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博士(農学)束山 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)束山 学位論文題名

北海道稲作地帯における農地問題の 発生機構に関する実証的研究

学位論文内容の要旨

  本論文は6章か らなる総頁 数162ぺー ジの和文論 文である。 図27、表49、和 文 98の 参 考 文 献 を 含 み 、 他 に 参 考 論 文 5編 が 添 え ら れ て い る 。   今日、日本農業における農地問題の発現は、地域的に多様な存在形態をとって 現れている。すなわち「都市的農業地域」「中山間農業地域」では農地所有その ものを掘り崩すかたちをとって現れ、他方、「専業的農業地域」である北海道で は収益性低下のもとで農地価格は1980年代に入って低落傾向を続けているが、こ の地価下落のもとでも農地売買は停滞的に推移しており、「借地増大」が顕著で ある。

  農地問題をめぐる従来の研究では、こうレた農地移動・農地価格の動向に注目 し、それを「農地市場」の変化として捉え、そうレた変化をもたらした要因の解 明にカ点が置かれてきた。その要因として特に重視されてきたのは、第1に離農 をめぐる動向と、第2に地価水準の分析であり、とりわけ、自作収益と地価との

.あいだの関係が「農地市場」の変化をもたらす決定的な要因とされてきた。

  これに対して本論文では農地問題を地域農業の生産構造上の問題と深く関連し て発生している問題であると理解し、農地問題を地域農業構造との関連で把握す る観点から、1980年代後半の北海道稲作を対象として農地移動・農地問題発生の メカニズムを実証的に解明することを課題としている。

  序章では、研究方法について述べている。分析に当たっては、実態調査による 一筆ごとの農地移動データを素材として、地域における農地移動がいかなる農地 の出し手と受け手の関係として現れているかという観点から分析をおこない、農 地移動の背後にある出し手層・受け手層の形成という農家階層構成のあり方、さ らにはこうした階層構成・経営展開を規定している地域農業の生産構造のあり方 を含めて 農地移動・ 農地問題の 発生機構を 解明する必 要があると している。

  第1章では、第2章〜第4章の実 態分析に先立っ予備的作業として、北海道稲 作の地帯構成と各地帯における農地移動の動向の特徴を検討した。主として統計 資料に依拠して、1960年代以降の北海道稲作の地帯差を、その生産力展開の特質 から「旧開稲作」、「新開稲作」、「限界稲作」と把握し、各地帯の農地移動・

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農地価格をめぐる動向の特徴を、第1に「旧開稲作」地帯における農地賃貸借の 進展、第2に「新開稲作」地帯における農地売買の進展と地価下落、第3に「限 界 稲 作 」 地 帯 に お け る 稲 作 転 換 の 進 展 と 農 地 移 動 の 停 滞 と 把 握 し た 。   第2章では、農地賃貸借が進展している「旧開稲作」地帯の典型とレて北海道 北空知の雨竜町を対象地域として取り上げ、2集落. 55戸の農業経営実態調査結 果をもとに、80年代後半に入って急増傾向にある農地賃貸借の性格を検討した。

事例地域では減反・転作の開始を契機に兼業化が進行するが、80年代に入って農 外就業の中止とそ菜作導入によって専業化・自立化をはかる農家層が現れ、農地 賃貸借のひとつのタイプとしてこうした専業化を指向する青壮年層の中から農地 の借り手が現れ、将来的な自作地拡大=購入の合みをもつ農地借入がおこなわれ ている。また、借入地の利用は、転作物の輪作的土地利用を強化する位置づけが 与えられている。他方、貸し手のタイプとして、第n種兼業的な農家に加えて、

後継者不在と健康悪化を理由として、自作経営から在村離農に至る高齢農家が地 域における新たなタイプの貸し手として現れてきている。さらに、集落内農家の 広範な後継者流出・高齢化の進行を背景として、後継者不在の農家同士の貸借関 係、将来的な売買移行の可能性をほとんどもたない貸借関係が発生するに到って いることを明らかにした。

  第3章では、農地売買とそのもとでの地価下落が進行している「新開稲作」地 帯の典型として北海道南空知の岩見沢市西川町を対象地域として取り上げ、1農 事組合・28戸の農業経営実態調査結果をもとに、農地売買と地価形成の特質を検 討した。事例地域では減反ニ転作下において兼業化が進行する一方、大面積保有 の有利性を発揮した転作主体の専業的な農家層が少数ながら形成され、この農家 層が1992年から開始された転作緩和を契機として大規模稲作への作付転換を指向 し、積極的な農地購入をおこなっている。この経営的な背景として、転作収益性 水準の悪化と地力再生産問題から従来の転作主体の作付方式の継続が困難になっ てきたことが挙げられる。他方、売り手は減反の開始と共に事実上離農した第H 種兼業的な農家であり、機械利用組合の解散や借り手農家の経営破綻によって、

