• 検索結果がありません。

事業概要

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "事業概要"

Copied!
24
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

公益財団法人 笹川記念保健協力財団

S a s a k a w a   M e m o r i a l   H e a l t h   F o u n d a t i o n

年 次 報 告 書 2 0 1 7

2 0 1 7 年 4 月 ~ 2 0 1 8 年 3 月 期

(2)

2 Our Vision, Our Mission、事業概要 3 会長メッセージ

4 2017年度の主な活動 6 ハンセン病対策事業

12 ホスピス緩和ケア事業 18 公衆衛生向上のための事業

22 貸借対照表・正味財産増減計算書内訳表 23 財団概要

事業概要

当財団の事業は、ハンセン病対策事業、ホスピス緩和ケア事業、公衆衛生向上のための事業の3つ の公益目的事業から構成されており、それぞれ日本財団からの助成金と、寄付金や助成金などを受 け入れた資産およびその運用益などの自主財源で事業を行なっています。

Our Vision

― 笹川記念保健協力財団の目指すもの ―

私たちは、身体的、精神的、社会的そしてスピリチュアルの観点から クオリティ・オブ・ヘルスの向上を目指します。

Better quality of health for everyone, whether physical, mental, social or spiritual.

Our Mission

― 笹川記念保健協力財団の使命 ―

世界から、ハンセン病とそれに伴う偏見差別のない社会を目指した活動を行います。

Working toward a world without Hansen’s disease and the stigma and discrimination it causes.

誰もが全人的なケアを受けられる社会を目指し、そのための人材育成を行います。

Nurturing health professionals capable of offering holistic, palliative care to all.

世界の公衆衛生向上のための支援を行います。

Supporting initiatives to find solutions to global public health problems.

目 次

(3)

笹川記念保健協力財団の2017(平成29)年度事業報告にあたり、改めて、

皆さまからのご支援ご協力に心から感謝し申し上げます。

当財団は、1974年、初代会長笹川良一(日本財団創設者)、理事長石館守 三により、世界のハンセン病対策のために創設されました。その後、2010 年には、笹川医学医療研究財団(1985年設立、理事長日野原重明、医学 研究の支援と国際交流)と合併し新たな公益財団となり、今日に至ってお ります。2017年度には、引き続き、以下の3事業分野の活動を行いました。

ハンセン病対策については、WHOハンセン病制圧大使笹川陽平日本財 団会長のイニシアティブの下、日本財団とも協働しつつ、遅々として進ま ぬ新患数減少への新たな取り組みとともに、患者・回復者とその家族ら に対する偏見・差別解消に精力を注ぎました。「何人もハンセン病が原 因で社会活動への参加が阻害されることのない世界の実現」、いわゆる Leprosy Free Worldを目指す活動を強化しました。同時に、人類史と共 に始まった感もあるハンセン病(の偏見)の歴史を検証すること、さらに 患者や家族ら当事者による活動の推進、支援も私どもの重要な活動です。

これまで、ホスピスと緩和ケアに重点を置いてきたケア人材育成は、新た に「看護師が社会を変える!」のスローガンの下、地域包括医療制度の中 核となり得る在宅/訪問看護センターを起業し、継続運営できる看護師養 成に発展させ、4年目の活動を行いました。50名の研修修了者が全国に

「日本財団在宅看護センター」と関連施設を開設し、24時間365日、地域 のケアを担っています。

公衆衛生向上への支援は、30年以上の歴史をもつWHO笹川健康賞や FAPA石館賞など、プライマリ・ヘルス・ケア分野で功績ある人々の顕彰 ほか、わが国の専門家と諸外国の関係者との交流支援および内外の人材 育成の支援を続けています。

「すべての人が自分らしく、よりよく生きてゆける世界」を実現すべく、役 職員ともども努力を致してまいりました。引き続き、ご支援を賜りますよ う、こころからお願い申し上げます。

公益財団法人 笹川記念保健協力財団 会 長

喜多 悦子

会長メッセージ

(4)

2017 年

4 5 6 7 8 9

2018 年

10 11 12 1 2 3

第5回ハンセ病の歴史を語り継ぐ人類遺産世界会議

(岡山)

世界各地のハンセン病の歴史保 存・継承活動を推進するため、 当 事者や実務家、歴史学や建築学等 の学者を集めた学際的な国際会議 を開催しました。

2017年度ホスピス緩和 ケア事業助成金交付式

(東京)

研究、研修、啓発活動の助成決定 者が一堂に会し、交流を兼ねた交 付式を行いました。

第5回日本財団ホスピ スナース地方研修会

(北海道)

地方特有の少子高齢化や過疎集 落の問題を抱えた北海道の現状か ら、地域医療を看護の力でどう支え るかを考えました。

7月18日名誉会長 日野原重明逝去

(東京)

享年105歳。生涯現役、延命 治療はしないなど、自身の提言 を一貫して自ら実践しました。

医療チーム派遣

(マダガスカル・アンチラベ)

口唇口蓋裂などの外科治療のた め、昭和大学の医療チームをマ ダガスカル共和国に派遣し、14 症例の手術を成功させました。

2017年度「日本財団 在宅看護センター」

起業家育成事業開講式

(東京)

起業を目指す15名の看護師が集 結し、8カ月間の研修がスタート しました。

WHO笹川健康賞

(スイス・ジュネーブ)

世界保健総会の席上で、第33回目 となるWHO笹川健康賞の授賞式 が行われました。今年の受賞者は モンゴルのB型肝炎対策の実践家 Dr. Arslan Rinchinでした。

第4回放射線災害 医療サマーセミナー

(福島)

15名の学生が、6日間の日程 で講義、実習、フィールド訪問 を通し、災害医療や放射線の 知識を学びました。

2016年度ホスピス緩和ケア助成事業報告会

(東京)

当財団が2016年度に助成した研 究、研修、啓発活動等の成果発表 を行い、意見交換や情報共有の場 となりました。

2017年度の

主な活動

(5)

2017 年

4 5 6 7 8 9

2018 年

10 11 12 1 2 3

WHO Global Leprosy Program 支援諮問委員会開催

(インド・デリー)

日本財団拠出WHOハンセン病 対策活動支援について、外部専 門家を交えて翌年度の支援のあ り方を協議しました。

第5回日本財団ホスピ スナース地方研修会

(北海道)

地方特有の少子高齢化や過疎集 落の問題を抱えた北海道の現状か ら、地域医療を看護の力でどう支え るかを考えました。

WHOハンセン病制圧大使インドネシア訪問調整同行

(北スラウェシ州、北マルク州、ゴロンタ ロ州、南スラウェシ州、西スラウェシ州)

2020年までに全州での制圧達成 を目指すインドネシア政府と協力 して、蔓延州を訪問し、現地対策 活動の促進に努めました。

第17回日本財団 ホスピスナース研修会

(東京)

