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博士(歯学) 原田尚樹 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)   原田尚樹 学位論文題名

ラット頭頂骨骨膜下におけるthBX/IP ・2 添加多孔性キトサン/

     ハ イ ド ロ キ シ ア ノ ヾ 夕 イ ト 複 合 体 に よ る 骨 形 成 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【 背景と目的】ハイドロキシアパタイト(HAp)は生体親和性と骨伝導性に優れた 生体材料であるが,その硬さと脆性のため,望む形状に成形することが困難であ る .それゆ え,HApの欠 点である 成形性を改 善するHAp/高 分子の新規複合材料 の開発に多くの関心が集まっている.キトサンは甲殻類の外殻などに含まれる天 然高分子で,その生体吸収性や高い熱安定性などの性質から生体材料として注目 さ れている .我々は これまで に,多孔性キトサン/HAp複合体を作製し,歯槽骨 再生材料に適した成形性や操作性の高い物理的性質を持っことを報告してきた,

骨 の再生医療の基本要素として,1)足場材料:担体,2)細胞,3)細胞増殖因 子 の3つの要素が不可欠とされている.骨欠損部位が小さく,周囲組織の再生能 カが高い場合は足場材料を与えるだけで再生が得られるが,欠損部位が大きい場 合は望む再生iま得られず,細胞の分化増殖を促す細胞増殖因子との併用が必要と される.その代表的なものに,骨形成蛋白質(Bone morphogenetic protein: BMP) が ある.し かし,BMPは 生体内で 拡散,吸収 が早いた め,骨形 成能を十分に発 揮 するため には,BMPを 保持して その作用を 増強する 担体が必 要である.本研 究では,この複合体の骨形成蛋白質(rhBMP‑2)担体としての有用性を評価する目 的で,ラット頭頂骨骨膜下埋入実験を行い,骨形成過程と担体複合体の吸収変化 を組織形態学的に検討した.

【材料と方法】共沈澱法とポローゲンリーチング法により,気孔率75〜80%,気 孔 径100〜300pmの連通孔を有する多孔性キトサンノHAp複合体を作製した.多孔 性 キ ト サン HAp複 合体 を 一 辺が3mmの立 方 体 に成 形 した 後 、5y,gのthBMP‑2 を 添 加 した 複 合体 をthBMP‑2添加群 とし:thBMP‑2無 添加の複 合体を対 照群と し た . 10週 齢 のSDラ ット 頭 頂 骨骨 膜 下に 複 合体(rhBMP‑2添加群, 対照群)

を 埋入した .4,8週後 に屠殺し ,各埋入物および皮膚・頭頂骨まで一塊として 摘 出した, 試料は10% 中性緩衝 ホルマリン液で固定後、10%EDTA溶液で脱灰を 行 い,通法に従い厚さ5umの切片を作製し,ヘマトキシリン―エオジン染色を行 った.複合体の吸収と骨形成過程を光学顕微鏡を用いて組織学的観察を行った.

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また,埋入物の最大割面での高さを測定した.埋入物組織中に占める複合体,新 生骨,骨 髄,線維 性結合組 織の割合 をWeibel法に基 づき,組織形態計測を行つ た,

  【結果】rhBMP・2添加群 では,埋入4週後で複合体の吸収がかなり進んでおり 複合体中心部まで新生骨が見られた.また骨髄も見られた.複合体周囲から内部 にかけて頭頂骨と連続した新生骨がみられた.複合体周囲には複合体を貪食して いる多核巨細胞が存在し,新生骨周囲や複合体周囲に沿って並んでいる骨芽細胞 も観察さ れた.埋 入8週後に は骨形成がさらに進み,複合体は新生骨に取り囲ま れ,そのほとんどが吸収されていた.骨梁の連続性が増加して新生骨が母床の頭 頂骨と連続していた.新生骨の一部に骨髄が認められ骨量の増加が観察された,4 週後と比べて複合体の量が減少しており,断片化したわずかな複合体が,広範囲 を占める 新生骨内 部に局在 していた .対照群 では4,8週後 ともに複合体内部で の骨や骨髄は見られなかった.4週後では複合体内部i翻泉維性結合組織で満たさ れており ,複合体 の連続性 も残って いた.8週 後では4週後 と比べ複合体の量は 減少して いた.4週 後に比べ て,複合体は断片化されており,周囲は線維性結合 組織で満 たされて いた.rhBMP.2添加群の埋入物の高さの平均値は,4週後では 1.64土0.08mm,8週後では1.65土O.08mmで,ほとんど変化は見られなかった.

