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博士(農学)アハマドデイノト

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Academic year: 2021

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博士(農学)アハマドデイノト      学位論文題名

Molecular Ecological Analyses of Alteration of Bifidobacterial Population by Administration of Raffinose in Rat Cecum and Human Intestine

(ラフイノース投与によるラット盲腸およびヒト腸管内での      ビ フ ィ ズ ス 菌 動 態 の 分 子 生 態 学 的 解 析 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  ヒト腸管内には多種の細菌が常在しており,宿主の健康に対して様々な影響を与えている.

中でもビフィズス菌は宿主に対して種々の有益な効果を持つことが明らかになっている.ビフ ィズス菌がこの効果を発揮するためには,プロバイオティクス,プレバイオティクスおよびシ ンバイオティクスを宿主に投与し,腸管内のビフィズス菌を増殖させることが必要である,プ レバイオティクスは「大腸内に存在する有用菌を選択的に増殖・活性化することで,生体の健 康を改善する難消化性食品成分」として定義され,多くのオリゴ糖がプレバイオティクス効果 を持っことが報告され,製品として市場に流通している.

  ラフィノースは,甜菜からの砂糖精製の副産物として得られる北海道の産業上重要なオリゴ 糖である.ラフイノースはヒト腸管上部での難消化性およびビフィズス菌の増殖促進効果とい う特徴からプレバイオティクスのーっであるが,そのプレバイオティクス機能を詳細に解析す るため,ラフア ノース投与によるビフィズス菌の動態を加vitroと加vivoで解析することは重 要である.腸内細菌の動態解析にはこれまで平板培養による菌数計測が主に用いられてきたが,

多大な労カと時間がかかる点,難培養性の菌を計測できなぃという欠点がある.この欠点を改 善するために,近年培養を伴わなぃ種々の分子生態学的手法が開発され,腸管内容物や糞便と いう複雑なサンプルの菌叢を正確に解析することが可能になってきている.そこで本研究では,

分子生態学的手法として最も精度の高いFluorescence所ぷぬHybridization (FISH)法を用いて,

ラフイノース投与によるラット盲腸内のビフィズス菌の動態を解析した.次いでフローサイト メトリー(FCM)を組み合わせてFISH法をハイ スループット化し(以下FISH‑FCM法とする),

これを用いてラ フィノース投与によるヒト腸管内のビフアズス菌の動態を種レベルで解析し た,

1)シンバイオティクス投与ラット盲腸内のビフィズス菌の動態解析

  ラフ ィノ ース 投与 によ る腸 内ビ フィ ズス菌の動態の前臨床的解析として ,雌WKAWHkm系 ラットに4種の異なる試験食を3週間に亘って投与し,盲腸内ビフィズス菌の動態を解析した.

FISHー顕微鏡解析の結果,基本食群および基本食十Bifidobacterium breve JCM1192T(プロバイオ ティクス群)の盲腸内全細菌に対するビフィズス菌の割合はそれぞれ0.4%および013%と低か

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った .それ に対し て,基 本食十 ラフィ ノース( プレバ イオティクス群)および基本食十ぢ. breve JCM1192T+ラフ ィ ノ ー ス( シ ン バ イオ テ ィ ク ス群 ) を 投 与し た 群 で は, 盲 腸 内 ビフ ィズス 菌の 増 殖 促進 が見ら れた( それぞ れ全細 菌の19.5% およぴ25.4%) .後者の 両群で 増殖し たビフ ィズ ス菌 をFISH― 顕微鏡解 析およ びTerminal Restriction Fragment Length Polymorphism  (T‑RFLP)解 析 に 供し たとこ ろ,盲 腸内で はラッ ト内在 性のB. animalisが有 意に増 殖して いること が明ら か に な った . ま た ,非 内 在 性 であ るB.breveはシ ン バ イ オテ ィ ク ス 群の み で 全 細菌 の6.3% まで 増 殖 した こ と が 観察 さ れ た .こ れ ら の 結果 は シ ン バイ オ ティク スとし て投与 した細 菌種を 内在 性 の 同属 細 菌 と 区別 し て 明 確に 検 出 し ,シ ン バ イ オテ ィ クス効 果を明 示した 初めて のもの であ る , また , ラ フ イノ ー ス は ラッ ト 盲 腸 にお い て , 内在 性 だけで なく非 内在性 のビフ ィズス 菌の 増 殖 を も 促 進 す る ビ フ ィ ズ ス 因 子 と し て の 機 能 を 持 っ こ と が 示 さ れ た .

