観察者訓練における習得過程 : 幼児教育の「観察法」のあり方と関連づけて
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(2) . 観察者訓練における習得過程 -幼 児教育の 「観 察法」 のあり方と関 連づけて-. 奥. 1. 問. 野. 正. 義. 題. 幼児教育は, 一人一人の子どもを 理解することから始まるといえるだろう, 現在, 用 いられてい る子どもを理解する方法は, 主として, 心理学的方法である. たとえば, 知能テスト・性格テスト などの種々の検査を施行したり, 子どもの環境や遊 びのようすを調べるために, アンケート式の調. 査や観察を行 なっ たりする. その中 でも幼児理解のための中 心的役割をはたす重要な方法は, 観察. 法である. 観察法は, 大きく 「自然的観察法」 と 「実験的観察法」 とに分類される. 自然的観察法とは, 人 の行動の生起に意図的な操作を加え ないで, 日常のありのままの行動を観察する試み である. (小 )又 実験的観察法とは 研究目的に従っ て観察すべき状況になんらかの統制や修飾を加 川・浜名)1 , , )しかし 幼稚園や保育所などの実 際の幼児教育の現場 えてから観察を行なう場合 である.(中村)2 , を考えるとき, 環境や条件を統制 して, 子どもの行動の変化を観察するという実験的観察法が用い. られる場合は少ない. 幼稚園や保育所の保育者は, むしろ, 日常的場面において, 子どもの行動を 意図的又無意図的に観察し, その子どもの行動の法則を把握しようとする. その意味で, 幼 児教育 のカリキュ ラムにおいては, 自然的観察法に, より重点がおかれるであろう. 本論文においては, 以下, 「観察法」 を自然的観察法に 限定して用いることにする. 幼児教育における観察法の学習目標は, 次のように考えられる.. ( 1 ) 観察についての理論の学習:観察を実 際に行なうのに先立ち, 観察法についての理論や種々. の記録法を深く学習し, 観察の意義を十分に考えておく, ( 2 ) 観察能力を高める:単に, 観察の理論や方法を学習するだけ でなく, 実際場面の観察経験を. とおして, 観察方法に習熟し, かつ, 観察能力を高める. 3 ( ) 実際場面への応用:単に, 観察法を心理学的手法として学習するのでは なく, 習得した観察 能力を実際の幼稚園の臨床場面や問題解決に応用する力を養成する,. しかし, 以上述べた目標を達成するには, 現在のところ, 本大学固有の制約 がある. ( 1 ) まず, 時間的制約 である. 我々の幼児教育科 では主として幼児教育専 攻の2年生を対象とし て, 「幼児心理学実験」 を通年 で開講している. この 「幼児心理学実験」 を4期に分け, それぞれ,. 実験法・調査法・検査法・観察法の理論や方法を講義・実習している. したがっ て, 観察法に割り 当てることのできる 時間は, 90分を1時限として, 各年度ごとに少しずつ異なるが, 約6~7時間 限にすぎない. 観察法を通年 で開講できれば, 理想的であるが, いろいろの事情があり, 現在のと ころ不可能である. とすれば, この短い時間数の中 で, 学生に効率よく観察法を習得させる方法を 385.