対照群の 埋入物の 高さの平 均値は,4週後では1.18土0,20mm,8週後ではO.88 土O.20mmと 経 時 的に 低 下し た .4週 後と8週 後 のい ず れ にお い てもrhBMP‐2 添加群に比べて埋入物の高さは有意に低下したくpく0.05).組織形態計測を行なっ た結果、 骨および 骨髄はrhBMP.2添加群の みに認め られた.rhBMP‐2添加群に おける線維性結合組織の占有率は,4,8週後のいずれにおいても対照群に比べ有 意に低い値を示したくpく0.05).また,rhBMP.2添加群における複合体の占有率も,

4,8週後のいずれにおいても対照群に比べ有意に低い値を示した(pく0.05).

【考察】骨再生の足場材料として,必要な細胞群に十分な栄養と酸素を供給しな ければならないため多孔質体である必要があるといわれている,本研究では使用 した 多 孔 性キ ト サンmAp複 合体 は , 気孔 率75〜80%,孔径10い300pmの外部 と 交通 す る 連通 孔を有 している. 本実験で は4週以降 にはrhBMP・2添 加群,対 照 群ともに複合体内部気孔内ーの線維性組織の侵入が観察された.また多核巨細胞 も観察されたことから,本実験材料の内部構造は細胞の遊走が十分可能な連通孔 構造を有しており,ラット頭頂骨骨膜下という複合体に負荷のかかりやすい環境 においても複合体の強度をある程度維持できると考えられた.埋入後の複合体の 高さ に つ いて は,対 照群,rhBMP.2添 加群とも に埋入時 に形成し た3mmよりも 低い値となっていたが,rhBMP.2添加群のほうが対照群よりも有意に高い値を示 した.こ れはrhBMP・2を 添加した ことで複 合体の気 孔内に早期に細胞・血管が 侵入・増殖して骨芽細胞への分化がおこり,骨が誘導されたことで強度が増し,

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頭頂部皮膚の張カに抵抗したためと考えられる.本研究では,HApの欠点である 低い成形性を改善するために,吸収性高分子であるキトサンに注目し,多孔性キ トサン HAp複合 体をthBMP‑2担体として使用した.吸収性である複合体でも組 織増量 材と してBMPによ る骨 形成の場を一定期間維持すれば,骨形成および骨 増生が 可能 であ るこ とを 期待 した ,そ の結 果,thBMP‑2添 加群において埋入4 週後に は全 組織 面積 の半 分以 上を 占め る新 生骨 を形 成す ることに成功した・

thBMP‑2添 加群 に新 生骨 の形 成が認められた理由として,多孔性キ卜サン/HAp 複合体の構造が細胞増殖や血管侵入を妨げることなく,thBMP‑2による骨芽細胞 への分 化誘 導に 適し た環 境を 提供した可能性やキトサン/HAp複合体とthBMP‑2 の結 合 度 が 比 較 的 高 く 適 度 な 徐 放 効 果 を 示 した 可能 性が 考え られ る. また thBMP‑2添加群では,骨形成が進むにっれて複合体の占有率が対照群に比べ有意 に減少していた.埋入8週後には複合体のほとんどが吸収,断片化され,その一 部は新生骨に取り囲まれていた.多核巨細胞による複合体の貪食や骨芽細胞によ る骨形 成も 見ら れた .こ れはthBMP‑2を複合体に添加することにより,骨芽細 胞,多核巨細胞に対する情報伝達が活性化され,骨改造に組み込まれた様式で複 合体の 吸収 が促 進す ると 考え られる.以上より,この複合体はthBMP‑2担体と して骨形成能と生体吸収性に優れ,生体のりモデリングシステムに早期に組み込 まれる生体材料であると考えられた.