2)   in vitroヒ ト 糞 便 培 養 に よ る 各 種 オ リ ゴ 糖 の ビ フ ィ ズ ス 菌 増 殖 促 進 試 験   ヒ ト に お ける ラ フ ィ ノー ス の ビ フィ ズ ス 因 子と し て の 機能を 評価する ために ,まず ヒト糞 便 中 に存 在 す る ビフ ィ ズ ス 菌の ラ フ ィ ノー ス に よ る増 殖 促 進効果 を静置 培養試 験によ り調べ た.

糞 便 サ ン プ ル を 接 種 し た培 養 液 に 炭素 源 と し て種 々 の 糖 を添 加 し , 培養24時 間後 の ビ フ アズ ス 菌 の 増 殖 をFISH法に よ り 解 析し た . そ の結 果 , ラ フィ ノ ー ス 添加 に よ ル ビフ ィ ズ ス 菌は 全 細 菌の12.9%にま で到達 していた のに対 し,他 の糖を 加えた 場合は ,それ ぞれ6.1% (1−ケ スト ース) ,3.6% (ニスト ース) および2.4%(グ ル コ ース)となり,ラフィノースがビフアズス因 子とし て優れ ている ことが 加vitroで確 認され た.

3) FCMの 適 用に よ るFISH法 の ハイ ス ル ー プッ ト 化

  FISH法 は 螢 光 顕 微 鏡下 で タ ー ゲッ ト 細 菌 細胞 を 検 出 して 手 動 計 数す る た め ,手 間 と 時 間が か か る . そ こ で ビ フィ ズ ス 菌 の動 態 解 析 をよ り 迅 速 に行 う た め に,FISH法 に 迅 速 計数 法 と し て のFCMを 組 合 わ せ , 本 法 の ハ イ ス ル ー プ ッ ト 化 を 試 み た .2種 類 の 蛍 光 色 素(FITCとCy5) を 用 い たFISHを 行 い ,FCM解 析 を 行 っ た と ころ , 筆 者 らの 解 析 に 供与 頂 い た 糞便 サ ン プ ルで は ,FITC検 出 チャ ン ネ ル にお い て 強 い自 家 螢 光 が検 出 さ れ た. こ の た め, 種 々 の 解析 条 件 を 検 討し , 単 一 の色 素 で あ るCy5を 用 い て, 自 家 蛍 光物 質 を 含 む糞 便 サ ン プル 中 の 種レベ ルのビ フ ィズ ス 菌 の 動態 解 析 が 可能 な 方 法 を確 立 し た .

4) ラ フ イ ノ ー ス 摂 取 に よ る ヒ ト 糞 便 中 ビ フ ィ ズ ス 菌 動 態 のFISH‑FCM法 を 適 用 し た 解 析   励vivoで の ラフ ィ ノ ー スの ビ フ ィ ズス 因 子 と して の 効 果を明 らかに するた めに, ヒトラ フイ ノ ー ス 摂 取 試 験 を 実 施 し た . 13名 の ボ ラン テ ィ ア の方 々 に2gの ラ フ ィ ノー ス を 一 日2回,4 週間 に 亘 っ て摂 取 し て 頂き , 摂 取 前(0週 ) , 摂 取中 (2週 および4週), 摂取後 (摂取 終了後4 週間 後 ,8週 ) の4回 ,糞 便 サ ン プル を 供 与 頂い た .3) で 確立 し た 方 法を 用 い て 糞便中 のビフ ィズ ス 菌 の 動態 を 解 析 した . そ の 結果 , 属 レ ベル で は , ビフィ ズス菌は ラフィ ノース 摂取前 平 均で 全 菌 数の12.5% 存在し ており ,ラフ イノース 摂取に より28.7%(2週 )およ び37.2%(4週)

まで増加した.種レベルでは,B. aあたJce門触,B.cロセ門甜脇f痂group,丑め g弸Iの3種が優勢で あ っ た . 優 勢3菌 種 は ラ フ イ ノ ー ス 摂 取 に より2週日 ,4週 日 と 漸次 的 に 増 加し た が , 摂取 終 了と 共 に0週 と 同程 度 の 割 合ま で 低 下 した , ラ フ ィノ ー ス 投 与期 間 中 は ,成 人 に おい てマイ ナ ーな菌 種であるぢ.ろ胞vP,B.6めぬm,ぢ.ぬ門釘甜m,ぢ.昭 血鰤についても増殖促進が見られ たが , こ れ らの 割 合 は 不安 定 で あ った . こ れ らの こ と か ら優勢 菌種とマ イナー な菌種 間で, ラ フイ ノ ー ス によ る 増 殖 促進 効 果 に 異な る 傾 向 があ る こ と が明ら かになっ た,本 研究は ラフィ ノ

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ース投与によるヒト内在性ビフィズス菌の 動態を種レベルで詳細に解析した最初の報告であ る.

