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2型糖尿病治療薬の有効性における民族差研究:システマティックレビュー及びメタアナリシスによる検討

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Nagoya City University Academic Repository

学 位 の 種 類 博士 (薬科学) 報 告 番 号 甲第1759号 学 位 記 番 号 第356号 氏 名 野中 友香 授 与 年 月 日 令和 2 年 3 月 25 日 学位論文の題名 2 型糖尿病治療薬の有効性における民族差研究:システマティックレビュ ー及びメタアナリシスによる検討 論文審査担当者 主査: 鈴木 匡 副査: 頭金 正博, 牧野 利明, 粂 和彦

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名古屋市立大学 学位論文

2 型糖尿病治療薬の有効性における民族差研究:

システマティックレビュー及びメタアナリシス

による検討

令和元年度(

2020 年 3 月)

所属:

名古屋市立大学大学院薬学研究科

レギュラトリーサイエンス分野

氏名:

野 中 友 香

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本論文は、令和2 年 3 月名古屋市立大学大学院薬学研究科において審査されたものである。 主査 鈴木 匡 教授 副査 頭金 正博 教授 副査 牧野 利明 教授 副査 粂 和彦 教授 本論文は、学術情報雑誌に収載された次の報文を基礎とするものである。

1. Y. Ito, K. Ambe, M. Kobayashi, M. Tohkin:

Ethnic Difference in the Pharmacodynamics-efficacy Relationship of Dipeptidyl Peptidase-4 Inhibitors Between Japanese and non-Japanese Patients: A Systematic Review.

Clin Pharmacol Ther., 102, 701-708 (2017).

2. Y. Ito, K. Ambe, T. Hayase, M. Kobayashi, M. Tohkin:

Comparison of efficacy of dipeptidyl peptidase-4 inhibitors and sodium-glucose co-transporter 2 inhibitors between Japanese and non-Japanese patients: a meta-analysis.

Clin Transl Sci., 13, 498-508 (2020).

本論文の基礎となる研究は、頭金 正博 教授の指導の下に名古屋市立大学大学院薬学研究 科において行われた。

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目次

略語一覧 ... 1 要旨 ... 2 序論 ... 10 本論 ... 12 第1 章:DPP-4 阻害薬の DPP-4 阻害率と HbA1c 変化量の関係における民族差の 検討 ... 12 1-1 背景 ... 12 1-2 方法 ... 14 1-3 結果 ... 20 1-4 考察 ... 31 1-5 小括 ... 34 第2 章:DPP-4 阻害薬と SGLT2 阻害薬の有効性における民族差の検討 ... 35 2-1 背景 ... 35 2-2 方法 ... 37 2-3 結果 ... 44 2-4 考察 ... 65 2-5 小括 ... 70 総括 ... 71 謝辞 ... 74 引用文献 ... 75 Supplement... 78

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略語一覧

BMI body mass index 体格指数

DPP-4 dipeptidyl peptidase-4 ジペプチジルペプチダーゼ 4

DPP-4i dipeptidyl peptidase-4 inhibitors ジペプチジルペプチダーゼ 4 阻害薬 EMA European Medicines Agency 欧州医薬品庁

FDA US Food and Drug Administration アメリカ食品医薬品局 FPG fasting plasma glucose 空腹時血糖

HbA1c hemoglobin A1c ヘモグロビン A1c

HOMA-β homeostatic model assessment-beta cell function インスリン分泌能指数 HOMA-IR homeostatic model assessment-insulin resistance インスリン抵抗性指数

ICH International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use 医薬品規制調和国際会議

JDS Japan Diabetes Society 日本糖尿病学会

NGSP National Glycohemoglobin Standardization Program 全米グリコヘモグロビン 標準化プログラム

2-hr PMG 2-hours post meal glucose 食後 2 時間血糖 PD pharmacodynamics 薬力学

PK pharmacokinetics 薬物動態

PMDA Pharmaceuticals and Medical Devices Agency 医薬品医療機器総合機構

PRISMA Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses システマテ ィックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目

SGLT2 sodium-glucose co-transporter 2 Na+/グルコース共輸送担体 2

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要旨 2 要旨 【序論】 国際共同治験とは単一の治験実施計画書の下、複数の地域で実施される臨床試験のこと である。国際共同治験には、医薬品開発の効率を高め世界中で新医薬品への早期アクセス を促進することができるメリットがある。しかし、2 型糖尿病領域では世界で多くの国際 共同治験が実施されているにも関わらず、本邦では国際共同治験への参加が避けられてい る。その一因として 2 型糖尿病の内因性・外因性民族的要因が薬剤の有効性及び安全性に 及ぼす影響が明らかにされていないことが考えられる。なかでも 2 型糖尿病の病態は国内 外で異なることが知られ、日本人は主にインスリン分泌能が低下しているのに対し、欧米 人は主にインスリン抵抗性が増大しているとされている。そのため、2 型糖尿病治療薬の グローバル開発や本邦の国際共同治験参加を促進するには、このような民族的要因が結果 に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにする必要がある。 そこで我々は、近年世界中で上市された2 種類の 2 型糖尿病治療薬であるジペプチジル ペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬及び Na+/グルコース共輸送担体 2(SGLT2)阻害薬に着目 した。DPP-4 阻害薬は、食事応答ホルモンであるインクレチンを分解する DPP-4 酵素を阻 害することでインクレチンの活性型濃度を増加させ、食後のインスリン分泌促進を介して 血糖低下作用を発揮する。DPP-4 阻害薬は欧米人よりも日本を含むアジア人で奏功するこ とが複数のメタアナリシスで報告されているが、そのメカニズムは明らかにされていない。 一方、SGLT2 阻害薬は、腎近位尿細管に発現する SGLT2 を阻害し、血液中の過剰なグルコ ースを体外に排出することで、インスリン分泌を介さずに血糖低下作用を発揮するが、有 効性の民族差の有無は明らかになっていない。そこで、本研究では、これら 2 型糖尿病治 療薬の有効性に民族的要因が及ぼす影響に関する知見を得ることを目的として、国内外で 実施された臨床試験データをシステマティックレビュー及びメタアナリシスにより検討し た。システマティックレビューとは、事前に特定した選択・除外基準に基づき文献データ ベース等から情報を系統的に収集する手法であり、2 名以上が独立してレビューを行い両 者の合意に基づき選択することで、選択バイアスの発生を抑えることができる。メタアナ

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要旨 4 DPP-4 阻害率(x)と有効性(y)の関係が原点を通る直線(y = ax)で表されると仮定し、 試験実施地域別(海外/国内)の傾きを線形回帰分析により推定した。また一般化線形モ デルにより地域の影響を検定した。その結果、DPP-4 阻害率に対する HbA1c 変化量は海外 よりも国内で有意に大きく(p<0.0001)、FPG 変化量は国内外で類似していた(p=0.9928) (図1)。DPP-4 阻害率に対する 2-hr PMG 変化量は海外試験データ数が少なく(n=5)明確 な結論は得られなかった。 図1 DPP-4 阻害薬の DPP-4 阻害率と(A)HbA1c 変化量(B)FPG 変化量の関係 DPP-4 阻害率(x)と有効性(y)の関係が原点を通る直線(y = ax)で表されると仮定し、地域別の傾きを線形回帰分析 により推定した。傾きに対する地域の交互作用を一般化線形モデルにより検定した。各データは分散の逆数により重み付 けした。 以上より、DPP-4 阻害薬の民族差は DPP-4 阻害率と HbA1c 変化量の関係において存在す ることが明らかとなった。また、DPP-4 阻害率と FPG 変化量(すなわち空腹時血糖変化量) の関係には民族差がみられなかったことから、DPP-4 阻害薬の有効性の民族差は食後のイ ンスリン分泌促進を介した作用機序に関連している可能性が示唆された。

