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博士(農学)松島 肇 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)松島   肇 学位論文題名

北海道における沿岸域の景観特性と      そ の 保 全 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

  

我が国は四方を海で囲まれ、その海岸線の総延長は33 ,200km と世界でも有数の長 さを誇っている。平地と海を擁する沿岸域は、古くから産業や交通の拠点として国土 の中心的な役割を担い、、大規模な海面埋立や港湾の建設等は我が国の高度経済成長に 大きな役割を果たした。しかし、一方で倣海岸地域における利用や開発の高密度化は 海岸環境の悪化や海岸風景の喪失をもたらした。この原因として、海岸地域が有して いる資源、特に地域環境の総合尺度のーつであり、風景を構成する重要な要素である 景観資源の価値に対する認識が不十分であるため、特殊な場合を除けぱ景観資源の存 在が開発行為を抑止できない現状を反映していると考えられる。従って、景観資源の 価値の再評価を通して海岸地域の風景観の再構築を行うことが必要とされている。

  

これらをふまえ、本研究ではまず、I )海岸地域が有する景観資源の現状(分布・保 護状況・変化)と問題点を把握することを目的とした。さらに、II) 海岸地域の景観資 源の価値の把握を行い、III) 今後の沿岸域の整備及ぴ管理について景観保全の視点から 考察することを目的とした。なお、本研究では北海道の沿岸域を中心に、一部、事例 研究を交えて論述展開を行った。

I

)海岸 地域 が有 する 景観資 源の 現状 (分布 ・保 護状 況・変化)と問題点の把握

  

沿岸域の景観資源の分布状況から我が国における北海道の沿岸域の位置づけを行い、

その変化や問題点について、自然公園制度が果たしてきた役割との関連を通して検討 した結果、北海道の海岸線は全国的にやや自然海岸の割合が高かったが、特に砂・礫 浜の割合の高さが特徴的であった。胆振海岸や石狩浜では海岸線の改変による自然海 岸の減少や、レクリエーション利用,による海浜植生の被覆面積の減少といった景観資 源の減少が確認され、沿岸域における景観資源のより適正な管理の必要性を指摘した。

特に砂・礫浜の保全は全国的に重要な課題であったが、自然公園区域に比較的保全さ れていることが確認された。しかし、これは積極的な保全では毅く、結果として利用 価値の低しヽ場所が残されてきたと推察され、海岸地域における自然公園制度の効果的

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運用の必要性を示唆した。

II)北 海道沿岸域 の景観評 価による 景観資源 の把握

1. 北海道の海 岸景観の 写真を用 いた景観 評価実験 による分 類

  北海 道 に おけ る 海 岸の 評 価と 景 観資 源との関 係を把握す るため、 海岸景観 の形態に 注 目 して そ の 評価 実 験を 行 い 、そ の 結果を用 いて類型化 を行った 。その結 果、北海 道 の 海 岸は 景 観 的に6つ の タイ プ に 分類 さ れ、 特 徴 的な 奇 岩 や、 や や閉鎖的 詮湾曲し た 入 り江の景観 が高く評 価された 。

2. 景観評価と 景観資源 との関係

  評価 に 影 響を 及 ぼ す要 因 を抽 出 す るた め 、類 型 化 され た 景観 の1つで、北 海道に広 く 分 布す る 砂 浜の 景 観を 有 す る胆 振 海岸を事 例として、 その景観 構成要素 が評価に 及 ぼ す影響を、 特に護岸 工の設置 による海 岸の改変 の影響に ついて把握した。その結果、

人 工 施設 の 存 在す る 景観 は 低 く評 価 され、丘 や岬を有す る景観が 高く評価 された。 護 岸 工 に関 し て は、 消 波工 や 直 立堤 は 低く評価 されるもの の、緩傾 斜護岸は 比較的高 く 評 価された。

  海岸 は 他 の自 然 景 勝地 等 とは 異 なり 、地域の 生活と密接 な関係に あること から、胆 振 海 岸沿 岸 の 住民 の 有す る 海 岸に 対 する印象 および望ま しい整備 の方向性 を、アン ケ ー ト 調査 の 結 果か ら 把握 し た 。さ ら に、無秩 序顔レクリ エーショ ン利用が 、環境、 特 に 海 浜植 生 に 及ぼ す 影響 が 問 題視 さ れている 北海道石狩 浜を事例 として、 その景観 的 影 響 を把 握 し 、利 用 者の 利 用 目的 に よる景観 や環境に対 する認識 の違いに ついて検 討 し た 。そ の 結 果、 沿 岸住 民 や 利用 者 の海岸に 対するイメ ージや嗜 好性は、 利用する 海 岸 や 利 用 目 的 、海 岸 環 境に 関 し て有 す る情 報 に より 異 なる こ と が明 ら かと な っ た。

