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博 士( 医 学 ) 鈴木 左 知 子

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Academic year: 2021

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博 士( 医 学 ) 鈴木 左 知 子

    学位論文題名.

    AutocrlneproduCtionofepithelialCell―deriVed     neutrophilattraCtant‐78induCed

bygranulOCyteC010ny− Stimulatingf・ aCtorinneutrophilS     ( 顆 粒 球 コ ロ ニ ー 刺 激 因 子 ( G. CSF) に よ る 好 中 球 の   epithelialcell―derivedneutrophilattractant‐78(ENA−78)の自己分泌)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  顆粒球コロニー刺激因子(G‑CSF)は、骨髄前駆細胞から好中球への分化、成熟を促進し、さら に成熟細胞の機能を亢進させる(好中球の寿命を延長させ、活性酸素の産生と貪食能を高める)サ イトカインとレて知られており、これらの効果に基づき現在好中球減少時の重症感染症において広 く用いられている。一カ、好中球の重要な機能のーつとして、生体の炎症部位への動員が挙げられ るが、G−CSFが好中球の炎症部位への動員を刺激するかどうかについてはまだ角牟明されていない。

今同我々は、好中球動員に対するG‑C.SFの効果並びにその機序について、好中球に発現している 遺伝子に対するG‑CSFの効果を検討することにより解明しようと試みた。まず好中球に発現して いる9000以 上 の 遺伝 子に つい てDNAマ イク 口アレ イ法 によ りG―CSF刺激 下お よび 非刺 激下 で の発現を比較検討し、さらに好巾球の走化性をin vitroで検討することにより、特定の遺伝子に対 するG―CSFの効果および好中球の走化性亢進との関連を確認した。

  この実験において、好中球の走化凶子として報告されているepithelial cell・derived neutrophil attractant・78(ENA−78)のmessenger RNA (mRNA)発現が、G−CSF刺激下において非刺激下と比較し1 7倍高く誘導されることが確認された。またG−CSF刺激下での好中球は走化性が亢進するが、抗 ENA―78抗体および抗CXCR−2抗体により走化性が抑制されることが示された。これらの所見より、

G‑CSFにより好巾球におけるENA−78の自己分泌が誘導され、好巾球の炎症部位への動員を高める ことが示唆された。

  実験方法

1. 試 薬G―CSFは 協 和 発 酵 よ り提 供 を 受 け た 。2Hg/kgのG―CSFを 点滴 静注レ た場 合のm漿 中     G―CSF濃度は20ng/mlである。抗ENA−78抗体および抗CXCR‑2抗体はR&DSystelns(Minneapolis,     MN)より購入した。

2.細胞好中球t劃連常人より採取した末梢血より以下のカ法で分離した。末梢血単核球をFicolト     Paque(Amersham Pharmacia Biotech.Uppsala,Sweden)により遠心分離除去し、沈殿物を2%ヌチ

226

(2)

    ルセ ルロ ース とと もに 混和 し赤 血球 分画 と好 中球 分画 に 分け 、更 に好 中球 分画 に混 入し てい る     赤 血 球 を 低 張 性 シ ョ ッ ク に より 除去 した 。得 られ た好 中球 はり ン酸 緩衝 液で2度洗 浄し た。 こ     の方法で得られた好巾球 の純度は99%であった。

3. DNAマ イ ク 口 ア レ イ 法G‑CSFlOng/rnl処 理 ま た は 末 処 理 の 好 中 球 をTrizol Reagent (Life     TechnologiesTokyoJapan)とと もに24時 間培 養しtotal RNAを抽 出し た。 更にmRNAtotal     RNAよりQuickprep mRNApurification kit (Amersham Pharmacia Biotech)を用い て抽出した。遺伝     子 の 発 現 量 の 違 い をDNAマ イ ク 口 ア レ イ(UniGEM human(Kuraboindus伍es,OsakaJap孤 )で 振     り分けた。

4. ノ ー ザ ン ブ 口 ッ ト 解 析total心乢 へ20肛gを12% ホル ム アル デヒ ドア ガロ ース ゲル 上で 電気 泳     動 し ナ イ ロ ン 膜 (HybondNAnlersham) に 移 し た 。 そ の後 、膜 をrandompdmefDNAlabelingbt     (TalほrabiomedicalsToky0,Japan)を用いて32Pで標識したD搆→78に対する相補的DNAくcDNA     プロ ープ でハ イプ リッ ド形 成を 行い 、膜 を洗 浄後X線フ ィル ムに 写し た。D溝‐78に 対す るcDNA     断片はreVerSetrallSCdptaSe‐p01ymeraSeCh甜nreaC60n(RT―PCR)法で増幅しク口ーニングを行い、

