理科の学習理論と科学の構造
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(2) . 理科の学習理論と科学の構造. 平. 1。 探求学習の系譜 現代理科教育の構造は科学の方法, 科学のシステム, 子供の発達論から成り立つ( 1 ) . その学習形 態は発見学習または 探求学習と呼ばれる. これら学習理論の歴史は古く その源は今から 350 年 の , Baconと言われ(2, 3) , それは観察と資料から新しい理論を創造する帰納的方法であった. 特に i f i i 最近においてはK. Popper の uThelogicofsient cd scovery 、 が 新 し い 方 法 を 提 出 した. こ の 、. 理論の基礎は Hypothetico‐deductive モ デ ルと い わ れ,. 科 学 は 単に 観 察 と 実験 に よ る デー ター の 収. 集でのみ前進するものでなく, ある種の仮説が実験, 観察に重要 であることを強調している 更に 。 彼は科学の方法,研究集団の役割も科学の前進に影響することを証明した(3 4) この理論は197 0 , . 土中 の パラ ダイ ム理論に更に拡大し(5) 年代の Ku P i 更にこれらの科学 t 構造論はJ 発 達 の a e e a n g , 論と結合し現代における学習論の基礎を作っ たと言われる (3, 1) . しかしこれらの学習理論の実践の過程に対して考えられることは室内実験の できる分野 (物理 , 化学) においては一応成功している様 である. これに対し野外科学の分野 (室内で実験が できない 分野, 例えば地学, 生物の一部) においてはこの理論の実践に無理を感ず る面が良く 見られる 同 . 時に理科の学習の場において科学は存在するが自然が子供からとお ざかる傾向が見られる この原 . 因は どこ に あ る の であ ろ う か, こ れ ら に つ い て 次 に 議 論 し た い .. 2. 野外科学の構造 野外科学とは室内 で実験不可能な分野とここで便宜的に定義する 現代の学問分野でいう と海洋 . 学, 氷河学, 地形学, 地 質学, 気象学, 岩石学, 生物学の一部, 天文学等 である この分野の特長 . は Kuhn(5) 流の 学 問 の 発 達 段 階 か ら と いう と pre iona ls tage に あ り, 現 象 を 統 一 的 に 説 revol ‐ ut. 明しうる法則が存在しないという ことである。 しかしこれらの分野を歴史的に見ると相当古い分野 が存在する(例えば地 質学, 天文学) 。 歴史的に見ても古いにもかかわらず統一的法則が存在しない ことはこれら学問現象の複雑さをあらわしている. 生の自然を取扱うこれらの分野は 複数の原因か ら単一の結果を生じ, そのため解析に多くの時間を要すると考える 。 例えば子供の生活に 身近な気候を例に 取ると 良く 理解 できる 気候 は 複雑 なf l i d dynami l - u ca . system から成る (6) そ の 構 成 要 素 は a tmosphere osphere ,ocean ,cryosphere (地 球 の 氷), bi . , l i hosphe t r eである. その他に太陽の幅射量の変化もこれに加わり, これらの要素の相互関係から-. つの気象現象を作り出している. 海流は大気の運動によ って支配され, 逆に海水温の異常は異常気 247.
