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博 士 ( 農 学 ) 梶 野 洋 一 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 梶 野 洋 一

学 位 論 文 題 名

北 海 道 に お け る ヒ メ ト ビ ウ ン カ の 生 態 と イ ネ 縞 葉 枯 病 の 防 除 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本論 文は日 本語で 書かれ ,本文 は7章128ぺー ジより なる。

  第1章 緒 言。 ヒ メ ト ビ ウン カ に よ っ て 媒介 さ れる ウイル ス病 である イネ縞 葉枯病 が本 州にお いては 古くか ら発 生を見 ていた こと, 近年 全国的 な流行 があり ,その 直後1968年に初めて北海道 におい て発生 が確 認され たこと など歴 史的 経緯に ふれた あと, 北海道 の条 件に適合した防除法を 確立す るため 研究 を開始 したこ と,そ の知 見をも とに本 病の体 系的な 防除 対策を確定したことを 述べて いる。

  第2章 材 料お よ び 方 法 。供 試 ウ ン カ の 出所 , 供試 イネ, コム ギの品 種,供 試ウイ ルス 源につ い て 述 べ , ウ ン カ の 飼 育 方 法 , ウ イ ル ス の 検 定 方 法 に っ い て 説 明 し て い る 。   第3章 ヒ メト ビ ウ ン カ の生 態 。 本 種 は 低温 ・ 短日 条件で 休眠 幼虫を 生ずる が,休 眠性 には地 理 的変 異 が あ る 。北 海 道 個 体 群で は1〜3齢が 感 受期 であり ,越冬 幼虫の 主体 は4齢 であ る。緯 度 が高い ほど臨 界日長 が長く なる ことか ら休眠 幼虫は 早く より出 現し,9月 以降の 孵化幼 虫はす べて休 眠し, 水田 に隣接 した畦 畔・農 道な どの雑 草地で越冬する。覚醒には60〜80日の低温(3℃ 土2℃ ) 期 間 を 必要 と し ,12月 中旬よ り覚 醒が始 まり,1月 下旬ま でには 大部分 の個 体が覚 醒す る。越 冬前と 後で の幼虫 密度に は有意 な相 関があ り,回 帰式か ら生存 率は10%と推定されるが,

この数 値は野 外ケ ―ジで の生存 率(15%〜30% )より 低い 。生存 率と11月 の気候要因の間には有 意な相 関があ り, また融 雪期に も生存 率が 低下す る。越 冬後の 幼虫の 発育 から有効積算温度を算 出した 。越冬 後の 死亡要 因にっ いて明 確な 結果は 得られ なかっ たが, カマ バチの寄生率は低く主 要な要 因では ない 。越冬 世代成 虫の翅 型発 現には 産地間 で相違 がある 。越 冬世代成虫はイネ移植 後 の水田 に直接 侵入し ,周年 イネ に強く 依存し ている 。こ の世代 と第1世代 幼虫の 発生量 を予測 する回 帰式を 呈示 した。

  第4章 イ ネ縞 葉 枯 病 の 発生と 保毒虫 の推 移。北 海道に おいてfま ヒメト ビウン カは イネに 依存 して水 田周辺 で周 年経過 するた め,発 病株 率の増 加に伴 ってウ イルス の吸 汁獲得が容易となり,

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保毒 虫率 は上昇 する。 一方, 年間世 代数が少ないため経卵伝染による保毒虫の自然低下率が低い。

これ がウ イルス 病の流 行を長 引かせ てい る要因 と考え られる 。イ ネのウ イルスに対する感受性は 若 葉 期ほど 高く 成育に 伴って 低下す る。 重要な 感染時 期は, 移植後 より7月中 旬ま でであ り,ウ ンカ の越 冬世代 成虫と 第1世代幼 虫が関 与する 。ウ イルス 媒介最適温度は20〜  25℃で最低温度は 10℃ 付近に ある。 このこ とか らウイ ルスの 主たる 媒介は 越冬 世代成 虫によ ってなされることにな るが ,こ の世代 のウイ ルス媒 介能カ は比 較的低 い。越 冬中の 高い 死亡率 によりこの世代はまた発 生量 が年 間を通 じても っとも 低い。 これ らが関 東以西 に比し てイ ネ縞葉 枯病の発生が低く抑えら れ て いる要 因と 考えら れる。 ウイル ス病 制御の 目的か らは越 冬世代 成虫 と第1世代 幼虫の 防除が 重要 とな る。減 収と防 除経費 に基づ ぃて 被害許 容水準 を発病 株率 で10%と 推定し,これに対応す る第1世 代成虫 の被 害許容 保毒虫 密度は6月 下旬で 株あた りO. 02頭,7月中旬でO.115頭とした。

