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荷降ろし作業中の事故と自賠法3条の「運行によっ て」(最判昭和63.6.16)

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荷降ろし作業中の事故と自賠法3条の「運行によっ て」(最判昭和63.6.16)

著者 尾島 茂樹

雑誌名 名古屋大学法政論集

巻 128

ページ 277‑295

発行年 1989‑10‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/10918

(2)

判例研究

最高裁昭和六一一一年六月一六日第一小法廷判決(昭和六一年㈹第一一一六一号損害賠償請求事件)民集四二巻五号四一四頁

[事実の概要]Yは、大型貨物自動車を所有し運送業を営んでいたところ、訴外Aからの依頼で角材を運送し、本件事故現場へ到着し、Aの従業員Bとの相談で本件車両を道路上、A側とは反対側へ駐車し、Aのフォークリフトで積荷を搬入することとした。このため、歩車道の区別のない幅員四・五メートルの道路の有効細貝は約二・五メートルに狭められた。Yが本件車両の荷台上で他の車両の有無を監視し、Bがフォークリフトを運転するとい

荷降ろし作業中の事故と自賠法三条の「運行によって」

う形で搬入が始められ、Bは、三回目の搬入のため長さ約一・五メートルのフォークが路上に突き出る位柵でフォークリフトを停止させ、フォークの高さの調節をしていた。そこへ、本件車両に気をとられて前方を注視せず、自動車で本件車両と対向する形でその左方を通過しようとしたXが、突き出ていたフォークリフトのフォークに衝突し傷害を負った。本件車両はフォークリフトによる荷降ろしが当然に予定されている車両で

あった。そこでXは、Yに対し、人的損害につき自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」という)三条により、損害全体につき民法七○九条により、損害賠償の請求をした(その他の被告に対する

尾島茂樹

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判例研究

請求および補助参加人については省略する)。 第一審判決は、荷降ろし作業が駐車後直ちに開始されたもの であることから、本件車両の走行と荷降ろし作業との間に連続 性を認め、前記のような状況で積荷の搬入作業がなされた場合 には、本件車両とは別の車両であるフォークリフトとの衝突事 故であるとはいえ、なお、本件事故は本件車両の運行によって 生じたものとするのが相当である、と判断し、自賠法三条によ

り人的損害の賠償を認め、民法七○九条により物的損害の賠償を認めた。原審も、駐停車前後の走行と荷降ろし作業の連続性から本件車両の運行性を認め、本件のような態様のもとで荷降ろし作業

が行われる場合は、「フォークリフトの運転操作と本件車両の運

行とは密接不可分の関係にあり、本件車両の運行と本件事故との間の因果関係を否定することはできない。したがって、本件

事故は本件車両の運行によって生じたものと解するのが相当で

ある」とし、自賠法三条を適用した(損害賠償金額につき変更)。Yは以下のように述べて上告した。本件事故は本件車両の「運

行によって」生じたものではない。すなわち、1「運行」の概

念について判例(固有装置説)違背がある。本件邪故はフォークリフトの運行によって生じたものである。2「運行によって」について、たとえ本件荷降ろし作業が「運行」だとしても、最

高裁のいう相当因果関係があるとはいえない。すなわち、本件

事故は、本件車両との衝突にも比すべき事態によって発生したしのではない。[判旨]上告棄却。本件事故は、Xがフォークリフトのフォーク部分に衝突して生じたものであるから、本件車両がフォークリフトによる荷降ろしが予定されている車両であること、荷降ろし終了後に直ちに出発する予定であったこと、三回目の荷降ろしの途中であったこと等の事怡があろうとも、本件事故は本件車両を当該装置の用い方に従い用いることによって発生したものとはいえない、と解するのが相当である。従って、原判決には法令解釈適用を誤った違法がある。しかし、原告は他に民法七○九条の要件事実も主張しており、原審は本件事故がYの過失のよって生じたことを認めているから、前記の違法は原判決の結論に影響を及ぼさない。[研究]一本件事故が本件車両の運行によるものではないと判断したことについて賛成するが、その理由づけには反対する。本件結・論(上告棄却)については賛成する。二本判決の意義・射程範囲非常に特殊な訓案においてではあるが、フォークリフトによる荷降ろしが予定された車両をめぐる事故の運行起因性判断における当該車両とフォークリフトによって生じた事故との関係

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(4)

について最高裁として初めての判断を示した。事案の特殊性から射程範囲は狭い、と考えられる。三「運行」に関する学説・判例自賠法の起草者は、自動車が高スピードで走行することにその危険性を認め、自賠法の制定に至った経緯から、「運行」とは(1) 「自動車のハンドルや車輪を動かして地上を移動させること」をいうとしていた。これに対して、その後、「運行」の概念について、自賠法二条二項の「当該装置」の解釈と関連し、現在ま(2) でに六つの考え方が存するといえよう。それらは一般に「原動機説」「走行装置説」「固有装置説」「車庫出入説」「危険性説」(3) 「物的危険性説」と呼ばれている。「原動機説」は自動車を原動(4) 機により移動せしめることが、「走行装置説」はエンジンが動いていなくとも、走行装置を操作しながら走行することが、「固有(5) 装置説」は自動車の構造上装備されている装置に加心えて、特殊(6) 自動車の付随的な装置を操作することが、「車庫出入説」は車庫(7) から出て車庫に入るまでが、「危険性説」は通常の走行に匹敵す(8) る危険性ある状態が、「物的危険性説」は自動車の装悩の物的危険状態が、それぞれ「運行」だとしている。最高裁は「固有装(9) 置説」を採用しているといわれてきたが、評価としては、少なくとも「原動機説」「走行装置説」を採用しないだけで、「車庫(、)出入説」等を排斥するものではない、とするものもある。近時(u) の下級審判決では「車庫出入説」に立つものも多数あるが、「固 (⑫) 有装置説」が多数でとのる〈「運行」に関する判例表を次ページ以下に掲げる)。学説は、現在では車庫出入説ないし危険性説が有(、)力といってよい。四運行「によって」に関する学説・判例・運行「によって」が意味するものについて、最高裁(鮫一一一判昭和四一一一年一○月八日民集二二巻一○号二一二五頁、最-判昭和五二年一一月二四日民集一一一一巻六号九一八頁、最一一一判昭和五四七月二四日民集一二巻四号九○七頁)は相当因果関係を意味するとしている。これに対して、学説は、事実的因果関係があれば足りるとする「事実的因果関係説」、相当因果関係が必要だとする「相当因果関係説」、運行との間に時間的場所的接着性があ(M) れぱ足りるとする「運行に際して説」に分かれる。通説は相当(嘔)因果関係説に立っている。五「巡行によって」に関する最高裁判例蚊高裁は、最初、エンジンの故障のためロープで牽引されている自動車から子供が飛び降りた事例で、その事故は被牽引車の運行によって生じたとしたく最一一一判昭和四三年一○月八日民雄二二巻一○号一一一一一五頁)。この判決で原動機が動いていなくとも巡行性が認められることが明かとなった。次に,クレーン車のクレーンを走行停止状態でその目的にしたがって操作したことによる事故につき巡行起因性を認めた(最-判昭和五二年一一月一一四日民集三一巻六号九一八頁)。この判決は走行装