(3) . 平. 図1. 一. 弘. 気候のフィ ー ドバ ッ クシステム. 象を導く. この海水温の異常は海洋底の運動によ っ て励起されると 考えられる(7) . これらの異常 気象はある時は極地方に氷床の 発達を促進し, これはまた新た な異常気象を励起する. この氷床の 成長は部分的に地殻を圧迫し, 地殻の変形と地球内部の物質の移動 をもたらす. この物質の移動と 地殻の変形は部分的火山活動を励 起する. これら火山活動から噴出するエア ゾルはまた気象に多大 な影響を与える. これらの種々の 要素の相互作用はその時間のオーダーによ ってもその影響のしか tem を 形 成 し て い る (図 た は ち がい (6), ま た こ れ ら の 要 素 は 全 体 と し て あ る 種 の Feedbacksys. i 1). Hecht and lmb r e (8) の言葉をかりるなら気候とは nA continuous state of transient - し 人間 も加 わり つ つ ある tment jus ad . で あ る と 考 え ら れ る. そ し て 最 近 に お い て 図 1 の 要 素 と (9) .. l o こ の feedback system は生物学にお ける広い意味の Eco をW という用語と相通 じるものがある.. tem と いう 言 葉 も 利 用 さ れ て い る. こ れ ら に 共 通 し て い え る こ と は 最近 では 人 間 も ふ く め て Ecosys. 種々の要因がおたがいに からみあいながら一つの自然現象を作り出す. それ故直線的因果律が成立 する面も科学に存在するが, 生の自然現象は原因と結果が相補性を保ちながら展開している面も 多 く存在する. \ \ 一般的に科 学という言葉から 絶対性ぃ , 合理性 , というイメ ージが生れるが, 野外科学から生 \相補性 れる自然科学の特長と してこの他に \ . , 多様性 という概念が生れる.. 3. 理科教育と科学の構造 一般的に室内科学の構造はある種の階層性を有し, モデル的にかくと抽象的概 念と具体的概念と tem と 名 づ け る. こ れ sys の 間 に あ る 種 の ピラ ミ ッ ド状 の 階 層 構 造 を 示 す(図 2). こ れ を こ こ で H‐ tem と 名 づ け て お く. こ れ ら の sys に対し野外科学の構造は Fe edbacksystem であ り, こ こ で は F‐ 二つのシステムは 学問の性格とか学問の 進歩の度合いによ って 区別さ れるが, 最終的に F‐system t も H‐ em になるであろう. しかし人間が自然を完全に究明 しえる日ははるか 遠い. それ故両シ sys ステムが成り立つ. 一般的に科学史, 科学構造論の 主体は実験科学を中心に組み立てられている(4, 5) . これらの t em から成 sys 科学論を基礎にした現代 理科教育のカリキュ ラムも学習理論もどちらかというと H‐ type に 属 l(11 ) の そ れ に せ よ, ど ち ら も こ の H‐ り 立 つ. Gag・e (10) の 学 習 理 論 に せ よ, Ausube. する. これらの 学習理論 で理科教育 を突き詰めていくと科学教育 が パ ズ ル遊 び的に なる. 同時に K I血n(5) も科学の発展の過程において 科学がパズル解きになる時期を認めている. そして教育の )ら 13 場においては子供から真の自然が徐々にとおのき, 形骸 化した科学のみ残る. それは貫井 ( の理科の 興味調査の結果に良くあらわれている. それによると理科に対する興味は 4, 5年頃から 248.
(4) . . 理科の学習理論と科学の構造. Most inclusive concepts. lntermediary concepts. . . lの学習モ デル (Novak ( ) から) 12 図2 Gagne , Ausube i 急に 低 下 す る。 こ れ は 物 理, 化 学 の 分 野 に と っ て 著 し い. 発 達 論 的 に こ の 時 期 は pre ‐operat onal tage の 移 り 変 わ り の 時 期 で あ り stage から conc retes. l l i iagetの 発 達 論 は Novak( ), Ma 12 nson. ) によりまとめられ, これを利用した。) ( 1 4 , 肉体的にも精神的にも パズル遊び的時期はこの辺が 最後と考える。 小学校高学年, 中学校において更に精神的に熟成する時期においては パズル的作業 は子供にとっ てそれほど興味があるとおもえない. その結果, 貫井らの調査結果がでたと解釈する。 それともう 一つは自然科学の研究が職業として成立した後, その学問分野はある種の偏向性をた どるということである. それは知的好奇心のみで学問は成立するのでなく, むしろ職業として成立 しやすい分野のみが発展する場合がある. 別の言葉 でいうと短期間に解決しそうな問題, 社会の要 求に応ずる様な問題は一 般的に解決は早い。 そのため科学は子供の単純な好奇心に全面的に応える ことはできない。 それ故理科教育は自然のごく 一部, 更に形骸化した科学の一部を子供に与えてい るにすぎない. 