農作業委託・農地貸付けを継続する条件が失われたことを直接的な契機とレて農 地売却をおこなっている。また、農地価格は基本的には収益地価を軸に動いてい るとみられるが、以前からの事実上の脱農家である負債圧の低い売り手と、ごく 一部の限られた買い手層とのあいだの関係としてのみ売買が成立している結果と して、かってない低地価水準が形成されており、モードをなすI兼層を含めた地 域平均的な負債状況と照らした場合、農協の債権保全の観点からすれば「オーバ ー ロ ー ン 」 寸 前 の 水 準 ま で 低 落 し て き て い る こ と を 明 ら か に し た 。   第4章では、減反・転作下において著しい稲作転換が進行し、そのもとで農地 移動が停滞している「限界稲作」地帯の典型として北海道上川北部の美深町を対 象地域として取り上げ、地域において数少ない専業的な稲作経営の調査事例をも とに、農地移動の停滞理由を検討した。事例地域では減反・転作下で兼業化と作

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目・地目転換が進行レ、転作奨励金と農外収入に依存する稲作から転換した小規 模畑作経営がモードをなしている。また、大幅減反が固定化するもとで水田の売 り手・貸し手が少ないため農地移動は極めて停滞的であり、水田をめぐる農地取 得競争が激しくおこなわる状況を形成している。このため、面積拡大によって専 業化・自立化を指向する稲作経営が水田取得を果たせず、代わりに転作田を取得 し て 野 菜 作 部 門 を 導 入 す る 動 き が 現 れ て い る こ と を 解 明 し て い る 。   終章は、以上の各章における典型地帯の実態分析を総括し、農地移動・農地問 題の発生機構を述べている。本論文において分析した80年代後半は、水田作をめ ぐる収益性が著しい悪化傾向をたどる時期であり、離農・高齢化の進展と共に農 地の出し手が現れ、他方、地域における専業的・自立的な展開を指向する経営が、

従来の経営方式の行き詰まりを背景に、自らの経営体質の強化と結びっけるかた ちで農地取得を指向し、そうした両者の関係として農地移動が発生している。さ らに地域全体としてみた場合、農地移動は高齢農家・後継者確保問題、農家負債 問題、土地利用再編問題と深く関連して発生しており、1980年代後半の収益性低 下 の も と で ま す ま す 深 化 す る 様 相 を 強 め て い る こ と を 明 ら か に し た 。   以上のように本論文は、近年の北海道における農地移動の発生を農地の出し手

、受け手間の関係論的視点から実態調査をおこない、これを素材にして農地移動

・農地問題あ発生が地域農業の生産構造のあり方に強く規定されていることを実 証的に明らかにしている。

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学位論文審査の要旨

主査 副査・

副査 副査

教授 教授 教授 助教授

七戸 黒柳 太田原 黒河

学 位 論 文 題 名

長 生 俊 雄 高 昭     

北海道 稲作地帯における農地問題の 発生機構 に関する実証的研究

  本 論 文 は6章 か ら な る 総 頁 数162ぺ ー ジ の 和 文 論 文 で あ る 。 図27、 表49、 和 98の 参 考 文 献 を 含 み 、 他 に 参 考 論 文 5編 が 添 え ら れ て い る 。   本 論 文 は 農 地 問 題 を 地 域 農 業 構 造 と の 関 連 で 把 握 す る 観 点 か ら 、 主 と し て1980 年 代 後 半 の 北 海 道 稲 作 を 対 象 と し て 農 地 移 動 ・ 農 地 問 題 発 生 の メ カ ニ ズ ム を 実 証 的 に 解 明 す る こ と を 課 題 と し て い る 。

  序 章 で は 課 題 接 近 の た め の 研 究 方 法 を 述 べ て い る 。 分 析 に 当 た っ て は 、 実 態 調 査 に よ る 一 筆 ご と の 農 地 移 動 デ ー タ を 素 材 と し て 、 地 域 に お け る 農 地 移 動 が い か な る 農 地 の 出 し 手 と 受 け 手 の 関 係 と し て 現 れ て い る か と い う 視 角 か ら 、 農 地 移 動 の 背 後 に あ る 出 し 手 層 ・ 受 け 手 層 の 形 成 と い う 農 家 階 層 構 成 の あ り 方 、 さ ら に は こ う し た 階 層 構 成 ・ 経 営 展 開 を 規 定 し て い る 地 域 農 業 の 生 産 構 造 の あ り 方 を 含 め て 農 地 移 動 ・ 農 地 間 題 の 発 生 機 構 を 解 明 す る 必 要 性 を 示 し て い る 。   1章 で は 、 以 下 の 各 章 の 実 態 分 析 に 先 立 っ 予 備 的 作 業 と し て 、 北 海 道 稲 作 の 地 帯 構 成 と 各 地 帯 に お け る 農 地 移 動 の 動 向 の 特 徴 を 検 討 し 、 北 海 道 稲 作 の 地 帯 差 を : そ の 生 産 力 展 開 の 特 質 か ら 「 旧 開 稲 作 」 「 新 開 稲 作 」 「 限 界 稲 作 」 と 把 握 し 、 各 地 帯 の 農 地 移 動 ・ 農 地 価 格 を め ぐ る 動 向 の 特 徴 を 、 第1に 「 旧 開 稲 作 」 地 帯 に お け る 農 地 賃 貸 借 の 進 展 、 第2に 「 新 開 稲 作 」 地 帯 に お け る 農 地 売 買 の 進 展 と 地 価 下 落 、 第3に 「 限 界 稲 作 」 地 帯 に お け る 稲 作 転 換 の 進 展 と 農 地 移 動 の 停 滞 、 と 把 握 し て い る 。

