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均血糖値を反映する指標)の地域差として現れたものと考えられた。

我々の研究では、食後血糖を指標としたメタアナリシスは結果の解釈が難しいと判断し、

データを収集しなかった。その理由として、食事負荷試験は患者負担が大きい(食事の規定 時間後に複数回採血するため、侵襲性があり時間もかかる)ことから食後血糖を指標とした 臨床試験は多くなく、また国によって食事の内容も異なると考えられることから試験間で結 果のばらつきが大きいことが考えられる。過去に食後血糖データを収集したメタアナリシス の報告でも、民族差に関して明確な結論は得られていない8, 11) 。今後、

DPP-4

阻害薬が海外 と比較して日本人の食後血糖低下効果に奏功することを明らかにするためには、後ろ向きに 過去の臨床試験データを統合するのではなく、食事の内容を地域間で統一した上で、前向き に国際共同治験を実施するなどの方法で検討する必要があると考えられる。

SGLT2

阻害薬の試験のメタアナリシスからは、有効性に影響する因子を考慮する前では、

海外試験よりも国内試験で

HbA1c

低下効果と空腹時血糖低下効果が高いとの結果が得られ たが、異質性(統合した試験間のばらつき)が大きかった。また、

SGLT2

阻害薬の感度分析 では単剤試験に限定して解析した場合に地域差がみられなくなった。この理由について、メ タ回帰分析の結果(

Table 2-7

Table 2-8

)から

SGLT2

阻害薬の海外試験では併用試験の

HbA1c

低下効果が弱いことが示唆されており、海外試験の約

8

割が併用試験であったために、見か け上海外試験の有効性が小さくなったものと考えられる。さらに有効性に影響する因子を考 慮した多変量メタ回帰分析では、SGLT2阻害薬の

HbA1c

低下効果に地域(海外/国内)の 有意な影響はなく、有効性に影響する因子としてベースライン

HbA1c

とプラセボ群の

HbA1c

変化量により条件を付加したメタアナリシスでも

HbA1c

低下効果と空腹時血糖低下

効果に地域差は認められなかった。以上の結果から、

SGLT2

阻害薬の有効性には国内外の差 はないと考えられる。

以上の

DPP-4

阻害薬と

SGLT2

阻害薬の対照的な結果は、

2

型糖尿病治療薬の有効性の民

族差は薬剤の作用機序と関連していることを裏付けるものである。

67

本研究で示された

DPP-4

阻害薬の

HbA1c

低下効果の地域差は約

0.18%

であった。この臨 床的意義については、2 型糖尿病患者の血糖コントロール目標値は

7.0%未満であることを

踏まえると6) 、治療前に

HbA1c

8.0%

の患者にとって

0.18%

良く低下する薬剤は患者の目 標達成に貢献するであろう。また、特に地域ごとの用量を設定するための用量設定試験等を 国際共同治験として実施するような場合には

0.18%

の地域差は無視することはできない。

本研究では有効性に影響する因子として一般的に知られるベースライン

HbA1c

の他に、

プラセボ群の

HbA1c

変化量を特定した。プラセボ群は実質的に無治療状態のため、通常は 一定に推移するか軽度悪化するものと考えられるが、本研究で収集した海外試験にはプラセ

ボ群の

HbA1c

が低下する試験が多く、その影響が無視できないと考えられたため、当該因

子を考慮した追加解析を行う必要があった。プラセボ群の

HbA1c

が低下する理由として考 えられるのが、患者が臨床試験参加後に

2

型糖尿病の食事・運動療法をスタートする(ある いは強化する)ことである。無作為化後に食事・運動療法を開始すると、プラセボ群で大き

HbA1c

が改善することで、被検薬群との変化量の差が小さくなってしまう。このような

現象は過去の報告でもみられており、

DPP-4

阻害薬であるビルダグリプチンの患者データを 統合した解析では、白人、中国人及びインド人ではプラセボ効果がみられたのに対し、日本 人サブグループではみられなかったと報告されている41) 。また、中国で行われた

DPP-4

阻 害薬の臨床試験のメタアナリシス 42) では、中国国内で行われた試験では中国国外で行われ た試験よりも効果が小さく、中国国内試験でみられた大きなプラセボ効果によって効果が過 小評価されたことが考察されている(対照的に、日本人の試験ではプラセボ群で

HbA1c

が 悪化したと報告されている)。

海外試験でプラセボ効果が大きかった理由を調べるため、我々は探索的に、システマティ ックレビューで収集した試験情報を精査し、試験の組入れ基準として「無作為化前

8

週間以 上前から一定の食事・運動療法を実施している」が設定されているか否かを確認した。その 結果、国内では多くの試験で設定されていたが(

DPP-4

阻害薬の

96%

SGLT2

阻害薬の

68%)