(3) . 奥. 野. 正. 義. 考える必要がある, ( 2 ) 第2の問題点は, 地理的制約 である. 観察法に習熟し, 観察能力を高めるには, 実際に, 幼 稚園へ行き, そこ で生活している子 どもたちを直接観察するのが, 一番良い方法であろう. しかし, 本学の付属幼稚園は, 本校より約5km 離れたところにある. 毎時間, そこ で観察法の実習を行なう. ことは困難 である. ( 3 ) 第3は, カリキュ ラム上の問題 である, 幼稚園の保育時 間は, ほとんどの場合, 午前中で終 わる. したがっ て, 子どもの直接観察をするためには, 午前中の時間に割り当てるのが望ましい. しかし, 本学のカリキュ ラム では, 午前中に一般教養などが割り当てられているため, 専門教科 で. ある観察法を含む r幼児心理学実験」 は, 午後の時間しかとることができない. このような制約をふまえたうえ で, いかに, 学生に観察法の理論・方法を学ばせ, 観察能力を習. 得させるかが問題となる, そこ で, 過去における観察訓練に関する研究をいくつか検討し, そこか ら利用 しう・ る情報をひきだすことにする. }は 熊本大学心理学科における観察訓練のモデルを紹介している 鈴木 (1977 )3 . , 訓練の プロセスの概要 ( 1 ) 観察についての基礎知識の学習 ( 2 ) 観察の準備 ( 3 ) 観察の開始. (観察目的の設定, チェッ クリストの作成, 観察対象の録画 どり(VTR 使用)) (VTR の視聴, 行動描写法 で記録). (行動記録の整理, 他のメン バーとの照合, 行動記録をチェッ ク・リスト へ転記, 行動のカテ ゴリー別出現率の算出と一致係数の算出) ) ( 5 まとめと反省 }は 新規の観察者の訓練を次の内容 で実施している )4 又, 江口ら (19 72 . , ( 1 ) 研究目的の説明:前回の研究の 説明, 今回の研究の目的・方法な どの説明. ( 2 ) 観察法, 相互作用に関する説明:文献などの紹介, 観察の具体的データ, 結果の利用のされ. 4 ( ) 観察記録の整理. 方などの説明, 3歳児の一般的特徴の説明. ) 練習観察:2回, それぞれ30分, 自由記述により自分の記録に関して相互作用 を確認する. ( 3 ( 4 ) 予備観察. ( 5 ) 本観察およ び評価リストの記入 実際での研究で利用する観察訓練と大学におけるカリキュ ラムの中 での観察訓練という 差異はあ るが, 共通 熟ま , 観察法の知 識を確実にすること, チェッ クリストを使用 する等があげられる.. しかし, 観察訓練過程における習得過程は, いずれの研究 でも明らか ではない. 又, VTR の利用は, 記録方法として, その場面の雰囲気を十分に把握しえないなどの理由から, 直接観察の補助手段 であることが望 ましいとされてきた, しかし, VTR の反復観察が可能, 同一対 象を多人数 で同時に観察できる等の特長を生かすことによっ て, 観察者訓練において大きな利用価 値があると考えられる. そこで, 本研究においては, 問題のところ で明らかに した観察法の制約 をふまえたうえ で, VTR を利用 した観察者訓練における個人別の習得過程を分析し, 今後の観察者訓練を立案するうえでの 資料を得ることを目的とする.. 386.
(4) . 観察者訓練の習得過程. 1 1. 方. 1. 観察者. 法. 1 幼児教育を専 攻し, 幼児心理学実験を受講した2年 生25名, そのうち, 観察工, 1 , m (観察訓 )を検討の対象とする すべて女性 3名( べての記録を提出した1 練計画の 項参照)を実施し, そのす , 彼らは, 皆, 体系的に観察法を学習するのは, は じめてである, 2 観察対象児 1) 1 歳 0 ヵ月の女児 (観察1, 1 1 歳 3 ヵ月の同女児 (観察m). 3. 実施期間. 1978 , 2 , 12~1979. 4. 観察訓練計画. 問題 で述 べたことから, 次の点を考慮する. 1 ) 観察のしやすいように, できる だけ単純と考えられる観察場面を 設定する, (. ( ) 個々 の観察結果について, 毎回, 照合・討論する時間をもうける. 2 ( 3 ) 同一場面をくりかえし観察し, その効果が別の場面での観察に転移するかを検討 できるよう に す る.. 4 ( ) VTR に録画した場面を観察する. ①. 観察法の意義・目的・ 理論・方法の説明. ②. 観察1. ③. 1 観察1と同一場面をくりかえし観察 観察1. 観察記録の照合と検討. 観察記録の照合と検討 l 観察記録の照合と検討 観察n ゴ ⑤ カテ リーリストの作成. ④ ⑥. 1 1の 比較 検 討 1 観 察 1, 1 ,1. 以上のように観察訓練計画を立案した, 各段階に1時限ずつ割り当て, 幼児心理学実験の 「観察 法」 に予定された6時限内にすべて終了するようにした. 次に, 各段階について少しくわしく 説明 する, 5. 観察訓練計画の手続き. ①. 観察法の意義・目的・理論・方法の説明. }が指摘している 97 7 )3 観察法の意義・目的・理論及び種々の記録方法について講義する. 鈴木(1 ように観察を実 際に行うに先立ち, 観察法についての理論を深く学習し, 観察の意義を十分に考え. ておくことは, 観察訓練において, 不可欠の要件である. 観察訓練計画について述べ, この観察目 的が, 対象児の発達過程を検討することであることを説明する. ②. 観察1. 観察1を実施する.観察1は, 対象児が1歳0ヵ月の時の食事場面を VTR に録画したものを観察 する. 観察時間は約15分. この訓練コース では, 多くの記録方法の 基礎となる 「行動描写法」 に重 点がおかれた. したがっ て, 観察のあいだに 生起する行動をできる限り詳細に記録するようにした. 387.
