ふ り が な
氏 名
なかの こうすけ
中野 宏祐
学 位 の 種 類 博士(歯学)
学 位 記 番 号 甲 第 900 号 学 位 授 与 の 日 付 令和 3 年 3 月 5 日
学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項に該当
学 位 論 文 題 目 Bone Regeneration Using Rat-Derived Dedifferentiated Fat Cells Combined with Activated Platelet-Rich Plasma (ラット由来脱分化脂肪細胞と活性化多血小板血漿を用いた骨 再生)
学 位 論 文 掲 載 誌 Materials 第 13 巻 第 22 号 令和 2 年 11 月
論 文 調 査 委 員 主 査 中嶋 正博 教授 副 査 井関 富雄 教授 副 査 橋本 典也 教授
論文内容要旨
欠損部の骨再生にはドナー細胞として骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)が関与する研究が行われてき た。しかし、骨髄の採取時の侵襲の大きさや高齢者の場合は、その採取量の限界が指摘されてきた。そ こで、BMSCs に代わるドナー細胞として、より低侵襲で多数の細胞を採取できる脂肪由来脱分化脂肪
(DFAT)細胞に着目し、活性化多血小板血漿(aPRP)と組み合わせた細胞増殖率、骨芽細胞分化能、骨再生能力を評価した。
F344
系ラット(雄
8週齢)から脂肪組織を採取してラット
DFATs(rDFATs)を作製した。術後4週後に同 ラットから採血を行い、aPRP を作製し,全血と
aPRPとの血球数を測定した。次に,aPRP 添加培地
(3%,5%,7%,10%:各質量%濃度)でrDFATs
を培養し、それぞれの細胞増殖率を測定した。さらに、
1)
増殖培地(DMEM+10%FBS,1%PS)、2) 骨芽細胞分化培地(対照群;ODM)、3) ODM+aPRP(実験群;
3%,5%,7%,10%:各質量%濃度)でrDFATs
を培養し、誘導開始後
3,7,21日で
real time RT-PCRに よる骨芽細胞マーカー(Runx2、オステオカルシン(OCN)、オステオポンチン(OPN))の遺伝子発現を検索 し、21 日後に
Alizarin red染色で
Ca産生能を評価した。動物実験(承認番号:20-04001 号)では腹腔内 麻酔下でラット頭蓋骨にトレフィンバーで直径
9mmの臨界骨欠損モデルを作製し、1) no implant
2) GS 3) rDFATs+GS 4) rDFATs+aPRP+GS (各n = 4)をそれぞれ移植した。4 週間後、ラットを安楽死 させ、頭蓋骨の検体を回収し、micro-CT および
Hematoxylin-eosin(H-E)染色によって評価した。細胞増殖率は、3%aPRP 添加条件で増加したが、10%aPRP 添加条件では低下した。Alizarin red 染色
は誘導開始の
21日後の実験群で陽性であったが、
Runx2と
OCNの発現レベルは対照群よりも
7%aPRP添加条件が最も高く、OPN では
10% aPRP添加条件が最も高かった。術後
4週の
micro-CTとラトッ
クシステムによる骨量および骨密度測定では
no implantと
GSのみでは骨形成はほぼ認められなかっ た。一方、骨形成を認めた
rDFATsと
rDFATs+aPRPを比較した場合、
rDFATs+aPRPでは、骨欠損はほ ぼ閉鎖され
(BV/TV:
60.6%)、骨体積密度が
2群間で有意差を認めた。さらに
H-E染色で成熟した骨組 織を認めた。
今回、
DFATsを使用し、細胞増殖率と骨分化および骨形成能の評価をした。
aPRPを添加すること
で増殖率は上昇し、骨芽細胞分化・骨再生を促進した。以上のことから、
DFATsに
aPRPを併用する ことにより有効な骨の再生が可能であることが示唆された。
論文審査結果要旨
本論文は、脱分化脂肪細胞と活性化多血小板血漿とを用いて、細胞増殖率と骨分化および骨形成能 を評価した論文である。
顎顔面領域における顎骨欠損は、先天性疾患、外傷、腫瘍の切除などによって生じ、これに対して、
従来は金属プレート、自家骨移植あるいは仮骨延長などによる再建が行われてきた。しかし、自家骨移 植では、採取時の侵襲の大きさや採取量の限界があり、細胞を用いた再生医療による安全で確実な骨 再生が期待されている。従来、再生医療のためのドナー細胞として骨髄由来間葉系幹細胞を用いた基 礎研究と臨床適用が行われてきたが、近年、脂肪組織中にも間葉系幹細胞が存在することが判明し、特 に成熟脂肪細胞由来の脱分化脂肪細胞(DFATs)は、骨や軟骨への分化能を有することが明らかとな り、再生医療における幹細胞の新たな供給源として注目されている。一方、多血小板血漿 (以下、
PRP)は、採血により得られた全血を遠心分離で濃縮した物質で、創傷治癒促進作用を有し、形成外科領域や 皮膚科領域などの様々な分野で治療に応用されている。PRP は骨再生促進作用も有し、骨髄由来間葉 系幹細胞に
PRPを併用することで、骨髄由来間葉系幹細胞の増殖率が促進されることが報告されてい る。しかし、DFATs と
PRPとを併用した骨再生の報告は、渉猟しえた範囲では認められない。そこ で、今回申請者は、
DFATsと
PRPとを組み合わせた細胞増殖率、骨芽細胞分化能、骨再生能力を評価 した。
申請者は
F344系ラット(雄
8週齢)から脂肪組織を採取してラット
DFATs(rDFATs)と活性化多血小板血漿(aPRP)を作製し、
aPRP添加培地で
rDFATsを培養して、その細胞増殖率を測定した。さらに、
1)
増殖培地(DMEM+10%FBS,1%PS)、2) 骨芽細胞分化培地(対照群;ODM)、3) ODM+aPRP 添加 培地で
rDFATsを培養し、real time RT-PCRによる骨芽細胞マーカー(
Runx2、 オステオカルシン(
OCN)、オステオポンチン(
OPN))の遺伝子発現を検索し、Alizarin red染色で
Ca産生能を評価した。動物実験
(承認番号:20-04001
号)では腹腔内麻酔下でラット頭蓋骨にトレフィンバーで直径
9mmの臨界骨欠
損モデルを作製し、1) no implant
2) GS 3) rDFATs+GS 4) rDFATs+aPRP+GS (各n = 4)をそれ ぞれ移植した。4 週間後、ラットを安楽死させ、頭蓋骨の検体を回収し、micro-CT および
H-E染色で 評価した。その結果、細胞増殖率は、3%aPRP 添加条件で増加したが、10%aPRP 添加条件では低下 した。Alizarin red 染色はすべての実験群で陽性であったが、
Runx2と
OCNの発現レベルは対照群 よりも
7%aPRP添加条件が高発現で、
OPNでは
10% aPRP添加条件が高発現であった。術後
4週の 骨 量 お よ び 骨 密 度 測 定 で は
no implantと
GSの み で は 骨 形 成 は ほ ぼ 認 め ら れ な か っ た が 、
rDFATs+aPRP