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博士(工学)櫻井 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)櫻井 学位論文題名

寒冷地におけるコンクリート構造物の 耐用年数予測評価に関する研究

学位論文内容の要旨

  社会資 本とし てのコ ンク リート 構造物が増加するに伴い,これらを維持管理する重要性が増し,

コ ン ク リ ー ト構 造 物 の ライ フサ イクル コスト の算定 や耐用 年数 に対す る評価 が重要 にな ってい る 。 コンク リート 構造 物を設 計,施 行及び 維持管 理す る場合 ,(1)コンク リ―ト 構造 物が補 修,

補 強な しで供 用期間 を耐え 得るか ,(2)劣化を 放置す れば 性能や 安全性 はどの程度低下するか,

(3) 最 近 ,耐 久 設 計 が 試み られて いるが ,その 照査 をどの ように するか ,とい った 事が問 われ る よう になっ た。し たがっ て,劣 化を 予測し ,コン クリ― ト構 造物の 耐用年数を予測評価する事 が 要求 され, その方 法を早 急に確 立する事が必要とされている。耐用年数予測評価の問題点は(1) コ ンク リート 構造物 の耐用 年数を 左右 する劣 化現象 のパタ ーン が様々 であり,その要因が多数で 複 雑 で あ る 事,(2)既 存構 造 物 の 設 計資 料 と 施 工資 料が, 現在の 段階で 保存さ れて いるも のが 少 な く , 設 計施 工 デ ー タ と 耐用 年 数 と の 関係 の 把握 が困難 な事,(3)点 検デー タが 有効に 活用 さ れ て い な い事 , (4)維持 管理を 行う技 術が十 分確 立され ていな く,ま たその 技術 者の不 足等 が 深 刻とな ってい る事 ,(5)現 在のコ ンクリ ート構 造物の 耐久 性評価 のレベ ルは国 内, 海外と も 発展 途上に あり, 現場で 要求さ れて いる十 分ナょ レベル とは かなり 隔たりがある事等である。

  本 研 究 の目 的 は , 主 に寒 冷 地 の コ ンク リ ー ト 構 造 物( 以 下RC構 造 物 )の設 計の際 に,劣 化 を 予 測 し , 耐用 年 数 予 測評 価を 行う手 法を明 らかに する事 であ る。構 成は,RC構造 物の劣 化の パ ター ンと要 因の検 討,耐 用年数 予測 評価法 の開発 ,及び 予測 評価の 信頼性の向上の検討と試設 計 モデ ルによ るケー スス夕 ―ディ とか らなっ ている 。

  第1章 では , 本 研 究 の背 景 と 目 的 を述 べ る と とも に,RC構 造物の 耐久 性に関 する既 往の研 究 と 概念 を調査 し,さ らに, 本研究 の範 囲を述 べた。

  第2章 では , 寒 冷 地 のRC構 造 物 の劣 化 の パ タ ーン と 耐 久 性 の要 因 に 関 し て, 各 種 構 造 物 と 各 種 環 境 下 の多 数 のRC構造 物 の 劣 化 状況 の 調 査 , 寒 冷地 海 洋 環 境 下及 び各種 環境 下の曝 露実 験 ,RC部 材の促 進試験 用の モデル 化供試 体によ る実験 結果 等をも とに検 討を行った。その結果,

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耐用 年数を 予測評 価する 際の劣 化の 評価項 目とな る劣化 パタ ―ンの 分類, 劣化のモデル化に必要 な 劣化 要 因 の 分 類 を以 下 の よ う に提 案 し た 。(1)劣 化のパ 夕―ン を,中 性化 ,鉄筋 腐食, コン クリ ートの 強度低 下,凍 害,表 面劣 化,ひ びわれ ,変形 に大 分類し た。劣 化とは,構造物に生じ る 経年 変 化 の 中 で 構造 物 の 性 能 の低 下 を 伴 う もの で あ る 。 劣化 限 界 は ,劣 化に よりRC構 造物 に, 要求さ れる最 低限の 性能が 維持 できな くなる 限界で ある 。設計 時に要 求される最低限の性能 が維 持でき るため の劣化 限界を 許容 劣化限 界とす る。こ れが 劣化の グレー ディングの際の基準と な る。(2)劣 化の 要 因 は 外 的要 因 と 内 的 要因 に 分 け られる 。外的 要因は 環境 条件や 気象条 件等 から なり, この中 で影響 が大き く, 定量化 の必要 がある 劣化 外カが ある。 内的要因は,設計,材 料, 施工条 件にか かわり ,人為 的に 制御で きるも のであ る。