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(5)

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判例研究

「運行」判例一覧(判例集につき記載のないも

「運行」性を

のは交民集)

○=認めたもの

*=認めなかったもの

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280 大阪地判昭40.1.29判夕183.185 ○停車中のドアの開閉

2 松山地宇和島支判昭43.4.24L2473 ○クレーン車のクレーン

3 最三判昭43.10.8民集2210.2125 ○ロープで牽引されて走行している場合

徳島地判昭44.7292.4.1030 ○ミキサー車のミキサーの振動による車の 転落

横浜地判昭45.3.263.2.453 ○自動車の駐車

横浜地判昭45.10.263.5.1631 ○サイドブレーキのゆるゑによる転落 7 松山地今治支判昭46.1.294.1171 ○停車装置の誤操作による暴走 8 福岡地小倉支判昭46.324判夕270.345 ○短時間の駐車

9 大阪地判昭46.5.1243.808 ○荷おろし中の積荷にあたって死亡 10 和歌山地田辺支判昭46.6.154.3.900 ○フォークリフトによる秋荷の移動中の誘

導員の下敷死(フォークリフトは自動 車)

11 名古屋地昭46.12.204.6.1784 ○パワーショベル

12 大阪高判昭47.5.175.3.642 ○停車中の扉の開閉,荷物の積み卸し 13 函館地判昭47.6.285.3871 ○ショベルローダーのショベルの落下 14 新潟地判昭47.10315.5.1483 ○工場構内においてのみ用いられる無登録

15 横浜地判昭47.12.115.6.1710 「運行によって」=「運行に際して」

16 札幌地判昭47.12275.6.1796 ○道路法2条の「道路」以外の上の運行

17 札幌地岩内支判昭49.8.297.4.1188 ○駐車

18 千葉地松戸支判昭50.7.28.4996 *駐車中の移動図書館の閲覧台 19 静岡地判昭507318.41078 ○故障車の停車

20 秋田地大曲支判昭5L33092.489 *農業用薬剤散布車のホース 21 東京高判昭51.6.28下民集27.5-8407 ○駐車

22 大阪地判昭51.12.49.6.1655 ○牽引用ロープ

23 名古屋高金沢支判昭52.9.910.5.1274 ○夜間路上に駐車中の普通貨物自動車 24 東京地判昭52.9.2710.5.1372 *自衛隊基地内に駐車中の戦車

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281 25 最二小判昭521L2410.6.1533 ○クレーン車のクレーン

26 仙台高判昭54.9.712.5.1184 ○トラックからの転落,さらに積荷の下敷 27 福岡地小倉支判昭54.11.26判時962106 ○トラックから荷降ろし中に落下 28 東京地判昭55.7ユ513.4.897 ○クレーン車のクレーン

29 福岡地判昭55.9.913.5.1171 *貨物自動車からの飛び降り,電車との接 触

30 東京地判昭56.3.3114.2.465 *パトカーの被追跡車との衝突事故はパト カーの「運行」によるものではない

31 大阪高判昭56.8.28144.797 ○違法停車車両

32 最二小判昭56.1L1314.6.1255 *荷台から落下した電柱の下敷死亡 33 最三小判昭57.1.1915.L1 ○動けなくなったダンプカーを引っ張ろう

としたブルトーザーとダンプカーの間に はさまった場合のダンプカー

34 大阪地判昭57.9.2915.5.1274 ○フォークリフトからトラックへ積荷を積 承込み中,積荷に手をはさまれた 35 横浜地判昭5710.2915.5.1410 ○故障車のファンベルト

36 東京地判昭587.2616.41042 ○トラックに積んである木材

37 金沢地判昭58.8.1816.4.1116 ○大型貨物自動車へのブルトーザーの積載 作業

38 岐阜地判昭58.12.1316.6.1699 *いわゆるタイコによる荷降ろし作業 39 秋田地判昭59.82817.41125 ○大型特殊自動車のパケットと下水管の間

に頭を挟まれる 40 熊本地判昭59.11.2817.61649 *運転席で腰をひねる

41 東京地判昭6011.2918.61555 *W用の被牽引車(乙車)が専用の牽引車 (甲車)に引かれている場合の乙車

42 東京地判昭6L42219.2.539 *荷台から降りようとして足を滑らせる 43 東京高判昭61.5.28判夕617134 ○本件原審

44 東京地判昭6L72219.4.1005 *白バイに追跡された車の事故について白 パイ

45 最-判昭63.6.16判時1291.65 *本件

46 最-判昭63.616判時1298.113 ○フォークリフトが突き落とした積荷にあ たって死亡

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。、‐『‐b二口』0‐●。-ワー106-111000IPp8bIIIIILIIIII・』・・Ⅵ①

