博 士 ( 医 学 ) 鈴 置 真 人
学 位 論文 題名
RCASl Expression asaPrognostic Factor after Curative Surgery for Extrahepatic Bile Duct Carcinoma ( 肝 外胆 管癌 根 治切 除後 予 後因 子と し ての RCAS1 の 発現)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
目的
RCASl (receptor‑binding cancer antigen expressed on SiSo cells)はヒト癌細胞の細胞膜 に 存 在 す る 腫 瘍 関 連 抗 原 で , 正 常 免 疫 系 細 胞 に 発 現 し て い る レ セ プ タ ー を 介 し て , ア ポ ト ー シ ス を 誘 導 す る こ と で , 腫 瘍 細 胞 の 免 疫 回 避 に 関 与 し て い る と 考 え ら れ て い る . 現 在 ま で に い く っ か の 癌 の 予 後 がRCAS1の 発 現 と 相 関 し て い る と 報 告 さ れ て い る が , 肝 外 胆 管 癌 に お け る 発 現 や そ の 意 義 に つ い て の 報 告 は な く , 本 研 究 で は , 肝 外 胆 管 癌 根 治 切 除 症 例 に お け る 臨 床 病 理 学 的 因 子 お よ び 予 後 と の 関 連 を 検 討 し , RCAS1発現の役割と意義を明らかにすることを目的と した.
材料と方法 1.材料
1992年 か ら1999年 ま で に 根 治 切 除 が な さ れ た 肝 外 胆 管 癌 症 例60症 例 ( 男 性46例 。 女 性14例 ; 平 均 年 齢66.2歳 ) を 対 象 と し た . 今 回 の 検 討 で は 切 除 断 端 陽 性 例 お よ び 姑 息 手 術 症 例 は 除 外 し た . す べ て の 標 本 は10% ホ ル マ リ ン で 固 定 後 , パ ラ フ ィ ン 包 埋 し た . 腫 瘍 最 大 径 を 含 む4ルm切 片 を 作 成 し 免 疫 組 織 染 色 を 行 っ た . 腫 瘍 の 分 類 と 臨床病期分類はUICCのTNM分類を用いた.
2.免疫組 織染色
免 疫 組 織 反 応 は ス ト レ プ ト ア ピ ジ ン ー ベ ル オ キ シ ダ ー ゼ コ ン プ レ ッ ク ス 法 で 施 行 し た . パ ラ フ イ ン 包 埋 切 片 ブ ロ ッ ク か ら 作 成 し た 組 織 切 片 を キ シ レ ン で 脱 パ ラ フ ィ ン し た 後 ,3% 過 酸 化 水 素 溶 液 で 内 因 性 ペ ル オ キ シ ダ ー ゼ を ブ ロ ッ キ ン グ し た . 10% 正 常 ヤ ギ 血 清 で 飽 和 さ せ た 後 , 一 次 抗 体 と し て500倍 に 希 釈 し た 抗RCAS1抗 体(anti‑
RCASl mouse IgM monoclonal antibody,Medical&Biological Laboratories Co.,Ltd., Nagoya,Japan)を 使 用し た. 二次 抗体 はHistofine SAB‑PO kit (Nichirei Corporation, Tokyo,Japan)を使用し,発色には3,3 ‑diaminoーbenzidine tetrahydrochloride (Histofine SAB‑PO kit,Nichirei Corporation,Tokyo,Japan)を用いた.Hematoxylinで核染色した後,
封 入 し 検 鏡 し た .RCAS1発 現 の 判 定 は 癌 細 胞 の う ち び ま ん 性 に 染 色 さ れ た 細 胞 が5% 未 満 の も の を 陰 性 ,5‑25% を 弱 陽 性 ,25‑50% を 中 等 度 陽 性 ,50% 以 上 の も の を 強 陽 性 と し , 陰 性 , 弱 陽 性 例 を 低 発 現 群 , 中 等 度 陽 性 , 強 陽 性 例 を 高 発 現 群 の2群 に 分 類した.
3. 統 計 解 析
Z2検 定,Fisher直接 検 定,log‑rank検 定 ,Cox検 定を 適 宜 行っ た .P値0.05未 満 を 有 意 差 あ り と 判 定 し た .
