• 検索結果がありません。

博 士 ( 医 学 ) 斎 藤 博 哉

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 医 学 ) 斎 藤 博 哉"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 医 学 ) 斎 藤 博 哉

学 位 論 文 題 名

Expandable lVIetallic Stent (D 胆 道 系 へ の 臨 床 応 用 に 関 す る 研 究

ー 第 1編 初 期 成 績 ―

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

I.研 究目的

  手 術 不 能 な 閉 塞 性 黄 疸 に 対 す る 経 皮 的 完 全内 瘻術 と してPTBEやERBDな どが 行わ れて い る。しかし,多発狭窄例や肝内胆管閉塞例では十分な減黄効果が得られず,また,逸脱,閉塞,

胆道 感染 , 胆道 出血 など 未解決な問題が多い。Expandable Metallic Stents (EMS)は,管状 器官の狭窄性病変の拡張と,その 後の開存性を得る目的で臨床応用が進められている。1)小口 径で挿入でき大口径が得られる,2)自ら拡張しようとする作用を有する,3)表面積が小さい,

4) wire間 隙に より 留置 部の 分枝 の開 存 が保 たれ るな どの 特徴 を有 する 。こ のため,EMSを 用い た胆 道 内瘻 術(Expandable Metallic Biliary Endoprosthesis,EMBE)は従来のBili― ary Endoprosthesis (BE)の 問題 点を 解 消す る方 法と期待さ れている。しかし,併用療法の 必要性,反応性浮腫,超早期の再閉塞の原因,機序など解明されていない点が多い。本研究の目 的は本法の初期成績の検討を行う ことによりこれらの問題点を解明し,EMSの有用性を評価す ることにあった。

n.研究方法

  EMSを 用い て 胆道 内瘻 術を 施行 した58例 (肝 外胆 管癌41例,胆管細胞癌1例,胆嚢癌3例,

膵頭 部癌3例 , 乳頭 部癌2例 ,転 移性 肝腫 瘍1例 ,胃 癌術後リンパ節転移6例,術後良性狭窄1 例)を対象とした。悪性腫瘍による胆道閉塞57例中53例(93%)には,放射線療法を主体とした 併用 療法 後にEMSを 留置 した 。観 察期 間は 外瘻 抜去 まで の期 間と し, 留 置成 績,EMS径と胆 管径 の推 移, 外瘻 チュ ーブ 抜去率,PTCSによる胆管内腔の評価,合併症にっ いて検討した。

EMS径 と 胆 管 径 の 推 移 は ,PTBD造 影 に よ る 病変 部位 にお け るEMS径 およ び胆 管径 の最 小 径 を留置直後,留置1週 後,外瘻チューブ抜去時にフィル厶上で測定し,径の経時的変化を比較検     ―66ー

(2)

討した。

m. 研 究 結 果 お よ び 考 察   (1EMS留 置 成 績

    58例 全 例 で 予 定 部 位 へ の 留 置 に 成 功 し ,31例 で は 左 右 両 胆 管 に ,14例 に は 肝 内 胆 管2次 分 枝   に も 留 置 し 得 た 。 下 部 胆 管 狭 窄 例5例 で は¥Tater乳 頭 部 を 越 え て 十 二 指 暢 ヘ , 肝 門 部 空 腸 吻   合 術 後 例3例 で は 肝 門 部 胆 管 か ら 空 腸 内 へEMSを 留 置 し た 。 小 さ な 径 の introducer79   Fr)で 大 き な 径 (610mm)EMSの 留 置 が 可 能 で あ り , ま た , 従 来 ド レ ナ ー ジ の 効 果 が 不   十 分 で あ っ た 肝 門 部 , 肝 内 胆 管 狭 窄 例 で も 有 効 な ド レ ナ ー ジ が 得 ら れ た 。 さ ら に 右 後 枝 が 総 胆   管 か ら 分 岐 す る 症 例 , 後 下 枝 が 左 胆 管 か ら 分 岐 す る 例 に も 留 置 可 能 で , あ ら ゆ る 胆 管 の 分 岐 形   態 に 対 応 可 能 で あ っ た 。

