地方公共投資と受注の地域構造に関する研究 −奈 良・和歌山両県を事例として−
著者 菊地 一郎
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 29
号 1
ページ 25‑42
発行年 1980‑11‑25
その他のタイトル Public Investment of Local Self‑Governing Bodies and the Regional Structure of
Preparedness for the Reicepts
URL http://hdl.handle.net/10105/2422
地方公共投資と受注の地域構造に関する研究
‑奈良・和歌山両県を事例として‑
菊 地 郎 (地理学教室) (昭和55年4月30日受理)
は じ め に
本研究は、昭和54年度日本地理学会春季学術大会において口頭発表した内容(1)に加筆、若干の 修正を行ったものである。周知の通り、地方自治体(都道府県および市町村)は、国の基調に照 応して、不況時に景気の浮揚策としての公共投資を行うことがある。その場合、建設業を軸とし て関連産業などへの波及的乗数効果により、民間設備投資の盛り上り、民間工事の増大など景気 全般への刺戟を期待する。しかし、受注の地域構造の相違によって、それぞれ地元経済‑の波及 効果はさまざまである.ここで、公共投資の大部分が建設事業費によって占められている現実か ら、 「受注の地域構造」は「建設業の地域構造」と実質的にはほとんど同じ内容となっている。
ただ、建設業を単に産業の1部門としてではなく、公共投資の受注体制もしくは受注構造の一環 として把接していることを意味している。従来、建設業に関する経済地理学的研究は、数は少な いがないわけではない。しかし、公共投資の受注構造という観点からなされた研究業績は、筆者 の知る限り皆無である。しかも、受注もしくは建設業の地域構造は、すぐれて経済地理学の研究 課題であり、研究の新生面を開拓するものといえよう。なお、筆者はすでに「公共事業と地域経 済一受注体制と波及効果‑」C2)を発表しており、奈良県を事例として工業開発に関連した公共投 資とその受注体制および波及効果を明らかにしている。本研究はその延長上にあり、とくに奈良
・和歌山両県における受注の地域構造に焦点をあてたものである。
1地方財政における公共投資の動向
昭和54年版地方財政自書(3)によれば、 52年度に政府(一般会計・地方交付税および譲与税配付 金、公共事業関係の10特別会計の純計)と地方公共団体(普通会計)の純計歳出額は50兆2,418 億円に達する。そのうち、政府が17兆2,225億円(34.320、地方公共団体33兆193億円(65.7#) で、その比率はほぼ1対2となっており、前年度と変らず、近年定着傾向を示している。地方 の歳出総額33兆193億円のうち、投資的経費(普通建設事業費・災害復旧事業費・失業対策事業 費)は93.2^を占め、さらに普通建設事業費は10兆2,042億円で歳出総額の30.9^を占めてい る。その目的別構成比をみると、退路橋りょう費が20.0^でもっと高く、次いで農林水産費17.8
%、小・中学校費11.i 、都市計画費10.996、河川海岸費9A96、住宅費7.196、高等学校・幼稚 園等のその他の教育費1.1%、衛生費3.996、民生費2.%%の順になっている。今、普通建設事業 費の推移をみると、 51年度が対前年比で6.8^増であったのに対して、 52年度は 増となっ
25