  以上,本研究ではラフイノースのビフィズス菌増殖促進作用をラットおよびヒトにおいて種 レベルで初めて明らかにし ,本オリゴ糖の腸内菌叢改善機能に科学的な基盤を与えた,また FISH‑FCM法をハイスループ ットな汎用性の高い分子生態学的解析手法として確立できた.以 上の成果は,プレバイオティクスの開発研究ならびに腸内細菌叢解析に大きく寄与するもので ある.

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

横 田    篤 浅 野 行 蔵 小 林 泰 男 石 塚    敏

     学位論文題名

Molecular Ecological Analyses of Alteration of Bifidobacterial Population by Administration of Raffinose in Rat Cecum and Human Intestine

( ラ フ イ ノ ー ス 投 与 に よ る ラ ッ ト 盲 腸 お よ び ヒ ト 腸 管 内 で の     ビ フ ィ ズ ス 菌 動 態 の 分 子 生 態 学 的 解 析 )

  本 論 文 は 英 文130頁 , 図30, 表15,6章 か ら な り , 参 考 論 文1編 が 付 さ れ て い る .

  ビ フ ィ ズ ス 菌 は 宿 主 の 健 康 に 対 し て 種 々 の 有 益 な 効 果 を 示 す プ ロ バ イ オ テ ィ ク ス で あ る . 一 方 , ラ フ ィ ノ ー ス は ビ フ ィ ズ ス 菌 増 殖 効 果 が 明 ら か に さ れ て い る プ レ バ イ オ テ ィ ク オ リ ゴ 糖 の ー っ で あ り , 甜 菜 か ら 砂 糖 精 製 の 副 産 物 と し て 得 ら れ る た め , 北 海 道 の 食 品 産 業 上 重 要 で あ る . 本 研 究 は こ の ラ フ イ ノ ー ス に 焦 点 を 当 て , そ の ビ フ ィ ズ ス 菌 増 殖 効 果 の 詳 細 を ラ ッ ト と ヒ ト に お い て 解 析 し た も の で あ る . 腸 管 内 に は 多 く の 難 培 養 性 細 菌 が 存 在 す る こ と か ら , 腸 内 細 菌 の 動 態 解 析 に は 従 来 の 培 養 に よ る 菌 数 計 測 に 代 わ り , 培 養 を 伴 わ な い 種 々 の 分 子 生 態 学 的 手 法 が 開 発 さ れ て い る. そこ で本 研究 ではFluorescence in situ Hybridization (FISH)法 を用 いて 種レ ベ ル で の 詳 細 解 析 を 行 っ た . ま た , 計 数 に 多 大 な 労 カ を 有 す るFISH法 を フ ロ ー サ イ ト メ ト リ ー(FCM)と 組 み 合 わ せ て 効 率 化 し(FISH‑FCM法 ) , ヒ ト 腸 管 内 の ビ フ ィ ズ ス 菌 の 動 態 解 析 に 適 用 し て そ の 有 効 性 を 検 討 し た .

1) シ ン バ イ オ テ ィ ク ス 投 与 ラ ッ ト 盲 腸 内 の ビ フ ィ ズ ス 菌 の 動 態 解 析   ラ フ ィ ノ ー ス 投 与 に よ る ヒ ト 腸 管 内 ビ フ ィ ズ ス 菌 の 動 態 解 析 の 前 段 階 と し て , 雌 WKAH/Hkm系 ラ ッ ト に 基 本 食 , 基 本 食 十Bifidobacterium breve JCM1192T( プ ロ バ イ オテ ィク ス群),基本食十ラフアノース(プレ バイオティクス群),基本食+B. breve+

ラ フ ィ ノ ー ス ( シ ン バ イ オ テ ィ ク ス 群 ) の4種 の 異 な る 試 験 食 を3週 間 に 亘 っ て 投 与 し , 盲 腸 内 ビ フ ィ ズ ス 菌 の 動 態 をFISH‑顕 微 鏡 法 に よ り 解 析 し た . そ の 結 果 , 基

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本 食 群 およ び プロ バ イオティ クス群ラ ットの盲腸 内全細菌 に対する ビフィズ ス菌 の 割合はそ れぞれ0.4% およぴ013%と 低かったが,プレバイオティクス群およびシ ン バイオテ ィクス群 ラットでは ,それぞ れ全細菌の19.5%韜よび25.4%を占めるま で増殖した,後者の両群で増殖したビフィズス菌はラット内在性のB.ロ門imロぬであ り ,非内在 性である

B

. breveはシンバ イオティクス群のみで全細菌の613%まで増 殖したことが観察された.これらの結果から,ラフィノースはラット盲腸に茄いて,

内 在 性 だけ で なく 外 来のビフ ィズス菌 の増殖をも 促進する ビフィズ ス因子と して の機能を持つことが示された.