看護の存在価値を再認識し、社 会に発信する意義や実行する力 を学びました。

日野原先生を偲ぶ会

(東京)

一般財団法人ライフ・プラ ンニング・センターとの共催 で、先生縁の方々と思い出 を語り、偲ぶ時間を持つこ とが出来ました。

第2回ハンセン病回復 者団体リトリート開催

(インド・デリー)

「持続可能な当事者中核のパート ナーシップ構築」とのテーマの下、ハ ンセン病回復者団体の持続可能な 運営方法について議論しました。

国際会議Sense of Place

~ハンセン病などの隔離施設から~共催

(ベルギー・ルーベン)

中南米におけるハンセン病の歴史保 存活動の推進のため、国際会議を共 催し、中南米セッションを設けました。

ハンセン病療養所医療 従事者フィリピン研修

(フィリピン)

ハンセン病医療従事者20名が、い まなお年間1,700人の新規診断患 者のあるフィリピンにて、ハンセン 病医療の現場を体験しました。

第13回ホスピスドクター研修ネットワーク情報交換会

(大阪)

「ホスピス緩和ケアにおけるチーム ビルディングを考える」をテーマに、

当財団のホスピス緩和ケアドクター 研修の研修生/修了生が集まり、と もに考える時間を持ちました。

2017年度「日本財団在宅看護センター」

起業家育成事業修了式

(東京)

15名の受講者は一人も欠けること なく、すべてのプログラムを終えま した。3名が修了後間もない年度内 の開業を果たしました。

(6)

ハンセン病の今を見つめ、

未来への道を拓く

ハンセン病対策事業

ハンセン病問題のない世界を目指して、世界中からハンセン病を失くすための「制圧活動」、ハンセ ン病問題・歴史を伝えるための「広報啓発活動」、ハンセン病回復者が尊厳ある生活を確立するた めの「自立支援活動」の3つの柱の下で、変化する現場のニーズに応え、新しいアプローチを採用し つつ、世界各地で多岐に渡る活動を実施しました。

2018年に、UNESCO「世界の記憶」に登録されたフィリピン・パラワン諸島北部にある隔離島クリオンのミュージアム&アーカイブ。

当財団は、2006年のミュージアム建設から今日の室内環境整備に至るまで支援し、その発展に貢献しました。

(7)

ハンセン病は、1980年代に治療薬MDT(Multidrug Therapy; 多剤併用療法)が開発されると、不治の病から可 治の病へと転換され、1970年代には推定1,000万人ともいわ れたハンセン病患者数は、2016年末には20万人ほどまで減 少しました。しかし、MDTの普及が進んだ1990年代に比 べると、近年には患者数の減少に著しい変化がみられませ ん。(図1、図2)各国で制圧注1が達成されると、保健政策に おけるハンセン病対策への優先順位は下がり、予算の縮小 に伴い、サービスは縮小され、残された蔓延地では病気が 拡がっています。また、2010年の国連総会では、ハンセン病 患者・回復者・家族に対する偏見差別撤廃決議が採択され ましたが、各国の現場での実行はいまだ十分とはいえず、

回復者とその家族は、偏見・差別に直面しています。

そこで、本年度は、近年の世界的な患者数の減少の停滞か らの脱却を目指して、蔓延地における制圧キャンペーンや、

ハンセン病医療・社会福祉サービスの維持・質の向上のた めの回復者参加型ハンセン病対策活動、ハンセン病以外の 疾病との統合的対策を促進する活動など、新しい手法を採 用した取り組みを推進しました。<制圧活動>

また、患者数の減少と回復者の高齢化に伴い、その歴史を 伝える貴重な史料が散逸し、廃棄されつつあります。しか し、近代のハンセン病の歴史は、治療法の確立から隔離政 策の撤廃という疾病対策の変遷を含む医療史・社会史にお ける「負の遺産」としての価値とともに、厳しい偏見・差別の 中で生き抜いた患者・回復者の人間としての強さと美しさ、

創造性という「人類の遺産」としての価値があります。その ため、このようなハンセン病の歴史を保存し、その学びを現 在・未来に伝える活動を推進しました。<広報啓発活動>

さらに、ハンセン病を経験した人も尊厳ある生活を確立で きるように、回復者同士が団結し社会に声を発していくた めの回復者団体の活動支援や、回復者参加型の行政によ る支援体制構築、健康を維持し、教育・技術を身に付け、

収入を創出するための職業訓練や環境改善など、多岐に渡 る支援活動を行いました。<自立支援活動>

注1 WHOによる公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧基準は、人口1万人 あたり患者数が1人未満になることをいいます。

0 10,000 20,000 30,000 40,000 150,000 モザンビーク

ナイジェリア フィリピン マダガスカル ミャンマー バングラデシュ ネパール エチオピア コンゴ民主共和国 インドネシア ブラジル インド

25,218 16,826

3,000 2,609 1,780 1,721 1,362 1,289

135,485

3,692 3,054 3,742

(単位:人)

図1年間1,000人以上の12カ国の新規診断患者数(2016年1年間)-12カ国計 199,778人は、全世界計214,783人のうち、93%を占めています

0 1,000,000 2,000,000 6,000,000

(人)

1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015(年)

3,000,000

患者数の減少の停滞 MDTの普及が進む

図2登録患者数の推移―近年、患者数の減少に著しい変化がみられません

中国回復者団体HANDAによる包括的リハビリテーション―ハンセン病定着村に暮ら す回復者が、ボランティアの青年と共に書道を勤しむことを通じて、心身の健康を養い ます。後遺障がいの残る手で筆をしっかりと握る回復者(中国)

ハンセン病対策事業

©HANDA

(8)

残された蔓延地の多くは、保健サービスへのアクセスが非常に困 難です。そこで、保健サービスが、必要とされる地で、必要とされ る時に提供されるために、現地で暮らす回復者が行政と連携した 回復者参加型対策活動や、ハンセン病対策を他の疾病対策と統合 し、保健サービスへのアクセス拡大を図る活動への支援を行いま した。ここでは、統合的疾病対策促進活動への支援例をご紹介し ます。

ハンセン病の症例が今日なお多くみられるアジアやアフリカ 諸国では、その他の顧みられない熱帯病注1(NTD: Neglected Tropical Diseases)への対策活動も進んでいます。そこで、ハン セン病の症例の地理的分布調査を行い、NTDに類される他の疾 病の症例分布と照らし合わせ、協働することができる地域を特定 し、それらの疾病対策と統合した保健サービスと、より効果的な統 合的サービス提供制度を構築するための仕組みづくりを始めまし た。この活動は、American Leprosy Missionsが主導して行うもの で、当財団は、その初期段階であるハンセン病の症例の分布調査 への支援を行いました。