ており、このような大幅な増加は景気の着実な回復を目指して、住民生活の充実の基礎である生 活関連施設を中心に、事業規模の拡大が図られたためである。前に述べたように、政府(国)お よび地方公共投資の中心をなすのは建設事業投資である。わが国の建設事業投資は、昭和40年代 において、 48年度まで一貫して非常に高い伸びを続けてきたO ところが、 48年11月に起ったオイ ルショックとそれ以後にとられた公共事業の圧縮、大幅な金融引締めなどによる総需要抑制策の 強化が、わが国経済の成長を減速させ、建設事業投資は完全な伸び悩みの状態に陥入った。 49年 度の対前年比は全く横ばいを示し、それまでほぼ一貫して2桁の伸びを続けてきたのに比べると 大きな変化である。ところが50年度になると、一転して長期化する不況を克服するために第1次 から第4次に及ぶ景気浮揚策がとられ、以後53年度までかって見ないスケ‑ルで公共投資が行わ れたのである。
計
資料:奈良・和歌山両県の財政課調査
(DAは奈良県、 Bは和歌山県(2)奈良県の一般会計建設費には失業対策事業費が含まれる。 (3序口歌山 県では普通建設事業費は国庫補助費と単独事業費とからなり、国直轄と市町村受託は含まれない。こ
こでは奈良県の統計に合わせている。
表1は、奈良県および和歌山県の一般会計建設事業費予算の推移を示している.一般に投資的
経費とは、普通建設事業費、災害復旧事業費および失業対策事業費からなり、道路・橋りょう・
学校・公営住宅の建設等行政水準の向上に直接寄与する経費とされている。しかし、和歌山県で は、失業対策事業費を一般会計建設事業費からはずしているので、奈良県もそれに合わせて表示 してある。建設事業費は、 48年度をベースに、奈良県では49 ‑ 50年度に減少、 51年度から増勢を みせて53年度は48年度に対して実に84%増と大幅な伸びをしるしている。一方、和歌山県は、 49 年度以降増勢を示し、とくに51年度から急騰して奈良県にやや及ばないが、 53年度は48年度に対 して82%増となっている。普通建設事業費の推移も、両県ともほぼ同じであるO人件費や一般行 政費の節約を図りながら、国の基調である景気浮揚策に歩調をそろえて、投資的経費の増額に努 めた結果であることは明らかである。
昭和50年度の奈良・和歌山両県の財政規模を歳出決算額でみると、奈良県が約1,358億円であ るのに、和歌山県は約1,615億円で後者の方がやや大きくなっているO 昭和50年の国勢調査によ れば、奈良県の人口は108万人、和歌山県は107万人であった。また、 45‑50年間の年平均人口増 加率は奈良県3.16#、和歌山県0.56^であった。和歌山県の財政需要の高さが認められる。表2
表2 県民所得に対する財政比率
\畢別・年度
6ロ区分、\\\
県民分配所得 地方財政総額 県財政 市町村財政
奈 良 県 t 和 歌 山 県 1974 1975 1974
100. 0%
23.7 12.4 ll.3
100. 0^
資料:奈良・和歌山両県の財政課調査
は、両県の県民所得に対する財政比率を表わしている。県民所得に対する地方財政総額の比率 は、奈良県2Z.196に対して、和歌山県27.55^とやや高い。次に54年版地方財政自書をみると、 52 年度の財政力指数は共にDグループ(0.3‑0.4)に属しているが、地方税収入は奈良県が1人当 り約2万8,000円であるのに対し、和歌山県は約3万4,000円で6,000円ほど高くなっている。さ らに実質歳入においても奈艮県が約1,733億円であるのに、和歌山県は約2,087億円と高い。和歌 山県の方が財政基盤がよりしっかりしていることを物語っている。にもかかわらず、表1にみる ように奈良県の投資的経費が、和歌山県の2倍以上に達しているのは、同じく大阪府に隣接しな がら、奈良県は人口急増県であり、その対策費に追われているか、景気浮揚策により積極的であ るのか、恐らくその両方のためであると推察される。
2 建設業の地域構造
公共投資とは、社会資本の充実のための投資と定義されるO最近のわが国経済の発展と国民生
活の環状から生活関連施設が中心になるが、地方公共団体が支出する投資的経費も当然公共投資
に含まれる。そしてその90%以上が建設事業費であることは、既に述べた通りである。奈良県の
場合について云えば、 53年度にそれは97%を占めていた。建設事業投資を受注し、請負い、施工