発達する子供の知性はこれを満足することはできないであろう。 〉 その中心課題は人間と自然との対応関係であろう こ 最近環境教育の 重要性が強調されている. . t の対応関係は H… ypeのカ リキュラムなり, 学習形態から生みださ れることはない.環境論発生の要 ) 15 因は多くあろうが( , 理科教育に関する限り, 一面的な自然観による。 これは戦後の理科教育史 16 ) を見るとそれは明瞭である( 。 そこには自然の多様性, 相補性といっ た概念より, 科学の系統性, 合理性にその主眼をおいていた. ここで強調しておきたいことは自然と科学のちがいである。 科学 は人間の創造物であり,自然のごく一部の現象しか科学は説明しえない.科学技術が進歩すると吾々 はある錯覚におちいる。科学は自然を征服したと。また科学イコール自然と。 しかし自然は驚くほど ) 17 規則的であり, また不確定的なものである ( 。 これが自然の本質である.. 4。 理科教育と野外科学 自然の多様性, 相補性は気候を例にして議論した。 これ以外生物分野にも多くの例がある. 子供 の身近な例として 人間の体がそれである. 人間の能動的生命は各々の器官が相互に有機的に結合し ながらそれを維持している。 ある器官の一部がその働きを中止した時, その生命体はその活動を停 止する. 岩石は小, 中学校の教材として良く利用される。 系統学習の視点から地殻 ( t ) なり岩石を教 rus c C h える際, 図3の様な階層構造が成立する. その構造の基本的アイ デアは ampagne( )らのそれ 18 l を 参 考 に した. こ れ は ま た Ausube ,Gagle の 学 習 モ デ ルに 対 応 す る も の であ り, た し か に こ れ は 岩. 石なり地殻を教える場合の科学の基本的な骨子である. しかし実際の自然は図4の様な岩石同士の 249.
(5) . 平. 図3. 一. 弘. 地殻 (Crus t ) , 岩石 (Rock) の系統的学習モ デル ) らの系統図 を改修 した) 18 (こ れは Champagl e(. (1). (2). 図4. 岩石のフィ ー ドバ ッ クシ ステム. t ) は塩基 s ある種の対応関係が成立し, Feedback system を 形 成 して い る. 例 え ば 結 晶 片 岩 (schi basa l t ) や泥岩の変成により生成し, 逆に泥岩は結晶片岩の風化作用によりできあがる. 性の岩石 ( i t ) は結晶片岩や泥岩の花岡岩化作用 でもできる. この様な現象は また深成岩である花篇岩(Gran e. 室内のモデルでも説明可能であろうが, 可能なか ぎり野外で観察させる方が自然の多様性を実感さ せる上で大切なこと である. この様な例は第2分野に 多くあり, これらを系統的学習と共になんら かの形で教材化する必要があると痛切に感ずる. また操作的発達がまだ完成されない未分化の子供 に対しても経験的にこれらを与える必要がある. これらは子供の成長の過程において正しい自然観 養成の糧となる であろう.. 250.
(6) . 理科の学習理論と科学の構造. 5. 結. 論. この論文は現代理科教育の歴史的背景を総括し, それが現代理科教育にいかなる影を落としてい るか論議した. 科学は室内実験を中心とする分野と野外の観察を中心とす る分野から成る. 前者は物理, 化学, 後者は地学, 生物が中心である. 本来的に自然は一つ であるが, 学問の発達の過程で大きく 2つの 分野にわけられた. 前者の科学構造は法則と現象, 科学的概念と自然現象がピラミ ッ ド状に成り立 t つ(H‐ em) sys 。 これに対し後者は特に各々の自然現象が有機的に結合し, また相互に影響を与えな tem). が ら あ る シ ス テ ム を 作 っ て い る (F‐ sys 一 般 的に い え る こ と は 現 在 ま での 理 科 の カ リ キ ュ ラ ム 論 な り 学 習 論 は あ る 点 に お い て H‐ tem sys. の科学観を基礎としてきた。 この科学観による理科教育は時間の流れと共に理科教育 の中にある空 洞を作りつつあっ た。 この空洞とは現代特にその必要が強調されている環境教育 であり, 総合教育 である。 これらの必要性は社会の変化による面もあろうが, むしろ現代理科教育それ自身に内在し ていたと著者は結論する。 今後の具体的例について多少論議したがもっ と詳細な問題について別に 報告したい.. 