(5) . 奥 野 正 義. 対象児に関する情報は, 1歳0ヵ月の女児であること以外与えられなかっ た 初めて観 察を行なう , 者は, 「外に現われた行動そのもの」「その行動を通 して得た印象 又はその解釈」「その行動の現わ , れた状況」 を揮然としたままで記録する傾向がある そこ で それらも厳密に区別 して 記録を整 . , , 理する. そののち, 自分の記録を他人のそれと照合し 検討することとした , , ③. 観 察1 1. 観察1 1を実施する. 観察1 1は, 観察1と 同一場面のくりかえし観察である 又 観察1と同様に . , , 行動描写記録を 「行動そのもの」「解釈・説明」「状況」 に分けて整理したのち 自分の記録と他 の , 者との記録を照合, 検討した. ④. 観 察1 1 1. 観察1 1 1を実施する, 観察1 1 1は, 対象児が1歳3ヵ月の時の食事場面 を VTR に録画したものを 行 , 動描写法 でもっ て記録する. 観察時間は約10分 のち 観察1・1 1と同様に, 行動描写記録を整理 , . したのち, 自分の記録を他の者との記録と照合・検討する . ⑤ カテ ゴリーリ ストの作成 観察1, 1 1 1 1の行動描写記録をも とに, カテ ゴリーリストを作成して整理する カテ ゴリーに ,1 . ついては, 次の 「結果の整理」 で説明する. ⑥ 観察工, 1 1 , mの比較検討 観察1, 1 1 1 1の記録をもとに, 対象児の発達過程について比較検討を行なう ,1 . 6 結果の処理 ・ 記録しうる最小単位の意 各回ごとの各観察者の記録すべてが分析の対象とされた. 観察単位は,. 味をもつ行動を 「1」 とし, 観察可能な行動総数 (N) および実際にそれぞれの観察者が記録した 行動数を求めた. Nは, 熟練した観察者が, VTR 記録の反復観察から求めたもの である. このよう 5 }が行なっ ており 本研究ではそれを参照して処理した 又 対 な結果の処理は, 牛山ほか (1 971 ) , . , 象児の行動は, 次のようなカテ ゴリー で分類された. ①手作業-物をつかむ, 物を投げる, 転がす等 ②食事行動-食物をとる, 食物をかむ等 ③発声活動-声を出す, 「アッ」 と言う等 ④視線-母親を見る, 目を向ける等 ⑤微笑-ほほえむ. ⑥身体活動-移動する, 首を大きく動かす等. ロ ー 結果と考察 観察1, 1 1 , mの順に, 各観察者の習得過程を観察の量的側面と質的側面の両方から検討する. 表1は, 観察1における各観察者の対象児の行動分析を示している, それぞれの観察者が記録し. た行動数は, もっ とも多い者 (F) で, 観察可能な行動総数の67%を観察している. 一方, もっ と も少ない者は, 行動総数の16%しか記録していない. 全体としては, 平均32%の行動を観察してい る. 観察行動数に ついて, 個人差が大きいのは, は じめての観察訓練 で, どの程度までを行動とみ なし記録するかという判断が, 各観察者によっ て異なっ ていたため であろう,. 観察の質的側面と して, 観察のカテ ゴリーから検討してみると, よく観察記録されているのは, 「手作業」「食事行動」「発声活動」 である. これらの行動は, 観察しやすい目立つ行動と考えられ. 388.