現在、カメルーン、ナイジェリア、モザンビーク、リベリア、ガー ナ、ミャンマー、スリランカの7ヵ国で、各国保健省の合意と関係 NGOの協力を取り付け、調査活動が実施されています。分布調査 が完了したミャンマーでは、この情報を基に、他疾病と共同した 患者発見活動や、ハンセン病予防薬のパイロット実施地の選定を 行うなど、新しい取り組みを推進しています。また、ナイジェリア では、完成した症例分布図の有効性を維持するために、最新の症 例データを収集するためのシステム開発とその導入も進められて います。これから、他の国々でも分布調査を完了させ、効果的な サービス提供システムの実現が期待されています。

注1 顧みられない熱帯病とは、熱帯地域を中心に蔓延している寄生虫や細菌による感染症の ことで、貧困層を中心に世界の約10億人が感染し、年間50万人が死亡していると言われ ています。これらの熱帯病は先進国でほとんど症例がないために、世界の3大感染症であ るエイズ、結核、マラリアと比べて、これまで世界の関心を集めることがありませんでした。

保健サービスへのアクセスが困難なハンセン病蔓延地へ向かう保健省職員

(リベリア)

現地状況調査のための保健職員による住民への聞き取り(リベリア)

ガーナ沿岸地域の感染症の症例分布(赤:ブルーリ潰瘍、黄:ハンセン病、

青:象皮病)

統合的な疾病対策促進活動

― ハンセン病の症例分布調査 ―

ハンセン病対策事業

制圧活動

(9)

現在、ハンセン病は過去の病とみなされつつあり、その歴史を伝 える史料は急速に失われつつあります。ハンセン病問題からの 学びを後世に伝えるために、広報啓発活動の一環として、回復者 の証言を含めた包括的な歴史保存活動の支援を行いました。そ の一例に、スペインのサンフランシスコ・デ・ボルハ・デ・フォン ティリアス療養所の活動をご紹介します。

スペインでも古くからハンセン病への偏見・差別は厳しく、患者の 多くは疎外され、洞窟や小屋などに孤独に暮らしていました。そ の惨状を見たイエズス会のカルロス・フェリスと弁護士ホアキン・

バレスターは、患者が心穏やかに暮らせるようにと、1909年にフォ ンティリアス療養所を設立しました。住民からの反発を受け、バレ ンシアから離れたラガール渓谷に建てられましたが、その後も偏 見差別は厳しく、1923年には療養所を囲む壁が作られました。一 方、療養所内では、一定の自由を謳歌できる「療養型コロニー」を 目指し、患者の作業療法と自給率の担保のために、農業や酪農、

養鶏、ガーデニングなどが行われていました。1968年以降は、外 来治療となり、年々入所者は減少し、現在30名の回復者が暮らし ています。

療養所には、2,300点以上の医療ファイル、3,000点以上の写真や 手紙、機関誌など、膨大な史料が残されています。いま、保存のた めに、こうした史料の整理と分類が始められました。また、敷地内 にある35の建物には、かつて入所者が暮らしていた歴史が刻まれ ています。そのため、建物に残る入所者および家族の生活用品や 家具、絵画等の芸術作品、医療棟では、当時の医療用具や研究器 具なども、保存に向けて準備が進められています。

電子化した史料は、スペイン語のデジタル図書館として最大規模 のミゲル・デ・セルバンテス・デジタル図書館で、フォンティリア ス史料群として閲覧可能となります。フォンティリアス療養所の歴 史は、社会史や医療精神学史などとも密接な関わりがあるととも に、スペインの植民地であった国々の歴史にもつながるため、今 後の活用が期待されています。

周囲を高さ3m、幅60cm、長さ3kmの壁に囲まれたフォンティリアス療養所

入所者と医師の距離が近しい様子を示す語らいの風景(1971年当時)

療養所の見取り図―広大な敷地に多くの建物が点在していました

フォンティリアス療養所における歴史保存

― スペイン南部アリカンテ地方より ―

歴史保存

(10)

ワークキャンプ運営団体Leprosy Care Community(LCC)注2は、

東ジャワ州ンガンゲット村で活動を行っています。インドネシアで は、ハンセン病患者や回復者、その家族への偏見・差別が、未だ に根強く、深刻な問題となっているため、ハンセン病定着村におけ るワークキャンプ活動は、インフラ整備による生活環境の改善だけ でなく、村の中と外の一般社会をつなぐ架け橋にもなっています。

回復者の家族、特に子どもたちは、進学や就職などの理由により、

村を出た後、戻らないことが多くあります。そのため、村には高齢 者のみが残り、村の発展が期待できないという状況が多くの定着 村に共通してみられます。ンガンゲット村も例外でなく、回復者の 子どもたちは、村を「故郷」と考えず、都会へ出て働きたいという 希望が多くありました。そこで、LCCは、村の住民と村の将来像を 描くことから始めました。若者を中心とした集会を開き、清掃活動 を行うと共に、村の中に湧いている温泉にも注目しました。温泉周 辺の環境整備を行ったところ、村の外からの利用者が増えました。

そこで、本年度は、より多くの利用者を得られるよう、温泉へ続く 道の舗装と更衣室の建設を行いました。いまでは、ンガンゲット村 がハンセン病定着村であることを気にする人も少なくなりました。

また、駐車料金などの支払いを通じて、村への収入が増え、村の 中でも働く機会を得られるようになりました。いま、若者たちは、

温泉施設への注目を通して、村への「故郷」としての誇りが生ま れ、自分たちの手で、村の将来をどうするか、考え始めています。

今後のンガンゲット村の発展が大きく期待されます。

注1 学生などの青年がハンセン病定着村に数週間暮らしながら(キャンプ)、村の清掃活動や 道路整備などの環境改善活動(ワーク)を行うことをワークキャンプと呼んでいます。住民で ある回復者と交流を重ねることを通じて、青年自身の心身の向上にもつながっていると、現 地国内でも高い評価が寄せられています。

注2 LCCは、2010年の設立以来、年々活動を拡げています。本年度、こうした各地のワーク キャンプをコーディネートする組織として「JALANIndonesiaWorkCampCoordinate

温泉に続く道に手すりをつけ、歩きやすくなりました

建設した更衣室は、村の外からの利用者に好評です

ハンセン病定着村における環境改善

― インドネシア、ミャンマーより ―

ハンセン病を経験した人も尊厳ある生活を確立できるように、回復者団体による行政との支援体制構築や、教 育や技術を身に付け、収入を創出するための職業訓練など、多岐に渡る支援活動を実施しました。ここでは、

みなさまから頂戴したご寄付により実施した活動―インドネシア・東ジャワ州でのワークキャンプ

注1

と、ミャンマー・

シャン州での上水道整備と学校建設をご紹介します。

ハンセン病対策事業

自立支援

(11)