  第3章 では , 主 に 寒 冷地 のRC構 造物 の 設 計 時 に, 劣 化 予 測 及 び耐 用 年 数 予 測評 価 を 可 能 と す る方 法 の 開 発 を 行っ た 。 ま ず ,寒 冷 地 のRC構 造 物 の 耐 用年 数 の 予 測 評価 法に必 要な以 下の 劣化 予測規 準の検 討を行 った。 劣化 予測水 準は, 構造物 や各 部位と 部材の 重要度と要求される予 測 精度 に よ っ て 考 慮し な け れば ならな いため ,一般 的な 水準( 劣化予 測水準1)およ び重要 でか つ高 い安全 性が要 求され 維持管 理が 困難な構造物や各部位と部材に適応する水準(劣化予損lJ水準 2)に 分 け ら れ るが , 本 研 究で は劣 化予測 水準1にっ いて検 討した 。次に ,劣 化予測 をする ため に , 以 下 の 項 目 の 検 討 を 行 っ た 。(1)耐 久 性 の 予 測評 価 項 目 と 劣化 指 標 の 選 定,(2)予 測評 価 法 フ 口 ー ,(3)予 測 評 価 の た め の既 往 の 研 究 及 び実 験 デ 一 夕 の整 理 と 解 析 ,(4)予 測 評価 の た め の 劣 化 予 測 式 ,(5)劣 化 の グレ ー デ ィ ン グ ,(6)劣 化の 予 測 評 価 項目 の 重 み 付 け ,こ れら によっ て,予 測評価 法を作 成し ,実構 造物へ の劣化 予測 評価の 適用の 方法を明らかにした。

  第4章で は,本 予測 評価法 と曝露 実験や 実構 造物調 査結果 との照 査を行 った 結果, 信頼性 をさ らに 向上さ せるた めには ,環境 別に 的確な 係数を 選定す る必 要があ り,こ のためには多くのデ一 夕の 蓄積が 必要で ある事 を明ら かに した。

  ま た , 耐 用 年数 予 測 評 価 法の適 用例と して ,試設 計モデ ルによ る予測 評価 法のケ ースス タ―

ディ ーを行 った。 検討の 対象は ,耐 用年数 を長期 にとる 必要 のある 廃棄物 貯蔵用半地下ピットを 想定 し,予 測評価 対象モ デルを 試設 計した 。検討 方法は ,こ の試設 計モデ ルが要求される機能を 維 持す る上 で重 要な部 位や部 材を抽 出し,3章 の予測 評価 法を用 いて, 劣化の 経年 変化の 予測評 価 を行 った 。検 討のケ ースは ,(1)劣 化の内 的要因 から ,水セ メント 比とか ぶり を抽出 し,こ れ を変 動 さ せ た 場 合,(2)総合 劣 化 度 の 重み 係 数 を 変 動 させ た 場 合 の2ケ ース である 。なお , 試設 計モデ ルに要 求され る性能 とし て「耐 荷重性 」及び 「水 密性」 に着目 し,これらの性能の低 下に っなが る各評 価項目 を関連 樹木 の形に 整理し て重み 係数 を算定 した。 シミュレーションの結

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果, 内的要 因の内 の水セ メン ト比と かぷり の取り 方が ,中性 化,鉄 筋腐食 等の劣化の経年変化に 大き な影響 を与え ,その 取り 方によ っては ,中性 化深 さで数 倍程度 ,鉄筋 腐食の発生の時期も倍 程 度の差 が生 じる事 が明ら かにな った。 また ,総合 劣化度 も施工 後50年 で2割程度 の違い がある 事が 明らか になっ た。

  さら に,耐 用年 数予測 評価法 の実用 化のた めに ,人口 知能と デ一夕 ベー スを取り入れた総合耐 用年 数予測 評価シ ステ厶 構築 の方法 を提案 した。

  以 上 の , 寒 冷 地に お け るRC構 造 物 の 耐 用年 数 予 測 評 価法 の 開 発 と その基 礎的な 研究か ら,

寒 冷 地のRC構 造 物の 環 境 条 件 等の 外 的 要 因 に対 し て , 設 計, 施 工 デ 一夕 の内的 要因か ら,劣 化の 経年変 化を数値的に予損l亅し,この結果を基にその外的条件下で適切な内的要因のパラメータ を 設 定す る 手 法 を 提案 し た。 シミュ レーシ ョンに より ,RC構造 物に要 求さ れる耐 用年数 までの 劣化 を予測 し,耐 用年数 予測 評価す る事を 可能と した 。最適 な耐久 性を考 慮した設計の照査や,

適切 な補修 時期を 判断す る際 の必要 な工学 的な根 拠と なる技 術的情 報を得 る事を可能にして,寒 冷 地 に お け るRC構 造 物 の 耐 用 年 数 予 測 評 価 が 可 能 で あ る 事 を 明 ら か に し た 。   第5章に 研究の 総括と ,今 後の課 題にっ いて述 べた。

   学 位論 文審査の要旨 主査    教 授    藤田嘉夫 副査   教授   角田輿史雄 副査    教 授    佐伯    昇 副査    教 授    鎌田英治

  社会 資本と して のコン クリ― ト構造 物の増 加に 伴い, 維持管 理の重 要性が高まり,その耐久性 を的 確に評 価する ための 方法 確立に 対する 要望が 高ま ってい る。