(6) . 観察者訓練の習得過程. 表1 観察1における対象児の行動分析 \\\ 観察者 \\ 二 \\ カ テ ゴリ ー. A. B. 業. 4. 6. 食 事 行 動. 3. 2. 手. 作. C. T ▲. D. E. F. 9. 7. 12. 20. 4. 12. 5. 4. 3. 6. 8. l. lo. 2. G. H. K. L. M. **. 6. 11. 15. lo. 29. 2. lo. 5. 6. lo. J. 発 声 活 動. I. 0. 2. l. 2. 4. l. 3. I. 0. 6. 2. 5. 8. 視. 線. 0. 0. l. 0. 0. 6. 0. 4. I. 0. 0. 0. 4. 6. 微. 笑. 0. I. 0. 0. 0. 0. l. I. 0. 0. 0. 0. 0. 2. 身 体 活 動. I. 0. 0. 2. I. 0. 2. l. 0. I. 0. 0. 0. 2. 計. 9. 9. 16. 13. 21. 38. 9. 31. 9. 9. 27. 22. 25. 57. 16% 16% 28% 23% 3 7% 67% 16% 54% 16% 16% 4 7% 3 9% 44%. *. *観察可能な行動総数に対する各観察者の観察行動数の割合 **観察可能な行動総数(N). \\ \\. 察 き モ ニ. 表2. 観察1 10 こおける対象 児の行動分析. A. B. C. D. E. F. G. H. 業. 3. 5. 16. 9. lo. 25. 6. 26. 食 事 行 動. 2. 3. 4. 3. 4. 9. 2. 6. カ テ ゴリ ー. 手. 作. T 1. J. K. L. M. 9. 20. 23. 19. 21. 29. 4. 7. 9. 6. 7. lo 8. **. 発 声 活 動. I. I. 2. l. 3. 5. 5. 4. l. 4. 5. 4. 4. 視. 線. l. 0. 0. 0. 0. 5. 0. 5. 2. l. 0. 4. 0. 6. 微. 笑. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 0. 2. 0. 0. 0. 0. 0. 2. 身 体 活 動. I. 0. l. 0. 2. I. 2. 2. I. I. 2. 0. I. 2. 計. 8. 9. 23. 13. 19. 45. 15. 45. 17. 33. 39. 33. 33. 57. *. 14% 16% 4 0% 23% 3 3% 79% 26% 79% 30% 58% 68% 58% 58%. *観察可能な行動総数に対する各観察者の観察行動数の割合 **観察可能な行動総数(N). る.「視線」 については多くの者が観察記録していない反面, これに特に注目して記録している者も いる,(F, M, H)「微笑」「身体活動」 については, 全然記録していない者が多い. (「微 笑」 につ. 3人中7人」) このように, 観察, 記録しにくい行動に 0人, 「身体活動」 では, 1 いては, 13人中1 4 5 )も注目している 彼らは 幼児の相互作用を分析させた 〉や牛山ら(197 2) 2 97 ) ついて, 江口ら(1 , . 2 主要な行動のす 研究から, 1) 言葉 (会話の内容) ) ぐ後の行動 , , 3) ス ピーディ で短期間しか. 続かない行動, 4) みる, 近づくなどのはっ きり対象を定めえない行動, 5) 細かい行動, 6) 消 極的な行動を, 観察, 記録しにくい行動としてあげている. 観察1の分析で明らかになっ たように, 観察訓練のごく初期においては, 観察行動の量的側面だ け でなく, どの行動に注目するかという内容にも大きな個人差がみられる.. 表2は, 観察1 1における各観切者の対象児の行動分析を示している. 観察1と比較して, 観察可 能な行動総数に対する各観察者の観察行動数の平均割合は, 有意に上昇している,(観察1の平均: 32%, 観察1 1の平均:45%, サイン検定5%水準 で有意) 各観察者についてみると, もっ とも多い 4%の行動を観察している. 又, 観察1より観察行動数が増加して 者で79%, もっ とも少ない者で1 いる者, 9名, 観察1と同じ者, 2名, 観察1よりも減少している者2名 である. 観察カテゴリー では, 観察1と同様, 「手作業」「食事行動」「発声活動」 はよく観察されている.. 389.
