34
本研究で用いたトラフ時
DPP-4
阻害率よりも、定常状態の重み付き平均阻害率(steady state weighed average inhibition)が優れているとの報告がある
37) 。本研究では文献等 で最も多く報告されていたトラフ時の指標を利用したが、選択対象として1
日1
回 投与群のデータを採用したことから、1
日の投与回数の違いによる影響は最少に抑え られていると考える。(4) DPP-4
活性の測定系は標準化されておらず、収集試験間で測定方法が異なる可能性がある。また、
DPP-4
阻害率はex vivo assay
中に血漿を薄めるため基質に競合する人工 物の影響によって本来より低い値が出る可能性がある38) 。そのためDPP-4
阻害活性 や測定系の違いによるDPP-4
阻害率への影響を否定できない。しかしながら探索的に
DPP-4
阻害薬の成分ごとに解析をしても、概して全体の結論と同様な傾向がみられたため、大きな影響はないと考えられた。
以上の限界はあるものの、本研究は
DPP-4
阻害薬のDPP-4
阻害率と有効性の関係におけ る民族差を検討した初めての研究である。DPP-4 阻害薬の民族差には作用機序であるイン スリン分泌との関連が示唆されたことから、インスリン分泌機構を介さない他の糖尿病薬 を用いたさらなる検討により、2 型糖尿病治療薬の有効性の民族差のメカニズムを明らか にすることで、2
型糖尿病領域の開発において日本から国際共同治験に参加する上での留 意点となると期待される。35
第2章:DPP-4阻害薬と
SGLT2
阻害薬の有効性における民族差の検討2-1 背景
第
1
章より、DPP-4阻害薬の民族差はHbA1c
低下効果においてみられ、空腹時血糖低下 効果ではみられないことから、作用機序である食後のインスリン分泌促進作用に関連する ものであることが示唆された。しかしながら、Cai X et al.とCai Y et al.のメタアナリシス
10,11) では
DPP-4
阻害薬の空腹時血糖低下効果は地域差がみられなかったのに対し、Kim et al.
と
Berhan et al.のメタアナリシス
8, 9) では非アジア人よりもアジア人、又は非日本人よりも日本人で空腹時血糖低下効果が大きく、過去の報告では空腹時血糖に対する民族差の有無 の見解が異なっている。さらに過去の研究ではインスリン分泌能の違いが民族差の要因で ある可能性を考察しているものの、それを示すエビデンスは示していない。
DPP-4
阻害薬の民族差が作用機序に関連するものであるかを確認するため、我々はインスリン分泌促進機構を介さない作用機序の
SGLT2
阻害薬に着目した。SGLT2
阻害薬は、腎 近位尿細管に発現するSGLT2
を阻害し、血液中の過剰なグルコースを体外に排出すること で、インスリン分泌を介さずに血糖低下作用を発揮する6, 13) 。SGLT2阻害薬は、2020年1
月現在、6
成分(イプラグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリ フロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン)が本邦で承認されており、これらを 含む配合剤も複数承認されている。SGLT2
阻害薬においても審査過程においてPK
及びPK-PD
プロファイルに国内外の明らかな違いは確認されておらず、国内外の承認用量・用法の比較を
Table 2-1
に示すとおり、各地域の承認用量範囲は重なっている。また、SGLT2
阻害薬の有効性の民族差を報告した研究は少ない。唯一報告された
Cai X et al.のメタアナリシ
スではアジア試験と非アジア試験とでSGLT2
阻害薬のHbA1c
に有意な差はみられなかっ たが39) 、本メタアナリシスで統合した試験間のばらつきは非常に大きい上に、ばらつきの 要因の検討はなされておらず、統合結果の解釈は困難なものであった。このように、事実 上、SGLT2阻害薬の有効性の民族差の有無は明らかになっていない。41
ベースライン
HbA1c
がJDS
値で報告されている場合、以下の計算式によりNGSP
値に 換算した21) 。・
HbA1c (NGSP) (%) = 1.02 x HbA1c (JDS) (%) + 0.25%
空腹時血糖(
FPG
)がmmol/L
単位で報告されている場合、以下の計算式によりmg/dL
単 位に換算した。・
FPG (mg/dL) = FPG (mmol/L) x 18
インスリン抵抗性指数(
HOMA-IR
)、インスリン分泌能指数(HOMA-β
)、血清インスリ ン(μU/mL)が欠測の場合、以下の計算式により補填した6, 22) 。・
HOMA-IR = FPG x Insulin / 405
・
HOMA-β = Insulin x 360 / (FPG – 63)
・
Insulin = (405 x HOMA-IR) / FPG
承認用量の定義
各試験の承認用量群データを解析に採用した。承認用量の定義は、米国、
EU
又は日本の いずれかで通常の用法用量(増量を含む)として承認された用量とした。ただし、韓国の みで承認されたgemigliptin
とevogliptin
の場合、韓国で承認された用量(gemigliptin: 50mg,evogliptin: 5mg
)を採用した。また、
1
試験に複数の承認用量群(例:用量設定試験)がある場合、最大の承認用量を採 用した。最大の承認用量で投与タイミング(朝、夕等)の異なる投与群がある場合、朝投 与を採用した。
ドキュメント内
2型糖尿病治療薬の有効性における民族差研究:システマティックレビュー及びメタアナリシスによる検討
(ページ 38-45)