ミャンマー東部の国境付近に位置するシャン州には、独立を求め る少数民族が多く暮らし、武装組織との戦闘が多発しています。

政治的に不安定で、医療システムも機能していない地域も多くみ られます。ハンセン病の罹患率も高く、州内にはハンセン病定着 村も複数ありますが、生活環境は厳しく、学校さえもありませんで した。そこで、このような政治的にも地理的にもアクセスが困難な 地域で、40年以上ハンセン病対策活動を行っているThe Leprosy Mission (TLM) Myanmarによる、水タンク設置や小学校建設な ど、8つの定着村における環境改善活動への支援を行いました。

この活動では、村の住民自身の参加を得て行うことによって、住 人の自尊心や村への想いを高めるとともに、長年ハンセン病定着 村として差別の対象とされてきた村が、周辺の住民に一般と同様 の「ひとつの村」として認識されることを目指しています。

住民たちは、衛生環境の向上を目指して、水タンクの建設に協力 して取り組みました。タンクの土台をつくる際には、女性たちもセ メント作りに積極的に参加し、村一丸となって完成させました。

パイプをつなげて水路をつくり、水を村に運べるようになりまし た。上水道が整備されたことにより、衛生状態が改善し、さまざま な感染症の罹患率も下がることが期待されています。これから下 水道整備も行う予定です。

また、これまで住民の子どもたちは、定着村が周囲から隔絶した 場所にあるため、周辺の村にある学校に通うこともできませんでし た。そのため、小学校の建設は、これまで子どもたちに教育の機会 を与えたいと願っていた親たち、又、将来の夢を描くことができな かった子どもたちにとって、大きな希望となっています。学校建設 が決定すると、完成前より、地域の教育委員会が、教員の派遣を約 束してくれた定着村もありました。これから、将来を担う子どもた ちが、学ぶ喜びを得ることにより、いままでは考えられなかったよ うな大きな夢を持つこともできるようになりました。

学校建設予定地で、完成を心待ちにしている子どもたち。校舎の支柱となる 木材は、周辺の山々から木を伐採して村へ運んできました

たくさんの水を貯めることのできる水タンクが完成!タンクには竹をつなげて 作った水道管をつなぎ、各家庭に水を運びます

水タンクをつくるために、セメント作りから住民が取り組みます。

その過程には、女性も積極的に参加し、住民全体の強いオー ナーシップが芽生え、よりよい管理体制も期待されます

(12)

超高齢社会の到来

看護師が社会を変える! !

ホスピス緩和ケア・「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業

急激な少子高齢社化により、医療/看護・介護などの保険給付が急増し、社会保障の破たんが危惧 される「2025年問題」。本年度、ホスピス緩和ケア事業では、地域保健医療の拡充に向け、在宅 医療の一端を担う看護師や医療従事者に対する人材育成プログラムを中心に、近年、重要視され ている患者の尊厳、特に死に至る過程における患者とその家族へのケアに係る助成事業を展開し ました。

在宅看護の第一線で活躍する男性看護師(岡良伸氏 日本財団在宅看護センター起業家育成事業1期修了者)

(13)

かつて、医療は病を治し人々を病気から解放すると理解さ れていましたが、1950年代以降、治癒が望めない病気の 患者に対し、その死にゆく過程を理解し、全人的な対応を していく必要があるとの考え方が、世界的に育ってきまし た。日本では、1981年に最初のホスピスが設立され、がん やエイズに関連した緩和ケアの体制が整備されると共にそ の充実を望む動きが起こりました。こうした社会の動きを 受け、当財団では1998年よりホスピス緩和ケアを推進して きました。

現在、日本の保険制度がカバーする緩和ケアの対象者は、

がんとエイズに加えて心不全が含まれます。しかし、2002 年のWHOの緩和ケアの定義によれば、「緩和ケアとは、生 命を脅かす病気に伴う問題を抱える患者と家族に対して、

痛みやその他の身体的問題、 心理社会的問題、スピリチュ アルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治 療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげるこ とで、生活の質を改善すること」となっているように、緩和ケ アはいかなる病の経過にも必要です。また、医療の進歩は 人の自然な死の過程を妨げるとも言われていますが、高齢 者の死の過程でも緩和ケアが必要なことがあります。当財 団では、緩和ケアの対象をあらゆる病に向き合う人と考え、

いつでも、どこでも、必要とする全ての人に質の高いケアを 提供できる人材を育成するための支援を行っています。

ホスピス緩和ケア推進と、その質の向上を目指した研究を 支援する<研究助成>、ホスピス緩和ケアに従事する関連 医師や看護師間のネットワークを構築、自己啓発・研鑽の 機会や研修会を提供する<ネットワーク支援>、保健医療 関係者から一般住民まで幅広い層を対象に、ホスピス緩和 ケアや在宅医療の意義とその正しい理解の周知啓発を目 的とした活動を支援する<啓発支援>、看護師の国内外大 学院における研修支援とホスピス緩和ケア専門医師を養成 する<人材育成>の他、急速な高齢化により地域包括的な 在宅医療が求められていることを受け、2014年度より<在 宅看護・地域医療>として、多様な保健専門家と連携し、

地域を拠点とする「日本財団在宅看護センター」の開設と 普及を目的として、それらの運営を担う看護師を養成、お よび修了者に対するフォローアップを行っています。

開業した日本財団在宅看護センターは、ネットワークとして全国のセンターと繋がり、相 互支援を行っています。その証として、各センターにこのプレートが飾られています。

3期生の片岡順子氏は北海道帯広郊外音更町で「在宅看護センターちせ」を開業し ました。広域にわたる移動や積雪寒冷など、厳しい環境下にありますが、開所式では熱 い決意を表明しました。

啓発支援では、地域における啓発活動を支援しました。東近江のがん制圧チャリティイ ベント「リレー・フォー・ライフ」は、学生が主体となりました。

ホスピス緩和ケア・「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業

(14)

「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業は、「看護師が社 会を変える」をモットーに、看護師を主体とした訪問看護ステー ションを起業・運営する為の人材育成プログラムです。受講者の 在宅看護経験は問わず、必要なのは看護実践の経験と起業への 強い意志。8カ月の研修を通し、起業家・管理者としての知識だけ でなく、覚悟・責任感・マインドを養い、1年以内の起業を目指し ます。また、起業後の支援体制を敷きながら、全国のネットワーク を活用し、社会にインパクトを与える活動を展開していきます。

一流講師陣による実践的プログラム

研修は、講義・実習・起業計画立案/発表で構成されます。看護 実践力や地域・保健連携力の他、行政社会力、事業運営力など、

起業に必要な幅広い知識を学ぶ講義では、各分野の第一線で活 躍される専門家・実践家が講師を務めます。また、教室内の講義 だけでなく、リハビリ病院やホームホスピス、地域包括ケアのモデ ル地域、グローバル企業や国際機関などの視察を行い、行政・経 営の視点、人権・国際問題等にも切り込みます。