2

)FCMの適用に よる

FISH

法の ハイスル ープット 化

  FISH

法 は蛍 光 顕 微鏡下 でターゲッ ト細菌細 胞を検出 して手動 計数する ため,手 間 と 時 間 が か か る , そ こ で

FISH

法 に 迅 速計 数 法と し て のFCMを 組合 せ , 本法 の ハイ ス ルー プ ッ ト化 を 試み た . 糞便 サ ンプ ル に 対し常 法として

2

種類の蛍 光色素

(FITC

Cy5)

を 用 い た

FISH

を 行 い ,

FCM

解 析 を 行 っ た と こ ろ ,

FITC

検 出 チ ャ ンネルにお いて強い バックグ ラウンド の自家螢光が検出され,計測を妨害した.こ のため,種 々の解析 条件を検 討し,

Cy5

の みを用い ることで ,自家螢光 物質を含む 糞 便 サ ン プ ル で も 計 測 可 能 な 汎 用

FISH‑FCM

法 を 確 立 す る こ と に 成 功 し た .

3

) ラ フ イ ノ ー ス 摂 取 に よ る ヒ ト 糞 便 中 ビ フ ィズ ス 菌動 態 の

FISH‑FCM

法を 適 用 した解析

  

ヒ ト 腸管 内 で のラ フ ィノ ース のビフィ ズス因子 としての効 果を種レ ベルで明 ら かに す る ため に ,ラ フ ィ ノー ス摂取試 験を実施 した. 2gのラ フィノー スを一日

2

回,4週間 に亘って 摂取した

13

名のボラ ンティア から,摂取 前(

0

週) ,摂取中 (2 週 お よ ぴ

4

週 ) ,摂 取 後 (摂 取 終了 後

4

週 間 後,

8

週 ) の4回, 糞 便 を提 供 いた だ き,

FISH‑FCM

法 を 用い て 糞便 中のビフ ィズス菌 の動態を 解析した, その結果 ,属 レベルの ビフアズ ス菌は0週 には平均 で全菌数 の12.5%存在し ており, ラフィノ ー ス摂 取 に より

28.7

% (

2

週) および

37.2

%(4週) まで増加 した.種レ ベルでは ,

B

ロdolescentis,B.catenulatum group,丑longumの3種が優勢であり,これらはラフイ ノー ス 摂 取に よ り2週日 ,

4

週 日 と漸 次 的に 増 加 した が ,摂 取終了と 共に0週と 同 程度の割 合まで低 下した. ラフィノ ース投与 期間中は,成人においてマイナーな菌 種で あ る 丑breve,丑

bifidum

,ぢ

dentium

,Bangulatumにっ いても増 殖促進が 見 られたが ,これら の割合は 不安定で あった. これらのことから優勢菌種とマイナー な菌種間 で,ラフ アノース による増 殖促進効 果に違った傾向があることが明らかに なった. 本研究は ラフィノ ース投与 によるヒ ト内在性ビフィズス菌の動態を種レベ ルで詳細に解析した最初の報告である,

  

以 上 , 本研 究 では

FISH

法 を適用す ることに より,ラフ イノース のビフィ ズス菌 増 殖促 進 作用 を ラ ット や ヒ トに 茄 いて 種 レ ベル で 初めて 明らかに した.ま たFCM を 組合 せ るこ と に より

FISH

法のハ イスルー プット化を 達成する とともに ,自家螢

176

(6)

光物質を多量に含む糞便サンプルにも適用可能な汎用性の高いFISH‑FCM 法を確 立した.特にこれを用いて解析したヒト糞便中のビフアズス菌の種レベルでの動態 は,きわめて興味深い新知見を含んでいる.以上の成果は,プレバイオティクスの 科学的理解に役立っだけでなく,腸内細菌叢の解析,特にヒト腸管内でのビフアズ ス菌の生態学的理解に大きく寄与するものである・

   よって審査員一同は,アハマド・ディノトが博士(農学)の学位を受けるのに十

分な資格を有するものと認めた.

参照

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