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要旨 5 第二章:DPP-4 阻害薬と SGLT2 阻害薬の有効性における民族差の検討 DPP-4 阻害薬の有効性の民族差がその作用機序に関連していることを確認するため、イ ンスリン分泌促進機構を介さないSGLT2 阻害薬にも着目し、両剤の有効性プロファイルの 民族差をシステマティックレビューにより検討し比較することとした。 データソースは、PubMed、Embase、医学中央雑誌、及び PMDA が公開する承認申請資 料概要とし、2017 年 5 月まで検索を行った。本研究では第一章と同様の選択・除外基準を 設定したが、投与12 週以降に同時に測定された HbA1c 及び FPG 変化量データが報告され ている試験を選択し、そのうち承認用量データ(複数ある場合は最大用量)を採用した。 その結果、DPP-4 阻害薬 93 試験(海外 69、国内 24)、SGLT2 阻害薬 61 試験(海外 42、国 内19)が収集された。 メタアナリシスは複数の試験データを統合する手法であるが、試験間で結果のばらつき が大きい(すなわち「異質性」が大きい)と判断される場合は、統合値の解釈が困難とな ることに留意が必要である。システマティックレビューで収集したすべての試験のHbA1c 変化量及びFPG 変化量を DPP-4 阻害薬及び SGLT2 阻害薬のそれぞれで地域別(海外/国 内)に統合したところ、大きな異質性が示されたため、より均質な試験を統合する必要が あると考えられた。 そこでDPP-4 阻害薬と SGLT2 阻害薬それぞれの HbA1c 変化量と相関する因子を探索す るため、メタ回帰分析により検討した。地域(海外/国内)を考慮してもHbA1c 変化量と 有意に相関する因子として「インスリン分泌能指数(HOMA-β)」、「ベースライン HbA1c」 (National Glycohemoglobin Standardization Program; NGSP 値)及び「プラセボ群の HbA1c 変 化量」が特定された。このうち地域と相関性の高い「HOMA-β」を除き、「ベースラインHbA1c」 及び「プラセボ群のHbA1c 変化量」を説明因子に加えた多変量メタ回帰分析の結果(表 2)、 DPP-4 阻害薬の HbA1c 変化量は有意に地域の影響を受けることが示され(p<0.001)、海外 よりも国内で0.1798%良く低下した。一方で、SGLT2 阻害薬の HbA1c 変化量に地域の影響 はなかった(p=0.690)。

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要旨 7 ここで、収集した試験の「ベースラインHbA1c」及び「プラセボ群の HbA1c 変化量」の 分布状況を確認したところ、特にSGLT2 阻害薬で偏りが大きく、国内と比べて海外ではベ ースラインHbA1c が低くプラセボ効果が大きい試験が多かった(図 2)。有効性に影響する 因子の国内外の偏りはメタアナリシスの解釈を困難にするものと考えられた。 図2 収集した試験における有効性に影響する因子の分布状況(A)DPP-4 阻害薬(B)SGLT2 阻 害薬 各試験の「ベースラインHbA1c」及び「プラセボ群の HbA1c 変化量」をプロットし、点線で地域別の分布範囲を示した。 そこで、ベースラインHbA1c 7.8%以上 8.6%未満かつプラセボ群の HbA1c 変化量 0.0%以 上 0.3%未満の試験に限定して HbA1c 変化量及び FPG 変化量のメタアナリシスを行った (図3)。収集した試験のうち、DPP-4 阻害薬 28 試験(海外 18、国内 10)及び SGLT2 阻害 薬21 試験(海外 14、国内 7)が解析対象となり、地域別の統合値[95%信頼区間]と統合 試験間のばらつきの大きさ(異質性)を示すI2統計量(0%~100%の値を取り、50%以上を 異質性が大きいと判断した)は図内に示した。なお、図の菱形の中心位置は統合値を表し、 菱形の幅は統合値の 95%信頼区間を表している。横軸は効果の大きさを示しており、菱形 が左に位置するほど薬剤の効果が大きい。 その結果、DPP-4 阻害薬の HbA1c 変化量は海外よりも国内で有意に大きかったが(海外

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要旨 8 -0.68%、国内-0.87%、p<0.0001)、FPG 変化量には地域差はみられなかった(海外-17.64 mg/dL、 国内-19.43 mg/dL、p=0.44)(図 3A)。一方、SGLT2 阻害薬では HbA1c 変化量(p=0.45)と FPG 変化量(p=0.61)共に地域差がみられなかった(図 3B)。異質性を示す I2統計量は DPP-4 阻害薬で 0~57%、SGLT2 阻害薬で 50~77%の範囲であり、やや大きいものの、試験を限 定する前と比べて改善がみられた。 図3 HbA1c 変化量及び FPG 変化量を地域別(海外/国内)に統合したメタアナリシス-有効性 に影響する因子により試験を限定した場合(A)DPP-4 阻害薬(B)SGLT2 阻害薬 システマティックレビューで収集した試験のうち、ベースラインHbA1c が 7.8%以上 8.6%未満かつプラセボ群の HbA1c 変化量が0.0%以上 0.3%未満の試験に限定し、試験結果を統合した。菱形の中心位置は統合値を表し、菱形の幅は統合値 の95%信頼区間を表す。統合には試験間分散を考慮するランダム効果モデルを採用した。統合値の地域差の有意性を p 値 で示す。 【結論】 第一章ではシステマティックレビューによる臨床試験データの解析から、DPP-4 阻害薬

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要旨 9 は同じDPP-4 阻害率が得られた場合、HbA1c 変化量は海外よりも国内で大きいことが示さ れた。この結果から、日本人が DPP-4 阻害薬に奏功する要因は国内外の PK プロファイル やPK-PD プロファイルの違いでは説明できず、薬力学と有効性の関係に民族差が存在する ことが示された。また、同じDPP-4 阻害率が得られた場合の FPG 変化量(すなわち空腹時 血糖変化量)は国内外で同程度であったことから、DPP-4 阻害薬の有効性の民族差は作用 機序である食後のインスリン分泌促進作用に関連するものと示唆された。 第二章では異なる作用機序の2 剤、DPP-4 阻害薬と SGLT2 阻害薬に着目し、システマテ ィックレビュー及びメタアナリシスにより両剤の有効性プロファイルを比較検討した。有 効性に影響する「ベースラインHbA1c」及び「プラセボ効果」を調節因子とした多変量メ タ回帰分析、並びにこれらの因子で条件を付加したメタアナリシスの結果、DPP-4 阻害薬 のHbA1c 低下効果は海外よりも国内で大きいことが示された。また、インスリン分泌能の 指標であるHOMA-β が DPP-4 阻害薬の民族差の予測因子であることが示唆された。DPP-4 阻害薬のFPG 変化量に地域差は認められなかった。一方で、有効性に影響する因子を考慮 した解析では、SGLT2 阻害薬の有効性の地域差は認められず、HOMA-β による影響もなか った。 以上の結果から、DPP-4 阻害薬はインスリン分泌能が保たれている欧米人患者と比べて インスリン分泌能の低い日本人患者でより高い HbA1c 低下効果が期待できることが示さ れ、2 型糖尿病の病態の違いが DPP-4 阻害薬の有効性に影響したことが考えられた。また、 この民族差は国内外のPK プロファイルや PK-PD プロファイルの違いでは説明できないこ と、空腹時の血糖には現れないことから、DPP-4 阻害薬の食後のインスリン分泌促進作用 に関連するものであると考えられた。対照的に、インスリン分泌作用を介さない薬剤であ るSGLT2 阻害薬は 2 型糖尿病の病態の違いの影響を受けないものと考えられた。 本研究から得られた知見が、新たな 2 型糖尿病治療薬のグローバル開発において留意す べき点となり、日本の国際共同治験への参加促進あるいは国際的なデータ共有促進の一助 となることを期待する。

