博 士 ( 農 学 ) 竹 之 内 一 昭
学 位 論 文 題 名
ク口ム鞣製に関する研究
一ク口ム鞣液の組成および各種クロム錯体のコラ―ゲンとの反応性―
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
動 物の皮 は古 くから 生活用 品とし て、衣類や履物、袋物、敷物等 に利 用され てき た。皮 の利用 にあた っては、腐敗防止や理化学性質 を高 めるた めに 鞣製を 行う必 要があ る。種々の鞣剤の中で、ク□ム は工 程管理 の簡 便さ、 他の鞣 剤では 得られない高い耐熱性,微生物 や薬 品に対 する 強い抵 抗性を 製品革 に付与できるため最も普及して いる鞣剤であり,その鞣液の性状もかなり明らかにされている..近 年、 ク□ム の有 毒性が 指摘さ れ、ク 口ムの排出を抑制するための様 々な 技術が 検討 されて いる。 それら 技術の開発にはク口ム鞣製に関 する 詳細な 研究 ,特に 従来不 十分で あった個別ク口ム錯体の鞣皮性 に関 する知 見の 蓄積が 必要で ある。 本研究では、各種ク口ム溶液中 に存在するク口ム錯体をゲル漉過法とイオン交換法を用いて分離し、
個別ク口ム錯体について,ぐD錯体の大きさと電荷の関係,@赤外分 光分 析によ る配 位子の 同定、 ◎配位 子とク□ムとの結合モル比の測 定か ら個々 のク 口ム錯 体の構 造を推 定した。次いで,種々のク口ム 錯体 の鞣皮 性に ついて 、ク口 ム結合 量ならびに鞣製コラ―ゲンの示 差熱分析から検討した。得られた結果は以下のようにまとめられる。
1
.ク 口ム韓 液は構 造の異 なる種 々の ク口ム 錯体よ り成る が、 ゲ ル漉過法とイオン交換法とによって個々のク口ム錯体に分離できた。塩化ク口ム溶液はほとんどがへキサアコク口ム錯体であったが、
こ れにア ルカ りを添 加し、 塩基度 を高めると、粒子が大きく、かっ電 荷の高 い多 核錯体 が形成 された 。このことからク口ム錯体のオール 化 は
3
個 で は な く2
個 の オ ― ル 基 で鎖 状 に多核 化する ことが 判明 し た。33
%塩 基性塩 化ク口 ム溶液 の錯体組成はへキサアコク□ム錯体 とジ‑U
―ヒドキソニク口ム錯体、 テ卜ラーバーヒド口キソ三ク口ム錯 体、ヘキサ‑
凵一ヒド口キソ四ク口ム錯体がそれぞれ約40
%と10
%、30
%、20%であった。塩基度が50%でば、電荷が+5〜+7の三〜五核 体程度 のク 口ム錯 体が大 部分を 占め、さらに塩基度を高め67
%にする と 、 高 度 に 多 核 化 し た 高 電 荷 の 錯 体 が 多 量 に 形 成 さ れ た 。
2.
硫酸ク口ム溶液には主にジ―餅一ヒドロキソ‑凵一スルファトニ ク□ム 錯体とテトラ‑
〃ーヒド口キソ 三ク□ム錯体、ヘキサアコク口 ム 錯体 が存在 し、これらの錯体 がそれぞれ約30
%と20
%、20
%を 占 め た。 この溶 液にアルカりを添 加すると、各種スル ファトク□ム錯 体 やへ キサア コク□ム錯体が減 少し、多核化したヒ ド□キソク□ム 錯 体が 増加し た。しかし、塩基 度46
%以上では沈澱が生 じ、塩化ク 口 ム溶 液と比 較すると、多核化 の程度は低く、錯体 の大きさや電荷 の状態は均質であった。3.
塩 化 ク 口 ム 溶 液に ギ酸 ナ 卜リ ウム を 添加 する と 、単 核体 の モ ノ 、ジ および トリホルマトク口 ム錯体と幾っかのニ 核体のホルマ卜 ク 口ム 錯体が 形成された。しか し,三核体以上の錯 体の形成は認め ら れな かった 。酢酸塩添加の場 合は、モノアセ夕卜 ク口ム錯体の形 成 が認 められ たが、ジあるいは 卜リアセタ卜ク口ム 錯体の形成は認 められなかった。多量に添加した場合、 [Cr3(CH3COO)60C1]型の三 核 体や 非常に 粒子の大きいアニ オン性の錯体が形成 された。シュウ 酸 塩添 加の場 合は、モノオキサ ラトク口ム錯体とジ オキサラ卜ク口 ム酸錯体が形成された。4.
硫 酸 ク □ ム 溶 液に マス キ ング 剤を 添 加す ると 、 スル フア 卜 基 が オル ガノ基 と置換し、錯体内 において、スルフん ト基とオルガノ 基は共 存しないことが判明 した。ギ酸塩と酢酸塩のI
添加の場合は、添 加量 がク口 ムに対してモル比
2.0
、シュウ酸塩 添加の場合は、1.0
で 、ほ とんど または全ての錯体 がホルマト、アセタ トおよびオキサ ラトク口ム錯体となった。5.