判例研究 置が動いていなくとも、固有装置が操作されていれば運行起因

性が認められることを明かにした。次に、最高裁は、材料置場

に駐車後、昼食。一時間の休憩をはさんで開始された荷降ろし

中、積荷の材木が落下して生じた事故につき運行起因性を否定

した原判決を維持した(最一一判昭和五六年二月一一一一日判例時

報一○一一六号八七頁)。また、本判決と同日になされた判決で最 高裁は、フォークリフトによる荷降ろしが予定されている荷台

は自動車の「当該装置」であり、荷降ろし作業は、直接的にはフォークリフトを使ってされたものであれ、あわせて荷台をその目的にしたがって使用したのであるから、「当該車両の用い方に従い用いること」にあたるとした(量一判昭和六三年六月一六日判例時報一二九八号二一一一頁)。六荷降ろしに関する判例

先に掲げた「運行」に関する判例のうち「荷降ろし」に関す

るものは9Ⅲ、妬〃塊弧珊師珊妃である。以下に簡単に紹介する。9大阪地判昭和四六年五月一二日交民集四巻三号八○八頁荷降ろし中の積荷が、近づいた幼児にあたり、右幼児が死亡した場合につき、「普通貨物自動車の如く荷台を設け、これに荷物を積載して運送することを目的とする自動車にあっては、積荷をして走行している間に荷くずれによって歩行者を負傷させた場合は無論のこと、目的地附近の路上に駐車して荷おろし作業 のなされている間の如く、走行と密接した状態にあり、且つ貨物自動車としての用法、即ち荷台に位世的に関係づけられた積荷を、それから分離する固有の装世たる荷台そのものを使用している状態下にあっては、未だ『巡行』の概念の中に含ましめるのが妥当である」とした。加和歌山地田辺支判昭和四六年六月一五日交民集四巻三号九○○頁フォークリフトで木材を秋載・移動中荷くずれがおき、誘導中の作業員がその下敷になって死亡した場合につき、「本件事故の際における本件リフトの迎転状況は、正に自賠法二条二項に規定する『自動車を当該装桝の用い方に従い用いる」状況にあったものというべく、従って自賠法にいう運行中にあったものといわなければならない」とした。u大阪高判昭和四七年五月一七日交民集五巻一一一号六四二頁「運行」とは、自動車をエンジンによって移動する場合に限らず、停車中の扉の開閉、荷物の積み降ろし等自動車の移動に密接に関連する場合も含むと解すべきである、とした。邪仙台高判昭和五四年九月七日交民集一二巻五号二八四頁駐車をして原木秋載作業中、トラック上にいた作業員が地上に転落し、さらにその上から祇荷の一部が落下して死亡した小故につき、「控訴会社は本件事故当時本件トラックを本件事故現場から製材所までの原木迎搬の用に供すべく、製材所から事故現場まで運行し、更に原木を積糸込んで製材所に運搬するた

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めに事故現場に駐車させていたものであり、本件事故は、右駐車中における原木積載作業中の終了時点において、トラック上にいた作業員が地上に転落し、更にその上から積荷の一部が落下したことに因り発生したものであるから、自賠法一一条にいう『自動車を当該装置の用い方に従い用いる」状態において発生したものということができる」とした。〃福岡地小倉支判昭和五四年一一月二六日判時九六二号一○六頁トラックからの荷降ろし作業中に荷台から転落受傷した事故につき、「事故は同車を比較的近距離内の花壇から花壇へと順次停車と走行を繰り返し移動させながらしていた一連の作

業中に生じたものであるから、同事故発生時における同車の状

態はその走行中かこれに密接してなされた停止中であったというべきであり、いずれにしても前記『運行」に該当するものと認められる」とした。皿前出最二判昭和五六年一一月一一一一日弘大阪地判昭和五七年九月一一九日交民集一五巻五号一二七四頁フォークリフトからトラックへ鋳鉄管を積承込承作業

中、作業を手伝っていたトラック運転手(被害者)が鋳鉄管に手

指をはさまれた邪故につき、自賠法一一条二項にいう「巡行」とは、人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装世の用い方に従い用いることをいうが、右装悩は必ずしも原動機に限られるものではなく、走行装悩の承ならず、当該自

動車に固有の装世もこれに含まれ、これらの装散の全部又は一 部をその目的に沿って操作していればよいとして、フォークの 先端を荷台に近づけた後これをやや前方に傾斜させて右鋳鉄管 を荷台上に転がり落とした際に発生したから、右フォーク操作

は「巡行」に当たる、とした。妬東京地判昭和五八年七月二六日交民架一六巻四号一○四

一一頁トラックから木材をおろす作業中、丸太が落下し、歩行 者が死亡した事故につき、「貨物自動車からの荷降ろし中の事故

について、それが自動車の巡行によって生じたといえるか否か

については、駐停車前後の走行との連続性の有無、駐停車の場 所、自動車の枇造等を具体的に検討して総合的に判断すべきも

のと解されるところ、前認定のとおり、本件蛎故は、製材所数

地内に本件車両が停車して後約一○分後に発生したもので、作

業時間も三○分前後と予定されており、しかも作業終了後は速やかに帰途につくものと推認される)」とに照らすと、荷降ろし

と駐停車前後の走行との連続性を肯定し得ること、前認定の辨

故発生場所へ被害者及び木材迦搬専用車に附属されている装悩をその目的に従って利用していた際の小故である芦」と等をあわせ考えると、本件小故は、本件車両の巡行によって生じたものということができる」とした。町金沢地判昭和五八年八月一八日交民柴一六巻四号二一六頁大型貨物自動順へのブルトーザーの祇載作業中に生じた