こ の 密 度を ウ ン カ 発 生量 の 予測 回帰式 から逆 算す ると,5月1半旬 の水 田畦畔 におけ る越冬 世代 幼虫 の要 防除保 毒虫密 度は50回振り 掬いと り頭数 で1.7頭とな る。

  第5章 ヒ メ 卜 ビ ウン カ お よ び イネ 縞 葉 枯 病 の防 除 法。殺 虫剤に 対す るウン カの感 受性に は世 代や 虫態 によっ て差が あり, とくに 越冬 前の幼 虫で低 い。産 地間 での変 動も大きく,抵抗性の発 達が 示唆 された 。春季 の畦畔 雑草の 焼却 は結果 のばら っきが 大き く,完 全な防除は期し難い。殺 虫剤 によ る畦畔 防除は 春季で は効率 的な 方法で あるが ,これだけでtま不十分である。本田での茎 葉 散 布は第1世 代幼虫 によ るウイ ルスの 圃場内 伝播 を防止 するう えで効 果があ る。 水面散 布には 防除 効果 は認め られな かった 。殺虫 剤の 育苗箱 施用に よる効 果は 速効的 であり越冬世代の防除に 有効 であ る。い ずれの 方法も 単独で は効 果が十 分では なく, とく にウイ ルスの発生制御効果は不 十分 であ った。 畦畔防 除を基 幹とし て, これら を組合 わせる こと によっ て効果的な防除が可能で ある こと を示し た。

  第6章 総 合 考 察 。北 海 道 に お ける イ ネ 縞 葉 枯病 の 発生と いう新 事態 に対処 するに は,現 在の 段階 では 殺虫剤 の使用 に頼ら ざるを 得な い。本 研究の 結果を 考察 し,イ ネ縞葉枯病の常発地帯で は継 続的 な保毒 虫検定 を実施 し,ヒ メト ビウン カの発 生密度 を定 期的に 把握することにより,総 合的 な防 除体系 を構築 できる ことを 論じ ている 。

  第7章摘 要。

  以 上のご とく, 本論文 は北 海道に おけるイネ縞葉枯病の初めての発生という事態に対応すべく,

ウン カの 発生生 態,ウ イルス 病発生 との 関係な ど基礎 的な研 究よ り出発 して,可能な対策を確立 する に到 った経 過を総 括して 述べた もの である 。ウイ ルス病 対策 として はウイルスに抵抗性のあ るイ ネの 品種を 育成す ること が理想 であ るが, いまだ 北海道 に適 した抵 抗性イネ品種の実用化を     ー160―

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みていない。北海道では気候上の制約により,イネの移植時期を変更するなどの耕種的方法でヒ メトビウンカの初期発生を回避することも不可能である。本州で有カな天敵であるカマバチ類も 北海道では寄生率が甚だしく低い。従って現段階では薬剤防除に頼らざるを得ないが,殺虫剤の 濫用を避け,そのもっとも効果的な使用を体系的に確立した。

学位論文審査の要旨

  本論文は日本語で書かれ,本文は7章128ぺージよりなる。

  イネ縞葉枯病はヒメトビウンカによって媒介されるウイルス病で,本州においては古くから発 生していたが,近年全国的な流行があった直後,1968年に初めて北海道での発生が確認され,現 在北海道の水稲に発生する唯一のウイルス病である。ヒメ卜ビウンカは北海道においてはムギ類 北地モザイク病の媒介昆虫として重視されていたため水田での生態に関する研究は極めて少な かった。イネ縞葉枯病が北海道に定着し,年々その発生が拡大したため,北海道に適合した効果 的・抜本的な防除対策の確立が要望された。ウイルス病対策としては抵抗性品種の育成が理想で あるが,北海道ではいまだ実用化されていない。移植期を遅らせるなどの耕種的方法も気候上の 制約から不可能である。