結果
RCAS1の 発 現は 癌 細 胞の 細 胞 質お よ び細 胞 膜 上に 認 めら れ , 正常の 胆管上皮 細胞 には そ の 発現 が 認め ら れ なか っ た. 肝外胆管 癌60例中,8例が陰性 ,6例が弱 陽性,
6例 が中 等 度陽 性 ,40例 が 強陽 性 であ っ た .陽 性 率は86.7% で ,すべ ての病期 にお いてRCAS1は高率に発現していた(stage0 50.0%,stageI 83.3%,stageII 75.0%,stageIII 100%,stageIVA 91.3%,stageIVB 100%).臨床病理学的因子(年齢,性別,腫瘍分化度,
T因 子 ,N因 子 ,M因 子 , 静 脈 侵 襲 , リ シ バ 管 侵 襲 ,神 経 浸 潤, 病 期) と の 比較 検 討 で は ,RCAS1の 発 現 と 臨 床 病 理 学 的 因 子 と の 間に 有 意 な相 関 は認 め ら れな か っ たが , 予 後に 関 する 検 討 では ,log‑rank検定 でp値 がp ̄0.0221であり ,RCAS1高発 現群 で 有 意に 予 後不 良 で あっ た .さ ら に ,多 変 量解 析 の 結果 ,RCAS1の発現 はルン パ節転移,神経浸潤と共に独立した予後規定因子であることが判明した(p−−0.0324).
考察
腫瘍 細胞が存 続,進展 するため には生体 内の免疫監 視機構から逃れる必要がある.
癌 細 胞に 発 現 したRCAS1はligandと し て作 用 し ,免 疫 担 当細 胞がもつreceptorに結 合 し てapoptosisを誘 導 する と 考えられ ている.RCAS1を強発現し ている肺 癌組織で は ,腫瘍に 浸潤する りンパ球 のapoptoslSの増加 が認められ ており, この仮説 を支持 して いる.
本研 究 に おい て ,肝 外 胆 管癌 でのRCASlの発 現は全体で86.7%であ り,StageI症 例 に限って みても83.3%と高率 に認めら れた.また ,その発 現は腫瘍 特異的で あっ た . これ ら の 結果 か ら,RCAS1の 発 現は 肝 外 胆管 癌 の 発癌 の過 程におい て,比較 的 早い 段階で起 こってい ることが 推測され た.
本研 究 に おい て ,RCASlの発 現 は 臨床 病 理学 的 因 子と の 間に有 意な相関 が認めら れ な かっ た が ,子 宮 癌や 非 小 細胞肺癌 と同様に肝 外胆管癌 の独立し た予後規 定因子 で あ るこ と が 示さ れ た. こ の 結果 か らRCAS1発現 に よ る免 疫回 避能が肝 外胆管癌 の 予後 の決定に 重要な役 割を果た している と考えられ た.
肝外 胆 管 癌で のRCAS1の 発現 は 高 頻度 か つ腫 瘍 特 異的 に 認めら れたが, 同様に膵 癌 , 胆嚢 癌 の 検索 結 果で も , その発現 は高頻度か つ腫瘍特 異的であ った.こ れらの 結 果から,RCASlは膵胆道 系腫瘍に おける腫 瘍マーカと なり得る ものと考 えられる . さ ら にはRCAS1発 現 細胞 に タ ーゲ ッ トを 絞 っ た新 し い 治療 法の 発展に貢 献する可 能 性が 示唆され た.
゛ 結語
肝外胆 管癌にお いてRCAS1の発 現は高頻 度かつ腫 瘍特異的に 認められた.さらに,
RCAS1は 切 除可 能 な肝 外 胆 管癌 の 独 立し た 予後不良 因子にな り得ると 考えられ た.