、海外では設定されている試験は少なかった(DPP-4阻害薬の

26%と SGLT2

阻害薬の

68

44%

)。このような設定が組入れ基準にない場合、臨床試験に参加後に医療機関より食事・

運動療法の指導が開始されることが考えられ、プラセボ群の

HbA1c

を大きく低下させる原 因になり得る。以上のことから、

2

型糖尿病の臨床試験を実施する場合は薬剤以外に有効性 に影響する因子(食事・運動療法の実施状況等)をコントロールする試験デザインとするこ と、また異なる臨床試験結果を比較する場合にはプラセボ群の不自然な変動に留意すること が望ましいと言える。

本研究の特徴を以下に述べる。

(1)

本研究では、過去のメタアナリシスとは異なり、

HOMA-β

に着目した解析を行った。

HOMA-β

はインスリン分泌能を表す指数であり、空腹時の血糖値及びインスリン濃度

から計算される22) 。白人と比べて日本人の

2

型糖尿病患者では

HOMA-β

が低下して いることが知られている2, 3) 。過去のメタアナリシスでは

DPP-4

阻害薬の有効性の民 族差のメカニズムとして、インスリン分泌能の違いが民族差の要因である可能性を考 察しているものの、それを示すエビデンスは示していない。いくつかの報告8, 11) では

BMI

DPP-4

阻害薬の有効性の予測因子として特定したが、我々の研究では地域

を考慮した多変量メタ回帰分析の結果、

BMI

DPP-4

阻害薬の有効性の有意な共変量 ではなく(

p=0.339

)、むしろ

HOMA-β

が有意な共変量であった。日本人の

2

型糖尿 病患者は欧米人よりも低い

BMI

でインスリン分泌不全が起きていることをふまえる

2, 3)

HOMA-β

DPP-4

阻害薬の有効性のより直接的な予測因子であると考えられ

る。

(2)

本研究では、インスリン分泌促進機構を介さない

SGLT2

阻害薬にも着目し

DPP-4

阻 害薬と対比させて検討することで、DPP-4 阻害薬の民族差のメカニズムを裏付ける結 果を得ることができた。

DPP-4

阻害薬とは異なり、

SGLT2

阻害薬の有効性は

HOMA-β

の影響を受けなかった。なお、SGLT2 阻害薬であるイプラグリフロジンの有効性は

BMI

や肥満の影響を受けないとの報告 43) があり、結果の合理性がある。このように

SGLT2

阻害薬にも着目することで、DPP-4阻害薬の有効性の民族差がその作用機序と

69

HOMA-β

の分布によって説明されることを裏付ける結果が確認されたのは本研究の

特徴と言える。

本研究の限界を以下に述べる。

(1)

1

章と同様、システマティックレビューは公表されたデータを収集する手法であり、

公表バイアスの影響を完全には避けられない。

(2)

本研究は

2

名以上が独立して文献のレビューを行うことでデータ収集過程における選 択バイアスを排除しており、バイアスリスクの低い無作為化比較試験データを統合し ているが、試験を地域別に分けたサブグループは無作為化を行ったものではないため 地域間に背景情報の偏りが生じることは避けられない。したがってサブグループ間の 結果の比較においては、常に観察研究の側面があることに留意し、可能な限りそれら の因子を考慮する必要がある。本研究ではベースライン

HbA1c

とプラセボ群の

HbA1c

変化量を考慮した解析により結論を導いたが、収集した試験を見ると、地域間で薬剤 の種類や用量の偏りは存在する。例えば収集したカナグリフロジン及びシタグリプチ ンの国内試験で用いられた用量は、海外試験と比較すると低用量に偏っていた。ただ し、国内試験で用いられた用量はいずれも国内用量設定試験 44, 45) において最大に近 い効果を発揮する用量データであることが確認できることから、用量の国内外の偏り による結果への影響は小さいと考えられる。また、薬剤の最大効果が異なる場合、地 域間の偏りが結果に影響する可能性もある。また、本研究では検討しなかったが、投 与期間の変化によって有効性の推移が異なる可能性がある。これらの限界を克服して 要約データにより地域差を検討するには、用量や投与期間をモデルに組み込み薬剤の 用量反応関係を推定する手法であるモデルに基づくメタアナリシス(

Model-based

Meta-Analysis; MBMA

46, 47) を取り入れることが良いアプローチとなる可能性がある。

(3)

海外試験には海外在住の日本人が含まれている可能性を完全には否定できない。ただ し、感度分析により日本が参加した国際共同治験(日本人約

2

割)を海外試験から除 いた解析でも結果はほとんど変わらなかったことから、海外在住日本人の影響は無視

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できる程度と考えられる。

(4)

本研究では

SGLT2

阻害薬のその他の有効性指標である体重や血圧の低下効果を検討 しておらず、これらにおける民族差の有無は不明である。

以上の限界はあるものの、本研究は

DPP-4

阻害薬と

SGLT2

阻害薬を対比させることで

DPP-4

阻害薬の

HbA1c

低下効果に民族差が生じるメカニズムの一端を明らかにした初めて

の研究である。

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