3. 北海道沿岸 域におけ る景観の 修景効果

  シミ ュ レ ーシ ョ ン 写真 を 用い た 評価 実験を行 い、これま での現況 評価で得 られた結 果 を もと に 修 景効 果 の確 認 を 行っ た ところ、 すべての写 真で修景 による効 果が確認 で き た が、 緩 傾 斜護 岸 の施 さ れ た景 観 について は自然性の 低さを改 善するに は至らな か っ た。

III)北 海 道 沿 岸 域 の 整 備 及 び 管 理 に 関 す る 景 観 保 全 の 視 点 か ら の 考 察   I)お よ びII)に お い て得ら れた結果 をふまえ て、北海 道におけ る沿岸域 の整備及び 管理 について、 特に我が 国の自然 公園制度 とその問 題点について、アメリカのNationa1 Seashoreと の比 較 や 海岸 法との 関連をふ まえて検 討し、今 後の方向 性につい て言及し た。

  北海 道 の沿 岸 域 にお け る問題点 としては 、砂・礫 浜の減少 やレクリ エーション 利用 に よる 景 観 資源 の 喪 失、 開発を 前提とし た沿岸域 の管理体 制、他の 海岸地域や 利用者

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に対する関心が低い、などがあげられた。北海道の沿岸域において自然公園が、自然 景観資源の保全に有効であることは推察されたが、現状では自然公園制度を海岸保全 に適用することは困難であり、既存の海岸法との効果的な運用が課題としてあげられ た。

  

自然公園制度の効果的な運用の一例として、海水浴場のNational Seashore 的な管 理について検討した。アメリカのNational Seashore のように海岸の利用と保全に配 慮しつつ総合的な視点から陸域と海域を一体的に管理する制度は、我が国における海 水浴場のようなレクリエーション利用の集中する地域に適した制度であった。今後は、

残された自然景観資源を保全しつつ、利用者の関心を喚起するような情報の提供が必

要と考えられた。

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授   浅 教 授   新 教 授   矢 助 教 授  

川 昭 一 郎 谷   融 沢 正 士 藤 哲 也

学 位 論 文 題 名

北 海道に おける沿岸域の景観特性と      そ の 保 全 に 関 す る 研 究

本 研 究 は 、 図51、 表32を 合 み 、4章 か ら な る 総 頁 数120の 和 文 論 文 で あ り 、 別 に 4編 の 参 考 論 文 が 添 え ら れ て い る 。

  沿 岸域 にお ける 大規 模な 海面 埋立や 港湾 の建 設等 は我 が国 の高 度経済成長に大きな 役割 を果 たし て来 たが 、そ れに 伴う利 用や 開発 の高 密度 化は 海岸 環境の悪化や海岸風 景の 喪失 をも たら した 。こ の原 因とし て、 海岸 地域 が有 して いる 景観資源の価値に対 する 認識 が不 十分 であ るた め、 特殊な 場合 を除 けぱ 景観 資源 の存 在が開発行為を抑止 でき ない 現状 を反 映し てい ると 考えら れる 。従 って 、景 観資 源の 価値の再評価を通し て 海 岸 地 域 の 風 景 観 の 再 構 築 を 行 う こ と が 必 要 と さ れ て い る 。 .   本 研究 では 、I) 海岸 地域 が有 する 景観資源の現状(分布・保護状況・変化)と問題 点を把握する、II)海岸地域の景観資源の価値の把握を行う、III)今後の沿岸域の整備及 ぴ 管 理 に つ い て 景 観 保 全 の 視 点 か ら 考 察 す る 、 こ と を 目 的 と し た 。

I) 海 岸 地 域 が 有 す る 景 観 資 源 の 現 状 ( 分 布 ・ 保 護状 況 ・ 変 化 ) と 問 題 点 の 把 握   沿 岸域の景観資源の分布状況から我が国における北海道の沿岸域の位置づけを行い、

