + Ψ2εη =ε×Γ(ε)[G(Kεη)] +η×Γ(η)[G(Kεη)], (D.2) Γ(ε)およびΓ(η)は、(6.49)で与えられるF とHを使って
Γ(ε)[G(Kεη)] :=cF cH (D.3)
Γ(η)[G(Kεη)] :=cKε2 [ F
Kε2, c ]
Kε2BcH (D.4)
である。ε → 0の極限でΓ(ε)が消えないためには、Γ(ε)がO(1/ε)で振る舞わなければい けない。そのような特異性はn0 6= 0のG(K)からもたらされるだろう。同様にn∞6= 0の G(K)の特異性は、η→0とする時のΓ(η)の特異的な振る舞いもたらす。ここでは表.1で 与えられるG(K)に対してΓ(ε),Γ(η)の両方を評価する。
D.1 ∫ γ
LΓ
まず∫
γLΓの計算から始める。(D.3)、(D.4)にsz-trick計算(第3.3.1節)を行えば、以下 の形まで整理することができる。
∫
γLΓ(ε) = 1 8π3i
∫ ds s2
[
tanhπy s
]y=Λ y=δ
∫ i∞
−i∞
dz
2πiesz(∆sH)F,
∫
γLΓ(η) = 1 8π3i
∫ ds s
[
tanhπy s
]y=Λ y=δ
(D.5)
×
∫ i∞
−i∞
dz 2πiesz{
(−(∆sH)F0+H0(∆sF))zε2−(F ↔zε2)}
, (D.6)
∆sは(3.43)で既に定義されている。またzε :=z+εと書いた。表5に、N =±1,±2の 多重ブレイン解の(D.5)と(D.6)の計算結果をのせる。δとΛを有限に保ったままs積分
G(K) (n0, n∞) ∫
γLΓ(ε) ∫
γLΓ(η) K/(1 +K) (1,0) O(1) O(1) 1/(1 +K) (0,1) O(1) O(1) 1 + 1/K (−1,0) O(lnε) O(1)
1 +K (0,−1) O(1) O(1)
K/(1 +K)2 (1,1) O(1) O(1) (1 +K)2/K (−1,−1) O(lnε) O(1) 表 5: N =±1,±2に対応するG(K)の∫
γLΓ(ε)と∫
γLΓ(η)の計算結果。
を解析的に行うことが困難なので、ほとんどのs積分は数値的評価に頼った。表5に示さ れているように、ほとんどのG(K)で(D.5)と(D.6) はε, η →0の極限でO(1)と振る舞 う。例外的にG= 1 + 1/Kと(1 +K)2/Kの(D.5)はε →0でO(lnε)振る舞うが、これは z積分の被積分関数が虚軸上にポールを持つことに由来している。いずれにせよε, η →0 の極限で∫
γLΓは消える。
D.2 ∫
( G Ψ) ∗ Γ
次に∫
(GΨ)∗Γの評価に移ろう。Ψ及びΓはX(z,z)¯ を陽に含んでいないので、∫
(GΨ)∗Γ はhGisとKBc相関関数に分離する。hGisの中に現れる(z0,z¯0)に依存する項は、極限 z0 → ∞で消え、二つの縦積分の寄与は(C.12) で見たように相殺する。よって我々は z =x+iΛの横積分からの寄与(6.20)のみを考えれば良い。(6.20)の中のLiはΨの幅に 取る。このことから以下を得る。
∫
(GΨ)∗Γ(ε) =hhH0, F, H, Fii+hhH, F, H, F0ii,
∫
(GΨ)∗Γ(η) =hhHF0, H, F, Kε2ii+hhHF, H0, F, Kε2ii
− hhF0, H, F, Kε2Hii − hhF, H0, F, Kε2Hii
−{
hhHF0, H, Kε2, Fii+hhHF, H0, Kε2, Fii
−hhF0, H, Kε2, F Hii − hhF, H0, Kε2, F Hii }
, (D.7)
但し新しい記号hhF1, F2, F3, F4iiは hhF1, F2, F3, F4ii:=− 1
(2π)3i
∫ ∞
0
ds
∫ i∞
−i∞
dz