日本財団在宅看護ネットワーク拡大中

2017年度までに本事業を修了した起業家看護師は50名に達し、

2018年6月現在、40カ所以上の日本財団在宅看護センターが開設 されました。1月の研修終了後、4期生9名が茨城県・栃木県・東京 都・神奈川県・和歌山県・山口県・福岡県・佐賀県に開業しまし た。またサテライト・支所・看護小規模多機能型居宅介護事業所 の開設に動き出している修了者も増え、より広域で地域を支える 日本財団在宅看護ネットワークを展開しています。

2017年度修了式には、受講者15名と講師陣の他、研修の8カ月間支えた 家族も多数参加し、華やかに起業家としての門出を祝いました。

訪問看護ステーション 39

ホームホスピス 1

看護小規模多機能型居宅介護事業所 2

4期生開業予定 5

5期生開業予定 17

(2018年7月現在)

福岡県 東京都

神奈川県 大阪府

日本財団在宅看護ネットワークは、全国20都道府県・40拠点以上に広がっ

全国40拠点の「日本財団在宅看護センター」で

「社会を変える」起業家看護師が奮闘中!

超高齢社会に入り、保健医療サービス提供体制の整備は喫緊の課題となっています。過去20年近く、ホスピス 緩和ケア看護研修を行ってきた当財団の経験を基に、2014年度より、地域包括ケアのハブとなりうる在宅看護 センターを開設・運営できる看護師の育成を開始しました。2017年度で50名が修了し、全国で活躍しています。

ホスピス緩和ケア事業

在宅看護・地域医療

(15)

2014年度に本研修へ参加後、2016年に起業した石川麗子氏の

「今」をご紹介します。

石川氏は緩和ケア認定看護師で本事業の1期生として修了後、

2016年4月に「街のイスキア訪問ナースステーション」を起業し、

所長を務めています。「街のイスキア」では『出会いを大切にす るとともに、よく話を聴き、その方にとってのニーズを大切にしな がら、丁寧なケアを行う。“食はいのち”としてとらえ、最期まで

“口から食べられる”ことを支援する。介護する家族の心と身体の 健やかさを護る。』という理念の下、目黒区を拠点に主に高齢者 への訪問看護・リハビリテーションを行っています。

石川氏は緩和ケアや看取り・グリーフケアに力を入れたいという 想いがあり、在宅でお亡くなりになる方やご家族へのケアにも心 を込めて取り組んでいます。お亡くなりになった後も支えることが できるのは、在宅ならではのケアの妙だと語ります。その実践と して2017年には遺族会と称し、集まったご遺族に献花や今の想い を語っていただいた後、お招きした禅茶の先生の淹れるお茶のお 点前を見るという厳かな時間と、スタッフお手製のおむすびをみ んなで食べる和やかな時間を共有しました。ご遺族の悲しみを癒 し、スタッフも含め温かな気持ちになるひと時となりました。

また、在宅でケアをするご家族の心身の負担を少しでも軽くしよう と「快護塾」を2017年度より開始しました。ここでは、ケアする人 も受ける人も、互いが心地よく共存するための知識やコツを共有 しています。時には、アロマテラピーを取り入れるなど、簡単にリ ラックスできる方法を伝えています。2017年冬からは、ウクレレ部 隊も活動を開始し、少しでもご利用者様やご家族の方の癒しにな ればと、クリスマス会や2周年パーティーで演奏を行いました。

「街のイスキア」が、どなたかの心とお身体の支えになれるよう に、日々、雨にもマケズ風にもマケズ、私たちは自転車をこいで います。お気軽にお声をおかけください。

そう笑顔で語る石川さんの力強い眼差しが印象的でした。

時代や地域のニーズに合わせながら、継続的に地域を支えられる

「日本財団在宅看護センター」。より多くの地域の方々の安心の拠

点となれるよう、起業家看護師の育成・支援を進めてまいります。 ご利用者様やご家族を招いてのクリスマスコンサート。夏から始めたウクレレ で和やかな会となりました。地域の交流の場となっています。

3年目を迎え、PT・OTを含め8名となった「街のイスキア」。残されたご家族のケ アを目的とした遺族会にむけ、スタッフ一同心を込めておむすびを作りました。

2016年4月「街のイスキア」開所式当日、真新しい看板の前で。

看板左が石川麗子氏。看護師3名でのスタートでした。

(16)

「日本財団ホスピスナースネットワーク」は質の高い緩和ケアを実 践できる看護師の育成を目指した認定看護師教育課程(緩和ケ ア・訪問看護)などの研修修了者、地域住民に対するケアの担い 手としての起業家を育成する日本財団在宅看護センター起業家育 成事業の研修修了者を中心とし、2017年度に約4,000名に拡大しま した。保健医療体制が激しく変化する中で、専門性だけでなく社 会性が看護師に求められていることを受け、本年度は北海道と東 京において、専門職としての意識変容を試みる研修を行いました。

北海道研修では、障害者や高齢者が住み慣れた地域で生きがい や役割を持って暮らせる地域の支え合いの実際を見学、研修では 日本財団在宅看護センター起業家育成事業修了者による起業か ら現在に至るまでの経過・活動の発表、更別町の地域医療を改革 してきた医師から広域分散型の地域特性や積雪寒冷で厳しい十 勝地区の実際や取組みを通し、地域医療や地域包括ケアにおけ る看護師のとるべき姿を学びました。加えて、自分自身の理解、

グループワークによる他者理解を体験的に学ぶ機会として、洞爺 湖で訪問診療に携わる医師による「医療者のためのスピリチュア ル・コミュニケーション」の講義を行いました。

東京研修では、看護師をとりまく問題として、日々の実践に対し、

看護師が互いに解釈の違いを理解していないことに着目し、「看 護のあるべき姿」を確認し、「研究的視点」を持って「他者に伝 える」訓練を行いました。現場の足元の課題を自分で取り上げ、

思考過程を含めた議論をするために、「書く力」をつけ、「発信す る」力を身につけました。実践家それぞれが持っている本来の経 験値や知識、実践の在り方をブラッシュアップし、エンパワーメン トを通し、看護の明確な立場や位置を確認する貴重な機会となり ました。

「2025年問題」を前に、今後の日本は地域の生き残りを国全体で支 える必要があり、1対1のケアから地域全体のケア管理が求められて います。社会を変えるのは「地域における看護師」であり、これから の地域づくりには看護の視点が必要だと考えます。看護の知恵と行 動力を駆使し、エビデンスと伝える力を持って、社会を切り開く要と して看護師が活躍できるよう、今後も支援していきます。

北海道研修で、移動の合間にはワイン工場やチーズ工場も見学。厳しい環 境下にありながらも地域の名所として現在に至る実際を学びました。

東京研修の企画運営を担うプログラム委員と、指導くださった坂本すが氏

(日本看護協会前会長・東京医療保健大学副学長/教授)

