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博士(農学)海野剛裕 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)海野剛裕 学位論文題名

糸状菌汐―グルコシダーゼの縮合・糖転移反応を用いた 苦味0 ―グルコオリゴ糖の生産に関する研究

学位論文内容の要旨

  近 年 、 食 品 素 材 と し て の 糖 質に は 、 期 待 さ れ る 機 能 と し て栄養 学的 機能 (第 一次 機 能 )、物 理化 学的 機能 (第 二次機能)に加え、生体調節機能としての第三次機能が求めら れ るよう にな って きた 。こ の第 三次 機能 を発 揮す る糖 質と して様 々な オリ ゴ糖 が開 発さ れ 、市販 され てい る。 これ らの糖質の多くは、糖質関連酵素の糖転移反応を利用して製造 さ れ て お り 、1970年 代 よ り 盛 ん に 基 礎 お よ び 応 用 研 究 が な さ れ て き た 。   本研究 で、 三次 機能 に加 え、これまでの糖質の二次機能に新たなカテゴリーを与える糖 質 を開発 する こと を目 的と し、p―glucosidaseに 着目 して 新規な オリ ゴ糖 の製 造に つい て 検討を 行っ た。

  1.Asperg.田usn起碧r起源 のロ ―glucosidase市販標品から、比較的簡便な三ステップ の カラ ムク 口マ トグ ラフ イー を順 次行 うこと によ ルロ −glucosidaseを高度に精製し、そ の 酵素 化学 的諸 性質 につ いて 検討 を加 えた。 本ロ ―glucosidaseの示す反応至適温度、温 度 安 定 性、反 応至 適pH、pH安定 性は 、そ れぞ れ65℃,60℃ ,pH4.5,pH3.1〜8.5であ り 、工 業的 規模 で用 いる 酵素 とし ては十分利用可能な性質を有していた。また、これまで 多くのロ−glucosidaseで報告されてきたロ一ga亅actosidase活性を併有するという結果は得 ら れず 、本ロ−glucosidaseは基質の非還元性末端グルコースのC―4位水酸基の立体配置を 厳 密に 認識 して いる こと が示 唆さ れた 。他の 様々 な起 源の ロ−glucosidaseにおいてロー glucosidase活性 とロ −galactosidase活性を併有するのか否かについては、高度に純化さ れ た酵 素を 用い て基 質特 異性 の解 析や活性解離基近傍の構造,基質と酵素との結合状態な どの解析が必要であることを指摘した。

  2.pーglucosidaseは、 縮 合 ・ 糖 転 移 反 応 を も 触 媒 す る こ と が知 られて いる が、 本B‑

glucosidaseについ ても 縮合 ・糖 転移 反応 につ いて の解 析を 行った。本ロ‑glucosidaseは 縮合 反応 の際 には 、水 解反 応の 反応生成糖であるロ―グルコースのみを基質として利用す るこ とが 確認 され た。 また 、糖 転移反応においてはローグルコ二糖類(ソホ口ース、ラミ ナリ ピオ ース 、セ 口ピ オー ス、 ゲンチオピオース)を基質とし、これらの二糖類の非還元 性末端グルコースのC―6位にロー1,6−グルコシド結合でグルコース残基が結合したオリゴ 糖が 主転 移反 応生 成糖 であ るこ とを確認した。これは、Cー6位が一級アルコールでピラノ

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ース環から離れているために、糖転移反応が行われやすいこと、C―6位にグルコース残基 が結合したオリゴ糖の水解速度が速くないことなどの条件が重なったためであると推定さ れる。縮合反応と糖転移反応を用いることにより、高濃度グルコースからオリゴ糖の酵素 合成を行うことが可能となり、最終的に54%のオリゴ糖を含有する反応液を得ることがで きた。この結果から、本ロ―glucosidaseの縮合・糖転移反応を用いることにより、オリ ゴ糖の工業的生産の可能性が開けた。

