高野 理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第22報)
193
理科教育における観察の機能に 関する実験的研究(第22報)
『観察過程の論理構造一
理科研究室高野恒雄
(196810月26日受理)
蒼1.研究の意味
蒼2.観察過程の論理構造の定式化
彦3.振り子学習における観察過程の論理構造 (1)A方式における観察過程の定式 (2)B方式における観察過程の定式
⑧ A・B両方式の観察過程の比較および学習効果との関係 蒼4・ レンズ学習における観察過程の論理構造
(1)A方式における観察過程の定式 (2)B方式における観察過程の定式
(3)A・B両方式の観察過程の比較および学習効果との関係 珍5.結 論
§1.研究の意味
(1) (2)
前報および前々報において,それまでに明らかにした観察能力の3大因子,すなわち変化 の観察・多角白撫およ礫中的観察の各倉旨力(3)(4)(5)
J・,実際の具体白勺な理科教材の学習 過程においてどうはたらき,観察様式の差違が学習効果にどう影響するかを研究するため に・小轍高学年教材である「振り子」(auレンズ」2学習罷において,実験白勺な臓 分析を行なった。その結果,①観察機能が豊富であり,②特に集中的観察の比重の大きい 学習過程がより学習効果をあげることが,わかった。またこの学習効果は特に下位群の児 童において著しく現われ,その効果の現われる理由について考察した。
本報においては,この観察機能の質・量の学習効果に及ぼす影響についてのデータをも とにして,観察過程をより本質的に把握し,観察から思考への過程における観察機能の果 す役割りを,その論理的構造において分析するため,観察過程の記号ρ使用による定式化 を行ない,それに基ずいた考察を進めてみた。
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茨城大学教育学部紀要 第十八号§2.観察過程の論理構造の定式化
この定式化を進めるために,まず記号化をつぎのように行なった。
表1.定式化に使用する諸記号
事 象
プロFコル命題
概関法 念係則
多角的観察 変化の観察 集中的観察
等 価 次 元 条 件
Facts and Phenomema・…………・…・・………。・F Protocol Sentence…・・………°・ P C。ncept・・…………・…・・………・…・………C Relation.・……・…・・………・・……… R Law_._…………・…・……・…・………・・……・…・L
Many−sided Observation of Object・……… Om Observation of Change of Phenomena・…・ OtObservation by Concentration of Attention…Oc Equivalent Dimension・・…………・・……・…・…ε
Condition ………・………・・…・… ° ° °° ° ° cこの表で,「プ・トコル命題」(P・・t・c・1・ent・nce・)とは・観察的命題または直接的 蠣ともよばれるものであって,観察結果を表現したもの・すなわち事象を樋として把
握したものを意味する。
また「等価次元」とは,二つ以上の物(F)のプ・トコル命題(P)を比較することによ って,概念(c)潤係(R)鱒くためのある観点から把握した等価性洪通性をさす・す なわち概念欄係を抽出するためには,二つ以上のプ・トコル命題の間に tiiifらかの等価 性観咄す腰があり,その等価性の上に概念潤係の定立を成すことができるわけで
ある。
また定式化の約束を三つの典型的な例について示すと,表2のようである。
表2のような諸記号淀式の諸形態を使用することによって謹々の観察過程のカ なり 細部まで表現できることになる。以下それを行なってみる。
表2.定 式
の
形 態「事象Fに対する多角的観察0皿によって,プロトコル命題Pが定立される。」
9m F ⊂P
同様に Ot ↓ F 〔P Oc
↓ F ⊂P
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第22報)