  2章 で は 、 農 地 賃 貸 借 が 進 展 し て い る 「 旧 開 稲 作 」 地 帯 の 典 型 と し て 北 空 知 の 雨 竜 町 を 対 象 地 域 と し て 、1980年 代 後 半 に 入 っ て 急 増 傾 向 に あ る 農 地 賃 貸 借 の 性 格 を 検 討 し て い る 。 事 例 地 域 で は 減 反 ・ 転 作 下 で 兼 業 化 が 進 行 す る が 、1980 代 に 入 っ て 農 外 就 業 の 中 止 と そ 菜 作 導 入 に よ っ て 専 業 化 ・ 自 立 化 を は か る 農 家 層 が 現 れ 、 農 地 の 借 り 手 と な っ て い る 。 他 方 、 貸 し 手 と し て 第H種 兼 業 的 な 農 家 に 加 え て 、 後 継 者 不 在 の 高 齢 農 家 が 地 域 に お け る 新 た な タ イ プ の 貸 し 手 と し て 現 れ

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てきている。さらに、集落内農家の広範な後継者流出・高齢化の進行を背景とし て、こうした後継者不在の農家同士による、将来的な売買移行の可能性をほとん ど も た な い 貸 借 関 係 が 発 生 す る に 到 っ て い る こ と を 明 ら か に し た 。   第3章では、農地売買と地価下落が進行している「新開稲作」地帯の典型とし て、南空知の岩見沢市西川町を対象地域として、農地売買と地価形成の特質を検 討している。事例地域では減反・転作下で兼業化が進行するなかで、大面積保有 の有利性を発揮した転作主体の専業的・自立的な農家層が少数ながら形成され、

1992年から開始された転作緩和下で農地購入をおこない大規模稲作への転換をお こなっている。他方、売り手は減反開始と同時に事実上離農した第H種兼業的な 農家である。また、農地価格は基本的には収益地価を軸に動いているとみられる が、売買が負債圧の低い売り手とごく一部の限られた買い手との間の関係として のみ成立している結果として、モードをなすI兼層を含めた地域平均的な負債状 況と照らした場合、地価は「オーバ一口一ン」寸前の水準まで低落レてきている ことを明らかにした。

  第4章では、稲作転換が進行しそのもとで農地移動が停滞している「限界稲作」

地帯の典型として上川北部の美深町を対象地域として、農地移動の停滞理由を検 討している。事例地域では減反・転作下で兼業化と大幅な作目・地目転換が進行 し、転作奨励金と農外収入に依存する稲作から転換した小規模畑作経営がモ―ド をなしている。また、大幅減反が固定化するもとで水田の売り手・貸し手が少な いため農地移動は停滞的である。このため、面積拡大によって専業化・自立化を 指向する稲作経営が水田取得を果たせず、代わりに転作田を取得して野菜作部門 を導入する動きが現れていることを明らかにしている。

  終章では、以上の典型地帯の実態分析を総括し、農地移動・農地問題の発生機 構を述べている。本論文において分析した1980年代後半は、水田作をめぐる収益 性が著しい悪化傾向をたどる時期であり、離農・高齢化の進行と共に農地の出し 手が現れ、他方、地域における専業的・自立的な展開を指向する経営が従来の経 営方式の行き詰まりを背景に、自らの経営体質の強化と結びっけるかたちで農地 取得を指向し、そうした両者の関係として農地移動が発生している。さらに地域 全体としてみた場合、農地移動は高齢農家・後継者確保問題、農家負債問題、土 地利用再編問題と深く関連して発生しており、収益性低下のもとでますます深化 する様相を強めている。

  以上のように本論文は、近年の北海道における農地移動の発生を農地の出し手

・受け手間の関係論的視点から克明に調査し、これを素材にして農地移動・農地 問題の発生が地域農業の生産構造のあり方に強く規定されていることを実証的に 明らかにした。このような独創的な研究視角ならびに豊富な事例調査の成果は、

斯学の発展のみならず、実際界に貢献するところが大きいと判断される。よって 審 査員一同は 、最終試験 の結果とあわせて、本論文の提出者東山寛は博士(農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

参照

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