するのは、民間建設工事と同様に建設業者である。
建設業もしくは建設業者の分類には、日本標準産業分類によるものと建設業法によるものとがあ る。前者によれば、建設業は総合工事業・職別工事業・設備工事業に3分類され、さらに総合工事 業は一般土木建築工事業、土木工事業、舗装工事業など、職別工事業は大工工事業、とび・土木
・コンクリート工事業、鉄骨工事業など、設備工事業は電気工事業、電気通信信号装置工事業、
管工事業などにそれぞれ細分類される。後者では、工事内容・施工技術・取引慣行など実際面か ら分類されており、前者における総合工事業が建築一式工業と土木一式工事に分けられ、技能工
表3 奈良・和歌山両県の建設業統計(民営)
業 種
奈 良 県
事業所l 従業者
和 歌 山 県
事業所l 従業者
建 莱
m 令 追
工 事 建 築 木 装
築 建 築
3,190 19,229 4,538 29,919
職
大
刺 工 事
工 と び・土 工・コンクリート
鉄 骨・鉄 筋
石工・れんが・タイル・ブロック 左 官 足 根
板 金・金 物
塗 装 そ の 他
設 備 工 事 電 気
電 気 通 信・信 号 装 置
管
さ く 井 そ の 他
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資料:昭和50年事業所統計(総理府統計局)
事業である職別工事業と設備工事業が専門工事業にまとめられ、それが26の業種に細分類されて いる。両者の分類は類似する点が多いが、建設業法の方が実際面に近いものとなっている。な お、日本標準産業分類は国勢調査・事業所統計などに、建設業法にもとづく分類は建設省や国お よび地方の行政官庁で使用されている。
建設業の開業には、昭和47年以降一定の要件のもとに建設省(都道府県)の許可が必要であ る。許可には、営業範囲の点で知事許可と大臣許可に、請負金額と工事内容の点から一般建設業 許可と特定建設業許可に分けられる。ここで大臣許可業者と云うのは、二つ以上の都道府県にわ たって営業所を設け、工事を施工できる業者である。知事許可業者は、一つの都道府県内で工事 をすることのできる業者を云う。一般建設業許可は、通常の建設業者が受けるもので、特定建設 業許可を受けた業者は、請負った工事のうち、一定額(1,000万円以上)を下請に発注できるこ とになっている。この特定建設業の許可要件は、発注者保護のため資産的・技術的に一般建設業 より厳しいものとなっている。
表3は、奈良・和歌山両県建設業の業種別事業所数・従業者数を示している。両県を比較する と、和歌山県は事業所数で約1,200、従業者数で約1万人多い。それだけ建設業が盛んであると
表4 近畿4府県の建設業規模別・業種別事業所数
設
資料:昭和50年事業所統計(総理府統計局)
云える。表4は、近畿4府県の業種別規模別事業所数を示し、表5は、それを比率で表わしたも のである。事業所数・従業者数の実数において、奈良県はもっとも少なく、奈良・和歌山両県と 大阪府・兵庫県との間には格差が存在する。それらを比率でみた場合、まず大阪府・兵庫県の方 が事業所規模の大きいことがわかる。例えば、建設業全体で30‑299人規模をみると、奈良・和 歌山両県とも3%、兵庫県が5%で大阪府は7%となっている。総合・職別・設備の3業種別に ついてみると、 4府県とも総合・設備は規模が大きくなるほど比率が大きくなり、職別はその逆 になっている。元請・下請の構造と対応し、総合・設備に元請業者が多く、職別は下請業者また は労務者が多いことを物語っている。また3業種の問では、規模が小さければ、職別・総合・設 備の順、規模が大きくなると総合・設備・職別の順に比率が高くなっている。理由は業種別・規
表5 規模別業種別事業所数比率 % 規 模
総 数 1 〜 4 5 ‑ 29 30〜 300 人
府 県 . 業 種 299人 以 上
秦
良
県
建 設 業 100 100
63 100
34 100
3 100 総 合 ¥ 100