195
「プロトコル命題P1およびP2を等価次元εにおいてながめ,両命題の間に存在する等 価性(共通性)を見出し,概念Cを定立する。」
ど P1=P2⊂C
「プロトコル命題PおよびP を,条件C,等価次元εを考慮してながめ,両命題から関 係Rを抽出する。」
ce P=Pノ⊂R
「概念C1およびC2を等価次元εにおいて把握し,両概念から法則Lを導く。」
ど C1==C2⊂L
§3・振り子学習における観察過程の論理構造 (1)A方式における観察過程の定式
(1)
前報 において明らかにした振り子学習過程・A方式における観察内容を概括してみる と表3のようである。
表3.振り子学習過程・A方式の観察内容
(1)1mの糸に振り子をつけ,1分間にふれる回数を5回測定して平均を求める。
(2)(1)よりふれはばを小さくして5回測定。
⑧ おもりの重さと周期の関係(5回)
(4)振り子の長さと周期の関係(5回)
(1)
表3に示した学習過程における観察機能の変化を要約すると,前報にも示したように 集中的観察+変化の観察一→多角的観察+変化の観察一一〉多角的観察+変化の観察一→
多角的観察+変化の観察
となる。どの段階にも含まれている観察機能である「変化の観察」を一応除外して単純化
すると,
集中的観察一→多角的観察一→多角的観察一→多角的観察 となり,各段階の特色が鮮明になる。
さて,以上の観察過程の各段階を表1,2の約束によって記号化・定式化を行なってみ ると,表4のようになる。
196
(1)
(2)
(3)
(4)
茨城大学教育学部紀要 第十八号
表4.振り子学習・A方式における観察過程の定式
Oc ↓
F ⊂P Oo ↓
F ⊂P Oc
↓
F ⊂P Oc
↓
F ⊂P Oe
↓
F ⊂P Om ↓
F ⊂P1
P
m ⊂ 0↓
F
P ヨ
m ⊂ 0↓
F
e ピ ど ど
P=P=P=P=P⊂C
Om ↓
F1 ⊂P.1
0m
↓
F1 ⊂P 10m ↓
F1 ⊂P,1
0m
↓ F1 ⊂P/1 0皿 ↓F1 ⊂P/1
↓
0m
F2 ⊂P!2
0m
↓ F2 ⊂P/20m
↓ F2 ⊂P/20m
↓ F2 ⊂P/20m
↓ F2 ⊂P.20m ↓ F3 ⊂P 3 0皿
↓
F3 ⊂P 30m ↓ F3 ⊂P 3
cど
P1=P.1⊂Rl
cどP2=P 2⊂R2
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第22報) 19ア
Om ↓
F3 ⊂P 3
0m
↓
F3 ⊂P/3
cど
P3==P/3⊂R3R3⊂L
この表で観察機能の内,変化の観察αはどの段階にも含まれるので,省略してある。
(2)B方式における観察過程の定式
(1)
前報において明らかにした振り子学習過程・B方式における観察内容を概括してみると 表5のようである。
(1)
表5に示した学習過程における観察機能の変化を要約すると,前報にも示したように 集中的観察+変化の観察一→集中的観察+変化の観察一→集中的観察十変化の観察一→
多角的観察+変化の観察一→多角的観察+変化の観察→多角的観察+変化の観察 となる。どの段階にも含まれている観察機能である「変化の観察」を一応除外し (単純化 すると
集中的観察→集中的観察一→集中的観察一→多角的観察一→多角的観察一→多角的観
察。
となる。
表5.振り子学習過程・B方式の観察内容
1 長い振り子の観察と周期の認知。
1mの銀り子について30秒間にふれる回数を3回測定。
(2)の振り子が3分間ふれてから30秒間の回数を3回測定。
ふれはばと周期の関係(3回測定)。
おもりの重さと周期の関係(3回測定)。
振り子の長さと周期の関係(3回測定)。
以上の観察過程の各段階を表1,2の約束によって定式化してみると,表6のようにな る(A方式と同様,変化の観察Otは省略してある)。
表6.振り子学習・B方式における観察過程の定式 ω
(2)
P 0↓c ⊂ F
P e ⊂ 0↓
F
P c ⊂ 0↓
F
P⊂C
198
茨城大学教育学部紀要 第十八号(3)
(4)
(5)
(6)
Oe
↓
F ⊂P Oe ↓
F ⊂P.