その 変化や 問題 点に つい て、 自然 公園 制度 が果 たし てき た役 割との関連を通して検討 した 結果、 北海 道の 海岸 線は 全国 的に やや 自然 海岸 の割 合が 高かったが、特に砂・礫 浜の 割合の 高さ が特 徴的 であ った 。胆 振海 岸や 石狩 浜で は海 岸線の改変による自然海 岸の 減少や 、レ クリ エー ショ ン利 用に よる 海浜 植生 の被 覆面 積の減少といった景観資 源の 減少が確認され、沿岸域における景観資源のより適正な管理の必要性を指摘した。

特に 砂・礫 浜の 保全 は全 国的 に重 要な 課題 であ った が、 自然 公園区域に比較的保全さ れて いるこ とが 確認 され た。 しか し、 これ は積 極的 な保 全で は歡く、結果として利用

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価値の低い場所が残されてきたと推察され、海岸地域における自然公園制度の効果的 運用の必要性を示唆した。

II)

北海道沿岸域の景観評価による景観資源の把握

1

. 北 海 道 の 海 岸 景 観 の 写 真 を 用 い た 景 観 評 価 実 験 に よ る 分 類

  

北海道における海岸の評価と景観資源との関係を把握するため、海岸景観の形態に 注目してその評価実験を行い、その結果を用いて類型化を行った。その結果、北海道 の海岸は景観的に6 つのタイブに分類され、特徴的な奇岩や、やや開鎖的な湾曲した 入り江の景観が高く評価された。

2

.景観評価と景観資源との関係

  

評価に影響を及ぽす要因を抽出するため、類型イ匕された景観の1 つで、北海道に広 く分布する砂浜の景観を有する胆振海岸を事例として、その景観構成要素が評価に及 ほす影響を、特に護岸エの設置による海岸の改変の影響について把握した。その結果、

人工施設の存在する景観は低く評価され、丘や岬を有する景観が高く評価された。護 岸工に関しては、消波工や直立堤は低く評価されるものの、緩傾斜護岸は比較的高く 評価された。

  

海岸は地域の生活と密接な関係にあることから、胆振海岸沿岸の住民の有する海岸 に対する印象およぴ望ましい整備の方向性を、アンケート調査の結果から把握した。

さらに、無秩序なレクリエーション利用が、環境、特に海浜植生に及ぽす影響が問題 視されている北海道石狩浜を事例として、その景観的影響を把握し、利用者の利用目 的による景観や環境に対する認識の違いについて検討した。その結果、沿岸住民や利 用者の海岸に対するイメージや暗好性は、利用する海岸や利用目的、海岸環境に関し て有する情報により異なることが明らかとなった。

3

.北海道沿岸域における景観の修景効果

  

シミュレーション写真を用いた評価実験を行い、これまでの現況評価で得られた結 果をもとに修景効果の確認を行ったところ、すべての写真で修景による効果が確認で きた。

III)

北 海 道 沿 岸 域 の 整 備 及 ぴ 管 理 に 関 す る 景 観 保 全 の 視 点 か ら の 考 察

  

北海道沿岸域の問題点としては、砂・礫浜の減少やレクリエーション利用による景 観資源の喪失、開発を前提とした沿岸域の管理体制、利用者の意識が利用場所や目的 により異なる、などがあげられた。北海道の沿岸域において自然公園が、自然景観資 源の保全に有効であることは推察されたが、現状では自然公園制度を海岸保全に適用 することは困難であり、既存の海岸法との効果的な運用が課題としてあげられた。

  

自然公園制度の効果的な運用の例として、米国のNational Seashore のように海岸 の利用と保全に配慮しつつ総合的な視点から陸域と海域を一体的に管理する制度は、

我が国における海水浴場のようなレクリエーション利用の集中する地域に適した制度

と考えられた。また、残された自然景観資源を保全しつつ、利用者の関心を喚起する

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ような情報提供の必要性を指摘した。

  以上 のように、本研究は北海道における沿岸域の景観整備の現状と問題点を解析し、

景 観評 価に 影響 を及 ぽす 要因 を明ら かに した 。ま た、 今後 の効 果的毅景観資源の保全 と 管 理 の 方 向 性 を 示 唆 し て お り 、 その 成 果 は 学 術 的 ・ 応 用 的 に 高 く 評 価 さ れ る 。   よっ て審 査員 一同 は、 松島 肇が博 士( 農学 )の 学位 を受 ける のに十分な資格を有す る もの と認 めた 。

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参照

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