2πieszscoth2πΛ s
×[(∆sF1)F2F30 +F10F2(∆sF3) + (F1(∆sF2)F3)0−∆s(F1F20)F3
−∆s(F1F2)F30 −F10∆s(F2F3)−F1∆s(F20F3) + ∆s(F1F20F3)]F4. (D.8) と定義した。第3.3.1節の(3.44)、(3.45) に比べてsの依存性が変わっていることに注意 する。(D.8)の左辺のFi(K)は右辺ではFi(z)に変更するものとする。表6に様々なG(K) に対する計算結果をのせた。全ての多重ブレイン解に対して∫
(GΨ)∗Γはε, η → 0の極 限で消えることが分かる。
G(K) (n0, n∞) ∫
GΨ∗Γ(ε) ∫
GΨ∗Γ(η) K/(1 +K) (1,0) O(1) O(1) 1/(1 +K) (0,1) O(1) O(1) 1 + 1/K (−1,0) O(lnε) O(1)
1 +K (0,−1) O(1) O(1)
K/(1 +K)2 (1,1) O(1) O(1) (1 +K)2/K (−1,−1) O(lnε) O(1) 表 6: N =±1,±2に対応するG(K)の∫
GΨ∗Γ(ε)と∫
GΨ∗Γ(η) の計算結果。
E BRST Ward-Takahashi identity
gzとgz¯の定義(6.15)にはX(z0,z¯0)が含まれている。この項はz0 → ∞の極限において、
非自明な寄与をTIIにもたらす事を、第6.3.5節で見た。そもそもなぜX(z0,z¯0)が導入さ れたかと言うと、BRST Ward-Takahashi identity (WTI)の有効性を保証するためであり、
我々は(6.79)の導出においてWTIを使っているのである。このAppendixではX(z0,z¯0)
項がBRST WTIに必要であることを明確に示すことにする。
次の量を考えよう。
hQB[M(z,z;¯ z0z¯0)Bc(z1)c(z2)c(z3)]is, (E.1) ただしM(z,z;¯ z0,z¯0)は、(z,z)¯ 又は(z0,z¯0)におけるX かX の微分だけを含むとする。
BRST WTIから(E.1)がゼロになることが要請される。
(E.1)は、QBがMに作用した項とBccc部分に作用した項に分けられる。QBがBに作 用するとK = {QB, B} =−∂/∂sとなり、この微分はhMisとhcccisの両方に作用する。
純粋にゴースト部分だけのBRST WTI hQB(Bccc)i = 0は代数的に満足されるので、結 局(E.1)は
(E.1) =h[QBM(z,z;¯ z0,z¯0)]Bc(z1)c(z2)c(z3)is−(∂shMis)hc(z1)c(z2)c(z3)is. (E.2) と書き直すことができる。特に(E.1)においてM = X(z,z)∂X(z¯ 0)と選ぶと、我々はゼ ロでは無い項を得ることになる。
− 1 2π
{
(z2−z3) sin2π(z1 −z0)
s + (z3−z1) sin2π(z2−z0)
s + (z1−z2) sin 2π(z3−z0) s
} . (E.3) 従ってMがXを陽に含む場合、BRST WTIは成り立たないのである。しかし(E.3)は (z,z)¯ に依存しないので、M= ∂X(z)∂X(z0)や∂X(¯¯ z)∂X(z0)の場合にはBRST WTIが 成り立つことが分かる。そして更に、Xを差で入れておいてもBRST WTIは成り立つの で、M= (X(z,z)¯ −X(z0,z¯0))∂X(z0) と取ると
hQB{(X(z,z)¯ −X(z0,z¯0))∂X(z0)Bc(t1)c(t2)c(t3)}i= 0. (E.4) が成り立つ。この恒等式こそ(6.79)の導出で我々が用いたものである。
参考文献
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