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序論

国際共同治験とは単一の治験実施計画書の下、複数の地域で実施される臨床試験のこと である。国際共同治験には、医薬品開発の効率を高め世界中で新医薬品への早期アクセス を促進することができるメリットがある。医薬品規制調和国際会議(ICH)により「国際共 同治験の計画及びデザインに関する一般原則に関するガイドライン(ICH-E17)」が 2017 年 に合意され、2018 年に本邦でも厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知とし て発出されている1) 。本ガイドラインでは、民族的要因が医薬品の応答性に及ぼす影響を 開発の早期段階から理解し、それらを考慮して国際共同治験をデザインすることが重要で ある旨が記載されている。また、開発の早期フェーズ(薬物動態試験や用量設定試験等) から国際共同治験に参加することで、検証的試験(第III 相試験)の実施前に民族的要因の 影響を評価することが可能となることにも言及されている。つまり、国際共同治験を計画 するにあたっては、民族的要因が医薬品の応答性に及ぼす影響とそのメカニズムを理解す ることが重要である。 しかし、糖尿病領域では、欧米諸国を中心とする世界各地域で多くの国際共同治験が実 施されているにも関わらず、本邦では国際共同治験への参加が避けられる傾向にある。こ れには様々な要因が考えられるが、一因として、2 型糖尿病には内因性民族的要因(体格、 病態の違い等)あるいは外因性民族的要因(生活習慣、医療環境の違い等)の存在と、こ れらの民族的要因が薬剤の有効性及び安全性に及ぼす影響とそのメカニズムが不明であり、 国際共同治験の結果の解釈が困難となる恐れがあることが考えられる。なかでも 2 型糖尿 病の主な病態は国内外で異なることが知られ、日本人は主にインスリン分泌能が低下して いるのに対し、欧米人は主にインスリン抵抗性が増大している2, 3) 2 型糖尿病領域におい ても、グローバル開発や国際共同治験参加によるメリットを享受するには、このような民 族的要因が有効性と安全性に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにする必要がある。 そこで我々は、近年世界中で上市された 2 種類の 2 型糖尿病治療薬であるジペプチジル ペプチダーゼ4(DPP-4)阻害薬及び Na+/グルコース共輸送担体 2(SGLT2)阻害薬に着目 した。DPP-4 阻害薬は、食事応答ホルモンであるインクレチンを分解する DPP-4 酵素を阻

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11 害することで、インクレチンの活性型濃度を増加させ、主に食後のインスリン分泌促進を 介して血糖低下作用を発揮する 4-6) 。DPP-4 阻害薬の承認用量範囲は日米欧で同様である ことから、我々は当初、DPP-4 阻害薬の有効性に民族差はないと想定した。しかしながら、 DPP-4 阻害薬は欧米人よりも日本を含むアジア人で奏功することが複数のメタアナリシス で報告されていること 7-12) 、またこれらの報告では依然としてそのメカニズムの解明には 至っていないことに着目した。一方、SGLT2 阻害薬は、腎近位尿細管に発現する SGLT2 を 阻害し、血液中の過剰なグルコースを体外に排出することで、インスリン分泌を介さずに 血糖低下作用を発揮する6, 13) SGLT2 阻害薬の承認用量も日米欧で重なっているが、SGLT2 阻害薬の有効性の民族差に着目した研究は少なく、民族差の有無は明らかになっていない。 本研究では、これら 2 型糖尿病治療薬の有効性に民族的要因が及ぼす影響に関する知見 を得ることを目的として、国内外で実施された臨床試験データをシステマティックレビュ ー及びメタアナリシスにより検討することとした。システマティックレビューとメタアナ リシスは、信頼性の高いエビデンスを集約し統合する手法であるとされている14, 15) 。シス テマティックレビューの具体的な方法論としては、事前に特定した選択・除外基準に基づ き文献データベース等から情報を系統的に収集する過程を指し、2 名以上が独立してレビ ューを行い両者の合意に基づき選択することで、選択バイアスの発生を抑えることができ る。メタアナリシスとはシステマティックレビューで収集した複数の試験データを、その 重み付けを考慮したうえで統合して統計解析することで、結論を得る研究手法のことであ る。

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13 このように、DPP-4 阻害薬の PK、PK-PD プロファイル及び各地域の承認用量に大きな違 いがないにもかかわらず、DPP-4 阻害薬の有効性が欧米人よりもアジア人(日本人を含む) で奏功するとの報告が複数存在する。Park et al. 7) DPP-4 阻害薬の無作為化比較試験のメ タアナリシスを実施し、非日本人よりも日本人でヘモグロビンA1c(HbA1c)低下量が大き いことを報告した。Kim et al. 8) のメタアナリシスでは、DPP-4 阻害薬はアジア人(主に日 本を含む東アジア)で他の民族よりも血糖低下効果が優れていることが報告された。ただ し、これらのメタアナリシスでは承認用量データを統合しており、民族差がPK、PK-PD 関 係、PD-有効性関係のどの段階で生じるのかの解明には至っていなかった。また、英語の 文献のみを対象としており、日本語でしか報告されていない重要なデータを収集できてい ない可能性があった。そこで、我々は、DPP-4 阻害薬の PD-有効性関係に着目し、DPP-4 阻害率と有効性の関係に民族差が存在するかを検討することを目的として、承認用量に限 らずDPP-4 阻害率データが報告された臨床試験を収集するシステマティックレビューを行 うこととした(Figure 1-1)。 Figure 1-1: 本研究(第 1 章)の目的の概念図 有効性の主要評価項目は、2 型糖尿病薬の標準的な血糖低下効果の指標で、過去 1~2 ヵ 月の平均血糖値を反映する指標であるHbA1c とし、日々の血糖変動の指標である食後 2 時 間血糖、及び空腹時血糖の変化量を副次評価項目とした19) 。検索対象資料は、英語の公表 文献に加えて、日本語で公開される承認申請資料概要や審査報告書も対象とすることで、 データを最大限に収集することとした。

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16 HbA1c は過去 1~2 ヵ月の平均血糖値を反映することから、DPP-4 阻害薬の HbA1c 低下 効果が十分に現れる期間を考慮して、HbA1c の解析には投与 12 週以上を適格とした。食後 2 時間血糖又は空腹時血糖への DPP-4 阻害薬の効果はより短い期間で現れると考えられる ことから、これら評価項目の解析には投与4 週以上の試験も適格とした。 また、1 日 1 回投与と比べて 1 日 2 回投与データでは、トラフ時(次投与直前)の DPP-4 阻害率や空腹時血糖に対して日中の血糖レベルがより強力に抑えられ、平均血糖レベル を反映する指標であるHbA1c が良く低下する可能性があるため、均質な試験データを統合 するために1 日 1 回投与時のデータに限定して収集した。 データ抽出 予め指定したデータシートにデータを抽出した。抽出項目はTable 1-5 に示す。報告され ていない項目であっても他の情報から算出可能な場合や単位の換算が必要な場合は、計算 によりデータを得た。また、臨床試験の登録・公開 Website である ClinicalTrials.gov (https://clinicaltrials.gov/)で情報が得られる場合は補填した。 データ抽出作業は 2 名以上が独立して行った。両者の結果を照合し、不一致があればデ ータソースに戻り確認し、合意した。 なお、データは各文献等から得られたままの有効数字にてデータシートに抽出し、解析 に用いた。解析結果の提示にあたっては小数点以下の桁数を統一した。

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18 インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)、インスリン分泌能指数(HOMA-β)、血清インスリ ン(μU/mL)が欠測の場合、以下の計算式により補填した6, 22) ・ HOMA-IR = FPG x Insulin / 405 ・ HOMA-β = Insulin x 360 / (FPG – 63) ・ Insulin = (405 x HOMA-IR) / FPG 1-2-(2) バイアスリスク評価 システマティックレビューの PRISMA ガイドライン 20) に従い、収集した個々の試験の バイアス及び公表バイアスを評価した。 個々の試験のバイアス 臨床試験で無作為化あるいは盲検化の措置が取られていない場合、結果にバイアスが生 じるリスクがある。本研究では選択条件に「二重盲検無作為化比較試験」を設定すること で、個々の試験のバイアスを低く抑えた。 公表バイアス ネガティブな試験は公表されにくい性質があるため、収集した試験にバイアスが生じる リスクがあり、これを公表バイアスと言う。本研究ではFunnel Plot を用い、公表バイアス を視覚的に評価した。

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1-2-(3) 統計解析

DPP-4 阻害率と有効性(HbA1c、食後 2 時間血糖、空腹時血糖変化量のプラセボ群との 差)の関係性の解析には統計解析ソフトSAS version 9.4(SAS Enterprise Guide 7.1)を用い た。生理学的観点からDPP-4 阻害薬による DPP-4 阻害作用がない時、DPP-4 阻害薬の効果 はないと考えられるため、DPP-4 阻害率(x)と有効性(プラセボ群との差)(y)が原点を 通る直線(y = ax)で表されると仮定し、線形回帰分析により試験実施地域別(海外/国内) の傾きを推定した。さらに、傾きに対する地域(海外/国内)の交互作用の有無を下記に 示す一般化線形モデルにより検定した。各データは分散の逆数(標準誤差の 2 乗の逆数) により重み付けした。