  ヒメトビウンカの北海道における越冬世代にっいては従来全く研究がなかった。本種は緯度が 高いほど臨界日長が長くなることから,北海道では早くから(8月下旬)休眠幼虫が出現し9月 以降の孵化幼虫はすべて休眠に入る。光周期感受時期はl〜3齢で4齢幼虫が休眠齢期の主体で ある。越冬前幼虫は水稲の収穫とともに畦畔や農道の雑草地に移動し,そこで越冬する。休眠覚 醒は低温(3℃土2℃)下60〜80日で促進され,野外では1月下旬以降大部分の個体が覚醒して いると考えられる。越冬中,とくに根雪前後と融雪期に死亡する個体が多いが,全期間を通じて の生存率は10〜20%(野外ケージではやや高く15〜30%)である。早くから休眠から覚醒してい た幼虫は融雪後気温の上昇に伴って発育を開始する。年間3世代に過ぎないことも北海道での特 殊現象である。発育零点と有効積算温度を決定し,越冬世代と第1世代の発生量を予測する回帰

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主 副

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式 を呈示 してい る。

  越 冬世代 が成 虫とな るのは 本田移 植の 時期で あり, 畦畔等 より直 接イ ネに移 動し, これ以後ウ ン カはイ ネに強 く依 存しな がら水 田周辺 で周辺 経過 する。 これが 北海道 にお ける本 種の生態の特 色 である 。保毒 個体 による ウイル ス病の 伝播は イネ 移植後 より直 ちに始 まる が,越 冬世代は越冬 中 の高い 死亡率 で発 生量が 年間を 通じて もっとも少なく,その媒介能カも低下している。しかし,

そ の後の 吸汁獲 得に よヮて 保毒虫 率は急 速に上 昇す る。年 間世代 数が少 ない ため経 卵伝染による 保 毒虫の 自然低 下率 は低い 。一方 ,イネ のウイルスに対する感受性は若葉期ほど高く,生育に伴つ て 低 下 す る。 重 要 な 感 染 時期 は 移 植直 後より7月 中旬ま でであ り,ウ ンカ の越冬 世代幼 虫と第1 世 代幼虫 が関与 する 。これ らのこ とから ,ウイ ルス 発生制 御を目 的とし たウ ンカの 防除はこれら の 世代を 対象と すれ ばよい ,とし ている 。減収 と防 除経費 に基づ いて被 害許 容水準 を発病株率で 10% と 推定 し ,こ れに対 応する 第1世代幼 虫の被 害許 容保毒 虫密度 は6月下旬 で株当 りO.02頭 , 7月 中 旬 でO. 115頭 と し た 。こ の 密 度をウ ンカ発 生量の 予測回 帰式 から逆 算して ,5月1半旬の 水 田畦畔 におけ る越 冬世代 幼虫の 要防除 保毒虫 密度 は50回振 り掬い とり 頭数で1.7頭と算定して い る。

  春 季の畦 畔雑 草の焼 却は結 果にば らっ きが大 きい。 殺虫剤 の畦畔 防除 は効果 的であ り,育苗箱 施 用 は 越 冬世 代に 速効 的に対 処でき ,本田 での茎 葉散 布は第1世 代に対 して効 果的で ある 。畦畔 防 除を基 幹とし てこ れらの 防除を 組み合 わせ, イネ 縞葉枯 病の常 発地帯 では 継続的 な保毒虫検定 を 実施し ,ヒメ トビ ウンカ の発生 密度を 定期的 に把 握する ことに より, 総合 的な防 除体系を構築 で きるこ とを示 した 。なお ,本州 におい て本種 の有 カな天 敵であ るカマ バチ 類は北 海道では寄生 率 が極め て低く ,本 種の生 物学的 防除は 困難で ある として いる。

  以 上のご とく ,本論 文は北 海道に おけ るイネ 縞葉枯 病の始 めての 発生 に対応 して, 北海道の気 候 とイネ 栽培条 件の もとに おける ウンカ の発生 生態 とウイ ルス病 発生と の関 係を追 及し,現状に お いても っとも 効果 的な防 除法を 確立し たもの であ る。生 態の基 礎的な 研究 の成果 に立って農業 へ の貢献 をなす もの であり ,学力 確認試 験の結果とあわせて,審査員一同は論文提出者が博士(農 学 )の学 位を受 ける にふさ わしい 者と判 定した 。

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