39
3 ! 19
63 72
6 76 職 別 100
48
90 68
10 15
\ ∴
設 備 100 13
6 1 13
1、\ 34 13
鳥 言
和 歌 山 県
建 設 業 100 100
3 100
思
総 合 100 37
6 69 職 別
し
100 49
8i>
70
++ \ヾ E
設 備 100 59 35 6 0 1心\ 13 15 26 100
大
阪
阪
建 設 業 100 100
∵ l T2 1100
7 100
0 100 総 合 100
40
v 27
27 ¥ ゝ 63 9 52
辛 職 別 l¥ 100
31
59 \ 37 46 ¥ 22 \
ゝ ご 0 4 設 備 100 \、 38.、、.、\ 54 8 \ 0
L 3 9 27 30 30 29
k
犀
県
建 設 業 ‑霊 ご: 11、漂 iioo ¥
5 100
0 loo 総 合 100
34 29 17
\ 6 1 5\
10 68
0 75 職 別 100
48
84 69
15 19
1 17
0 13 設 備 一 票 0 45
14
50 25
5 20
墨
注:上段規模別,下段業種別
図1奈良・和歌山両県の建設業事業所比率分布(昭50事業所統計)
図2 総合工事業分布(昭52会社企業名鑑)
図3 職別工事業分布
図4 設備工事業分布
隣接する地域に多く集中している。発注需要の存在と関連があることがわかる。
表6は、奈良・和歌山両県の知事許可建設業者一覧である。既に表4の昭和50年事業所統計よ り、和歌山県の方が、事業所数・従業者数ともに奈良県を凌駕していることが指摘された。ま た、建設業全体としても、さらに総合・職別・設備の3業種ともその大部分が従業者規模29人以 下の中小零細企業であることが明らかにされる。表6の両県の知事許可業者一覧についても、そ
表6 奈良.和歌山両県の知事許可建設業者一覧 昭和53年3月末現在 ーー一一資本金階層別l
l
‑、I
知 事 許 可 業 者
200霜i5203品円1,023。7:円5,0 1,38蒜円
一般建設業者
特定建設業者
合 計
純 計
A 20
28
‑ 15 47
1[ 2 1j 1
A ! 76 19
159
兼 業 業 者 数
「 狛
‑ ‑ 声
一
2
7
3 2
1 5 6 05 1
1 4
1 2
資料:奈良・和歌山両県の監理課調査 注: Aは奈良県、 Bは和歌山県
の事情は全く変らない。建設業全体の純計において、和歌山県の方が約1,600業者も多く、とく に特定建設業者の場合は、約60%も和歌山県の方が多くなっている。また、資本金階層別では、
個人が両県とも圧倒的に多く、純計および一般建設業で79%を超えている。ただし、特定建設業 者については、個人は20%強にすぎず、大部分が資本金500万円以上、 5,000万円未満の階層に集 中している。なお、表にはないが、大臣許可建設業者は奈良県30、和歌山県33を数える。
建設業には、他の産業にはみられない幾つかの特色がある(4‥(S)。まず生産上の特色としてその 第1は、受注産業であるということである。建設業は発注者・建設主がいて、工事の発注を受
け、請負って構造物・建築物を完成させ引渡す産業である。製造業のような見込み生産は行えな
い。それは民間工事と公共工事であるとを問わず同じである。その第2は、建設業のほとんどが
単品生産であり、工事は一件ごとに違った構造物・建築物を場所を移して完成する。製造業のよ
うに一定の工場で生産が行われるのとは非常に異なっている。その第3は、工事の大部分が屋外
で行われ、天候・気象条件に左右されることが多く、工期との関連で採算上の不安定さがつきま
とう。次に経営上の特色として、第1に労働集約型産業である。鉄鋼・化学などの装置型工業と
は違い、工事の施工においてまだ労働力に依存する度合が高い。第2には総合的産業である。建
設業者は工事を受注すると、鋼材・セメントなど建設資材をメーカーから購入し、鉄骨、鉄筋、