  (2) EMS径 お よ び 胆 管 径 の 変 化

    10mmEMSは , 留 置 直 後 閉 塞 部 に お い て4‑10mm6013mmに 拡 張 し , ! 週 後 に は 最   大 径 の90(8.415mm), 外 瘻 抜 去 時 に は9214mmと な り , 以 後 そ の 径 が 保 持 さ れ た ( 外   瘻 維 持 時 期2613週 ) 。 こ れ はEMSが 持 続 的 な 拡 張 カ を 有 し て い る こ と を 示 し , さ ら に 最   大 拡 張 径 は 作 成 時 よ り も 約10% 小 さ か っ た 。 こ の た め , 逸 脱 が 防 止 で き , さ ら に 胆 管 外 か ら の   圧 排 性 狭 窄 の 場 合 で は , 腫 瘍 の 増 大 に よ る 再 狭 窄 を 遅 ら せ 得 る 可 能 性 が あ る 。     一 方 , 留 置 直 後1 9 mm5514mmで あ っ た 胆 管 径 は , 一 週 後 に は ,442Immと 減 少 し ,   外 瘻 抜 去 時 に は 再 び552 Ommと 拡 大 し た が , 胆 管 径 はEMS径 よ り も 平 均38mm小 さ か っ た 。   PTCSで は 狭 小 部 位 に は 白 苔 の 付 着 が 強 く 認 め ら れ , 組 織 学 的 に は 好 中 球 主 体 の 壊 死 物 質 お   よ び 炎 症 細 胞 浸 潤 で あ っ た 。 こ の 胆 管 径 の 狭 小 化 は 急 性 の 炎 症 反 応 で あ り ,EMSに よ る 持 続   性 の 胆 管 上 皮 の 圧 迫 に よ る 乏 血 性 浮 腫 と 考 え ら れ た(reactive stricture)。 こ の た め 乏 血 性 浮   腫 が 軽 減 さ れ る ま で の 期 間 は , 外 瘻 チ ュ ー ブ を 留 置 し 胆 汁 う っ 滞 を 軽 減 さ せ る 必 要 が あ る 。 そ   の 時 期 は 留 置 後 の 胆 管 径 の 推 移 か ら2週 間 が 適 当 で あ る 。 ま た , 浮 腫 に よ る 胆 管 閉 塞 は 生 じ な   か っ た と の 報 告 も あ る が , 本 研 究 で は3例 に 乏 血 性 浮 腫 に よ る 閉 塞 が 認 め ら れ(reactive ob   struction), 閉 塞 部 にtま 前 述 の 白 苔 が 著 明 で あ っ た こ と か ら , 乏 血 性 浮 腫 が 高 度 に な る と 閉 塞   の 原 因 と な る と 考 え ら れ た 。 こ の 場 合 ,EMSを 留 置 す る こ と に よ り 再 開 通 可 能 で あ る が , 十   分 な 拡 張 径 が 得 ら れ れ ぱ 強 す ぎ な い 拡 張 カ の EMSが 望 ま し い と 考 え ら れ る 。   (3)外 瘻 チ ュ ー ブ 抜 去 率

    外 瘻 チ ュ ー ブ の 抜 去 は58例 中51(87.9% ) で 可 能 で あ っ た 。 抜 去 し 得 な か っ た7例 中6   は 胆 管 開 存 性 は 良 好 で あ っ た が , 外 瘻 維 持 期 間(113週 ) に 死 亡 し て お り , 併 用 療 法 を 施 行     ‑ 67

(3)

してい ない膵癌1例で 開存性 が得られ なかっ た。また ,腫瘍 再燃に伴う再閉塞例にEMSを追 加留置した場合,直後の開存性は良好であったが,1週後には内腔は腫瘍組織で充満していた。

短期間に腫瘍が急速に増殖してきたとは考えにくく,胆管粘膜に腫瘍が存在する場合の超早期 再閉塞は,次のように考えられる。腫瘍は留置直後は一時的に外方へ圧排されるが,時間の経 過と と もに復 元する。 この時 ,腫瘍の 一部はEMSによ り支えら れるが ,残りの 腫瘍はwire で切断 されなが ら内腔 に復元し 再閉塞に 至ると考えられた(rebound obstruction)。胆管粘 膜に腫 瘍が存在 する場 合でもrebound obstractionが起こらないこともあるが,その相違は 腫瘍のvolumeによると考えられた。

(4) EMS留置後の胆管内腔の状態

  胆 管 上皮によ るEMSの 被覆は ,2週 後には70%の症例 で観察 された。4週以 降では 全例に 認め,55%ではEMSのほ ぼ全体が 被覆さ れていた。この被覆は,癌組織が存在しない部位に のみ生じ,癌組織が存在する部位ではEMSは単に腫瘍組織に埋没しているように観察された。