    ノ ー ザ ン プ ロ ッ ト 解 析 の た め の プ 口 ー プ と し て 用 い た 。D岨―78PCRプ ライ マー の塩 基配 列     を 示 す 。ForwardGGTTGGATGく 汀 CrTGTCCAAreverseCCITCCAGAAAGTCITCIp 5Ruorescenceactivatedce11sonerFACS) 解 析 抗CXCR2抗 体 お よ び 二 次 抗 体 で 染 色し た後 、     細 胞 をf、 |ACSciberBectonDickinsonMounnvlewCA) を 用 い て 解 析 し た 。 6TranSwenchamber解 析 好 中 球 の 走 化 性 を 評 価 す る た め 、 下 記 の 方 法 でTranswe11chamber     COSterCam弧deMA)解 析を 行っ た。 (KSFで 処 理し24時 間培 養した後心}MH640培養液で     2度 洗 浄 し た 好 巾 球 を さ ら に24時間 培養 した 。そ の上 清 (6001)を20ゲ 。に 希釈 し、1001     中に 好中 球を 浮遊 させ た。RPMI一1640培 地を それ ぞれ 上 下のchqnlberに置 き、48時間 ・培 養     し た の ち ド 段 のchberに 移 動 し た 細 胞 数 を 倒 立 顕 微 鏡 ド で 少 な く と も20箇 所 に おい て測 定     し た。 陽性 コン トロ ール とし て組 み換 型ENA−78Jong′mIをchamber下段に加えた系を作成した。

    ま た 、camber下 段 に 抗ENA178抗 体ま たは 抗CXCR2抗 体 を2肛びrn1ま で加 えた 系も 作成 した 。 結 果 :GCSF未 処 理 の 好 中 球 と 比 較 し 処 理 後 の 好 中 球 に お い て2倍 あ る い は3倍 のm心 岨 発 現 を 認 め た 遺 伝 子 は そ れ ぞ れ122個 およ び50個で あっ た。 この 巾 で特 に好 巾・ 球の 走化 因子 とし て知 ら れ るD弧ー78お よびgranulocytechemotacticpmtelnー2(GCP・2)はそれぞれ17倍、4倍と高い増強が認 め ら れ た 。D嶮 一78GCSFで 処理 して いな い好 中球 では 発 現が 認め られ ない が、GCSFの 量に 依 存 し て 発 現 の 増 強 が 認 め ら れ た 。 ま たD乢 へ −78の 受 容 体 で あ るCXCR2ENA78と 同 様の 発現 を 示 し た 。 ま たGCSFで 処 理 さ れ た 好 中 球 培 養 上 清 に よ っ て も好 中球 の走 化性 は増 強し た。 一方 、 組 み 換 え 犁ENA78に よ っ て 高 め ら れ た 好 中 球 の 走 化 性 は 抗ENA78抗 体 お よ び 抗CXCR‐2抗体 に よ り 抑制 され た。 これ らの 結果 より 、GCSFで刺 激さ れた 好 中球 はENA− ワ8を 自己 分泌 し、 その 結 果 好 中 球 の 走 化 性 が 亢 進 し 、 炎 症 部 位 へ の 好 中 球 の 動 員 を 高 め て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら の 実 験 結 果 は 、 好 中 球 減 少 時 の 感 染 症 に 対 す るGCSF投 与に 際し てのGCSFの 役割 を解 明 する一端となることが期待さ れる。

(3)

学位論文審査の要旨

    

学位論文題名

    Autocrine production of epithelial cell‑derived     neutrophil attractant

‐78 induced

by granulocyte colony‑stimulating factor in neutrophils     

(顆粒球コロニー刺激因子(G‑CSF)による好中球の

  epithelial cell‑derived neutrophil attractant‑78 (ENA‑78)

の自己分泌)

顆粒球コロニー刺激因子

(G‑CSF)

は、骨髄前駆細胞から好中球への分化、成熟を促進 し、さらに成熟細胞の機能を亢進させる(好中球の寿命延長、活性酸素の産生と貪食能 の増強など)サイトカインとして知られており、現在好中球減少時の重症感染症に広く 用いられている。一方、好中球が機能を発揮するためには、炎症部位に動員されること が必須であるが、

G

CSF

が好中球の炎症部位への動員を刺激するかどうかについては まだ解明されていない。本研究では、好中球遊走能に対するG‑CSFの効果とその機序 を明らかにするため、

DNA microarray

にてG―CSF処理後に好中球において発現が増強 する遺伝子を探索し、遊走刺激因子の同定を試みた。

  