水道、電気、管などの工事を専門業者に発注する。また、大工・左官・塗装などの技能労務者を 下請・協力業者から提供して貰うOすなわち、建設業者は企画・設計・施工管理、艮質安価な資 材および技術・機械の調達、専門業者の指導・監督などの業務を通して、有機的・総合的に工事 を完成させていく産業である。第3には、とくに日本の建設業の特徴であるが、重層的下請制度 に深く根ざした産業である。前述の通り、建設業者は土木あるいは建築を問わず、工事を完成さ せるまでに数多くの下請専門業者(大工・左官などの技能工事業者と、電気・空調などの設備工 事者)に依存する。建設業者は、工事を請負うとまず種類ごとに工事を分類し、それぞれの下請 業者に発注する。元請の建設業者の場合は、それら専門工事だけでなく、建設機械などについて も下請業者に依存することが多い。一般に総合建設企業の外注比率は、工事原価の60‑70^と云 われ、ビル・工場などの建築工事で50‑60^、鉄道・道路・ダムなどの土木工事では70%前後も 下請に発注される。
筆者の勤務する奈良教育大学において、昭和53年度に附属幼稚園の園舎が新築された。その工 事を請負ったのは大日本土木(本社所在地岐阜市、格付けランクB)である。受注総額は1億 5,000万円で、外注費は8,650万円、受注総額に対する比率は58%である。また、工事の分類は鳶 土木(県内1業者)・型枠(県内1業者)・鉄筋(県外1某社)・鉄骨(県内1業者)および仕上 工事に大別され、さらに仕上工事は防水・タイル・屋根・左官・塗装など13種類に細分された。
それら13種類の工事ごとに県内5、県外8の下請業者に発注され、県内と県外の発注費比率は56 対44であった。
元請建設業者から専門工事者に、専門業者はさらに下請業者へ、その下請業者はさらに小さな 下請業者へ発注していく。労務下請の場合には、末端の労務者までに大・中・小の世話役がい て、各々を統括し労働力を供給する仕組みが出来ている。このように一つの工事は、元請から1 次下請、 2次下請、 3次下請というように重層的下請制度に依存して、施工され、完成されてい
くo この重層的下請制度は、建設業の経営上の第3の特色といえるが、公共投資のマネー・フロ ーを追跡する上で複雑化させると共に、大きな役割を果していると云える.
「建設業職別事業者の労働力構造」′6)は、全国の大・中・小都市に分布する職別専門業者の実 態を個別的にかなり詳しく報告している。そこでは労働力構造のみならず、重層的下請制度につ いてもその一端を明らかにしている。残念ながら、奈良・和歌山両県についての事例報告は見当 らないが、ほぼ類似した構造をもっている。鉄筋工事業の事例を取り上げてみると、広島県の1 業者(資本金500万円、株式会社)は、全国大手業者の工事のみ(大部分が手間請)を請負い、
再下請に70%を依存する。自社28名の従業者のうち、専従者18名、季節雇用10名。再下請は8杜 で専属6社(従業者60名)、臨時2社となっている。左官工事業についてみると、岡山県の1業 者(資本金600万円、株式会社)は、労務下請で完全外注型の大健話役である。自社従業者は25 名のみで、おもに管理業務に従事している。外注労務者は専属280名、準専属120名からなり、専 属グループの最大規模は50名で1人の親方がついている。
藤田佳久・友国照久は、十津川村、大塔村の土木建設業者について、実態調査にもとづく研究
結果を報告している。(7)それらの土木建設業者は戦後のダム・林道開発によって成立し、十津川
村17業者(個人13、株式会社4)、大塔村9業者(個人6、株式会社3)を数える。十津川村は
村域が広いため土木建設需要が多く、そのうえ業者の規模が大・小に多様化しているので、村発
注需要を基盤に業者の経営は安定している。一方、大塔村は村域が狭く、業者の規模が小さいの
で、村発注の土木建設需要は村外に流れ、業者の経営は不安定で離村者を出している。
3 受注の地域構造とマネー・フロー