胆管粘膜に癌組織が存在しナょい状態では,EMSは胆管上皮の被覆により胆管の一部となり,

感染の機会が減少し生理的なBEとなると考えられた。

(5)合併症

  軽度の 合併症として発熱12例(20.7%),腹痛6例(10.3%),腹部不快感4例(6.9%),胆 道出血1例(1.7%)が認められた。いずれも保存的治療にて数日以内に軽快し,重篤な合併 症はなく,安全な手技と考えられた。

IV.結  語

  EMBEの 初 期 成 績 を 向 上 さ せ る た め に は , 留 置 後2週 間 以 内 に み ら れ る 超 早 期 再 閉 塞 (rapid obstruction)を 克 服 する必 要があ る。この 再閉塞に はeractive obstructionとre‑

bound obstructionのニっ の機序が 考えら れる。胆 管粘膜に 腫瘍が 存在しない症例では,EMS の持続 的拡張 カによる乏血性浮腫のためreactive obstructionが生ずる可能性があるため,留 置後は 外瘻を 維持し, 症例に よってはEMSの追加留置が必要となる。また,胆管粘膜に腫瘍が 存在す る症例 では,EMSは単 に腫瘍内 に埋没し 胆管の 開存性は 得られない可能性がある(re― bound obstruction)。ま た,開存 性が得ら れたと しても,EMS間 隙から腫 瘍が胆 管内腔に 進 展する ため早 期の再閉 塞が起 こること が予想さ れる。 このため 胆管内腔の腫瘍volumeを減少 させる併用療法が不可欠で,また,併用療法終了時点で治療効果を十分に検討する必要がある。

(4)

学位論文審査の要旨

I. 研 究 目 的

  Expandable Metallic Stents (EMS)は , 管 状 器 官 の 狭 窄 性 病 変 の 拡 張 と , そ の 後 の 開 存 性 を 得 る 目 的 で 臨 床 応 用 が 進 め ら れ て い る 。1) 小 口 径 で 挿 入 で き 大口 径が 得ら れ る,2)自 ら 拡 張 し よ う と す る 作 用 を 有 す る ,3) 表 面 積 が 小 さ い ,4)wire間 隙 に よ り 留 置 部 の 分 枝 の 開 存 が 保 た れ る など の 特徴 を有 する 。し か し, 併用 療法 の 必要 性, 反応 性浮 腫 ,超 早期 の再 閉塞 の 原 因 , 機 序 な ど解 明 され てい ない 点が 多 い。 本研 究の 目 的は 本法 の初 期成 績 の検 討を 行う こと に よ り こ れ ら の 問 題 点 を 解 明 し , EMSの 有 用 性 を 評 価 す る こ と に あ っ た 。

n.研 究 方 法

  EMSを 用 い て 胆 道 内 瘻 術 を 施 行 し た58例 を 対 象 と し た 。 悪 性 腫 瘍 に よ る 胆 道 閉 塞57例 中53例 (93% ) に は , 放 射 線 療 法 を 主 体 と し た 併 用 療 法 後 にEMSを 留 置 し た 。 観 察 期 間 は 外 瘻 抜 去 ま で の 期 間 と し , 留 置 成 績 ,EMS径 と 胆 管 径 の 推 移 , 外 瘻 チ ュ ー ブ 抜 去 率 ,PTCSに よ る 胆 管 内 腔 の 評 価 , 合 併 症 に っ い て 検 討 し た 。EMS径 と 胆 管 径 の 推 移 は ,PTBD造 影 に よ る 病 変 部 位 に お け るEMS径 お よ び 胆 管 径 の 最 小 径 を 留 置 直 後 , 留 置1週 後 , 外 瘻 チ ュ ー ブ 抜 去 時 に フ イ ル ム 上 で 測 定 し , 径 の 経 時 的 変 化 を 比 較 検 討 し た 。