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判例研究 事故につき、自動車保険普通保険約款の自損条項中の「運行」と自賠法二条二項の「運行」は同意義だとしたうえで、本件大型貨物自動車の荷台、セルフローダーは本件車両の固有装置に該当し、「本件事故は、本件車両の本来の用途に従い、セルフローダーを操作し、傾斜した荷台にブルトーザーを秋戦する作業において発生したものであり、右積載作業は本件車両の走行に引続き国道上で行われ、積載終了後直ちに他へ走行する予定であって、本件車両の走行と時間的場所的に接着しているものである。これらによれば、本件における一連の積載作業は本件車両を当該装置の用法に従って用いたものというべきであり、本件車両の『運行」に該当する」とした。胡岐阜地判昭和五八年一一一月一三日交民集一六巻六号一六九九頁「自動車の運行」に該当するか否かを判断するにあたっては、すべからく、当該装置を自動車に設置する目的・態様をはじめ、当該装置と自動車の走行との接着性ないしは関連性の有無・程度並びに当該装置が内包する危険性の程度・態様など諸般の事情を総合・考量して、これを決定するのが相当である、としたうえで、特殊な方法(いわゆるタイコによる荷降ろしの方法)によるコンクリ1卜.ハイルの荷降ろし作業を自陪法三条の「運行」には該当しない、とした。蛆東京地判昭和六一年四月一一二日交民集一九巻二号五一一一九頁エア抜き作業を援助した者が荷台から降りようとして足を 滑らせ転落負傷した鞭故につき、「加害車は、目的地に発車した直後、燃料切れのため、発車した場所脇の公道に一民って、停車し、燃料の軽油を給油したのであるが、その後の予定は、加害車のエンジンがディーゼルのため燃料切れ後の発進に不可欠なエア抜き作業を行った後、直ちに再発車するというものであったのであるから、右加害車の停車前後の走行との連続性に鑑承、加害車が運行中であったということができるが、原告が、エア抜き作業を援助するためであったとはいえ、停車中の加害車の荷台の、積荷の上に乗り、荷台上の鉄筋を取り除く行為を終えたうえ荷台から降りようとした際に誤って足を滑らせて転落負傷した本件事故は、加害車の固有装置をその目的にしたがって操作、使用したことに起因するものとは言い難く、原告が停車中の加害車の荷台から降りる際、自らの過失により足を滑らせて転落するという自動車の運行とは関係のない原因によって発生したものというほかない」とした。以上の諸判例から、荷降ろし中の小故が車両の巡行によって生じたとするためには、多くの場合に、1駐停車前後の走行との連続性2駐停車が一般交通に開かれた場所でなされたこと3自動車の構造が荷降ろし作業を予定したものであること、が(咽)必要であるとされてきた、とい心えよう。七検討「運行」と「によって」を区別して論ずることには反対ああ

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(、)るが、条文の上で「運行」自体が定義されており〈自賠法二条二項)、また区別して論ずることが実際上有益であると考えられるので、本稿ではそれらを区別して論ずることとする。まず、「運行」の概念について検討する。自陪法一一条二項は「運行」を「当該装置の用い方に従い用いること」をいうとするが、その解釈については前記のように分かれている。他方、本件についていえば、事故が、フォークリフトによる荷降ろし中に被害車とフォークリフトのフォークが衝突するという形で生じたため、そのこととの関連で本件事故が本件車両の「巡行」によったか否かが判断されることとなった。まずその側面から最高裁判例に即して検討してみよう。「運行」概念につき昭和五二年の最高裁判決は「固有装悩説」を採用している。本判決は「固有装置説」を採用するか否かを明示的に判示していないが、前述した本判決と同日の岐高裁判決(以下、「同日判決」という)は「枕木が装置されている荷台は、本件車両の固有の装置というに妨げなく、また、本件荷降ろし作業は、直接的にはフォークリフトを用いてされたものであるにせよ、併せて右荷台をその目的に従って使用することによって行われたものというべきであるから、本件幽故は、本件車両を『当該装置の用い方に従い用いること」によって生じたものということができる」と判示しており、この判示は、典型的な「固有装置説」とされた前記昭和五二年判決と比べると微妙に (岨)

表現の違いがある』ものの、紛れjもなく「固有装悩説」を前提と

した判決である。「固有装置説」を前提として本件を検討すると、まず、本件車両の荷台は固有装置だということはできようが、事故がその

目的に従った使用「によって」生じたとするには疑問がある。

というのは、小故が、本件車両とは別の車両であるフォークリフトに被害車が衝突するという形で生じているからである。そこで本判決の原審は、荷降ろし作業と走行との連続性から本件蛎故が本件車両の巡行中に生じたとし、本件車両の運行とフォークリフトの運転操作が密接不可分の関係にあるとして本件事故の迦行起因性を認めた。また、第一審判決も、原霧ほど

明確に「巡行」と「よって」の概念を区別していないが、荷降

ろし作業と走行の連続性および本件車両とフォークリフトの関係から本件事故が「巡行によって」生じた蝦故であることを認めている。これに対して、本判決は「巡行」と「によって」を

区別しないので、本件事故が本件車両の巡行中に生じたもので

ない、としたのか、巡行によって生じたのではない、としたのかが一見すると明確ではない。同日判決との関係でより詳しく述べれば、本判決は、本件覗故が、そしそJも荷台という固有装

、、、、置の操作使用中〈Ⅱ運行中)に生じたのではない、としたjものなのか、その操作使用によって生じたのではない、としたものなのか明らかにしてはいない。

285

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判例研究

そこで、本件車両が運行状態にあったか否かを検討してみよう。第一・二審判決では、荷降ろしと走行との連続性を考慮している。また、最高裁も前記昭和五六年一一月一一一一日判決では、それを考慮した原審判決を維持した(本判決においても「迎続性」が総合的判断の中で全く考慮されていないとはいえないだろう)。しかし私は、そもそも荷降ろしが駐車されて何分後に始まったか、車両が荷降ろし後何分で発車するか、という形で「連続性」が判断されるのならば、それらは、「当該装置をその用い方に従って用いる」こととは何ら関係がない、と考える。すなわち、車両の走行自体と当該装置の操作は無関係である。荷降

ろし中の車両の運行性を判断する上で、当該車両の走行と荷降(四)ろしの連続性を考慮することは失当であると考鯵える。次に、本件車両がフォークリフトによる荷降ろしが予定されている車両だという理由から、荷降ろし中(フォークリフトの運行中)は本件車両も運行中であるといえるであろうか。同日

判決は、フォークリフトが車両の荷台から積荷を突き落として生じた事故につき車両の運行によって事故が生じたことを認め

ているが、この事案では、フォークリフトと併せて車両の荷台も使用していたことから車両の運行性が認められている。これに対して本件では、車両の荷台が使用されている間に事故が生