健常人より採取した末梢血より好中球を分離し実験に用いた。分離した好中球の純度 は99%以上であり、得られた好中球について、G―

CSF(lOng/ml)

を加えて24時間培養し、

洗浄後さらに

24

時間培養したもの(G‑CSF処理好中球)と、

G‑CSF

未処理好中球との間 でそれぞ れ

m‑RNA

を抽 出し

DNA microarray

を行った。

DNA microarray

により9000個 以上の遺伝子の発現の違いを

G‑CSF

処理好中球と未処理好中球との間で比較したとこ ろ、

G‑CSF

処理後に

3

倍以上 発現が亢進 した遺伝子 は

50

個同定され たが、この中で 最も発現 が亢進した

ENA

78

につ いてノーザ ンブ口ット解析でmRNA発現亢進を確認 した後、ENA―78の好中球遊走刺激能を以下の方法で検討した。transwell chamber assay 法を用いて、

G‑CSF

処理好中球培養上清と未処理好中球培養上清をそれぞれchamberの 下段に入れ、

4

8

時間培養した後上段から下段へ遊走した好中球数を測定することに より

chemotaxis

を検討した。更に、

G‑CSF

処理培養上清に抗

ENA

―78抗体並びに

ENA‑

学 博彦

   

   

正 邦 藏香 林 武浅 小 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(4)

78

の レセ プターで ある

CXCR2

に 対する抗

CXCR2

抗体を入 れた系も作 成し、遊走 能が 抑制される か否かを検 討した。なお、

G‑CSF

処理前後の好中球における

CXCR2

の発現 の変化については

FACS

解析で検討した。

  

これらの実験の結果、G―CSF処理好中球培養上清を用いると、未処理好中球培養上 清を用いた場合と比較して好中球の遊走能が約3倍増強し、その遊走能は抗

ENA‑78

抗 体および抗CXCR2抗体によりほぽ完全に抑制された。本研究にて、G―CSF処理によっ て好中球から遊走刺激因子であるENA‑78が産生され、その結果好中球の遊走が増強さ れることが明らかとなった。したがって、G‑CSFが好中球の増加に加えて好中球の炎 症局所への動員を加速する可能性が示唆され、感染症に対する

G

−CSFの新しい効能が 提示されたと考えられる。

  

公開発表にあたって、副査の小林教授より、DNA microarrayでG‑CSF処理後発現が 減弱する遺伝子についての検討の有無、G−

CSF

処理後の好中球遊走刺激に対する他の 遺伝子の関与の可能性、

ENA‑78

以外の

DNA microarray

で発現が増強している遺伝子に ついて必ずしもノーザンプロット解析で発現増強が見られない理由について質問があっ た。これに対して申請者は、G―

CSF

処理後に発現の減弱する遺伝子も認められたが本 研究においては未検討であること、G―

CSF

処理後の遊走能刺激は抗

ENA78

抗体および 抗CXCR2抗体 により完全 には抑制さ れないこと から

ENA‑78

以外の因子が遊走刺激に 関与している可能性があること、DNA microarrayとノーザンプロット解析の結果の相違 については前者での偽陽性がその理由として考えられると回答した。次いで、副査の浅 香教授より、transwell chamber法の説明が求められ、また好中球におけるG―CSF処理後 のENA―

78

発現の蛋白レベルでの検討の有無について質問があった。これに対し申請者 は、細胞の大きさより小さいchamber間の孔を通り抜けるためには好中球が正常に遊走 する必要があり、遊走能を客観的に検討しうる方法であることを説明し、G‑CSF処理 後の好中球における

ENA‑78

の発現をウエスタンプロット法並びに免疫染色法にて検討 したが発現が弱く検出されなかったと回答した。最後に主査の武蔵教授からは、G―CSF 処理後のENA‑78の発現増強に対するnegative feedbackの機構についての知見、stem cell の遊走に対するENA‑78の臨床応用の可能性についての考察が求められた。これに対し 申請者は、他の因子との相互作用によってnegative feedbackの機構が働く可能性がある が本研究においては未検討であること、stelri cellに対する

ENA

−78の効果を検討するこ とは現時点で困難と考えられるため、in vivoにおける好中球減少時の

G

ーCSF投与に際 し、

ENA‑78

が実際 にどのように関与しているのかを検討していきたいと回答した。

  

本研究は、

G

―CSF処理により好中球から遊走刺激因子であるENA ‑78が産生され、そ の結果好中球の遊走が増強することを明らかにし、またENA‑78が好中球からも産生さ れることを初めて報告した点で高く評価される。審査員一同は、これらの成果を高く評 価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるに充分な資格を有するものと判定した。

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