Oe ↓
F ⊂P/
Oc ↓
F ⊂P
P m ⊂ 0↓
F
P 2 m ⊂ 0↓
F
P 3
m ⊂ 0↓
F
ε ε
P=P=P⊂C
e ど
Pノ==P =Pノ⊂C
ど e
C=C=C
Om ↓
Fl ⊂P 1
0m
↓
F1 ⊂P 10m
↓
F1 ⊂P 10m
↓
F2 ⊂P 2
0m
↓ F2 ⊂P/20m
↓ F2 ⊂P,2 0皿↓
F3 ⊂P,3
0m ↓
F3 ⊂P 30m
↓ F ⊂P/3ceP1=P 1⊂R1
cど
P2==Pt2⊂R2cどP3=P/3⊂R3
R3⊂L
(3)A・B両方式の観察過程の比較および学習効果との関係
以上で,振り子学習におけるA・B両方式の場合の観察過程の定式化ができた。ところ で表4および表6の定式のままで,両方式を比較することはできるが,両方式の共通点と 相違点を鮮明に見い出し,学習効果との関係を明確にするためには,さらに単純化を進め,
観察過程の本質的な骨格の定式を比較する方が,より望ましい。そこで表4および表6の 定式において同種の観察機能が反覆する場合は一切省略して,ただ1回だけ記述すること にし,単純化をしてみると,それぞれ表7および表8のようになる。
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第22報)
表7,振り子学習・A方式観察過程の骨格
199
Oc ε ↓ P==P⊂C F ⊂P
Om Om cε
↓ ↓ P1==P/1⊂Rl
F ⊂PI FI⊂P/1
0m Om cs
↓ ↓ P2=P 1)⊂RL,
F ⊂P2
F2 ⊂P/2 0m Om ce
↓ ↓ P3=P/3⊂R3
F⊂P3 F3⊂P/3
R3⊂L
表8・振り子学習・B方式観察過程の骨格
Oc
↓l
F ⊂P Oc
↓
F ⊂P Oc ↓
F ⊂P
Om
↓
F ⊂P1 0m ↓
F ⊂P2 0m ↓
F ⊂P3
P⊂C お P=・P⊂C む Pノ==P⊂C ピ C===C Om Cε
↓ Pl=P/1⊂Rl F1 ⊂P/1
0m Cε
↓ P2==P/2⊂R2 F2 ⊂P/2
0m Cε
↓ P3=P 3⊂R3 F3 ⊂P.3
R3⊂L
この二つの表を比較してみると,非常に明確な観察過程の区分ができる。すなわち,両 表の点線から下の定式は,両者全く共通であり,相違するのは,点線から上の定式である。
したがって両方式の学習効果の差違を,観察過程と結びつけて考察するためには,点線か ら上の定式の相違点に絞って追求すればよいことになるであろう。
ところで,点線より上の定式の示す観察過程は,Cすなわち周期という概念を導く過程 である。そして周期という概念は,振り子教材全体の学習を左右する,いわば鍵概念
(Key Concept)である。この鍵概念を導く過程こそが, A・B両方式の学習過程の相違 の
200 茨城大学教育学部紀要 第十八号
点の中心をなすのであり,この過程こそが,学習効果の大小を決定する最も重要な段階で (1)
あるといえる。前報において明らかにした,
霧1繰1鵠〉難灘塑
観察機能,特に集中 基本的概念の
−−−−−〉 −−−・−−〉
的鵬の縮さ Mメージ形成
教材構造に対する 定着した言語的
−・−−−−〉
直観的把握 1 理解
1
というB方式のA方式に対する学習効果の優位性の理由も,この過程の中にこそその根拠 をもっているといわなければならない。表からわかるように点線より上の定式を比較する と圧倒的にB方式の方がA方式より多量である。これは,もちろん観察機能の豊富さを意 味する。また0・すなわち集中的観察の機能する定式もB方式の方が多い。これは集中的 (1)
観察の比重の大きさを意味する。したがって,前報に明らかにしたB方式の学習効果の優 位性は,周期という鍵概念を導く過程にその原因をもち,この過程における観察機能の豊 富さと集中的観察の比重の大きさが鍵概念のイメージ形成に効果的であることが結論され るのである。これを図式化すれば,つぎのようになる。
観察機能,特に集中 鍵匡概念の
ジ ケ
ー塑翌の篁壁1 イメージ形成,
教備造に対する 浸着した諦的1
つ
直観的把握 理解
鍵概念が形成されると,その後の過程においては,鍵概念をテコとして点線から下のそ の後の観察によって教材構造が直観的に把握しやすくなり,ひいては言語的理解に達する
ことができるわけである。
§4. レンズ学習における観察過程の論理構造
(1)A方式における観察過程の定式
(2}
前々報において明らかにしたレンズ学習過程・A方式における観察内容を概括してみる