[ΔEfficacy] = [DPP-4 inhibition rate] + [DPP-4 inhibition rate] * [study region (N/J)]

主要評価項目(HbA1c)の結果の頑健性を確認するための感度分析として、単剤試験に 限定した解析も行った。

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20 1-3 結果 1-3-(1) 収集結果 収集フロー システマティックレビューによる試験データの収集フローを Figure 1-2 に示す。本研究 では大きく2 種類のデータソース(文献データベース、規制当局の公開情報)を用いた。

文献データベース(Literature search)では、設定した検索語により 201 報(PubMed:112 報、Embase:58 報、医中誌 Web:31 報)がヒットした。選択・除外基準を基に Title 及び Abstract の情報をレビューした結果、105 報が除外され、残り 96 報の Full paper をレビュー した。このうち12 報を適格と判断し、データを抽出した。

規制当局の公開情報(Agency data search)からは、適格と判断した 16 試験のデータを抽 出した。 両データソースから得られた計28 試験のデータを統合し、重複の 7 試験及び有効性変量 の95%CI 又は SE が未報告の 3 試験を除外し、最終的に 18 試験が解析対象となった。 収集試験・データ数 収集した試験数及びデータ数をFigure 1-2 の下方に示す。 HbA1c、食後 2 時間血糖、空腹時血糖の解析に使用した試験数(# of studies)はそれぞれ 12 試験(海外 5、国内 7)、10 試験(海外 3、国内 7)、18 試験(海外 8、国内 10)であっ た。1 試験に複数の投与群がある場合はすべてのデータを解析に使用したため、HbA1c、 食後2 時間血糖、空腹時血糖の解析に使用した投与群データ数(# of groups)はそれぞれ 36 データ(海外 15、国内 21)、24 データ(海外 5、国内 19)、47 データ(海外 20、国内 27)であった。

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Figure 1-2: 試験収集のフローチャート

2-hr PMG, 2-hours post-meal glucose; CI, confidence interval; DPP-4, dipeptidyl peptidase-4; EMA, European Medicines Agency; FDA, US Food and Drug Administration; FPG, fasting plasma glucose; HbA1c, hemoglobin A1c; IGT, impaired glucose tolerance; PMDA, Pharmaceuticals and Medical Devices Agency; PopPK, population pharmacokinetic; T2DM, type 2 diabetes mellitus.

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22 収集試験の特徴 効果が現れるまでの期間を考慮し、主要評価項目(HbA1c 変化量)の解析には投与 12 週 以上の試験を、副次評価項目(食後 2 時間血糖変化量、空腹時血糖変化量)の解析には投 与 4 週以上の試験を収集した。なお、本邦の糖尿病の診断基準は主に HbA1c 値 6.5%以上 に加えて血糖値(①空腹時126 mg/dL 以上、②75g グルコース負荷試験 2 時間値 200 mg/dL 以上、又は③随時:200 mg/dL 以上)のいずれかを再検査により確認するものであり、国内 外で類似している23, 24) 投与12 週以上の試験の背景を Figure 1-3 に示す。体格指数(BMI)、インスリン分泌能指 数(HOMA-β)及びインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)は、海外試験と比べて国内試験で 顕著に小さかった。このことは、欧米人では主に肥満によってインスリン抵抗性が増大し 2 型糖尿病が発症する 25, 26) のに対し、日本人 2 型糖尿病患者は低 BMI でインスリン分泌 能が低下する 2, 3) という、病態の特性をよく反映しているものと考えられた。年齢と男性 の割合が国内でやや高く、ベースラインの空腹時血糖は海外で高い傾向があったが、ベー スラインのHbA1c は国内外で同程度であった。 なお、インスリン分泌能とインスリン抵抗性を表す指数として知られているHOMA-β 及 び HOMA-IR は、空腹時の血糖値とインスリン値から算出可能な指標であるが(計算式は p.18 参照)22) 、糖尿病の診断に必要な測定項目ではない23) 。一般的にHOMA-β(基準値: 40~60)は 30 以下でインスリン分泌能低下、HOMA-IR(基準値:1~1.6)は 2.5 以上でイ ンスリン抵抗性増大と判断される。

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23

Figure 1-3:投与 12 週以上の試験の背景(箱ひげ図)

Baseline characteristics of included studies are displayed in box plots. The length of the box represents the inter quarter range (25% quartile to 75% quartile) and the middle line in the box represents the median. White circles and boxes represent non-Japanese studies and black circles and boxes represent Japanese studies. Whiskers are drawn to the maximum or minimum data (up to 1.5 times the length of inter quarter range). Study data beyond whiskers are displayed as outliers. BMI, body mass index; HbA1c, hemoglobin A1c; FPG, fasting plasma glucose; HOMA-β, homeostasis model assessment of beta-cell function; HOMA-IR, homeostasis model assessment of insulin resistance.

投与12 週以上の試験の一覧を Table 1-6 に示す。国内試験では全 7 試験が「単独試験」 (DPP-4 阻害薬を単独投与するデザイン)であったのに対し、海外試験では 2/5 試験が「併 用試験」(DPP-4 阻害薬を他の糖尿病薬に併用投与するデザイン)であった。なお、海外試 験のアジア人の割合は1 試験が 46.1%であったが、残り 4 試験は 5%未満であった。 投与12 週以上 4 週未満の試験の一覧を Table 1-7 に示す。6 試験(海外 3、国内 3)すべ てが「単独試験」であった。海外試験のアジア人の割合は1 試験は 0%、残り 2 試験はデー タが報告されていなかった。

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26 1-3-(2) バイアスリスク評価 個々の試験のバイアス 以下の点から本研究で収集した個々の試験のバイアスリスクは、低いと考えられた。 ・ すべて二重盲検無作為化比較試験であること。 ・ 18 試験中 16 試験は規制当局のデータベースから採用された試験であり、医薬品の臨 床試験の実施基準(Good Clinical Practice: GCP)適合性調査を受けていること。

公表バイアス ネガティブな試験は公表されにくい性質があるため、収集した試験間にバイアスが生じ るリスクがある。これを公表バイアスと呼ぶ。本研究ではFunnel Plot を用い、公表バイア スを視覚的に評価した。通常、Funnel Plot は横軸を効果量、縦軸をその標準誤差(又はそ の逆数)としてデータをプロットする。理論的に標準誤差の小さい試験ほど真の値に近づ き、標準誤差の大きい試験ほど真の値からのばらつきが大きくなるため、公表バイアスが 小さい場合はFunnel Plot は真の値を頂点とした左右対称の三角形となる。しかし公表バイ アスが大きい場合は、効果量が小さく標準誤差の大きい試験のプロットが公表されないこ とによって三角形の片側が欠け、左右非対称となる。 横軸をHbA1c 変化量(%)(プラセボ群との差)、縦軸をその標準誤差の逆数とし、試験 実施地域別(海外/国内)にプロットした(Figure 1-4)。本研究では承認用量以外のデータ も収集したことから、真の値に幅が想定され、厳密な三角形を確認することはできなかっ たが、視覚的な評価の結果、地域ごとにおおむね左右対称であることから、結果の解釈に 影響を与えるほどの公表バイアスは示唆されないと判断した。

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27

Figure 1-4: Funnel Plot による公表バイアスの検討(HbA1c 解析データセット)

Each data (White circle: non-Japanese studies; black circle: Japanese studies) were plotted by the HbA1c (%) change from baseline versus placebo and its inverse of standard error.