(7) . 奥. 表3. 野. 正. 義. 1 観察1 1における 対象 児の行動 分析. \\ 観察 \\ モ. A. B. C. D. E. F. G. H. 手. 8. \ カ テ ゴリ ー 作. T i ^ J. K. L. M. ** 26. 業. lo. 9. 14. 18. 20. 16. 18. 4. 14. 25. 18. 12. 身 体 活 動. l. 2. 2. 3. 3. 3. 3. 4. I. 2. 3. I. 2. 5. 発 声 活 動. 2. 0. I. I. 2. 5. 3. 3. 0. l. 4. 2. 0. 6. 視. 線. 3. 0. 0. 0. 0. 4. 0. 2. 0. l. I. 2. 0. 4. 食 事 行 動. l. 0. 0. I. 0. 0. l. 0. I. l. 0. l. 0. l. 微. 笑. 計 *. I. 0. 0. 0. 0. 0. 0. l. I. I. 0. 0. 0. 2. 18. 11. 17. 23. 13. 32. 23. 28. 7. 20. 33. 24. 14. 44. 4 1% 25% 39% 52% 30% 73% 52% 64% 16% 46% 75% 55% 32%. *観察可能な行動総数に対する各観察者の観察行動数の割合 **観察可能な行動総数(N). {%) 100. 全行 動 総 数 に 対 す る 各観. G. 察者の. J A. 観 察数 の 割 合. 観察1. 観察1 1. 観察m. 図1 習得過程のパターン 観察1で観察数の低いグループ 390.
(8) . 観察者訓練の習得過程. 全 観 察 総 数に 対 す る 各観 察 者の 観察 数 の割 合. 観察1. 図2. 観察1 1. 観察1 1 1. 習得過程 の パターン. 観察1で観察数の中のグループ. (%) 100. 全 観 察総. F. 数に. K. 対 す る 各観 察者の 観 察 数 の割 合. 観察1. 図3. 観 察1 1. 観察 m. 習得過程のパター ン. 観察1で観察数の高いグループ 391.
(9) . 奥 野 正 義. 一方 「微 笑」 は観察していないのがほとん どである. (1 3人中12人) 観察1に比較して, どの側面 に 注目するかという内容についての個人差は減少している. 観察行動の量, 内容ともに成績がよくなっ たことは, VTR による同一場 面のくりかえし観察と他. のメン バーとの記録に比較照合によるフィ ー ドバッ クの効果があっ たことを示すといえる.しかし, この効果 が, どちらか一方の効果によるものなのか, 又は両方の相乗効果によるものなのかに つい て は, 明 ら か では な い.. 表3は, 観察1 1 1における各観察者の行動 分析を示したも の である. 観察行動数は, もっ とも多い 者 で観察可能な行動総数の7 5%, 少ない者で1 6%, 平均割合は, 46% である, これは, 観察1 1とほ. ぼ同じ割合 である. 観察カテ ゴリーについては, 「手作業」「身体活動」「発声活動」 がよく観察され. ているが, 「微笑」 については少ない. 又, 3項目以上記録していない者は, 1 3人中4人 である.. 図 1 ~ 3 は, 観 察 1 ~ m ま での 習 得 パ タ ー ン を 表 わ した も の であ る. 図 1 は, 観 察 1 に お いて,. 観察行動数 がもっ とも少ない観察者A・B・G・1・Jの変化を示している, 徐々に上昇する グ ルー プ (G・A・B) と観察1 1が最もよく, 観察1 1 1で下降する グルー プ (J・1) の2つのパター. ンに分類することができる. 後者の場合は同一場面のくりかえし観察でのあるの で観察1 1がよく, 観察1 1 1で場面が変化したので, 成績が下がっ たと考えられる. 