文章執筆技能の訓練では、グループで課題文章に対する「つっこみ」を議論

社会変化に対応するために

「看護の力」を学ぶ研修

ホスピス緩和ケア事業

ホスピスナースネットワーク

(17)

国立がん研究センター東病院のがん看護専門看護師であ る角甲(かこう)純氏は、研究成果および最新知見の発信 が期待される中、その役割や研究支援に対する教育やサ ポート体制確立の必要性を感じ、研究者として必要な知識 や技術、経験を得るため、2年間の奨学金支援を受け、東京 医科歯科大学大学院医歯学総合研究科心療・緩和医療学 分野 博士課程医歯学系専攻に進学しました。以下、角甲 氏からの報告です。

博士論文テーマは「進行期がん患者の呼吸困難に対する 送風の有効性についての無作為化比較試験」です。1年次 は予備研究として、がん以外の分野で注目を集めつつあっ た送風試験に着目しました。これは進行期がん患者の顔 に向けて扇風機を用いて15分間送風し、呼吸困難強度と効 果持続時間を探索するもので、これにより送風が呼吸困難 の緩和に期待できること、効果は60分以上持続する可能性 があることが確認されました。2年次は本予備研究の一部 を海外の2学会、EAPC2017,15th World Congress of the

European Association for Palliative Care(スペイン)、

Oncology Nursing Society, 43rd Annual Congress(ワシ ントン)で発表しました。後者では世界で一番大きながん 看護関連の学会と言われており、演題は最高得点を獲得 し、口頭発表の機会を得て、高い評価を受けました。今後 は、論文投稿、博士学位取得の他、新しい研究課題として、

「Dyspnea-12日本語版開発と信頼性・妥当性の検証」を行 います。また、がん看護専門看護師(CNS)教育コースの教 員、博士前期課程の研究支援、CNS研究ネットワークの構 築を目指した取り組みなど、新しい役割を担う予定です。

北海道の道南・せたな町は人口8,000名、高齢化率40%、

がん専門の医療者が不在のため、がん患者は約130㎞先の がん拠点病院を受診しなければなりません。がん看護専門 看護師である鈴木笑子氏(看護実践研究所のぞみ/檜山 オンコロジー医療の会)は、広大な地域性ゆえのがん医療 の質の不均衡、専門医療者の都心部集中など、遠隔地であ るほど、がん医療におけるケアや啓発教育に課題があると 感じていました。そこで、各地に自ら赴き、がん検診や健 康に関するイベントで、がん相談コーナーを設け、住民向 けにがんに関する情報提供など、啓発活動を行いました。

各機関との連携や活動の広がりに伴い、がん相談の件数も 徐々に増加し、潜在するがん相談を効果的に発掘すること ができました。一方、立ち寄った子供たちとの交流を通じ、

正しい生活習慣の知識や、疾病予防、偏見や誤解の是正な

ど、小学生からのがん教育、それを担う人材育成とその体 制づくりの必要性を感じ、今後は、多職種交流会、ピアサ ポートを見据えたがんサロン、住民・医療者・子供それぞ れに向けた教育のためのワークショップなど、新たな企画 を検討しています。現存の人的資源を活用し、利用者が希 望する場所で最期を迎えることができる体制づくりと、ケア の質の標準化が期待されます。

アメリカの学会では“the researchcritique sessionwillfeature selecttopscoring abstractswithexpert feedbackbysomeof ourmostaccomplished nursescientists”と表現さ れ高く評価されました。

図書館内の一角に設置し た啓発コーナー。なんでも 相談はもちろん、がんを伝え る絵本の紹介や、患者支 援の情報提供、クイズ形式 の教育など、立ち寄りやすさ をアピールしました。

扇風機で呼吸困難症状が緩和されるのか?

大学院で研究に取り組む看護師

看護師がゆく!

北海道の過疎地に暮らす地域住民に対する無料相談

人材育成

啓発支援

(18)

Health for Everyone!

次世代に人的・知的資源をつなぐ

放射線災害医療サマーセミナー(福島県立医科大学、長崎大学、当財団共催)で受講生がグループごとに分かれ放射能の仕組みを体験

公衆衛生向上のための事業

本事業では、当財団が長年にわたり培ってきた放射線災害、疾病対策、公衆衛生分野における内

外の専門機関や専門家との連携を通じ、次世代への人的・知的資源の継承を目的とし、グローバル

な人材育成や事業支援、国際相互理解の促進や知識の共有のための活動を行っています。

(19)

今日広く認められているウィンズローの定義によれば、「公 衆衛生とは組織された社会的努力を通じて疾病を予防し、

生命を延長し、身体的および精神的健康と能率を向上させ ようとする科学であり技術である」とあり、その実践のた めのアプローチは多岐にわたっています。当財団では、こ れまで行ってきたチェルノブイリ原発事故の医療協力や、

WHO等国際機関や国際NGOなどとの協働関係を礎に、

本年度も次の事業を実施しました。

保健・医療の現場、自然災害や保健医療問題に対応できる 人材育成と強化を目的として、国内外における研修、セミ ナーのプログラムを実施しました。国内では福島で医学部、

医療系学部、工学部等の大学生、及び看護系大学大学院生 を対象とし、災害医療や放射能について正しい知識を習得 し、自然災害発生時に併発する特殊災害への対応について 理解を深めることを目的として、福島県立医科大学、長崎大 学と共催で6日間のセミナーを行いました。また、フィリピン 研修では、国内のハンセン病医療従事者を対象とし、フィリ ピンの国立病院や保健省、患者会、世界的なハンセン病隔 離政策の象徴として知られるクリオン島を訪問し、政策決 定、治療・ケア、研究、医師養成の現場にて現地専門家や病 に苦しむ人々との意見交換を行い、ハンセン病医療に関す る専門的知見を深めるとともに、グローバルな視点を養いま した。<グローバル人材の育成>

チェルノブイリ原発事故(1986年)による放射線汚染地ウ クライナ・ロシアなどで甲状腺癌を発症し、施術摘出され た組織と治療経過を共通システムで保管するチェルノブイ リ・ティッシュ・バンクの運営支援と病理部会への専門家 派遣を行いました。<チェルノブイリ関連共同研究事業>

顕彰を通じ地域社会の公衆衛生向上に貢献することを目指 し、WHOと協働でプライマリ・ヘルス・ケア向上への貢献 者を表彰するWHO笹川健康賞(毎年)と、アジア薬剤師 連合会と共にアジアの薬剤師を顕彰するFAPA石館賞(隔 年)の2つの賞を授与しています。今年度はWHO笹川健 康賞を実施しました。<顕彰>