じたのではないので、直接に車両の運行性は肯定されない。そこで問題となることは、二台の自動車の作業中に、両車両の関 係から、実際には「巡行」していない車両の運行性を肯定できるか否か、である。この問題について最高裁(最三判昭和五七年一月一九日民集一一一六巻一号一頁)は、自力で動けないダンプカー(甲車)を牽引しようとしていたブルトーザー乞車〉が後進し、その間にいた人がはさまれて死亡した珊案につき、乙車は甲車の補助道具であるから乙車の運行は甲車の巡行であるとした第一審判決に対する控訴を棄却した控訴審判決(「補助道具」には触れていない)を支持している。この判決で蚊高裁が「補助道具」という考え方を採用したわけではないが、本件でも、フォークリフトが本件車両の補助道具であり、フォークリフトの運行は本件車両の運行であるとすることができれば、本件車両の述行性が肯定されよう。本件原審は「補助道具」という用語を用いてはいないが、密接不可分性という概念によって(、)同様の結論を導きだしたものと考陰えられる。私は、本件の事案では、本件車両の巡行と、全く独立しているとはいえないにしても(荷降ろしを継続的に行っていたから)、相当程度独立に走行しているフォークリフトの運行とは切り離して考えるべきだと思う。従って、本件ではフォークリフトの運行を本件車両の運行とすることはできないといえよう。以上の考察に鑑みれば、本件で放高裁は「固有装置説」により、本件車両は運行状態にないと判断したと考えることもできよう。しかしながら、本件を具体的に検討するに、私は本件車

286

(12)

両の駐車自体を運行と判断できると考えるので、この考え方には反対である。以下に理由を述べる。まず、自賠法の起草者は「駐車によって停止している状態は運行ではなく、駐車しようとして停止するまでの動作が巡行で(、)あると解釈される」としていた。また当初の学説も、民法七○九条の立任が生ずる可能性があることは別にして、駐車車両に(配)自賠法の適用はないとしていた。しかし、その後は駐車車両が関係した嚇故の増加もあって、それらの事故に自賠法を適用し》(配)て被害者の保護をはかる見解が多数になったものと思われる。駐車車両による事故がその運行によったとするものは、その説明の仕方によって三つに分かれる。第一は、駐車自体が巡行(剛)にあたると説明し、第二は、駐車直前までの走行との因果関係(配)によって「運行」によったことを認めようとする。第三は、駐(顕)車する行為自体を「運行」ととら鯵える考え方である。思うに、事故が「運行」によったとされる事例では自賠世保険によって保険金が支払われるので、「運行」概念の拡大が被害者保護に資するものであることは当然であるが、また被害者保護というだけでは説得力ある理由付けになるとはいえないのも事実であ(”) る。特に、車庫出入説は、結論が先にありその結論にあわせて(配)「運行」概念を定めている、と批判されている。私は、路上駐車の事例については、それが自動車の路上への放置である点から、放置時間の長短を問わず、自動車の放置自

体を「運行」だと認めるべきだと考える。というのは、まず形 式的には、自賠法三条のいう「当該装悩の用い方に従い用いる」

ことの中に道路上に駐車することも該当する(駐車中はタイヤ、ハンド・ブレーキを用いて車体を静止させている)といえ(西)

る。すなわち、車庫からひとたび道路に出れば、自動車は道路 上にある限り辿転者の操作によって動き、止まるのであるから、 駐車中も迎転者の意思により「巡行」を継続しているといえる

(釦)のではないか。また実質的には、自動車の走行状態と同様の危険が駐車中にもふいだすことができる。静止しているからといって、自動車としての危険が全く存在しないわけではない。そのような場合には駐車車両の道路への放悩は、ある意味では同じ大きさ・質趾の物の道路への放徽と同様に考えることしで

きるが、自動車ほどの大きさ・質趾をもった物が多数道路上に

放撒されるというのは、それが自動巾であるからにほかならないし、そうであるからそれは自動車に固有の危険といって妨げない。このように考えれば、駐車中も巡行状態にある、と考えることが可能である。私は、自動車固有の危険が存在する、道(、)

路上の自動車は全て運行状態にあるとすべきだと考える。加鯵え

て、あえて蛇足を付け加えるならば、荷降ろし中の珈故については、自動車固有の危険との関連で判断し、労務作業上の危険(犯)である側面が強いものは、自賠法三条の「迎行」とは関係がな(調)いとい襲えるのではなかろうか。

287

(13)

判例研究

以上の考察に鑑ふれば、路上駐車車両が原因となって事故が 生じた場合には、「運行」によって生じた損害だとして、自賠法 三条により責任を負うべき場合があるといえよう。それではど のような場合に駐車車両の運行供用者は自賠法三条の責任を負 うことになるのだろうか。自賠法三条は運行「によって」生じ た損害を賠償せよという。「によって」というのは、事故と駐車 の間に因果関係が認められなければならないということを表し

ており、自賠法三条にいう運行に「によって」の解釈について

は、前に述べたように、「事実上の因果関係説」「相当因果関係 説」「運行に際して説」の対立がある。「によって」という文言

によって、|定の原因力を有する「運行」の承を選択する相当(鋼)

因果関係説が最も適切であるとい』えよう。それでは具体的には

どのような場合に相当因果関係があるといえるのであろうか。

そこで、自賠法三条・民法七○九条等が問題とされた事例で、 駐車車両あるいはそれに類似する停車車両が関係する事故を検 討し、類型化した(別表(駐停車車両の関する事故の判例一覧表)

(誼)参照)。-駐停車車両に自動車が衝突した場合一一駐停車車両を避けようとした自動車が対向車等と衝突した場合三駐停車車両によって見通しが悪くなり、それが原因となって事故が発生した場合 (一一と三の類型は態様によっては区別し難い。そこで、駐停車車両を避ける必要があり、それによって何らかの行動(たとえば、進行方向を変える)を起こさなければならなかった場合を一「単に自動車の陰になるものが見えないという場合を一一一とする)まず、第一類型の判例の傾向について考察しよう。この類型では早くから駐停車車両の巡行供用者・運転者(以下、「運転者等」という)の資任が認められてきたといえる。そして初期においては多くの珈例で駐停車が違法であるか否かは特に考慮せずに運転者等の責任を判断する点に特徴があるものと思われる。また、駐停車が違法であるか否かが意識され始めた後にも、単に違法な駐停車であるという理由の承から世任が肯定されるのではなく、具体的な蛎実にそくして尚任が判断されている。なおこの類型では、駐停車車両の巡転者等は加害者としても、被害者としても登場するが、この区別は単にどちらがどちらを(先に)訴えたかということによっており、重要な意味をもつものではない(たとえば、被害者の過失割合が八○・〈-セントと認定されるような事例では、どちらが真の加害者といえるのか)。過失割合は駐停車の具体的な危険性の大小によって左右されるが、いずれにせよこの類型では静止している駐停車車両に自動車等が衝突するという形で事故が発生するので、通常の場合には衝突した方の過失割合が高くなる傾向がある。