又, B・Jは, 全体をとおして低い 水 準 に と どま っ て い る.. 図2は, 観察1において, 観察行動数が中程度に グルー プの変化を示している. ここ でも, 2つ 1 1において上昇する者 (D) と, 観察1 のパターンに分類することができる. 観察1 1と1 1 1がほぼ同グ. ルー プ である.. 図3は, 観察1において, 観察行動数が高いグループの変化を示している. ここでも, 徐々に上 昇する者 (K) と, 観察1 1が最もよく, 観察ロ ーで下降するグルー プ (F・H・M) の2つのパター. ンに分類 できる.. 同一の観察訓練を行なっ ても, その習得過程が個人によっ て異なることを, これらの図は示して. い る.. ま. と. め. 我々 の幼児教育科 で 「観察法」 を行なう 際のいく つかの制約について述べ, この制約の中 で, 効 率よく観察能力 を習得させるための基礎資料と して,観察訓練に おける習得過程の分析を行なっ た, 主な結果は, 次のとおり である. ①. る.. 観察訓練の初期 においては, 観察行動の量的側面と質的側面の両方に大きな個人差がみられ. 同一場面のくりかえし観察と他のメンバーの記録との照合・検討は, 観察能力を高めるうえ で効果がある. しかし, どちらか一方又は両方の要 因によるものかは, 明らかにすることができな ②. か っ た.. 同一 の観察訓練プロ グラム でも, その習得 パターンには, 大きな個人差 がある. 本論文においては, 問題のところで指摘した観察法の学習目標の中 で, 第2の目標-観察能力高 ③. める-の側面にのみ検討を加 えてきた. しかし, 将来の幼 児教育における観察法を考える際には, 第3の目標-実際場面への応用-を重視したいと考えている. 単に, 一つの心理学的手法を学習す. るだけにと どまらず, 観察法をより積極的に幼児教育と関連する方向 で学習する必要がある. たと 392.
(10) . 観察者訓練の習得過程. 6 )では 教育実習と関連づけ て カリキュ ラム改善のための研究を行 97 9 ) えば, 学芸大(飯田ほか1 , , なっ ているが, その中 で, ①幼稚園児の活動の観察, ②遊 び集団, 遊具利用状況の観察, ③実際の. 幼稚園での指導を観察する,④実習における研究保育を VTR にとり, それを素材にして講義を展開 する等, 積極的な観察法の活用をはかっ ている, このような方向が, 今後の幼児教育における観察 法のあり方として望しいと考える. 付記. 本研究で使用 した VTR 記録は, 本学藤友助教授が録画されたも のを 利用させていた だい. た, 使用を許可された藤友助教授に感謝いたします.. 引用 文献 1)小川一夫・浜名外喜男:自然的観察法 1 4 続有恒・八木晃(監)心理学研究法 第1 97 0巻 観察 東京大 学出版会 2) 中村陽吉:実験的観察法 19 74 続有恒・八木晃 (監) 心理学研究法 第10巻 観察 東京大学出版会 3) 鈴木康平 観察の訓練 1 977 依田 新 (監) 心理学実験演習 W 金子書房 4)江口純代ほか 1 4回総会発 972 幼児理解の一方法としての観察法の研究(その3) 日本教育心理学会第1 表論文集 2 2一2 3 5)牛山聴子ほか 1 9 71 幼児理解の一方法としての観察法の研究(その1) 日本教育心理学会第1 3回総会発 表論文集 2 36一23 7 9 6) 飯田秀一ほか 1 79 幼稚園教育教員養成課程のカリキュラム改善のための研究(1) 東京学芸大学紀要 第1部門 第30集. (本学助手・函館分校). 393.
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