マダガスカル共和国にて、主に口唇口蓋裂などの外科的治療 のため、日本より医療チームを派遣しました。<技術協力>

セブ・スキンクリニックでは、年間150人のハンセン病医師の研修を行う。

ハンセン病の特徴である知覚消失の有無を検証するデモンストレーション

福島県郡山市にて。放射線災害医療サマーセミナーの最終日、座学、フィールド実習の6 日間で得た知識の総括後、修了式が行われた。

数年前、日本人医療チームに口唇口蓋裂の施術を受けた女児が経過観察に訪れた。

執刀した形成外科医と両国専門家による見事なチーム医療が行われた。

公衆衛生向上のための事業

(20)

2017年8月、福島県立医科大学、長崎大学、当財団の3者による第4 回放射線災害医療サマーセミナーを福島で開催しました。本セミ ナーでは地震など自然災害時に併発する放射線災害への対応を 理解し、災害の急性期から慢性期における保健活動とその対応を 理解し、多職種連携を考えることを目的とし、全国より15名の医学 部、看護学部、薬学部他の学生が参加しました。

前半3日間は講義と演習、後半は福島第二原発見学及び3か所の フィールドに分かれ現場実習を行いました。現場実習の引率指導 には、これまでの受講者OB/OG 5名を、川内村、富岡町、飯館村 へ派遣、現場指導教員と受講生の調整役及び現場指導補助を担 いました。さらに実習先グループごとに、実習内容、学びや気づき を受講生が考え、自身の言葉で講師、他グループの受講生に発表 し意見交換を行いました。

大学の講義では聴けない内容と講師陣、現場住民の今を自分の目 で見て体験し、自身が学び見聞きした真実を6日間で咀嚼し、福島 の「今」を考え感じる機会となりました。福島の地元紙2社による 取材もあり、座学、フィールド実習についてそれぞれ新聞に掲載さ れ、広く福島の人々へ本セミナー実施の目的が周知されました。

セミナー初日のグループワークの様子。全国から初対面の学生がグループに 分かれ、提示されたテーマについてディスカッション。

川内村でのフィールド実習の様子。環境省のご協力により村内の除染仮置き場 の見学を実施。放射線測定器を持ち込み、受講生自ら放射線量の測定を体験。

目に見えない放射線への正しい理解を深め多職種連携を考える

― 放射線災害医療サマーセミナー ―

公衆衛生向上の ための事業

グローバル人材の育成

1990年から2001年まで実施したチェルノブイリ医療協力の成果を 基盤として、国際機関や諸外国との共同研究事業を継続的に行っ ています。2017年度は、米国のNational Cancer Institute等と 連携し「チェルノブイリ・ティッシュ・バンク(Chernobyl Tissue Bank: CTB)」の運営支援を行いました。CTBとは事務局を英国 Imperial College Londonに置く、放射能による甲状腺がん発症の メカニズム解析のための国際的プロジェクトで、チェルノブイリ原 発事故(1986年)による放射能汚染地ウクライナ、ロシアなどで甲 状腺がんを発症し、手術摘出された組織と治療経過を共通システ ムで管理保存し、研究者に公開している世界で唯一のデータベー スです。特に福島原発事故以降は、我が国にとってもその存在意

5月にImperialCollegeLondonの最新の画像閲覧室で開かれた病理部会 では、401症例のレビューが行われた。大型スクリーンに検討症例の顕微鏡 画像が映し出される。

過去の経験を未来に生かす

― チェルノブイリ・ティッシュ・バンク ―

チェルノブイリ共同研究

(21)

WHO笹川健康賞は、1984年、「世界の人々に健康を」という目標 の下、当時のWHO事務局長Dr. Halfdan Mahlerと日本財団初代 会長笹川良一氏により創設されました。プライマリ・ヘルス・ケア の分野においてユニークかつ革新的で、人々の健康増進や健康 問題の解決に大きく貢献した個人や非政府団体を顕彰するもの で、これまでに個人29名と25団体が受賞しています。

受賞者は1月にWHO執行理事会で決定され、毎年5月にスイス・

ジュネーブの国際連合欧州本部(パレ・デ・ナシオン)にて開催 される世界保健総会時に授賞式が行われ、賞金3万ドル(個人)ま たは4万ドル(団体)と記念のトロフィーが授与されます。

2017年の受賞者は、モンゴル人のB型肝炎対策の実践家、Dr.

Alslan Rinchinでした。Dr. Rinchinはウイルス性肝炎の分野で40 年以上の研究実績を持ち、乳児への予防接種導入を成功させるな ど疾病対策への貢献のみならず、この病気に伴う差別・偏見の払 拭のためにも活動を続けています。生憎、博士の授賞式出席は叶 いませんでしたが、ハンセン病とそれに伴う社会的問題に取り組 むWHOハンセン病制圧大使である笹川陽平日本財団会長から、

代理で出席したTsogtsetsegモンゴル保健大臣に、博士への惜し みない敬意が表されました。

授賞式の様子。左から笹川陽平日本財団会長、ツォグツェツェグモンゴル保 健大臣、マーガレット・チャンWHO事務局長、喜多悦子当財団会長

授賞式後に行われた祝賀会では、和やかな雰囲気で会話も弾む。一番左は WHO西太平洋地域事務局長シン・ヨンス氏

2017年9月9日~23日まで、学校法人昭和大学の医療チームが子 供を中心とした口唇口蓋裂治療のため現地で活動を実施しまし た。アンチンラベ市クリニックアベマリア病院には、日本人シス ターが勤務しており、今回14症例の手術が行われました。同大学 医学部大学院及び歯科病院に留学中のマダガスカル人医師2名も チームに参加し、技術移転も進められています。本年度はこれま でに手術を受けた子どもたち30名の経過観察後、修道院で懇親会 を開催、感謝の言葉や歌が披露され、チーム一同疲れも忘れて目 頭が熱くなりました。

数年前に手術を受けた少女。日本人医療チームによる手術のおかげで口元を 隠さず学校の友達とも普通に遊べるようになったと感謝の言葉を述べる

日本人医療チームによるアフリカでの活動

― マダガスカル口唇口蓋裂手術 ― 公衆衛生向上に貢献する人を支援する

― WHO笹川健康賞 ―

顕彰

技術協力

(22)

貸借対照表

2018 年 3 月 31 日現在 (単位:円)

公益目的事業会計 法 人 会 計

Ⅰ 資産の部

1. 流動資産 92,363,115 29,706,836 122,069,951

流動資産合計 92,363,115 29,706,836 122,069,951

2. 固定資産

(1)基本財産 0 1,041,734,514 1,041,734,514

(2)特定資産 3,126,393,160 1,973,124,528 5,099,517,688

(3)その他固定資産 0 8,096,338 8,096,338

固定資産合計 3,126,393,160 3,022,955,380 6,149,348,540

資産合計 3,218,756,275 3,052,662,216 6,271,418,491

Ⅱ 負債の部

(1)流動負債 81,839,115 5,748,328 87,587,443

(2)固定負債 0 38,392,602 38,392,602

負債合計 81,839,115 44,140,930 125,980,045

Ⅲ 正味財産の部

1. 指定正味財産 2,288,287,712 113,600,000 2,401,887,712

(うち基本財産への充当額) (0) (113,600,000) (113,600,000)