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28 1-3-(3) DPP-4 阻害率と有効性の関係 生理学的観点からDPP-4 阻害薬による DPP-4 阻害作用がない時、DPP-4 阻害薬の効果は ないと考えられるため、DPP-4 阻害率(x)と有効性(プラセボ群との差)(y)が原点を通 る直線(y = ax)で表されると仮定し、線形回帰分析により試験実施地域別(海外/国内) の傾きを推定した。さらに、傾きに対する地域(海外/国内)の交互作用の有無を一般化 線形モデルにより検定した。各データは分散の逆数(標準誤差の 2 乗の逆数)により重み 付けした。 主要評価項目:DPP-4 阻害率-HbA1c 変化量関係 DPP4 阻害率に対する HbA1c 変化量の関係は、海外試験 y = 0.0074x、国内試験 y = -0.0118x と推定され、試験実施地域(国内/海外)の交互作用は有意であった(p<0.0001) (Figure 1-5A)。感度分析として、単剤試験に限定すると、DPP-4 阻害率に対する HbA1c 変 化量の関係は、海外試験y = -0.0081x、国内試験 y = -0.0118x であった。試験実施地域(海 外/国内)の交互作用は有意であり(p=0.0065)(Figure 1-5B)、単剤試験に限定しても結論 は変わらなかった。以上より、DPP-4 阻害薬は、同じ DPP-4 阻害率が得られた場合、海外 よりも国内でHbA1c 低下作用が大きいことが示された。 副次評価項目:DPP-4 阻害率-食後 2 時間血糖変化量関係 DPP-4 阻害率に対する食後 2 時間血糖変化量の関係は、海外試験 y = -0.496x、国内試験 y = -0.636x と推定された。試験実施地域(国内/海外)の交互作用は有意ではなかった (p=0.3030)(Figure 1-6A)。 副次評価項目:DPP-4 阻害率-空腹時血糖変化量関係 DPP4 阻害率に対する空腹時血糖変化量の関係は、海外試験 y = 0.265x、国内試験 y = -0.265x と推定された。試験実施地域(国内/海外)の交互作用は有意ではなかった(p=0.9928) (Figure 1-6B)。

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Figure 1-5: トラフ時 DPP-4 阻害率と HbA1c 変化量(プラセボ群との差)の関係-(A)収 集した全試験(B)単剤試験に限定した感度分析

White circle and dotted line: non-Japanese studies; black circle and solid line: Japanese studies. The relationship of DPP-4 inhibition rate and HbA1c was estimated using a linear regression model with no intercept (y = ax). Each efficacy measurement used in the model was weighted by the inverse of its squared SE. The interaction of study origin (Japanese/non-Japanese) was evaluated by generalized linear model.

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Figure 1-6: トラフ時 DPP-4 阻害率と(A)食後 2 時間血糖変化量(B)空腹時血糖変化量の 関係

White circle and dotted line: non-Japanese studies; black circle and solid line: Japanese studies. The relationship of DPP-4 inhibition rate and 2-hr PMG or FPG was estimated using a linear regression model with no intercept (y = ax). Each efficacy measurement used in the model was weighted by the inverse of its squared SE. The interaction of study origin (Japanese/non-Japanese) was evaluated by generalized linear model.

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31 1-4 考察 DPP-4 阻害薬の DPP-4 阻害率に対する HbA1c 低下効果は海外試験よりも国内試験で大 きく、この関係性には試験実施地域(海外/国内)の有意な交互作用、つまり地域差が認 められた(p<0.0001)。この結果は DPP-4 阻害薬の有効性の民族差を示した過去のメタアナ リシスの報告7-12) と整合するものであった。過去の報告では、民族差のメカニズムの 1 つ として 2 型糖尿病の病態の民族間の違いが原因ではないかと考察されている。東アジアで は主にインスリン分泌不全状態にあるが33-35) 、欧米では主にインスリン抵抗性増大が2 型 糖尿病の要因でありインスリン分泌能は保たれていることが知られている25) 。また東アジ アではDPP-4 活性が高く、通常状態で GLP-1 分泌が低下し、それによってインスリン分泌 が低下状態にある可能性が示唆されている25) 。これらの知見から、東アジアの患者にとっ てDPP-4 阻害薬が合理的な作用メカニズムを有していると言える。 一方で、副次評価項目であるDPP-4 阻害率-食後 2 時間血糖変化量の関係、DPP-4 阻害 率-空腹時血糖変化量の関係には、地域(海外/国内)の交互作用は認められなかった。 HbA1c は過去 1~2 ヵ月の平均血糖値を反映する指標であることから 17)、血糖レベルで地 域差がみられないという結果は我々の予想に反していた。Kim et al.が行ったメタアナリシ ス8) では、アジア人と非アジア人で空腹時血糖変化量に差があるが、食後2 時間血糖変化 量には差がないとの結果であり、我々の研究結果と一致しない。しかし、DPP-4 阻害薬は 食後のインスリン分泌促進を介して血糖降下作用を発揮することから、空腹時の血糖レベ ルに地域差がみられなくとも、理論上、食後血糖に地域差が生じている可能性は考えられ る。残念なことに、我々の研究結果では食後 2 時間血糖変化量の解析に使用可能な海外デ ータが少なく、食後 2 時間血糖変化量に対する地域差の有無について明確な結論は得られ なかった。また、食事負荷試験の食事の内容は地域で異なる可能性があり、食後血糖は食 事内容の影響を受けやすい指標であることから結果の解釈は慎重に行う必要がある。しか し空腹時血糖変化量データは十分に得られており、同じDPP-4 阻害率が得られた場合の空 腹時血糖変化量は国内外で同程度であったことを踏まえると、DPP-4 阻害薬の民族差は作 用機序である食後のインスリン分泌促進作用に関連するものと示唆された。

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32 収集試験の特徴のうち体重、BMI、HOMA-β、HOMA-IR はいずれも海外試験よりも国内 試験で小さかった。これらの内因性民族的要因が地域差の要因となっている可能性がある と考えられた。欧米に多い肥満はインスリン抵抗性(HOMA-IR)を増大させるが25, 26) 、一 方で、東アジアではやせ型にも関わらずインスリン分泌能(HOMA-β)が低下する患者が 多い33-35) 。本研究からは民族差のメカニズムとして、インスリン分泌を促進するDPP-4 阻 害薬が、インスリン抵抗性増大状態にある海外患者(主に非アジア人)よりも、インスリ ン分泌低下状態にある日本人患者に奏功する可能性が考えられた。 我々の研究では、単剤試験(DPP-4 阻害薬を単独投与する試験)だけでなく併用試験(DPP-4 阻害薬を他の糖尿病薬に追加投与する試験)のデータも収集し解析に含めた。収集した 18 試験中、併用試験は 2 試験のみ(いずれも海外試験)であった。日本糖尿病学会(JDS) が推奨する治療は個々の患者の特徴に基づき血糖降下薬の選択を行うのに対し6) 、海外で の推奨レジメンは第一選択がメトホルミンで、第二選択がメトホルミンへの他剤併用投与 であるため24) 、海外ではメトホルミンへの追加投与試験が行われる傾向がある。なお、Park et al.のメタアナリシス7) によると、DPP-4 阻害薬は、単剤試験でも併用試験(併用薬:メ トホルミン、スルホニル尿素薬、ピオグリタゾン、インスリンを含む)でも、同程度の有 効性を発揮する結果が得られている。本研究では感度分析として併用試験データを除いた 解析も行ったが、地域差は有意なまま(p=0.0065)であり、DPP-4 阻害薬の地域差に関する 結論は頑健であると考えられた。なお、DPP-4 阻害薬に地域差がみられることは、シタグ リプチンの市販後に併用薬の有無に制限なく行われた大規模臨床試験(TECOS; Trial Evaluating Cardiovascular Outcomes with Sitagliptin)試験の 14,671 名のサブ解析の結果から も確認され、投与4 ヵ月後(約 16 週後)の HbA1c 低下量は東アジア人で最も大きく、他 の人種と比較して有意であったと報告されている36)