288

(14)

次に第二類型の判例の傾向について考える。この類型では古くは駐停車車両の運転者等の責任が問題とされることすらなかった。たとえば判例uでは「判示事項」において「駐車車両があるためセンターラインを……はみ出て走行した」(違法駐

車か否かは判決文からは明かでなどと認定されているので、

当事者は何らかの形で(因果関係の問題が残るにせよ〉駐車車両の運転者等の責任を問題とすることもできたはずであるが、駐車車両の運転者等は訴訟の当事者とはされていない。しかし、その後判例蛆が違法に停車していた車両が一因となって生じた事故につき、その車両の運行供用者責任を認める判断をした。(麺)その後、同様の判決もあるが(判例釦)、駐車車両運転者等の責任が問題とされない事例が続いている。事故の当事者が第二類型において駐車車両運転者等の責任を問題としないのは、当該駐停車車両と事故との因果関係の立証が困難だからであろう。第二類型においても、第一類型と同様の基準(相当因果関係説)で因果関係が考えられるはずであるが、第二類型では第一類型における「衝突」というほどの明確な事実がないため、因果関係の立証において困難な問題が生ずることになるからである。しかし、因果関係は当該違法停駐車がその周辺の交通に対してどの程度の危険性を有し、事故に対してどの程度の原因力を有していたかによって判断することができるのではなかろうか。たとえば判例肥では、「堺故現場となった南北道路の幅員と

乙車(違法停車車両(筆者注どの車両幅員との関係から、乙車が 道路左端に停車すると丙車(後続車両(筆者注ごを含む後続の 普通乗用車を対向車線に大きくはみださせることは避けられな

い状況にあったこと、乙車の停車位置が交差点内であったため、

丙車を含む後続車両の運転者としては、交差道路の安全と乙車 によって見通しを妨げられた対向車線の安全の両方を同時に確 認しなければならない状況にあったことの一一点において、乙車 の存在によって、時速四○キロメートル程度の車両の通行が相

当程度予想された本件蛎故現場付近における対向車両相互の正

面衝突の危険性は飛躍的に高められ、乙車自体が走行時に有す

る危険性に匹敵する程度にまで達していたものと評価すること(”)

も可能であろう」とされている。この記述は、直接には停車車

両の「運行」性に関するものであるが、車両と蜘故との相当因果関係の有無を判断するにあたっても、危険性・原因力の程度といった要素を基準として判断することが可能である。

最後に第三類型の判例を検討する。この類型では私の調べた 限り駐停車車両迎転者等の占任が問題とされたのは判例1と別 の一一件のゑであり、いずれも否定されている。この類型では、

駐停車車両の「運行によって」事故が生じたことが、第一・第二類型と比べて一段と明白ではなく、被害者がそもそもその責任を問題としようとしないことが多い。しかし、駐車停車両の放置自体を「運行」とみうることは前述のとおりであり、また、

289

(15)

判例研究 第一・第二類型と同様の基準で相当因果関係が認められれば、駐停車車両の運転者の責任が認められるはずである。その意味で、上告理由の引用する最高裁判決(最三判昭和四七年五月一一一○日民集一一六巻四号九三九頁)のいう相当因果関係は狭すぎよう。この類型でも駐停車車両の運転者が責任を負うべき場合が(羽)存在することを私は主張したい。以上の考察から駐車車両の運行供用者が責任を負うための要件をまとめれば、以下のようになろう。すなわち、自動車等が駐車車両に衝突する危険性がある場所に、あるいは後続車両等が避けるため危険が生ずる場所に、あるいは駐車車両で見通し(”) が悪くなり危険が生ずる場所に駐車したことにより、それが原因となって(相当因果関係)事故が発生したことが必要である。これらは具体的な事例ごとに判断されることになる。そこで本件につき、私見によって考察する。まず、本件車両を駐車したこと自体が、前に述べた理由から、運行にあたるとされなければならない。そこで議論の焦点は、事故がその運行によって生じたものといえるかどうか、に移る。私は、本件車両の駐車により有効幅員が極端に狭くなったこと、被害者が本件車両に気を取られてフォークリフトのフォークを発見するのが遅れたこと、を原審が認定しているが、それだけでは相当因果関係を認めるには不十分であると考える。すなわち、本件車両の「運行」と本件事故の間に相当因果関係はない。従って本 件事故は本件車両の「運行によって」生じたものとはいえない。最後に、上告棄却の結論に関しては、自動車の運行とは関係なく荷降ろし中の安全対策につき七○九条の戊任が問題とされ

、、、、、、、、.、、る一」とは当然であり、その安全対策についてのYの過失、およびその過失と本件事故との因果関係が立証されているので、被告が損害賠償責任を負うことに関しては結論に違いはない。そこで、上告棄却の結論に関しては賛成する。

》圧(1)運輸省自動車局編・自動車損害賠償保障制度の解説(昭和三二年・大蔵省印刷局)四四頁。(2)瀬戸正義「判批」ジュリメト九二六号九二頁(平成元年)、浦川道太郎・「判批」ジュリスト九一一一五号七八頁(平成元年)参照。なお、寺本嘉弘「運行によって」判例タイムズ二六八号五七頁(昭和四六年)、中村行雄「自賠法における『巡行』及び『運行によって芒有泉享監修・現代扱害賠償法講座3(昭和四七年・日本評論社)九五頁以下、白羽祐三「ロープによる牽引中の蛎故」別冊ジュリスト四八号四八頁以下〈昭和五○年)、木宮高彦ほか・注釈自動車損害賠償保障法(昭和六一年・有斐閣〉一六頁以下(木宮高彦執筆)、田上富信「判批」民商法雑誌一○○巻一号一四○頁(平成元年)等(注(3)し参照〉は四分類とするが現在では六分類説が妥