引用文献 i i f i i i 1. Bybee rans onofsc enceeducat ormat on ence Educat on . ,Thenew t ,K,VV . ,1977 ,61:85-97 ,Sc i F A S i 1 2 d 9 5 fl i 2. Bacon lant i t i l ・ l en o earnng s cago . vance , r rancs , ,novum organum,andthe new At ,Ch , London l i i i tann opaed a Br ca . ,Toronto:Encyc l l l i i 3, Cawthron t i s emo ogy and 鰍 コ ence educat on es i n Sc ence , A. . Epi , E, R. and Rowe . Studi ,J , 1978 ion5:31一59 Educat . IR i i i f i i 4. Popper og cofs c ent cdi scovery c Books . ‐ .Thel .Bas , Kar ,1959 . ,New York i i f i t ions i IEncyc loped ia of Un i 5. Kuhn f i ructur eofs c ent crevol ut ernat ona ed . .lnt . Thes , Thomas s ,1970 Sc i i i ty ofChi encesland2 ver s cago Pres s cago . ,Un ,Chi fc l imateandc l imat i iat ions 6. Kut zbach,J eo cvar earch6:471-480 .Thenatur .E. .Quaternaw Res . ,1976. 7. 内藤勲夫, 19 3 7 1-3 1 6 . 大気・海洋・固体地球の相互作用. 天文月報. 66:31 . A D dl b i 1 T d 9 7 9 h i h l f imat i 8. Hecht t a n m r e J a r o w a c om r e e n s e e o v o c c change ernary p i γ . . . , ,. , , Quat Research12:2-5 . i idge 戸 ; / f imat i i lgeo 9. Fa rbr ect sof Holocene C1 cchangeonsomet rop ca ] morphi c proces ses . .Ef ,R・下 ,1976 . R h6 5 2 9 5 6 Quate -5 rnary es ear c : . i ionsofl i l 4 t 10 t t ton earn ng nehar ns . Thecond . . Ho ,R.ル ,1977 ,Ri ,and 駅i , New York. . Gagne A b l D P, Novak i lpsycho iona logy i 11 t t an ew. Hol vevi .Educat .acogni ,J .D. ,and Hanes , H. ,1978 , . usu e, . . Rinehar ins N k Y tandVV t on e w o r . , k .D. ion l IUn ivers i 12 ty Pres thaca s .A theoryofeducat ,1977 . ,Come . Nova ,J ,l. 1 3 6 . 貫井正納, 金綱均, 鎗野日和雄, 伊神大四郎, 197 . 小・中・高校児童・生徒における理科学習の興味につい ての研究, 千葉大学教育学部研究紀要25:21-3 0 .. l l i i i 1975 1 i 14 nson ence educat on ‐ ence e l ゴ ロentto Sc . A summary ofresearch in sc . A supP , G. G. ,1977 . 八江a Educat ion h W i l & Y k S N J o n e n o s e w o r y . , ,. i i leducat i l ia 15 iens ta t nn ngofenv ronmnen oni n Aus ra . Thebegi . ,H.A. ,1974 .ln: M. Numata . Haant , W.S Benn fand P.B. Whi i ford(ed i ingsofthei i lsympos i i l t tors ) nghof nt ernat ona um onenv ronmenta ,Proceed i 5-14 educat on . Tokyo . . ,Japan ,pp Ta i K 1 H i 9 7 8 f i ioni incel945 i i 16 t ra c enceeducat nJapans ence Educat on62:585-589 . sory o s . ,Sc , , . . 251.
(7) . 平. 一. 弘. 1 972 7 . (渡辺格, 村上光彦訳) ,1 ,J . 偶然と必然. みすず書房, 東京. . Monod. ionsof 18 res cturalrepre sentat .E. .Stn・ ,L ,Desena ,A. T. ,D. A. ,1981 ,and Squi ,K1opper ,A.B. . Champagne i ion l fR hi S i T h i 1 ters t t tudentぎknowl 1 c encei ns ruc o u r n a o e s e a r c n edgebeforeandaf s c e n c e e a c n g 8:97- , 111 本 学 講師・ 分 校) ( 旭川 .. 252.
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