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第22報) 201 と,表9のようである。
表9に示した轄過程における骸機倉旨の変化腰約すると、前々熱も示したよう
言多角的観察一→変化の観察一→多角的観察となる。
表9. レンズ学習過程・A方式の観察内容
(1)とつレンズを通った日光を紙に当てたり,細いすきまから入れた日光の平行光線をレ ンズを通したりして光の道すじを調べる。
② すきまから入れた豆電球の光をとつレンズなしのときとレンズに通したときやまめ電 球の移動の影等を比較する。またろうそく・レンズ・ついたての位置関係による像の 変化を観察する。
(3)おうレンズの場合についても調べる。
以上の観察過程の各段階を,表1,2の約束によって記号化。定式化を行なってみると 表10のようになる。
表10. レンズ学習・A方式における観察過程の定式
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
Om
↓ F 1⊂P10m
↓ F1 ⊂P1 0も ↓F2 ⊂P2 0t ↓
F3 ⊂P3 0t ↓
F3. ⊂P3 0t ↓
F4 ⊂P4 0t
↓
F5 ⊂P5 0t
↓
F5 ⊂P5 0m
↓
F6 ⊂P6 0t
↓
F6ノ ⊂P6 0t ↓
F7 ⊂P7
ど お
P1=P2==P3⊂R1
R1ε
P4=P5⊂C
202 茨城大学教育学部紀要 第十八号
(8)
Ot
↓
F 7 ⊂P7 0皿 ↓
F8 ⊂P8
ど ど
P6=Pe,=P8⊂R2
② B方式における観察過程の定式
前々諜おいて明らかにした痴子学習過程・B方式における灘内容を概括してみると
表Uのようである。、
表11. レンズ学習過程・B方式の観察内容
(1)とつレンズとおうレンズで近くのもの・遠くのものを見たり・細いすきまから入れた 日光の平行光線をレンズに通し,光の進み道を調べる。
(2)虫めがねのレンズの焦点を調べ,焦点距離を測る。
(3)ろうそく・とつレンズ・スクリーンの位置関係による像の変化を観察する。
(4)2枚のレンズを使った場合,幻燈機・望遠鏡の模型実験をする。
表11に示した学習過程における観察機能の変化を要約すると,
多角的観察一→集中的観察一→変化の観察一→多角的観察
となる。
以上の観察過程の各段階を定式化してみると,表12のようになる・
表12, レンズ学習・B方式における観察過程の定式 t
(1) Om ↓
F1 ⊂Pl Ot ↓ F/1 ⊂Pl Om ↓ F2 ⊂P2 0t ↓ F 2 ⊂P2
(2)
(3)
(4)
Ot
↓
F3 ⊂P3 0c
↓
F4 ⊂P4 0c
↓
F 4 ⊂P4
0も ↓
F5 ⊂P5
eP1=P3⊂R1
どP2=P2⊂R2
R1ε
P4=P4⊂C
(5)
(6)
(7)
高野;理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第22報)
Ot
↓
F5 ⊂P5 0t↓
F5 ⊂P50m
↓
F6 ⊂P6 0t
↓
F6 ⊂P6 0t
↓
F7 ⊂P7 0t
↓
F〆 ⊂P7 0t
↓
F8 ⊂P8 0t
↓
F8. ⊂P8
ど ど ど
P5=P6==P7=P8⊂R3
203
㈲ A・B両方式の観察過程の比較および学習効果との関係
以上で,レンズ学習におけるA・B両方式の場合の観察過程の定式化ができた。さらに 振り子学習におけるど同様に両方式の比較をより本質的に鮮明ならしめるために観察過程 の骨格の定式をつくってみた。それが表13および14である。
表13. レンーX 学習・A方式観察過程の骨格
Om
↓
F1 ⊂Pl Ot .↓
lF 2 ⊂P2
0t ε ε
↓ P1=P2=P3⊂Rl F3 ⊂P3
0t
↓
F4 ⊂P4
0t Riε ↓ P4=P5⊂C
F5 ⊂Pl 5
0m
↓ ・
F6 ⊂P6 0t
↓
F7 ⊂P7
Qm ε ε
↓ 『P6==P7==P s⊂R2
F8 ⊂P8
204 茨城大学教育学部紀要 第十八号
表14. レンズ学習・B方式観察過程の骨格
Om ↓
Fl ⊂P1 0m ↓
F2 ⊂P2 Ot ↓
F3 ⊂P3
F0↓4
F0↓5
m − F0↓6
さ F0↓7
F0↓8
eP1=P3⊂R1
どP2=P2⊂R2
Rlε
P4=P4⊂C
ど e e
P5=P6=P7=P8⊂R3
この二つの表を比較してみると,振り子学習の場合程明確には共通点・相違点を区分す ることはできないが,かなり歴然とした結論はだせる。そしてそれは振り子学習の場合と 十分通じあう内容をもっている。