290

(16)

当であろう。詳しくは、以上の文献参照。(3)運輸省自動車局編・前掲注(1)一八頁、茅沼英一「運行の概念」判例タイムズ二一一一号一一一六頁(昭和四一一年)、神戸地判昭和三四年四月一八日下民集一○巻四号七八一頁。(4)海老名惣吉「自動車損害賠償責任保険」綜合法学三一一号一一一一一頁(昭和一一一六年)。

(5)木宮高彦・註釈自動車損害賠償保障法(昭和四○年・有斐

閣)一一四頁、白羽祐三「判批」民商法雑誌六○巻六号八九九頁〈昭和四四年)。(6)寺本嘉弘・前掲注(2)六○頁、中村行雄。前掲注(2三○一一頁、小川昭二郎ほか編・交通損害賠償の基礎(昭和五一年・青林祠院新社)五一頁以下(鷺岡康雄執筆)、中川善之助ほか監修。交通事故[改訂版](昭和五一一一年・青林洲院新社)一一二○頁以下(平井一雄執筆)、白羽祐一一一・前掲注(2)四九頁以下。(7)石田穣「判批」法学協会雑誌八六巻一二号一五二五頁(昭和四四年)、西垣道夫「荷おろし中の事故」別冊ジュリスト四八号五一頁(昭和五○年)。(8)高崎尚志「「運行」概念」田辺康平ほか編・新損害保険双書2(昭和五八年・・文真堂)三六九頁以下。(9)栄春彦「自賠法三条の『運行によって」の意義」吉田秀文ほか編。裁判実務大系8(昭和六○年。青林書院)七九頁

以下、赤坂軍治「運行」別冊ジュリスト九四号一一四頁(昭和

六一一年)、佐堅哲生「運行によって」別冊ジュリスト九四号一一一一頁(昭和六二年)、最一小判昭和五一一年一一月二四日民集一一二巻六号九一八頁参照。

(、)瀬戸正義・前掲注(2)九三頁。反対、田上富信。前掲注 (2)一四三頁。私には、本件は「車庫出入説」を排斥してい

るように思われる。後に述べるように、蚊高裁は固有装置説を採っているとするのが妥当であろう○

五)赤坂軍治・前掲注(9)一一五頁に掲げられた判決参照。 危)小林和明「運行によって」別冊ジュリスト九四号一一九頁

(昭和六二年)。(週)瀬戸正義。前掲注(2)九二頁。

(u)比佐和枝「運行によって」別冊ジュリスト九四号三三頁

(昭和六一一年)、潮見直之「W故原因との因果関係」別冊ジュリスト九四号三七頁(昭和六一一年)参照。「運行によって」Ⅱ「運行に際して」とする判例として、京都地判昭和四五年一月一一七日判例タイムズ二四七号一一一一一一一一頁、横浜地判昭和四七年一二月一一日交民集五巻六号一七一○頁。(旧)佐堅哲生・前掲注(9)三一頁、比佐和枝・前掲注(u)三一一一頁、潮見直之・前掲注(u)三七頁参照。定)浦川道太郎・前掲注(2)七九頁。

行)寺本嘉弘・前掲注(2)五七頁、西垣道夫・前掲住(7)五

291

(17)

判例研究

一頁。(皿)浦川道太郎・前掲注(2)七九頁。(四)高崎尚志。前掲注(8)三八五頁。(川)佐堅哲生・前掲注(9)三一頁。五)運輸省自動車局編・前掲注(1)四四頁。亜)小川善吉ほか「交通事故による損害賠償請求訴訟の諸問題(岨)」判例タイムズ一八三号四一頁以下の鈴木潔、加藤一郎、村松俊夫発言(昭和四一年)、茅沼英一「運行の概念」判例タィムズニ’一一号一一一六頁(昭和四一一年)。〈昭)吉岡進「交通事故訴訟の課題」鈴木忠一ほか監修・実務民事訴訟講座3(昭和四四年・日本評論社)一一八頁以下。そのほか、注(別)(空参照。函)中村行雄・前掲注(2)’○六頁、寺本嘉弘・前掲注(2)五九頁。(妬)藤原弘道「駐車と運行」別冊ジュリスト九四号二七頁(昭和六一一年)。小林和明・前掲注(、)一一九頁参照。なお、木宮高彦ほか・前掲注(2)三八頁(木宮高彦・羽成守執筆)は、駐車時間を考慮する判決例として、東京地判昭和五五年一二月二一一一日判例時報九九一一一号六八頁をあげるが、これはかなり特殊な事例であるので(駐車中の車内で幼児が熱射病で死亡)、ここでは参考とならないと思う。(妬)比佐和枝「自賠法三条の運行の意義」判例タイムズ六一一一 一号四七頁以下(昭和六二年)。(〃)藤原弘道・前掲注(閉)二七頁。(肥)同前。(羽)高崎尚志・前掲注(8)三八○頁。記)運転者の行為が駐車中も継続していると考える点が、比佐説と異なる。(Ⅲ)小林和明・前掲注(辺)二九頁。(釦)同前。(羽)自動車固有の危険と全く関係ない事故に自賠資保険金が支払われることによって自賠世保険料が高く設定されることになれば、問題がある。特に、本文に述べたように、自動車への積み込糸・荷降ろし中の事故は多くの場合自動車固有の危険とは関係がない。従って、このような事故では自賠尚保険金は支払われるべきではないのである。(弧)潮見直之・前掲注(Ⅲ)三七頁。記)本稿は判例研究であり、対象判例の事案では「相当因果関係」の存在は直接問題となってはいないので、この問題は本稿に必要な程度で扱うこととする。この問題については別稿で詳しく論じる予定である。(妬)その他、名古屋地判昭和六一年一月三一日自動車保険ジャーナル六四七号二頁。(〃)潮見直之・前掲注(Ⅲ)三七頁。

292

(18)

荷降ろし作業中の事故と自賠法3条の「運行によって」(尾島)