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33 本研究の特徴を以下に述べる。 (1) 本研究は、承認用量における有効性を統合した過去のメタアナリシスとは異なり、 DPP-4 阻害薬の薬力学的効果と有効性の関係に着目して地域差を見出した。このこと から、DPP-4 阻害薬の有効性の地域差は、薬物動態プロファイルや薬物動態-薬力学 プロファイルの違いだけでは説明ができないこと、すなわち、DPP-4 阻害後のプロセ スに地域差の要因が存在することを明らかにすることができた。DPP-4 阻害薬は生体 内のDPP-4 活性を阻害し、食事応答ホルモンであるインクレチン(GLP-1、GIP)の 濃度を増加させることで、インスリン分泌を促進する。このインスリン分泌増加が、 インスリン抵抗性による高血糖の是正よりも、インスリン分泌低下による高血糖の是 正に寄与することで地域差が生じる可能性が考えられる。 (2) 本研究は、英語の資料のみを対象とした過去のメタアナリシスとは異なり、PMDA の Website に掲載されている日本語で記載された申請資料概要等の情報も利用した。実 際、DPP-4 阻害率の情報は英語の公表文献や海外の審査報告書には記載が乏しく、本 研究の解析に使用したDPP-4 阻害率データはほとんどが PMDA の申請資料概要から 抽出された。これにより、本研究を実施する鍵であるトラフ時 DPP-4 阻害率の情報 を多く得ることができた。 本研究の限界を以下に述べる。 (1) システマティックレビューは要約データを用いた解析であり、また DPP-4 阻害薬の 試験であっても DPP-4 阻害率を報告している試験は少なく、解析に使用可能なデー タ数が限られている。民族差と関連する要因を検討するための詳細な解析は行うこと ができなかった。 (2) 同様にシステマティックレビューは公表されたデータを収集する手法であり、公表バ イアスの影響を完全には避けられない。ただし Funnel Plot の視覚的検討からは結果 に大きく影響するほどの公表バイアスはないと考えられた。 (3) 用法(1 日の投与回数)に影響されずに HbA1c 低下効果を予測する PD 指標として、

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34

本研究で用いたトラフ時DPP-4 阻害率よりも、定常状態の重み付き平均阻害率(steady state weighed average inhibition)が優れているとの報告がある37) 。本研究では文献等

で最も多く報告されていたトラフ時の指標を利用したが、選択対象として 1 日 1 回 投与群のデータを採用したことから、1 日の投与回数の違いによる影響は最少に抑え られていると考える。 (4) DPP-4 活性の測定系は標準化されておらず、収集試験間で測定方法が異なる可能性が ある。また、DPP-4 阻害率は ex vivo assay 中に血漿を薄めるため基質に競合する人工 物の影響によって本来より低い値が出る可能性がある38) 。そのためDPP-4 阻害活性 や測定系の違いによる DPP-4 阻害率への影響を否定できない。しかしながら探索的 に DPP-4 阻害薬の成分ごとに解析をしても、概して全体の結論と同様な傾向がみら れたため、大きな影響はないと考えられた。 以上の限界はあるものの、本研究はDPP-4 阻害薬の DPP-4 阻害率と有効性の関係におけ る民族差を検討した初めての研究である。DPP-4 阻害薬の民族差には作用機序であるイン スリン分泌との関連が示唆されたことから、インスリン分泌機構を介さない他の糖尿病薬 を用いたさらなる検討により、2 型糖尿病治療薬の有効性の民族差のメカニズムを明らか にすることで、2 型糖尿病領域の開発において日本から国際共同治験に参加する上での留 意点となると期待される。 1-5 小括 DPP-4 阻害薬は同じ DPP-4 阻害率が得られた場合、HbA1c 変化量は海外よりも国内で大 きい。また、DPP-4 阻害薬の民族差は作用機序である食後のインスリン分泌促進作用に関 連するものと示唆される。

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2章:DPP-4 阻害薬と SGLT2 阻害薬の有効性における民族差の検討

2-1 背景

第1 章より、DPP-4 阻害薬の民族差は HbA1c 低下効果においてみられ、空腹時血糖低下 効果ではみられないことから、作用機序である食後のインスリン分泌促進作用に関連する

ものであることが示唆された。しかしながら、Cai X et al.と Cai Y et al.のメタアナリシス10, 11) ではDPP-4 阻害薬の空腹時血糖低下効果は地域差がみられなかったのに対し、Kim et al.Berhan et al.のメタアナリシス8, 9) では非アジア人よりもアジア人、又は非日本人よりも 日本人で空腹時血糖低下効果が大きく、過去の報告では空腹時血糖に対する民族差の有無 の見解が異なっている。さらに過去の研究ではインスリン分泌能の違いが民族差の要因で ある可能性を考察しているものの、それを示すエビデンスは示していない。 DPP-4 阻害薬の民族差が作用機序に関連するものであるかを確認するため、我々はイン スリン分泌促進機構を介さない作用機序のSGLT2 阻害薬に着目した。SGLT2 阻害薬は、腎 近位尿細管に発現するSGLT2 を阻害し、血液中の過剰なグルコースを体外に排出すること で、インスリン分泌を介さずに血糖低下作用を発揮する6, 13) 。SGLT2 阻害薬は、2020 年 1 月現在、6 成分(イプラグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリ フロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン)が本邦で承認されており、これらを 含む配合剤も複数承認されている。SGLT2 阻害薬においても審査過程において PK 及び PK-PD プロファイルに国内外の明らかな違いは確認されておらず、国内外の承認用量・用法の 比較をTable 2-1 に示すとおり、各地域の承認用量範囲は重なっている。また、SGLT2 阻害 薬の有効性の民族差を報告した研究は少ない。唯一報告されたCai X et al.のメタアナリシ スではアジア試験と非アジア試験とで SGLT2 阻害薬の HbA1c に有意な差はみられなかっ たが39) 、本メタアナリシスで統合した試験間のばらつきは非常に大きい上に、ばらつきの 要因の検討はなされておらず、統合結果の解釈は困難なものであった。このように、事実 上、SGLT2 阻害薬の有効性の民族差の有無は明らかになっていない。

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41 ベースライン HbA1c が JDS 値で報告されている場合、以下の計算式により NGSP 値に 換算した21) ・ HbA1c (NGSP) (%) = 1.02 x HbA1c (JDS) (%) + 0.25% 空腹時血糖(FPG)が mmol/L 単位で報告されている場合、以下の計算式により mg/dL 単 位に換算した。 ・ FPG (mg/dL) = FPG (mmol/L) x 18 インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)、インスリン分泌能指数(HOMA-β)、血清インスリ ン(μU/mL)が欠測の場合、以下の計算式により補填した6, 22) ・ HOMA-IR = FPG x Insulin / 405 ・ HOMA-β = Insulin x 360 / (FPG – 63) ・ Insulin = (405 x HOMA-IR) / FPG 承認用量の定義 各試験の承認用量群データを解析に採用した。承認用量の定義は、米国、EU 又は日本の いずれかで通常の用法用量(増量を含む)として承認された用量とした。ただし、韓国の

みで承認されたgemigliptin と evogliptin の場合、韓国で承認された用量(gemigliptin: 50mg, evogliptin: 5mg)を採用した。 また、1 試験に複数の承認用量群(例:用量設定試験)がある場合、最大の承認用量を採 用した。最大の承認用量で投与タイミング(朝、夕等)の異なる投与群がある場合、朝投 与を採用した。 2-2-(2) バイアスリスク評価 システマティックレビューの PRISMA ガイドライン 20) に従い、収集した個々の試験の バイアス及び公表バイアスを評価した。

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2-2-(3) 統計解析

メタアナリシスにより、DPP-4 阻害薬と SGLT2 阻害薬のそれぞれで HbA1c 変化量と空 腹時血糖変化量を試験実施地域別(海外/国内)に統合し、地域間の違いを検定した。ま

た、HbA1c 変化量に影響する因子をメタ回帰分析により探索した。メタアナリシスには統 計解析ソフトReview Manager (version 5.3; Nordic Cochrane Centre, Copenhagen, Denmark)を 使用し、Egger’s Test とメタ回帰分析には JASP [version 0.9; JASP Team (2018)]を使用した。

メタアナリシスのモデルには、ランダム効果モデル(random effects model)を採用した。 ランダム効果モデルとは、真の結果が試験間で共通であると仮定する固定効果モデル (fixed-effects model)とは異なり、真の結果が試験間で異なることを許容し試験間分散を考 慮するモデルである15) 統合した試験結果のばらつきは、I2統計量を指標とした。I2統計量は 0~100%の値を取 り、以下の計算式で計算される15) I2統計量が50%以上の場合を異質性が大きいと判断し た。 ・ I2 = (Q - df) / Q x 100% Q: Cochran’s Q(コクランの Q 統計量) df: degree of freedom(自由度) ・ Q = Σ W (Y - M)2 W: 各試験の重み M: メタアナリシスによる統合値(重み付け平均値) Y: 各試験の効果量 ・ df = k – 1 k: 試験数