レンズ学習の場合にも観察過程におけるA・B両方式の最も本質的なちがいは,C(概 念)に至る過程にみられる。このレンズによる結像の概念(C)が全体の学習のテコにな
っているのであるが,A方式においてはまずP1, P2, P3,の三つのプロトコル命題の 間に等価性を見い出すことによって,とつレンズによる光の屈折の関係把握(R1)を行 ない,ついで,P4, P5,のプロトコル命題の間にR1という観点のもとに等価性を見 い出し,結像の概念(C)をひき出している。これに対しB方式は,まず,とつレンズと おうレンズの比較のもとに焦点・焦点距離を関係的に把握し(Rl),ついでレンズによ る光の屈折の関係把握(R2)を行ない,その上に結像の概念(C)をひき出している。
したがって,鍵概念である結像の概念(C)に至る過程は,明らかにB方式における場合 {2}
の方がA方式における場合よりも,段階が多く充実している。そして,前々報にのべたよ うにB方式がA方式より,はるかに大きな学習効果を示すことが,この鍵概念に至る過程 における充実と対応することを,結論できるのである。
高野:理科教育における観察の機能に関する実験的研究(第22報) 205
また集中的観察の機能(0・)はB方式においてのみ,はたらいていることも注意しな ければならない。この点,すなわち鍵概念に至る過程における観察機能の豊富さと集中的 観察の比重の大きさが学習効果にプラスにはたらくという2点において,振り子学習・レ
ンズ学習ともに同様の結論を得るのである。
またB方式においては,最後に像の拡大のためのレンズの使用法についての関係把握(
R3)が行われておるが,A方式にはない,これは,レンズの機能を応用した幻燈機,望遠 鏡等の装置について,その中心的な機構を簡易化した実験で理解することであり,その意 〔2)
味で学習の発展場面といえる。この発展場面の重要性・有効性については,前々報にもの べたが,観察過程の定式を比較することによってより明確にすることができるのである。
§5.結 論
(1)具体的な教材の学習における観察過程の本質的把握のために,その論理構造の記号 による定式化の方法を案出した。
(2)振り子学習・レンズ学習においてそれぞれ2種の学習過程をとりあげ,各方式にお ける観察過程の定式をつくり,さらにそれを単純化することによって,各観察過程の骨格 を示す定式をつくり,それらを比較することによって各方式の共通点・相違点をこれまで より明確に抽出することができた。
(3)観察過程と学習効果の関係の観点から,振り子学習・レンズ学習両者に共通な結論 は,学習における鍵概念(Key Concept)を導く段階における観察機能の豊富さ。集中的 観察の比重の高さが,学習全体の勅果を高くする中心的要因であることである。すなわち振 り子学習における「周期」レンズ学習における「結像」という鍵概念に至る段階における 観察機能のはたらき方が学習効果を左右する決定的な因子になる。
(2}
④ レンズ学習の観察過程においては,前々報にのべた「発展場面における観察」の学 習効果に与える大きな寄与が,定式の比較によってより明確にできた。
(5)観察過程の論理構造をより本質的に把握するために,その文脈を記号化することに よって定式をつくり,各種学習方式の比較の基礎とするこの方法は,共通点・相違点の鮮 明な抽出を可能にし,学習指導法の比較研究に有効であることがわかった。
206 茨城大学数育学部紀要 第十八号
文 献
(1)高 野 恒 雄:本研究(第21報) 観察機能の質・量の学習効果に及ぼす影響(振り子
学習を例として) ,本紀要,17(1967),113〜・
(2)同 上:本研究(第20報) レンズ学習における観察機能と学習効果の分析
本糸己要, 16 (1966) , 165〜.
㈲ 同 上:本研究(第17報) 因子分析法による観察力の構造分析と評価法試案
,本紀要,13(1963),109〜.
同 上:本研究(第18報) 客観的観察力評価法案と「メモ効果」の分析 ,
本紀要,14(1964),79〜.
同 上:本研究(第19報) 観察能力の年令的発達傾向の分析 ,本紀要,
15 (1965) , 137〜.
Abstraet
Experi瓢ental Studies on the Function of Observation in Science Education.
XXH
Logical structure of山e process of observation
Tsuneo Takano
(Faculty of E中cation, Ibaraki University)