表7は、昭和52年度における発注者組織別・経営規模別の請負契約額を示している。総額でみ ると、奈良県約660億円、和歌山県683億円である。それらのうち、それぞれ県発注が206億円と 231億円、市町村発注が243億円と261億円になっている。いずれも和歌山県の方が奈良県より多 くなっていることが注目される。以下本研究では、県発注の公共投資を対象としているので、県 ベースに限って検討してみる。既出の表1から、 52年度両県の建設費予算(執行額は明らかでは ないが、予算額とほぼ同額とみられる)についてみると、奈良県671億円、和歌山県306億円であ る。次に予算額に対する請負額の比率を求めると、奈良県31%、和歌山県75%になる。さらに経
表7 発注者組織別.経営規模別請負契約額 (単位百万円)
市
1,113
合 計
65,954 68 ,278
,
一
6
1
〇
一
9
一44 9s>6135 1 25 000 41 3
93 123 158 647
19,058 20,593
資料:建設省計画局、昭和52年度公共工事着工統計年報、 18号O 注: Aは奈良県、 Bは和歌山県
1,97929,752
6,737i19,635
営規模に請負額をみると、個人および資本金1,000万円未満では和歌山県が77億円多くなるが、
1,000万円以上では奈良県の方が40億円ほど多く、運転するO したがって、 (1)県発注の建設事業 費は、総額において奈良県の方が和歌山県よりはるかに大きい(2)建設需要は、奈良県の場合は 大型のものが多く、和歌山県では小さい(3)奈良県の建設事業投資、すなわち公共投資の多くは 大阪府を中心に県外に流れていくのに、和歌山県では県内を潤し、県外にそれほど流出しないな どと結論づけられそうである。
表8は、奈良県の昭和52年度工事請負企業と金額(1件1億円以上)、表9は、和歌山県の53 年度のそれを表わしたものである。まず総額で、奈良県は165億円、和歌山県は67億円となって おり、奈良県は和歌山県の2.5倍になる。それらの予算額に対する比率をみると、奈良県25%、
和歌山県18%で、 1件当り請負額の小さいものが両県とも大部分を占めるが、両県を比較する と、奈良県の方が非常に大きいことがわかる。次に請負企業をみると、本社所在地別に大阪・東
表8 昭和52年度奈良県工事請負企業・金額
(1件1億円以上) 企業名、一事項 本 社 資本金 分 類
I r
請 負 噸
1 奥 村 組】大 阪 E 151 ,111 FPj甘 2 村本建設
3 森 組 4 森 本 組
5 鹿島建設
6 浅 沼 組
N J 6 〝 3,221
1
〝 : 〝 〝 1,757
〝
東 京 大 阪 87芸。芸土芸L岐〝阜
9mォ 100#f
7 8 7
ll Li '蝣' ';7,上 ;: ;, 〝
12 浅 川 娘]和歌山
1
13 三菱重工!東京 14 藤 井 租
合 計
1 山 上 組 2 仲 川 組
3 枚塚建設 合計(その他共)
総 計
奈 良
/′
ic ォ a ,
6〝 937
1
〝 687
1
〟 656 526
〝 403
〝
F 311 F 352 E 151 F 364
342 156 152 IEH 127 E 151 116
1
1 12,538(75.8^)
II'Jl'j
E 152 717 479
榛原町 E 151 436
4,007(24.表示1一
‑ 、一 t ‑
16.545 (10020 ;
資料:県監理課調査、資本金は会社企業名鑑の分類による。
表9 昭和53年度和歌山県工事請負企業・金額
(1件1億円以上)
‑ \‑‑事\1本
!企業名、‑
: 1 大成建設
1 l
i!I 2 小Il**::・"?
i I
: 3 枚尾橋梁
I
1 4 三井造船 外i 5 日立製作所
合 計
県
東 京 大 阪
〝 7
[
V.
〝 l 〝
請 負 額 I ‑ 盲万ra E 151 】 592 F 334 242
l
〝 140
1
F 364 123 F 351 110
1