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44 結果の頑健性を確認するための感度分析として、以下の 3 種類のデータセットで解析を 行った。 ・ 感度分析 1:海外試験のカテゴリから、日本が参加した国際共同治験を除外 ・ 感度分析 2:単剤試験に限定 ・ 感度分析 3:バイアスリスクが高いと判断した試験を除外 すべての解析で有意水準をp<0.05 とした。 2-3 結果 2-3-(1) 収集結果 収集フロー システマティックレビューによる試験データの収集フローを Figure 2-2 に示す。第 2 章 同様、本研究では大きく2 種類のデータソース(文献データベース、規制当局の公開情報) を用いた。 文献データベース(Literature search)では、設定した検索語により 829 報(DPP-4:397、 SGLT2:432)がヒットした。選択・除外基準を基に Title 及び Abstract の情報をレビューし た結果、549 報が除外され、残り 280 報の Full paper をレビューした。このうち 114 報を適 格と判断し、データを抽出した。

規制当局の公開情報(Agency data search)からは 571 試験(DPP-4:349、SGLT2:222) をレビューし、適格と判断した99 試験のデータを抽出した。

両データソースから得られた計 243 試験のデータを統合し、重複試験、有効性変量の 95%CI 又は SE が未報告あるいは承認用量で投与されていない 89 試験を除外し、最終的 に154 試験(DPP-4:93、SGLT2:61)が解析対象となった。

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Figure 2-2: 収集試験のフローチャート

Two independent reviewers searched and reviewed articles and extracted data. Any discrepancies between the authors were discussed until an agreement was reached. ClinicalTrials.gov were searched to supplement missing data. PMDA, Pharmaceuticals and Medical Devices Agency; T2DM, type 2 diabetes mellitus; DPP-4i, dipeptidyl peptidase-4 inhibitors; SGLT2i: sodium-glucose co-transporter 2 inhibitors; HbA1c, hemoglobin A1c; FPG, fasting plasma glucose; SE, standard error; CI, confidence interval.

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46 収集した試験の内訳 収集した試験の内訳を Figure 2-3 に示す。DPP-4 阻害薬の 69/93 試験、SGLT2 阻害薬の 42/61 試験が海外試験(non-Japanese)に分類された。 DPP-4 阻害薬では、「併用試験」(治験薬を他の糖尿病薬に併用投与するデザイン)の割 合は、国内54.2%、海外 62.3%と同程度であった。 SGLT2 阻害薬では、「併用試験」の割合は国内 42.1%に対し、海外 78.6%と多かった。 Figure 2-3: 収集試験の内訳(試験実施地域別、単剤/併用試験別)

Number of studies applied to meta-analysis by study region (non-Japanese or Japanese) and type of therapy (monotherapy or add-on therapy) is displayed in bar graphs.

収集した試験の特徴

収集した試験の一覧をSupplement Table 1 に、収集した試験の背景(箱ひげ図)を Figure 2-4 に示す。 第1 章同様、BMI、HOMA-β 及び HOMA-IR が海外試験と比べて国内試験で顕著に小さ く、これは 2 型糖尿病患者の典型的な特徴及び病態の地域間の違いが反映されているもの と考えられた。また、第 1 章同様、年齢と男性の割合が国内でやや高く、ベースラインの 空腹時血糖は海外で高い傾向があった。ベースラインのHbA1c は DPP-4 阻害薬では国内外 で同程度であった。SGLT2 阻害薬のベースライン HbA1c は海外でやや低く分布していた。 海外試験のアジア人の割合は DPP-4 阻害薬で 35%、SGLT2 阻害薬で 37%であった (Supplement Table 1 より算出)。

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Figure 2-4: 収集試験の背景(箱ひげ図)

Baseline characteristics of included studies are displayed in box plots by (A) DPP-4i and (B) SGLT2i studies. The length of the box represents the inter quarter range (25% quartile to 75% quartile) and the middle line in the box represents the median. White circles and boxes represent non-Japanese studies and black circles and boxes represent Japanese studies. Whiskers are drawn to the maximum or minimum data (up to 1.5 times the length of inter quarter range). Study data beyond whiskers are displayed as outliers. BMI, body mass index; HbA1c, hemoglobin A1c; FPG, fasting plasma glucose; HOMA-β, homeostasis model assessment of beta-cell function; HOMA-IR, homeostasis model assessment of insulin resistance.

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2-3-(2) バイアスリスク評価

個々の試験のバイアス

Cochrane’s tool risk of bias を用いて 7 つの評価項目ごとにバイアスリスクを低い(Low risk of bias)、不明(Unclear risk of bias)、高い(High risk of bias)の 3 段階で評価した。

評価結果の要約をFigure 2-5 に示す。なお、個々の試験別の評価結果は Supplement Figure 1 に提示した。

全体としてバイアスリスクは低かったことから、解析に含まれる試験の質は許容可能と考

えられた。多くの評価項目でバイアスリスクが低いと判断された割合が大きかったが、選択

バイアスの評価項目(Random sequence generation と Allocation concealment)では、半分以上 の文献から無作為化や割付表に関する情報が記載されておらず、バイアスリスクが不明と判

断された。また、症例減少バイアスの評価項目(Incomplete outcome data)では DPP-4 阻害薬 の5/93 試験(5.4%)と SGLT2 阻害薬の 3/61 試験(4.9%)では、欠測や中止例が多い又は群 間に偏りがみられたため、バイアスリスクが高いと判断された。

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Figure 2-5: バイアスリスク評価の要約

Risk of bias was assessed in each 7 domains for individual studies according to Cochrane’s risk of bias tool and presented in bar graph. (A) DPP-4 inhibitor studies and (B) SGLT2 inhibitor studies.

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公表バイアス

第 1 章と同様、本研究では Funnel Plot を用いて公表バイアスを視覚的に評価した。さら に、Egger’s Test により Funnel Plot の非対称性を検定した(Figure 2-6)。

その結果、DPP-4 阻害薬の収集試験に公表バイアスは認められなかった。SGLT2 阻害薬の 収集試験全体(Overall)では有意な非対称性が検出されたが(p=0.023)、地域別では検出さ れなかった。全体として、結果の解釈に顕著な影響を与えるほどの公表バイアスは認められ

ないと考えられた。

Figure 2-6: Funnel plot 及び Egger’s test による公表バイアスの評価

Publication bias was assessed visually by Funnel plot and statistically by Egger’s test for asymmetry for (A) DPP-4 inhibitor and (B) SGLT2 inhibitor studies overall and by subgroups (non-Japanese/Japanese). Each dot represent HbA1c change from baseline versus placebo and its standard error of individual study treatment arms.

x-axis: Change from baseline in HbA1c versus placebo; y-axis: Standard error of change from baseline in HbA1c versus placebo.

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51 2-3-(3) メタアナリシス メタアナリシス(有効性に影響する因子を考慮する前) システマティックレビューで収集したすべての試験の HbA1c 変化量及び空腹時血糖変化 量をDPP-4 阻害薬及び SGLT2 阻害薬のそれぞれで地域別(海外/国内)に統合した(Figure 2-7)。地域別の統合値[95%信頼区間]と統合試験間のばらつきの大きさ(異質性)を示す I2統計量(0%~100%の値を取り、50%以上を異質性が大きいと判断した)は図内に示した。 なお、図の菱形の中心位置は統合値を表し、菱形の幅は統合値の 95%信頼区間を表してい る。横軸は効果の大きさを示しており、菱形が左に位置するほど薬剤の効果が大きい。 その結果、DPP-4 阻害薬の HbA1c、SGLT2 阻害薬の HbA1c と空腹時血糖は海外よりも国 内で有意に低下する結果が得られた。しかし、I2統計量はDPP-4 阻害薬で 49~58%、SGLT2 阻害薬で76~82%であり、大きな異質性が示されたため、有効性に影響する因子を考慮し てより均質な試験を統合する必要があると考えられた。

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Figure 2-7: 地域別の HbA1c 変化量及び空腹時血糖変化量の統合値(共変量を考慮しない場 合)(A)DPP-4 阻害薬(B)SGLT2 阻害薬

Changes from baseline versus placebo in HbA1c and FPG were pooled by meta-analysis using a random effects model. The diamond center represents weighed mean average and the diamond width represents its pooled 95% CI. DPP-4i, dipeptidyl peptidase-4 inhibitors; SGLT2i, sodium-glucose co-transporter 2 inhibitors; CI, confidence interval.