【結論 】ラ ット 頭頂 骨骨 膜下 埋入 実験 にお いて ,thBMP‑2添加群では埋入4週 後に複合体中心部まで骨形成が観察され,対照群では骨形成がみられなかった.

thBMP‑2添 加群 では 埋入8週後 に骨 形成 がさ らに 進む と共 に複合体のほとんど が吸収され,その一部は新生骨に取り囲まれていた.以上より,成形性や操作性 の高い 多孔 性キ トサ ン/HAp複 合体は,thBMP‑2の担体として優れた骨形成能と 生体吸収性を有することから,複雑な形態を呈する骨欠損部における生体材料と して有用であることが示唆された.

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学位論文審査の要旨 主査 副査

副査

特任教授 教授 教授

井上 網塚 土門

学 位 論 文 題 名

農夫男 憲生 卓文

ラット頭頂骨骨膜下におけるthBMP‑2 添加多孔性キトサン/

    / ヽ イ ド ロ キ シ ア ノ ヾ夕 イト 複合 体に よる 骨形 成

審査 は, 審査 員全 員出席の下に,申請者に対して提出論文とそれに関連し た学科目 に つ い て 口 頭 試 問 に よ り 行 わ れ た . 審 査 論 文 の 概 要 は 以 下 の 通 り で あ る ,

【 背 景 と 目 的 】 ハ イ ド ロ キ シ ア パ タ イ ト(HAp)は 生 体 親 和 性 と 骨 伝 導 性 に 優 れ た 生 体 材 料 で あ る が , そ の 硬 さ と 脆 性 の た め , 望 む 形 状 に 成 形す るこ とが 困難 で あ る . そ れ ゆ え ,HApの 欠 点 で あ る 成 形 性 を 改 善 す るHAp/ 高 分 子 の 新 規 複 合 材 料 の 開 発 に 関 心 が 集 ま っ て い る . キ ト サ ン は 甲 殻 類 の 外 殻な どに 含ま れる 天 然 高 分 子 で , そ の 生 体 吸 収 性 や 熱 安 定 性 な ど の 性 質 か ら 生 体材 料と して 注目 さ れ て い る . 我 々 は こ れ ま で に , 多 孔 性 キ 卜 サ ン/HAp複 合 体 を作 製し ,骨 再生 材 料 に 適 し た 成 形 性 や 操 作 性 の 高 い 物 理 的 性 質 を 持 つ こ と を 報告 して きた ,骨 欠 損 部 位 が 小 さ い 場 合 は 足 場 材 料 を 与 え る だ け で 再 生 が 得 ら れる が, 欠損 部位 が 大 き い 場 合 は 望 む 再 生 は 得 ら れ ず , 細 胞 の 分 化 増 殖 を 促 す 細胞 増殖 因子 との 併 用 が 必 要 と さ れ る . そ の 代 表 的 なも のに ,骨 形成 蛋白 質(Bone morphogenetic protein:BMP)が あ る . し か し ,BMPは 生 体 内 で 拡 散 , 吸 収 が 早 い た め , 骨 形 成 能 を 十 分 に 発 揮 す る た め に は ,BMPを 保 持 し て そ の 作 用 を 増 強 す る 担 体 が 必 要 で あ る . 本 研 究 で は , 複 合 体 の 骨 形 成 蛋 白 質(rhBMP‑2)担 体 と し て の 有 用 性 を 評 価 す る 目 的 で , ラ ッ ト 頭 頂 骨 骨 膜 下 埋 入 実 験 を 行 い , 骨形 成過 程と 担体 複 合 体 の 吸 収 変 化 を 組 織 形 態 学 的 に 検 討 し た .