グ ル コ ー ス 還 元ク □ム 溶 液中 には13
種 類 のク 口ム 錯 体の 形成 が 確認 された 。種々のスルフア 卜およびヒド口キソ ク口ム錯体の他 に 、種 々のホ ルマトク口ム錯体 とオキサラ卜ク口ム 錯体の形成が確 認された。6.33
% 塩 基 性 塩化 ク 口ム 溶液 で 鞣製 を行 う と、 コラ ー ゲン に対 す る反 応性は 多核化しているヒ ド□キソク口ム錯体 ほど高かった。ヘキサアコク□ム錯体は反応しなかった。
7.
硫 酸 ク 口 ム 溶 液な らび に グル コー ス 還元 ク口 ム 溶液 での 鞣 製 におぃて、テ卜ラ一弘―ヒド口キソ三ク口ム錯体は最も高い反応性を 示した。 ジー肛―ヒド□キソーバースルファトニク口ム錯体は高いpHに お いて 反応性 が比較的高かった 。グルコース還元ク 口ム溶液中のカ チ オン 性のホ ルマトク□ム錯体 も若干反応性があっ たが、オキサラ トク口ム錯体はほとんど反応性がなかった。8
. マス ク 化ク 口ム 錯 体の コラ ー ゲン に対 する反応性 はマスキン‑ 188−
グ剤の種類によって異なった。
体ほど高い反応性を示すが、こ ホ ルマ卜ク口ム錯体は電荷の高い錯 れ らの錯体が存在しなぃ場合には、
総体 的に低い電荷の錯 体の反応性が高まっ た。アセタトク口ム錯体 はカチオン性の錯体が反応性を示したが、ホルマ・トク口ム錯体と比 較す ると、やや低かっ た。非カチオン性の アセタトク口ム錯体はほ とん ど反応しなかった 。モノオキサラ卜ク 口ム錯体はカチオン性の アセ タトク□ム錯体と 同程度の反応性を示 したが、ジオキサラ卜ク 口ム酸錯体はほとんど反応しなかった。
9.
コ ラ― ゲン の 熱変 性温 度 はク 口ム 鞣 製に よっ て 顕著 に上昇し た。 同―ク□ム含量の 場合、硫酸ク口ムや グルコース還元ク口ムで 鞣製 したコラーゲンは 塩化ク口ムで鞣製し たものより耐熱性が明ら かに高かった。 このことはジ‑〃―ヒド□キソ―弘―スルフア卜ニク口 ム錯 体が種々のヒドキ ソク口ム錯体よルコ ラ―ゲンの熱安定性に効 果的 に作用することに よるものであり、ス ルファト基がク口ム原子 間に架橋結合していることによると考察した。1 0.
ホルマ卜ク□ ム錯体は皮粉に対 し上記のスルフんトク口ム 錯体 と同程度の耐熱性 をもたらしたが、ア セタトク口ム錯体やオキ サラ トク口ム錯体はホ ルマトク口ム錯体よ り耐熱性への寄与が低か った。以上の結果から ,ク口ム鞣液中に は種々のク□ム錯体 が存在し、
それらとコラ ーゲンとの結合は 選択的に行われるこ とが明らかにな った。多核化したヒド口キソク口ム錯体がコラーゲンと最も反応し、
次いでジ‑凵一ヒド口キソ一斛ースルファ卜ニク口ム錯体やホルマトク 口ム錯体が比較的高い反応性を示
定性への寄与は上記のスルファト った。このことから、鞣皮性の高 性が示された。
した。
しかし、コラーゲンの熱安 および ホルマトク口ム錯体が高か い新た なク口ム鞣剤の開発の可能
―189―
学位論文審査の要旨 主 査 ´ 教 授 近 藤 敬 治 副査 教授 佐久間敏雄 副 査 教 授 高 橋 興 威 副 査 教 授 佐 野 嘉 拓
学 位 論 文 題 名
ク口ム鞣製に関する研究
一ク口ム鞣液の組成および各種ク□ム錯体のコラ―ゲンとの反応性―
本 論 文 は 図 総 頁 数
195
て い る .種 々 の 鞣 剤 耐 熱 性 , 微 生 及 し て い る 鞣 さ れ て い る . を 抑 制 す る た に は ク 口 ム 鞣 個 別 ク 口 ム 錯 で は 、 各 種 ク ン 交 換 法 を 用 そ の 構 造 を 検 鞣 製 コ ラ ー ゲ る 。 研 究 成 果
126
を 含 み ,4
章 か ら な る に 参 考異 な る 種 々 の ク 口 ム 錯 体 よ り 成 る が 、 ゲ ル に よ っ て 個 々 の ク 口 ム 錯 体 に 分 離 で き た 。 ど が へ キ サ ア コ ク 口 ム 錯 体 で あ っ た が 、 こ 塩 基 度 を 高 め る と 、 粒 子 が 大 き く 、 か っ 電 さ れ た 。 こ の こ と か ら ク 口 ム 錯 体 の オ ー ル 状 に 多 核 化 す る こ と が 判 明 し た 。 ー 方 , 硫 ー バー ヒ ド□ キソ← バースルフ ァトニク口 ム錯 ソ 三 ク 口 ム 錯 体 、 ヘ キ サ ア コ ク 口 ム 錯 体 が カ り を 添 加 す る と 、 多 核 化 し た ヒ ド □ キ ソ し か し , そ の 多 核 化 の 程 度 は 塩 化 ク 口 ム に し てい る .
―190ー
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―191―
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