m.研究結果 および考察

(1)EMS留 置 成 績 :58例 全 例 で 予 定 部 位 へ の 留 置 に 成 功 し ,31例 で は 左 右 両 胆 管 に ,14例 に     は 肝 内 胆 管2次 分 枝 に も 留 置 し 得 , あ ら ゆ る 胆 管 の 分 岐 形 態 に 対 応 可 能 で あ っ た 。 (2) EMS径 お よ び 胆 管 径 の 変 化 : 口 径10mmのEMSは , 留 置 直 後 閉 塞 部 に お い て4,10mm,6.0     土1. 3mmに拡 張し ,1週後 には最大径の90%(8.4土1.5mm),外瘻抜去時には9.2土1.4mmとな     り,以 後その径が保持された(外 瘻維持期間2.6土1.3週)。一方,留置直後1・9 mm,5.5土1.4     mmであ っ た胆 管径 は,1週後 には,4.4土2.Immと減少 し,外瘻抜時には再び5.5土2.Ommと拡     大 し た が , 胆 管 径 はEMS径 よ り も 平 均3.8mm小 さ か っ た 。 こ の 胆 管 径 の 狭 小 化は 急 性の 炎     症 反 応 で あ り ,EMSに よ る 持 続 性 の 胆 管 上 皮 の 圧 迫 に よ る 乏 血 性 浮 腫 ( 反 応 性 狭 窄 )     ー69―

従 一

正 純

舘 野

古 内

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

  と考えられた。このため乏血性浮腫が軽減されるまでの期間は,外瘻チューブを留置し胆汁   うつ滞を軽減させる必要がある。乏血性浮腫が高度になると閉塞の原因となると考えられた。

  この場 合,EMSを留置 するこ とにより 再開通可能であるが,十分な拡張径が得られれば強   すぎない拡張カのEMSが望ましい。

(3)外瘻チューブ抜去率:外瘻チューブの抜去は58例中51例(87.9%)で可能であった。胆管   粘膜に腫瘍が存在する場合の超早期再閉塞は,腫瘍は留置直後は一時的に外方ヘ圧排される   が , 時間の 経過と ともに復 元し, 腫瘍の一 部はEMSにより 支えられ ,残り の腫瘍はwire   で切断されながら内腔に復元し再閉塞に至ると考えられた。

(4) EMS留 置後の 胆管内腔 の状態 :胆管上 皮によ るEMSの 被覆は,2週 後には70% の症例   で観察 された 。4週 以降で は全例に 認め,55%ではEMSのほぼ 全体が被覆されていた。胆   管粘膜 に癌組 織が存在しない状態で6ま,EMSは胆管上皮の被覆により胆管の一部となり,

  感染の機会が減少し生理的な内瘻となると考えられた。

(5)合併 症:軽度の合併症として発熱12例(20.7%),腹痛6例(10.3%),腹部不快感4例   (6.9% ) 等 が 認 め ら れ た 。 い ず れ も 保 存 的 治 療 に て 数 日 以 内 に 軽 快 し た 。

IV.結語

  胆道内瘻術の初期成績を向上させるためには,留置後2週間以内にみられる超早期再閉塞を克 服する 必要があ る。胆 管粘膜に 腫瘍が存 在しない症例では,EMSの持続的拡張カによる乏血性 浮腫の ため反応 性閉塞 が生ずる 可能性が あるた め,留置 後は外 瘻を維持し,症例によっては EMSの 追 加留 置 が 必要 と な る。ま た,胆 管粘膜に 腫瘍が存 在する 症例では ,EMSは単に腫 瘍 内に埋没し胆管の開存性は得られない可能性があるので,胆管内腔の腫瘍容量を減少させる併用 療 法 が 不 可 欠 で ま た , 併 用 療 法 終 了 時 点 で 治 療 効 果 を 十 分 に 検 討 す る 必 要 が あ る 。

  本 研究の 価値判断 :EMS法の初期 成績の検討を行ない,超早期再閉塞の原因,機序などの問 題点を解明し,EMSの有用性を評価し得た。よって,本研究は学位授与に値すると考えられる。

参照

関連したドキュメント

(表2)。J-CAPRAポイントを合計したJ-CAPRA スコアについて,4以上の症例でPFSに有意差

が漢民族です。たぶん皆さんの周りにいる中国人は漢民族です。残りの6%の中には

強制空冷時は、風速 2.7m/s

 CKD 患者のエネルギー必要量は 常人と同程度でよく,年齢,性別,身体活動度により概ね 25~35kcal kg 体重

この設定では、管理サーバ(Control Center)自体に更新された Windows 用の Dr.Web Agent のコンポ ーネントがダウンロードされませんので、当該 Control Center で管理される全ての Dr.Web

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

● 燃料ペレット ※注1 は、被覆管 ※注2 中にあり、.

PAD)の罹患者は60歳では人口の7.0%に,80歳では 23.2%にのぼるとされている 1) .本邦では間欠性跛行