【 材 料 と 方 法 】 共 沈 澱 法 と ポ ロ ー ゲ ン リ ー チ ン グ 法 に よ り , 気孔 率75〜80%,

気 孔 径100〜300pmの 連 通 孔 を 有 す る 多 孔 性 キ ト サ ン/HAp複 合 体 を 作 製 し た . 多 孔 性 キ ト サ ン/HAp複 合 体 を 一 辺 が3mmの 立 方 体 に 成 形 し た 後 、5Lt9の thBMP‑2を 添 加 し た 複 合 体 をthBMP‑2添 加 群 と し ,thBMP‑2無 添 加 の 複 合 体 を 対 照 群 と し た .10週 齢 のSDラ ッ ト 頭 頂 骨 骨 膜 下 に 複 合 体(rhBMP‑2添 加 群 , 対 照 群 ) を 埋 入 し た .4,8週 後 に 屠 殺 し , 各 埋 入 物 お よ び 皮 膚 ・ 頭 頂 骨 ま で 一 塊 と し て 摘 出 し た . 試 料 は10% 中 性 緩 衝 ホ ル マ リ ン 液 で 固 定 後 、

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10%EDTA溶液 で脱 灰を 行い ,通 法に 従い 厚さ5pLmの切 片を 作製し ,HE染色 を行った,骨形成と複合体の吸収過程を光学顕微鏡を用いて組織学的に評価し た,埋入物組織中に占める新生骨,骨髄,線維性結合組織,複合体の割合をWeibel 法に基づく組織形態計測により評価した.

【 結果 】thBMP‑2添加 群で は,埋入4週後で複合体の吸収が進み、複合体周囲 から中心部にかけて頭頂骨と連続した新生骨がみられた.埋入8週後には骨形 成がさらに進み,新生骨の骨梁の連続性が増加していた,4週後と比べて複合体 の量は減少し,断片化したわずかな複合体が,広範囲を占める新生骨内部に局 在していた.対照群では4,8週後ともに複合体内部には新生骨は見られず内部 には線維性結合組織がみられた.4週後でfま複合体の連続性が残っていたが,8 週後では複合体は断片化され,複合体の量は減少していた.組織形態計測の結 果 ,thBMP‑2添加 群に おけ る複 合体 の占 有率は4,8週後 のいずれにおいても 対照群に比べ有意に低い値を示した(pくO.05).

【考察】thBMP‑2添加群に旺盛な新生骨の形成が認められた理由として,多孔 性 キ ト サ ン/HAp複 合 体 の 構 造 が 細 胞増 殖 や 血 管 侵 入 を 妨 げ る こ と な く,

thBMP‑2によ る骨 芽細 胞へ の分 化誘 導に 適した 環境 を提 供した可能性が考え られる.またthBMP‑2添加群で複合体の占有率が対照群に比べ有意に減少して いた.これはthBMP‑2を複合体に添加することにより,骨芽細胞,多核巨細胞 に対する情報伝達が活性化され,骨改造に組み込まれた様式で複合体の吸収が 促進すると考えられる.以上より,この複合体はthBMP‑2担体として骨形成能 と生体吸収性を有し,生体のりモデリングシステムに組み込まれる生体材料で あると考えられた.

【 結論 】成 形性や 操作 性の 高い 多孔 性キ トサ ン/HAp複 合体は,thBMP‑2の担 体として骨形成能と生体吸収性を有することから,複雑な形態を呈する骨欠損 部における生体材料として有用であることが示唆された.

  各審査委員が行った主な質問内容は,@多孔性キトサン/HAp複合体に対して、

コラーゲン/HAp複合体などの対照群を用いた場合の骨再生について,◎本研究 で観察された多核巨細胞と破骨細胞との異同について,◎骨再生の領域で観察 された骨芽細胞は、頭頂骨骨膜あるいは間葉系細胞のどちらに由来するか,@

長期間(8週以上)経過した場合の再生骨の想定される変化について,◎多孔 性 キ ト サ ン/HAp複 合 体 の 物 理 学 的 強 度 に つ い て , な ど で あ っ た .   これらの質問に対して,申請者は明快な回答と説明を行い,今後の研究につ いても発展的な将来展望を示した。審査委員一同は,本研究には新知見が認め られ,今後の歯科医学の発展に大きく貢献するものと評価した。また,申請者 は,本研究を中心とした専門分野はもとより,関連分野についても十分な学識 を有していることを認めた.よって,申請者は北海道大学博士(歯学)の学位 を授与される資格を有するものと認めた。

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参照

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