  3.以上の結果をもとに高濃度グルコースを基質として、縮合・糖転移反応を利用した ロ―グルコオリゴ糖含有シラップの工業的な製造条件について検討した。その結果、グル コース濃度65%(W/W),65℃,グルコースlgあたり1.5 unitsの酵素量という、これまで の澱粉糖やオリゴ糖の製造条件とはきわめて異なる条件を用いることにより、約45%のオ リゴ糖を含有するローグルコオリゴ糖含有シラップの工業的な製造法を確立した。さらに カラムク口マト分画とスプレードライヤーによる高純度化、粉末化を行うことにより約 80%のオリゴ糖を含有するローグルコオリゴ糖含有シラップ・粉末の製造法も確立した。

  4.従来、ゲンチオオリゴ糖をはじめとする¢―グルコオリゴ糖について、食品用途と して用いられた例はほとんどなく、その諸特性も明らかにされていない。得られたローグ ルコオリゴ糖含有のシラップの諸特性について検討し、これらのシラップがゲンチオオリ ゴ糖に起因するまろやかな苦味を呈すること、きわめて高い吸・保湿性などを有すること を明らかにした。これらの特性は食品の加工上、苦味の付与や呈味改善、食品の日持ち向 上などの効果が期待できる。また、粘度特性、浸透圧、水分活性などの諸特性において、

ショ糖に比較的近い特性を示すので、食品素材として用いる際にも扱いやすいものと推測 された。

  5.生体調節機能としての第三次機能、特に卩I一グルコオリゴ糖のヒト腸内細菌叢に 与 え る 影 響 に つ い て 検 討 した 結 果 , ロ ー グ ル・ コオリ ゴ糖 はin vitr〇 にお いて Bifidobacteria,Lactobacilliの増殖効果が認められ、さらに加vivoにおいても4g/日の 摂取でBifidobacteriaの占有率の増加が認められた。このことは、ローグルコオリゴ糖が ピフィズス菌増殖効果を有するオリゴ糖として有効であることを示している。また、近年 ではぺットの餌にも同様の効果が期待されている。これは、ペットを室内で飼育する飼い 主が増えたことにより、ペットの糞便の臭いの改善が期待されていることや、ペットがヒ トと同様な食生活をするようになったことで、肥満などのヒ卜で言われる生活習慣病にか かる例が増加したためであると言われている。一般にイヌやネコの腸内細菌叢では、乳酸 菌としてBifidobacteriumはほとんど検出されず、Lactobacillusが優勢菌である。これま でに開発されてきたピフィズス菌増殖活性を有するオリゴ糖の多くは、Bifidobacterium における資化性は高いが、Lactobacmusにおいてはほとんど資化されない。ローグルコオ リゴ糖ではェゑcめ6ac田usにおける資化性も高いので、ヒトの食品のみならずべットの餌 などの用途にも利用可能であると考えられた。

6.以上のように、微生物起源のロ‑glucosldaseを高濃度のグルコース溶液に作用させ

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て、縮合・糖転移反応によルロ―グルコオリゴ糖含有シラップの工業的な製造が可能と なった。このローグルコオリゴ糖含有シラップは特有の苦味を有しているので、苦味の付 与を含めた呈味改善に利用されているが、さらに、苦味を感じない程度の添加量で野菜な どのエグ味除去などの効果を有することなども明らかになっているが、このメカニズムは 不明である。今後さらに新たなローグルコオリゴ糖の機能性の探求、食品用途への利用の 拡大・普及が期待される。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

糸状菌0 ―グルコシダーゼの縮合・糖転移反応を用いた      苦 味 0 ― グ ル コ オ リ ゴ 糖 の 生 産 に 関 す る研 究

  本 論 文 は 、 和 文129頁 、 図70、 表19、7章 か らな り 、他 に 参 考論 文8篇 が付 さ れ てい る。

  近年 、 食品 素 材 とし て の 糖質 に は、 期 待 され る 機能 と し て栄 養 学的 機 能 (第 一 次 機 能) 、物理化 学的機能 (第二次機 能)に加 え、生体 調節機能としての第三次機能が求めら れ る よう に なっ て い る。 こ の第三次機 能を発揮 する糖質 として様 々なオリ ゴ糖が開 発さ れ、 市販され ている。 これらの糖 質の多く は、糖質 加水分解あるいは合成酵素の糖転移反 応 を 利用 し て製 造 さ れて お り、1970年代よ り活発に 基礎的お よび応用 的研究が なされて きた 。

