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70

できる程度と考えられる。

(4)

本研究では

SGLT2

阻害薬のその他の有効性指標である体重や血圧の低下効果を検討 しておらず、これらにおける民族差の有無は不明である。

以上の限界はあるものの、本研究は

DPP-4

阻害薬と

SGLT2

阻害薬を対比させることで

DPP-4

阻害薬の

HbA1c

低下効果に民族差が生じるメカニズムの一端を明らかにした初めて

の研究である。

71

総括

1

章では

DPP-4

阻害薬の

DPP-4

阻害率と

HbA1c

変化量の関係性を明らかにすることを

目的として、承認用量に限ることなく、システマティックレビューにより臨床試験データを 収集した。その結果、

DPP-4

阻害薬は同じ

DPP-4

阻害率が得られた場合においても、

HbA1c

変化量は海外よりも国内で大きいことが示された。この結果から、日本人が

DPP-4

阻害薬 に奏功する要因は国内外の

PK

プロファイルや

PK-PD

プロファイルの違いでは説明できず、

PD

(DPP-4阻害率)と有効性(HbA1c低下量)の関係に存在することが示された。一方、同

DPP-4

阻害率が得られた場合の空腹時血糖変化量は国内外で同程度であったことから、

DPP-4

阻害薬の主な作用である食後のインスリン分泌促進作用が

2

型糖尿病の病態の影響

を受けるためである可能性が考えられた。

そこで第

2

章では、十分な薬効が発揮される承認用量に限定し、インスリン分泌機構を介

する

DPP-4

阻害薬とインスリン分泌機構を介さない

SGLT2

阻害薬とで有効性(HbA1c、空

腹時血糖)の地域差の有無を比較検討することを目的として、システマティックレビュー及 びメタアナリシスを行った。併用試験を除いた感度分析、有効性に影響する「ベースライン

HbA1c

」及び「プラセボ効果」を調節因子とした多変量メタ回帰分析、並びにこれらの因子

で条件を付加したメタアナリシスの結果、DPP-4 阻害薬の

HbA1c

低下効果は海外よりも国 内で大きいことが一貫して示された。また、インスリン分泌能の指標である

HOMA-β

DPP-4

阻害薬の民族差の予測因子であることが示唆された。一方で、有効性に影響する因子を考 慮した解析では、

SGLT2

阻害薬の有効性の地域差は認められず、

HOMA-β

による影響もな かった。

以上の結果から、

DPP-4

阻害薬のインスリン分泌促進による血糖効果作用は、インスリン 分泌能が保たれている欧米人患者と比べてインスリン分泌能の低い日本人患者でより高い

HbA1c

低下効果が期待できることが示された。対照的に、インスリン分泌作用を介さない薬

72

剤である

SGLT2

阻害薬は

2

型糖尿病の病態の違いの影響を受けないものと考えられた。

本研究の成果は、内因性民族的要因である

HOMA-β

DPP-4

阻害薬の有効性の予測因子 であることを示唆し、またその分布の違いが民族差を説明する可能性を初めて見出した研究 である。さらに、作用メカニズムの異なる

SGLT2

阻害薬のデータと対比させることによっ て、本仮説を支持する成果を得ることができた。

本研究から得られた知見は、

2

型糖尿病薬のグローバル開発について留意すべき点となる。

例えば、

SGLT2

阻害薬のように作用メカニズムにおいて病態の影響やその他の民族的要因

の存在が考えにくい場合には、民族的要因が結果の解釈において困難になるリスクは低いと 予測されるため、日本が国際共同治験に参加しやすいと考えられる。一方で、

ICH-E17

ガイ ドラインでは民族差が存在すること自体が国際共同治験への参加を否定するものではない ことが述べられている。反応性に民族差が見られた場合でも、その差が民族的要因によって 説明が可能であり、臨床試験の実施方法や解析方法を工夫することで、全地域での一貫した 結果の解釈が可能であれば国際共同治験の実施は可能であろう。つまり、

DPP-4

阻害薬のよ うに作用メカニズムにおいて病態の影響が考えられる場合では、PKプロファイルや

PK-PD

関係が国内外で変わらないことを確認し、さらに有効性の民族差が生じる要因として

HOMA-β

の測定を治験実施計画書に規定した上で、民族にかかわらず

HOMA-β

値で患者を

層別化して解析することで、日本が国際共同治験に参加し結果を解釈することは十分に可能 になると考えられる。

さらに、一般診療への提言として、本研究結果から得られた知見は

2

型糖尿病の診断又は 治療選択時に個々の患者の病態としてインスリン分泌能を確認する重要性を高めるもので あると考える。海外の糖尿病ガイドラインでは病態によらず原則メトホルミンが第一選択で あるが、本邦の糖尿病診療ガイドライン

2019

23)

Q5-2

)では、薬物の選択は各患者の病態 に応じて行う旨が記載されている。しかし、本邦での糖尿病の診断基準は

HbA1c

と血糖値

73

に基づくものであり、病態を示す指標は診断に必須の項目ではない。また、当ガイドライン

(Q1-2)にはインスリン分泌能を示す指数として

75g

グルコース負荷試験によるインスリ ン分泌指数(グルコース負荷前と負荷後

30

分の血糖値とインスリン値により算出)が紹介 されているが、本検査は患者負担が大きく、空腹時高血糖患者にはリスクを伴うため、既に 糖尿病が診断された患者に推奨される検査ではない。しかし、本研究で

DPP-4

阻害薬の有 効性との関連が見出された

HOMA-β

は、患者負担の少ない空腹時採血(血糖値とインスリ ン値)により簡便に算出可能な指標である 22) ことを踏まえ、診療ガイドラインで糖尿病の 診断時又は治療選択時に

HOMA-β

の測定を推奨することが望ましいと考える。

システマティックレビューとメタアナリシスは、既存の公開された臨床試験データを活用 することで、新たな知見を見出すことができる有用性の高い手法である。民族差の要因のさ らなる研究によって、日本の国際共同治験への参加促進、あるいは国際的なデータ共有促進、

さらには臨床現場における最適な医療推進につながることを期待する。

74

謝辞

本研究の遂行と博士論文の作成にあたり、終始、懇切なる御指導と御鞭撻を賜り、親身に 励まし頂きました、指導教官の名古屋市立大学大学院薬学研究科レギュラトリーサイエンス 分野 頭金 正博 教授に厚く御礼申し上げます。

本研究を遂行する環境を整えて頂き、研究上の有用な御助言と心温まる励ましを賜りまし た名古屋市立大学大学院薬学研究科レギュラトリーサイエンス分野 安部 賀央里 助教に 深く御礼申し上げます。

本研究を遂行する上で欠かせないシステマティックレビューに多大なる御貢献を頂き、本 研究をより良いものとするための有益な御提案や多くの示唆を与えて頂きました名古屋市 立大学大学院薬学研究科レギュラトリーサイエンス分野 小林 牧由さん、早瀬 稔起さんに 心より感謝致します。

本研究の議論を通じて様々な視点から有用な御助言を頂きました名古屋市立大学大学院 薬学研究科レギュラトリーサイエンス分野の皆様に心より感謝致します。

本論文を審査頂き、多角的な視点から本論文への御指導を賜りました名古屋市立大学大学 院薬学研究科 鈴木 匡 教授、牧野 利明教授、粂 和彦 教授に深く御礼申し上げます。

最後に、研究生活を応援して下さった勤務先の

MSD

株式会社グローバル研究開発本部の 上司及び同僚の皆様に深く感謝致しますとともに、研究生活を見守り支え続けてくれた家族 と両親への感謝をここに表します。

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