  本 論 文 は , 寒 冷地 のRC構造 物を対 象とし て, 実構造 物の調 査,曝 露実験 及び 促進試 験を行 つ て劣 化のパ ターン と要因 を詳 細に検 討し, その結 果に 基づい て耐用 年数予 測評価法を構築したも ので ,5章から 構成さ れてい る。

  第1章 で は ,本 研 究 の 背 景 ,目 的 ,RC構 造 物 に関す る既往 の研究 及び本 研究 の範囲 にっい て 述べ ている 。

  第2章 で は ,各 環 境 下 に お ける 多 数 のRC実 構 造 物 の 劣化 状 況 の 調 査, 寒 冷 地 海 洋環 境 下 及

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び 各種環 境下の 曝露 実験, 促進試 験用モ デル供 試体 による 実験結 果を詳 細に 検討し ている。その 結 果,耐 用年数 を予 測評価 する際 ,劣化 の評価 項目 となる 劣化パ ターン を, 中性化 ,鉄筋腐食,

コ ンクリ ートの 強度 低下, 凍害, 表面劣 化等の 材料 的なも のと, ひびわ れ, 変形等 の主に構造的 な ものに 大分類 し, また劣 化のモ デル化 に必要 な劣 化要因 を,環 境条件 や気 象条件 等の外的要因 と 設 計 , 材 料 , 施 工 条 件 等 制 御 可 能 な 内 的 要 因 に 分 類 す る こ と を 提 案 し て い る 。   第3章でtま , ま ずRC構 造 物の 耐 用 年 数 予 測評 価 の た め の劣 化 予 測 の 規準 に っ いて, 構造 物 に 要求さ れる性 能の 明確化 ,耐用 年数の 設定, 劣化 パター ンと劣 化要因 の分 類,劣 化の予測評価 項 目と劣 化指標 の選 定,予 測評価 法のフ 口一,予測評価のための既往の研究及び実験結果の整理,

劣 化予測 式の構 築, 劣化の グレー ディン グ,劣化の予測評価項目の重み付け,劣化予沮lJ水準,許 容 劣 化 限 界 の 設 定 等 の 各 項 目 に 対 し , 規 準 作 成 の 基 本 的 考 え 方 に っ い て 考 察 し て い る 。   次 に,劣 化予 測の水 準とし て,一 般的 な水準 と重要 で高い 安全性 が要 求され ,維持 管理が困難 な 構造物 や部位 ,部 材に適 用する 水準の ニっの 水準 のうち ,本研 究では 一般 的な水 準を取り上げ て 各項目 にっい て検 討して いる。 その結 果,環 境条 件など 構造物 の外的 要因 に対応 する劣化評価 項 目に対 して影 響の 大きい ,適切 な内的 要因を それ ぞれ設 定する 合理的 な劣 化予測 評価法を構築 し ,実構 造物の 耐用 年数予 測評価 を可能 にしている。この成果は耐久性を考慮した設計の照査や,

適 切 な 補 修 時 期 を 判 断 す る 工 学 的 根 拠 を 与 え る も の で , 評 価 に 値 す る 。   第4章で は ,本 予測評 価法 と曝露 実験及 び実構 造物 調査結 果との 照査を 行い, その 結果予 測精 度 をさら に向上 させ るため には, 環境条 件に対 応し た的確 な係数 を選定 する ため, 多くのデ一夕 を 蓄積す ること が必 要であ ると指 摘して いる。

  ま た,耐 用年 数予測 評価法 の適用 例と して, 廃棄物 貯蔵用 半地下 ピッ トを想 定した 試設計モデ ル による ケース スタ ディー を行っ ている 。要求 され る性能 として は耐荷 重性 と水密 性に着目し,

劣 化の内 的要因 のう ち水セ メント 比とか ぶりを 変動 させた 場合及 び総合 劣化 度の重 み係数を変動 さ せ た 場 合の2ケ―ス にっい て検 討して いる。 その結 果,内 的要 因のう ち水セ メント 比と かぶり tま, 中性化 ,鉄筋 腐食等 の劣 化の経 年変化 に大き な影響 を与 え,中性化深さで数倍程度,鉄筋腐 食 の 発 生 時期 で2倍 程 度の 差 が 生 じる こと ,また 総合劣 化度も 施工後50年で2割 程度の 差が出 る こ と な ど , 内 的 要 因 に よ っ て 劣 化 の 経 年 変 化 が 変 動 す る 様 子 を 具 体 的 に 提 示 し て い る 。   さ らに, 実用 化のた めに, 人工知 能と デ一夕 ベース を取入 れた耐 用年 数予測 評価シ ステムの構 築 方法を 提案し てい る。

  第5章 は,研 究の総 括と 今後の 課題に っいて 述べ ている 。

  こ れ を要 す る に , 本論 文 は 寒 冷 地に お け るRC構 造 物 の 耐 用年 数 予 測 評 価 法を 構築 ,提案 し

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たもので,RC構造物の設計,施工及び維持・管理面で有用な多くの知見を与えており,コンク ルート工学の進展に寄与するところ大である。よって,著者は博士(工学)の学位を授与される 資格あるものと認める。

参照

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