学位 論文審査の要旨
学位論文題名
RCASl Expression asaPrognostic Factor after Curative Surgery for Extrahepatic Bile Duct Carcinoma (肝外胆管癌根治切除後予後因子としてのRCAS1 の発現)
RCAS1はヒト癌細胞の細胞膜に存在する腫瘍関連抗原で、正常免疫系細胞に発現してい るレセプターを介して、アポトーシスを誘導することで、腫瘍細胞の免疫回避に関与してい ると考えられている。現在までにいくっかの癌の予後がRCAS1の発現と相関していると報 告されているが、肝外胆管癌における発現やその意義についての報告はなく、本研究では、
肝外胆管癌根治切除症例における臨床病理学的因子および予後との関連を検討し、RCAS1 発現の役割と意義を明らかにすることを目的とした。
1992年から1999年までに根治切除がなされた肝外胆管癌症例60症例(男性46例、女性 14例、平均年齢66.2歳)を対象とした。切除された肝外胆管癌組織における蛋白発現を調 べ る た め、 抗RCAS1抗 体、HRP標識二 次抗体およ びDABを用い て免疫染 色した。RCAS1 発現の判定は癌細胞のうちびまん性に染色された細胞の割合が5%未満を陰性、5%以上を陽 性と判定し、陽性例については染色された細胞の割合が5−25%を弱陽性、25‑50%を中等度 陽性、50%以上を強陽性の3段階に分類した。さらに陰性、弱陽性を低発現群、中等度陽性、
強陽性を高発現群の2群に分類し、予後、臨床病理学的因子について比較検討を行った。統 計解析にはX2検定、Fisher直接検定、log‑rank検定、Cox検定を適宜行い、P値が0.05未満 を有意差ありと判定した。
結果として、RCAS1の発現は癌細胞の細胞質および細胞膜上に認められ、正常の胆管上 皮細胞にはその発現が認められなかった。肝外胆管癌60例中、8例が陰性、6例が弱陽性、
6例が中等度陽性、40例が強陽性であった。陽性率は86.7%で、StageI症例に限ってみても 陽性率は83.3%と高率あった。臨床病理学的因子との比較検討では、RCAS1の発現と臨床病 理学的因子との間に有意な相関は認められなかったが、予後に関する検討では、log‑rank検 定でp値がp 0.0221であり、RCAS1高発現群で有意に予後不良であった。さらに、多変量 ‑ 29―
俊 寛
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弘 雅
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田 村
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授 授
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教 教
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査 査
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主 副
副
解析の結果、RCAS1の発現はりンパ節転移、神経浸潤と共に独立した予後規定因子である ことが判明した。
本研究において、肝外胆管癌におけるRCAS1の発現は腫瘍特異的で、またすべての病期 で高頻度に発現していた。これらの結果からRCASIの発現は肝外胆管癌の発癌の過程にお いて、比較的早い段階で起こっていることが推測された。また、RCAS1の発現は臨床病理 学的因子との間に有意な相関を認めなかったが、肝外胆管癌の独立した予後不良因子である ことが示された。この結果からRCAS1発現による免疫回避能が肝外胆管癌の予後の決定に 重要な役割を果たしていると考えられた。肝外胆管癌でのRCAS1の発現は高頻度かつ腫瘍 特異的に認められたが、同様に膵癌,胆嚢癌の検索結果でも、その発現は高頻度かつ腫瘍特 異的であった。以上より、RCAS1は膵胆道系腫瘍における腫瘍マーカとなり得るものと考 えられ、さらにはRCAS1発現細胞に夕←ゲットを絞った新しい治療法の発展に貢献する可 能性が示唆された。
口頭発表において、今村教授より半定量的なcut‑ofF値の妥当性、receptorの発現を中心に RCAS1による免疫回避機構のメカニズムについて質問があった。ついで加藤教授より他の 病理学的予後因子と相関がない理由、RCAS1を利用した治療法の可能性について質問があ った。また秋田教授より腫瘍浸潤リンパ球数との相関、RCASlがもつ免疫回避能以外の機 能の可能性、胆嚢癌における検討結果との共通点と相違点について質問があったが、申請者 はおおむね妥当な回答をした。
肝外胆管癌におけるRCAS1の発現を明らかにし、肝外胆管癌の予後の予測、遺伝子治療 の可能性を示唆した本研究の意義は大きく、審査員一同協議の結果、大学院課程における研 鑽や取得単位なども併せ、申請者が博士(医学)の学位授与に値するものと判定した。
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