(うち特定資産への充当額) (2,288,287,712) (0) (2,288,287,712)

2. 一般正味財産 848,629,448 2,894,921,286 3,743,550,734

(うち基本財産への充当額) (0) (928,134,514) (928,134,514)

(うち特定資産への充当額) (838,105,448) (1,937,580,674) (2,775,686,122)

正味財産合計 3,136,917,160 3,008,521,286 6,145,438,446

負債及び正味財産合計 3,218,756,275 3,052,662,216 6,271,418,491

正味財産増減計算書

2017 年 4 月 1 日から 2018 年 3 月 31 日まで (単位:円)

公益目的事業会計 法 人 会 計

Ⅰ 一般正味財産増減の部 1. 経常増減の部

(1)経常収益

基本財産運用益 0 17,867,470 17,867,470

特定資産運用益 58,380,578 36,186,294 94,566,872

事業収益 7,550,034 0 7,550,034

受取助成金 396,108,763 39,560,000 435,668,763

受取寄附金 108,260,191 30,500 108,290,691

雑収益 560,009 9,442 569,451

経常収益計 570,859,575 93,653,706 664,513,281

(2)経常費用

ハンセン病対策事業費 339,156,620 0 339,156,620

ホスピス緩和ケア事業費 181,915,245 0 181,915,245

公衆衛生向上支援事業費 55,800,363 0 55,800,363

管理費 0 79,368,944 79,368,944

経常費用計 576,872,228 79,368,944 656,241,172

評価損益等調整前当期経常増減額 △6,012,653 14,284,762 8,272,109

特定資産評価損益等 △594,979 △9,320,576 △9,915,555

為替差損益等 △15,244,542 △581,983 △15,826,525

評価損益等計 △15,839,521 △9,902,559 △25,742,080

当期経常増減額 △21,852,174 4,382,203 △17,469,971

2. 経常外増減の部

(1)経常外収益 0 0 0

(2)経常外費用 0 1 1

当期経常外増減額 0 △1 △1

当期一般正味財産増減額 △21,852,174 4,382,202 △17,469,972

一般正味財産期首残高 870,481,622 2,890,539,084 3,761,020,706

一般正味財産期末残高 848,629,448 2,894,921,286 3,743,550,734

Ⅱ 指定正味財産増減の部

受取寄附金 9,536,435 0 9,536,435

基本財産運用益 0 1,787,647 1,787,647

特定資産運用益 46,682,704 0 46,682,704

特定資産評価益 21,378,612 0 21,378,612

特定資産評価損 17,106,865 0 17,106,865

一般正味財産への振替額 △184,726,691 △1,787,647 △186,514,338

当期指定正味財産増減額 △124,235,805 0 △124,235,805

指定正味財産期首残高 2,412,523,517 113,600,000 2,526,123,517

指定正味財産期末残高 2,288,287,712 113,600,000 2,401,887,712

(23)

財団概要

名 称 公益財団法人 笹川記念保健協力財団 英 文 名 称 Sasakawa Memorial Health Foundation 代 表 理 事 会長 喜多悦子、理事長 佐藤英夫

所 在 地 東京都港区赤坂1丁目2番2号 日本財団ビル5階 電 話 03-6229-5377 ファックス 03-6229-5388 公 式 サ イ ト http://www.smhf.or.jp/

設 立 年 月 日 1974年(昭和49年)5月4日 所管官庁に関する事項 内閣府

定 款 に 定 め る 目 的 この法人は、人類の健康や長寿の増進を図るため世界におけるハンセン病その他の疾患に由 来する、保健医療・福祉および社会的諸問題を解決することを使命とし、世界は一家、人類は みな兄弟姉妹の理念に基づき、保健医療・福祉の向上、社会的 正義の実現、国際相互理解の 推進に寄与することを目的とする。

組織図

評 議 員 会 理 事 会 監 事

会長・理事長 顧問

常 務 理 事

総 務 部 事 業 部

会 長 喜 多 悦 子 日本赤十字九州国際看護大学 名誉学長 理 事 長 佐 藤 英 夫

常務理事 南 里 隆 宏

理 事 石 井 則 久 非常勤理事 国立療養所多磨全生園 園長

理 事 遠 藤 弘 良 非常勤理事 聖路加国際大学公衆衛生大学院 公衆衛生学研究科長/国際保健学 教授 理 事 松島 たつ子 非常勤理事 一般財団法人ライフ・プランニング・センターピースハウスホスピス教育研究所 所長 監 事 鈴 木 浩 司 公益財団法人日本海事科学振興財団 常務理事

監 事 長 尾 榮 治 国立療養所大島青松園 名誉園長

評 議 員 安 達 勇 公益財団法人日中医学協会 副会長、静岡県立静岡がんセンター緩和医療科 参与 評 議 員 石 垣 靖 子 北海道医療大学 名誉教授

評 議 員 尾 形 武 寿 公益財団法人日本財団 理事長 評 議 員 今 義 男 公益財団法人笹川平和財団 元顧問

評 議 員 福 井 次 矢 学校法人聖路加国際大学 学長、聖路加国際病院 院長 評 議 員 森元 美代治 NGO・IDEAジャパン 代表

評 議 員 山 下 俊 一 長崎大学 学長特別補佐、福島県立医科大学 副学長 最高顧問 紀伊國 献三 筑波大学 名誉教授

顧 問 十八公 宏衣 顧 問 松 本 源 二

役員・評議員・顧問名簿

2018 年 6 月現在

(24)

詳しくはウェブサイトをご覧ください。

www.smhf.or.jp

参照

関連したドキュメント

cin,newquinoloneなどの多剤併用療法がまず 選択されることが多い6,7).しかし化学療法は1

 がんは日本人の死因の上位にあり、その対策が急がれ

 スルファミン剤や種々の抗生物質の治療界へ の出現は化学療法の分野に著しい発達を促して

23mmを算した.腫瘤は外壁に厚い肉芽組織を有して

(注妬)精神分裂病の特有の経過型で、病勢憎悪、病勢推進と訳されている。つまり多くの場合、分裂病の経過は病が完全に治癒せずして、病状が悪化するため、この用語が用いられている。(参考『新版精神医

10例中2例(症例7,8)に内胸動脈のstringsignを 認めた.症例7は47歳男性,LMTの75%狭窄に対し

医師と薬剤師で進めるプロトコールに基づく薬物治療管理( PBPM

AIDS,高血圧,糖尿病,気管支喘息など長期の治療が必要な 領域で活用されることがある。Morisky Medication Adherence Scale (MMAS-4-Item) 29, 30) の 4