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53 感度分析 結果の頑健性を確認するための感度分析として以下の 3 種類のデータセットでメタアナ リシスを行った。DPP-4 阻害薬の結果を Figure 2-8 に、SGLT2 阻害薬の結果を Figure 2-9 に 示す。 ・ 感度分析 1:海外試験のカテゴリから、日本が参加した国際共同治験を除外 ・ 感度分析 2:単剤試験に限定 ・ 感度分析 3:バイアスリスクが高いと判断した試験を除外 DPP-4 阻害薬の感度分析の結果、すべての感度分析で HbA1c 変化量に有意な地域差(国 内>海外)が認められる一方で、空腹時血糖変化量には地域差が認められないという一貫し た結果が得られた。 SGLT2 阻害薬の感度分析の結果、感度分析 1 と 3 では結果に大きな変化はなかったが、 感度分析2(単剤試験に限定)では HbA1c と空腹時血糖変化量の国内外の差が消失し、一貫 した結果が得られなかった。

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54

Figure 2-8: 地域別の HbA1c 変化量及び空腹時血糖変化量の統合値(感度分析) -DPP-4 阻害薬

Change from baseline versus placebo arm were pooled by meta-analysis using generic inverse variance random effects model in 3 types of set of studies. 1) Excluding from the “non-Japanese” category MRCTs with Japanese participants, 2) Monotherapy studies only, 3) Excluding high risk of bias studies. Center of diamond represent pooled mean change versus placebo and width of diamond represent its 95% CI. DPP-4i, dipeptidyl peptidase 4 inhibitor; CI, confidence interval; MRCT, multi-regional clinical trial.

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Figure 2-9: 地域別の HbA1c 変化量及び空腹時血糖変化量の統合値(感度分析) -SGLT2 阻害薬

Change from baseline versus placebo arm were pooled by meta-analysis using generic inverse variance random effects model in 3 types of set of studies. 1) Excluding from the “non-Japanese” category MRCTs with Japanese participants, 2) Monotherapy studies only, 3) Excluding high risk of bias studies. Center of diamond represent pooled mean change versus placebo and width of diamond represent its 95% CI. SGLT2i, sodium-glucose co-transporter 2 inhibitor; CI, confidence interval; MRCT, multi-regional clinical trial.

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2-3-(4) 有効性に影響する因子の探索

単変量メタ回帰分析 -HbA1c 変化量と相関する因子の探索-

DPP-4 阻害薬と SGLT2 阻害薬それぞれの HbA1c 変化量と相関する因子を単変量メタ回帰 分析により探索した。相関を検討する因子は、併用薬の有無、年齢、男性の割合、アジア人

の割合、BMI、HOMA-β、HOMA-IR、ベースライン HbA1c、プラセボ群の HbA1c 変化量と した。以下のモデルにより、それぞれの因子と各薬剤のHbA1c 変化量との相関を検討した。 [ΔHbA1c] = [Factor] 結果をTable 2-7 に示す。地域(海外/国内)を考慮しない場合に各薬剤の HbA1c 変化量 と有意に相関する因子(All studies, p<0.05)は以下のとおりであった。 ・ DPP-4 阻害薬:男性の割合、アジア人の割合、BMI、HOMA-β、HOMA-IR、プラセボ群 のHbA1c 変化量 ・ SGLT2 阻害薬:併用薬の有無、男性の割合、アジア人の割合、BMI、ベースライン HbA1c、 プラセボ群のHbA1c 変化量 多変量メタ回帰分析 -地域を考慮してもHbA1c 変化量と相関する因子の探索- 次に、地域(海外/国内)を考慮しても HbA1c 変化量と有意に相関する因子を探索する ため、上記モデルの説明因子に地域を加えた多変量メタ回帰分析を行った。

[ΔHbA1c] = [Factor] + [Study Region (N/J)]

結果をTable 2-8 に示す。以下の 3 因子は、DPP-4 阻害薬と SGLT2 阻害薬のいずれかで有 意な相関が示された(estimate of other factors listed, p<0.05)。

i. HOMA-β(DPP-4 阻害薬のみ)

ii. ベースライン HbA1c(SGLT2 阻害薬のみ) iii. プラセボ群の HbA1c 変化量(両剤)

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59

多変量メタ回帰分析-HbA1c 変化量と相関する因子で調節した地域又は HOMA-β の影響- 特定した3 因子のうち地域と相関性が高い「HOMA-β」を除き、「ベースライン HbA1c」 及び「プラセボ群のHbA1c 変化量」を調整因子とした多変量メタ回帰分析を行った。また、 地域に代えて「HOMA-β」の影響も検討した。結果を Table 2-9 に示す。

[ΔHbA1c] = [baseline HbA1c] + [ΔHbA1c in placebo arm] + [Study Region (N/J)] [ΔHbA1c] = [baseline HbA1c] + [ΔHbA1c in placebo arm] + [HOMA-β]

その結果、DPP-4 阻害薬の HbA1c 変化量は有意に地域の影響を受けることが示され (p<0.001)、海外よりも国内で 0.1798%良く低下した。一方で、SGLT2 阻害薬の HbA1c 変化 量に地域の影響はなかった(p=0.690)。 また、DPP-4 阻害薬の HbA1c 変化量は HOMA-β が低いほど有意に大きく(p<0.001)、 SGLT2 阻害薬では HOMA-β の影響はなかった(p=0.388)。このことから HOMA-β、すなわ ちインスリン分泌能はDPP-4 阻害薬の有効性の予測因子となることが示唆された。

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(65)

61 2-3-(5) 有効性に影響する因子を考慮したメタアナリシス 有効性に影響する因子の分布状況 収集した試験の「ベースラインHbA1c」(横軸)及び「プラセボ群の HbA1c 変化量」(縦 軸)の分布状況を確認するため、収集試験データを散布図にプロットし、その分布範囲を枠 で示した(Figure 2-10) ・ DPP-4 阻害薬:ベースライン HbA1c の分布状況に国内外で顕著な違いはなかった。し かし、プラセボ群のHbA1c 変化量の分布状況には偏りがみられ、プラセボ群の HbA1c 変化量0.0%未満の試験の多くが海外試験で、0.3%以上の試験はすべて国内試験であっ た。 ・ SGLT2 阻害薬:ベースライン HbA1c の分布状況に偏りがみられ、HbA1c 値 7.8%未満 の試験の多くが海外試験で、8.6%以上の試験はすべて国内試験であった。また、プラ セボ群の HbA1c 変化量の分布状況にも偏りがみられ、プラセボ群の HbA1c 変化量 0.0%未満の試験の多くが海外試験で、0.3%以上の試験はすべて国内試験であった。 これら有効性に影響する因子の国内外の偏りは、これら因子を考慮しないメタアナリシス の結果の解釈を困難にするものと考えられた。

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62

Figure 2-10: 有効性に影響する因子「ベースライン HbA1c」と「プラセボ群の HbA1c 変化量」 の地域別の分布状況

Each circle represents mean baseline HbA1c (NGSP) (%) and HbA1c change from baseline (%) in the placebo arm of individual (A) DPP-4i and (B) SGLT2i studies. White circle: non-Japanese studies; Black circle: Japanese studies. Single-dotted line represents range of non-Japanese studies, and double-Single-dotted line represents range of Japanese studies. DPP-4i, dipeptidyl peptidase-4 inhibitors; SGLT2i, sodium-glucose co-transporter 2 inhibitors; HbA1c, hemoglobin A1c; NGSP, National Glycohemoglobin Standardization Program.

Figure 1-2:  試験収集のフローチャート
Figure 1-3:投与 12 週以上の試験の背景(箱ひげ図)
Figure 1-4: Funnel Plot による公表バイアスの検討(HbA1c 解析データセット)
Figure 1-5:  トラフ時 DPP-4 阻害率と HbA1c 変化量(プラセボ群との差)の関係-(A)収
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参照

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