(胡)同旨、比佐和枝・前掲注(u)五一頁。 (胡)なお、ここで念のため述べておきたいことは、適法な駐 車であることは駐車をしたこと自体について運転者の過失 を否定すると考えるべきだ、ということである。初期の判 決例は前述したように駐車の違法。適法の区別をしていな いが、駐車禁止の規制がなされていない場所で、かつ道路 交通法(以下、道交法という)四七条(「他の交通の妨害とな らないようにしなければならない」)に従った駐車であれ ば、それは実質的に危険な駐車ではなく、「自動車の運行に 関し注意を怠らなかった」(自賠法三条)といえるので、そ の点に関しては過失はなく、その他の免責条項が立証され れば、運行供用者が責任を負うことはないと考える(反対、 比佐和枝・前掲注孟)四八頁)。なお、本件では問題とはさ れていないが、私見によれば、当事者が主張していれば、 本件駐車が違法駐車であったか否かが問題となりうる。こ の点に関して、第一審、第二審は何も述べてはいない(本件 駐車は道交法四五条一一項に該当するが、但書にも該当する ので原審の認定だけでは駐車が違法なものであったか否 かが不明である)。従ってこの点に付き審理を尽くす必要 があるので、この問題に限っていえば差一民しの必要がある。 そして、適法駐車であれば駐車自体については過失・違法 性がないことになる。また、念のため付け加えれば、「私は

本件に関する判例解説。批評

瀬戸正義・ジュリスト九二六号九一頁 田上富信・民商法雑誌一○○巻一号一三五頁 浦川道太郎・ジュリスト九三五号七七頁 [附記]本稿は、名古屋大学で行われている民事判例研究会で 報告した際の原稿を、加筆・修正したものである。

(平成元年六月脱稿)

[追記]校正の段階で、本件に関する判例解説、瀬戸正義・法 曹時報四一巻五号一四四○頁、および國井和郎・判例タ イムズ六九八号四六頁および吉川吉衞・判例時報一一一一一

八号一九八頁(判例評論一一一六八号一一一六頁)に接した。

適法駐車を「運行」でないと主張するものではなく、駐車 の違法・適法によって「運行」概念を定めようとするもの でもない。(中村行雄・前掲注(2)一○一一一頁、一○九頁注 万)、木宮高彦ほか編・前掲注(2)一八頁以下(木宮高彦執

筆)参照)。

293

(19)

判例研究 駐停車車両の関係する事故の判例一覧表(別表)

294 裁判所判決年月日

交民集巻号頁車両の態様 事故の態様

駐停車車両の 責任 過失割合(%)

その他

1岐li1地高山支昭36.95 交通事故下級民集

昭和36年度404 駐加 陰 無

2形地昭38.624 交通事故下級民集

、昭和38年度323駐加 衝 無

3東京地判昭44.5.28

2.3.714故停被 衝 有 10

4名古屋地判昭45.2.25

3.1.291 出* 避

5大阪地判昭45.3.19

3.2.421 出* 避

6横浜地判昭45.3.26

3.2.453駐加 衝 有 30 運行

7東京地判昭45.5.13

3.3.726 停* 陰

8和歌山地妙寺支判昭45.6.27

3.3954故違駐加 衝 有 40

9横浜地)||崎支判昭46.4.22

4.2.661 駐* 避

10浦和地判昭46531

4.3.875停被 衝 有 20 駐禁

11東京地判昭47.1.21

5.1.55 駐* 避

12大阪地判昭47.1.22

5.1.75故駐被 衝 無

13浦和地判昭47.2.4

5.1.162 駐* 陰

14和歌山地判昭47.6.12

5.3.808 駐* 陰

15大阪地判昭486.20

6.3.1020連停被 衝 有 20 駐停禁

16東京地判昭48.11.16

6.6.1810故違駐被 衝 無 0 駐停禁

17東京地判昭49.3.29

7.2.452運駐被 衝 無 0 駐禁

18東京地判昭49.4.2

7.2.472 駐* 陰

19札幌地岩内支判昭49.8.29

7.4.1188 駐加 衝 有 40 運行

20束京地判昭50.5.26

8.3.730 駐加 衝 無

21静岡地判昭50.7,31

8.4.1078停加 衝 有 運行駐停禁

(20)

荷降ろし作業中の事故と自賠法3条の「運行によって」(尾島)

衝=衝突

避=避難行動をとった 陰=見通しが悪くなった 故=故障車違=違法停=停車

駐=駐車加=加害車被=被害車

*=幽任が問題とされなかったもの

295

22福岡高判昭50.1222

8.6.1622 駐加 衝 無 (違反無)

23宇都宮地足利支判昭51729

9.4.1085 駐* 陰

24名古屋高金沢支判昭529.9

10.5.1274 駐加 衝 有 30 運行(違反無)

25大阪地判昭53.10.30

11.5.1535 駐* 陰

26大阪地半'昭54.710

12.4.988 駐* 避

27秋田地判昭56.7.7

14.4.818 適停加

違駐加

衝衝 無無 00

駐禁(違反無)因果無

28大阪高判昭56.8.28

14.4.797 連停加 避 有 90 運行

29福島地判昭571.13

15.1.90 適停加 陰 無 駐禁因果無

30大阪地判昭58128

16.1.78 連駐加 衝 有 10 駐禁

31大阪地判昭58.3.23

16.2.356 駐* 陰

32広島地判昭583.28

16.2.394 運駐加 避 有 15 駐停禁

33大阪地判昭58.3.29

16.2.404 駐* 避 駐禁

34岡山地判昭58.5.30

16.3.771 停加被 衝 有 20

35福岡地判昭58.712

16.4.984 故停加 衝 有 70 駐停禁

36浦和地判昭58.10.21

16.5.1401 駐* 避

37大阪地判昭58.10.28

16.5.1460 駐停* 避

38福岡地判昭59.1.31

17.1.133 故停被 衝 無

39東京地判昭596.26

17.3.822 停加 衝 有 30,60

40東京地判昭59.717

17.1.20 停被 衝 有 10 駐停禁

41束京地判昭61.1.30

19.5.1501 故違駐被 衝 無 駐禁

42東京地判昭61.410

19.2.517 連駐加 衝 有 35 運行駐禁

参照

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