  本研 究は、糖 質の第三 次機能に加 え、その 第二次機 能に新たなカテゴリーを与える糖質 を開 発するこ とを意図 して、新規 なオリゴ 糖の製造 について検討を行ったものであり、研 究の 結果は、 以下のよ うに要約さ れる。

  1.  AspergmuSn鱈erロ−glucOSidaSeの市販標 品から、pーglucoSidaSeを比較的 簡便 な 三 段 階 の カ ラ ム ク 口 マ ト グ ラ フ イ ー (DEAEーTOyopearl,Butyl−TOyopearl, TbyopearllHW) を行 う こ とによ り均一な タンパク質 にまで精 製し(収 量82%)、 その酵 素 化 学的 諸 性質 に つ いて 検 討し た 。 精製 酵 素 の示 す 加水 分 解 反応 に おけ る 温 度安 定 性

(60℃ ま で) 、 反 応至 適pH(pH4.5)、pH安定性 (pH3.1〜8.5)は、工 業的規模 で用 いら れる酵素 としては 十分利用可 能な性質 を有して いることが判明した。また、本酵素に はこれまで多くのロ−glucosidaseで報告されているローgalactosidase活性は認められず、

基質 の非還元 性末端グ ルコースのC―4位水酸 基の立体 配置を厳密に認識していることが示 唆さ れた。

  2. ロ―glucosidaseは、 縮合反 応(水解 の逆反応) および糖 転移反応 を触媒す ること が知 られてい るが、本 酵素につい ても縮合 ・糖転移 反応についての解析を行った。その結 果、 縮合反応 の際には 、水解反応 の反応生 成糖であ るローグルコースのみを基質として利

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用することが確認された。また、糖転移反応において各種ロ―グルコ二糖類(ソホ口ー ス、ラミナリビオース、セ口ピオース、ゲンチオピオース)を基質とした場合、これらの 非還元性末端グルコースCー6位にグルコース残基が転移され、ロー1,6―グルコシド結合を もっオリゴ糖が主反応生成糖(三糖類)であることが明らかとなった。さらに、縮合反応 と糖転移反応を用いることにより、高濃度グルコースからオリゴ糖の酵素合成を行うこと により、最終的にゲンチオオリゴ糖(ロー1,6一グルコシド結合)を主成分とする54%のオ リゴ糖を含有する反応液を得た。

  3.以上の結果をもとに、高濃度グルコース(65%,w/ッ)を基質として、縮合・糖転 移反応を利用したB一グルコオリゴ糖含有シラップの工業的な製造条件について検討し、

約45%のオリゴ糖を含有するローグルコオリゴ糖含有シラップおよび粉末の工業的な製造 法を確立した。さらにカラムク口マト分画とスプレードライヤーによる高純度化、粉末化 を行うことにより約80%のロ―グルコオリゴ糖を含有するシラップおよび粉末の製造法を 確立した。

4.従来、ゲンチオオリゴ糖をはじめとするローグルコオリゴ糖について、食品用途とし て用いられた例はほとんどなく、その諸性質も明らかにされていない。得られたローグル コオリゴ糖含有シラップの諸特性について検討し、これらのシラップがゲンチオオリゴ糖 に起因するまろやかな苦味を呈すること、非常に高い吸・保湿性などを有することを明ら かにした。これらの特性は食品の加工上、苦味の付与や呈味改善、食品の日持ち向上など の効果が期待できることを示した。また、粘度特性、浸透圧、水分活性などの諸特性にお いて、ショ糖に比較的近い特性をもつことを明らかにした。

5.生 体 調節 機能 としての第 三次機能、 特にロ―グ ルコオリゴ 糖のヒ卜腸 内細菌叢 に与える影響について検討した。  その結果、p―グルコオリゴ糖はin vitroにおいて Bifidobacteria,Lactobacilliの増殖効果が認められ、さらにin vivoにおいても4g/日の 摂取でBifidobacteriaの占有率の増加が認められた。

  以上のように、本研究は微生物起源B←glucosidaseの縮合・糖転移反応により8―グル コオリゴ糖の工業的製造を可能とし、特有の苦味を呈する臼一グルコオリゴ糖を食品の新 しい素材として利用への途を開いた。その成果は、学術的のみならず産業上の応用面にお いても寄与するところ大きいと評価される。

  よって審査員一同は、海野剛裕が博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有するも のと認めた。

参照

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