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博 士 ( 医 学 ) 城 下 紀 幸

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 城 下 紀 幸

Involvement of protein kinase C‑8 in signal transduction of thrombopoietin in enhancement of interleukin‑3‑dependent     proliferation of primitive hematopoietic progenitors

(IL―3依 存 性 未 分 化 造 血 前 駆 細 胞 増 殖 を 増 強 す る ト ロ ン ボ ポ エ チ ン の シ グ ナ ル 伝達 へのPKC‑の関 与)

学位論文内容の要旨

【背景】

  サイ トカ イン レセ プ夕 ―ファミリ―に属するc―mplのりガンドであるト口ンボポェチン (TPO)は1994年 に ク 口 ー ニ ン グ さ れ 、 血 小 板 産 生 を 調 節 す る 主 要 なサ イ ト カ イ ン と し て 報 告 さ れ た 。 そ の 後TPOは 単 独 ま た はILー3な ど のサ イ卜 カイ ンと の組 合わ せによ り 、赤 芽球 前駆 細胞 や多 能性 前駆 細胞 の増 殖を も支持 することが判明し、一方、TPOのin vivo投 与 は 血 小 板 の み で なく 赤血 球や 自血 球の 増加 をもた らし 、TPOが 未分 化造 血前駆 細胞の増殖を刺激することが証明された。

  TPOの シ グ ナ ル 伝 達 は 広く 研 究 さ れ 、JAK―STAT経 路やMAPキ ナ ー ゼ 経 路 が そ の 増殖 刺 激 に 関 与 す る こ と が 報 告さ れて いる が、 プ口 テイ ンキナ ーゼC (PKC)の関 与も 少数な が ら 報 告 さ れ て い る 。PKCに は 少 な く と も11の ア イ ソ フ オ ー ム ( 亜分 子 ) が あ り 、 種 々の 細胞 の生 存、 増殖 、分 化に 関与 する こと が知ら れている。そこでマウスIL―3依存 性 未 分 化 造 血 前 駆 細 胞 増 殖 に 与 え るTPOの 作 用 を 検 討 し 、TPOの シ グ ナ ル 伝 達 にPKCが 関 与 す る か 否 か を6種 の 亜 分 子 (a、 ロ 、 ア 、0、E、 く ) に 焦 点 を 当て て 検 討 し た 。

【材料および方法】

1. 細 胞 :10〜15週 齢 の 雄 性BDFiマ ウ ス に5ーFU (150mg/kg)を 尾 静 脈 よ り 静 注 し 、2日 後 に 大 腿 骨 よ り 骨髄細 胞を 採取 した (5―FU marrow ceu) 。比 重遠 心法 により 単 核 球 を 得 、 抗CD4、CD8、B220、Gr―1、Mac−1抗体 を用 いた 免疫 磁性 ビー ズ法 にて分 化抗原陰性細胞(Lin・celDとした。さらに、Lin・細胞から抗stem cell antigen (Sca−1)抗 体陽性細胞を得た(Lin・Sca―1゛cerD。

2. コ ロ ニ ー 形 成 法 : 既 報のヌ チル セル 口ー ス法 によ り、 培養 皿当 たり5 x10゜個 の5― FU marrow cell、2000個 のLin・cellま た は400個 のLin、Sca―1゛cellを サ イ ト カイ ン 存 在 下 に 炭 酸 ガ ス 培 養 器 で 培 養 し た 。14日 目 に 倒 立顕 微鏡 下に50個 以上 の細 胞集塊 をコ口二ーとしてコロこー数を算定した。

3.PKC染 色 : 細 胞 をTPO単 独 ま た は 阻 害 剤 と 孵 置 後 に 洗 浄 し 、 サ イ 卜ス ピ ン を 用 い て 塗拯標本を作成した。抗PKC‑凹、―ロ、―ア、−づ、―E、ーく抗体とFITC標識二次抗体で

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染 色 後 、 さ ら に 核 染 色 を 施 し 共 焦 点 レ ザ ー 顕 微 鏡 で 観 察 、 写 真 撮 影 し た 。 4.阻 害剤 :PKC阻 害剤 と して カ ルフ ォ スチ ンC、GF109203X、PKC‑Etranslocation inhibitor peptideを 用 い、TPO添 加 の60分前 に 細 胞浮遊液に 添加した(inhibitor peptideは2時 間 ) 。 そ の 後 、 洗 浄 す る こ と な くTPOと さ ら に2時 間 孵 置 し た 。

【結果】

  5―F丶U marrow cellを用いると、TPO単独ではコ口二ー形成を支持しないが、IL−3と 相乗的に作用し、コ口二ー数を2倍に増した。巨核球コ口二ーの増加は観察されたが、増 加したコ口二ーは主として赤芽球混合コ口二ーであった。無血清培養の結果からこの相乗 作用は血清を介したものではないことが確認された。Lin・Sca―1゛cellでもTPOはILー3と 相乗的に作用してコ口二ー数を増加させ、TPOは直接未分化造血前駆細胞に作用するこ とが示された。

  コ口二ー構成細胞数の変化を顕微鏡下に連日観察すると(¨mapping study¨)、IL‑3単 独群とIL−3十TPO群の間で、細胞倍加時間に有意差はなかったが、コ口ニ一構成細胞が 100個 に なる ま での 平均 日数はILー3+TPO群で有意に 短く、TPOは静止期 にある未分 化造血前駆細胞のGo期を短縮することによルコロニー数の相乗的増加をもたらすことが 示唆された。

  選択 的PKC阻害 剤であるカ ルフエスチ ンCとGF109203XはTPOのIL一3依存性コ口ニー 形成への相乗作用を抑制し、その濃度からnovel PKCの関与が示唆された。そこで直接的 証拠を得るため、Lin.cellを対象に6種のPKC亜分子に対する抗体を用いてどのPKC亜分 子カgTPOによって活性化されるかを免疫細胞学的に検討した。表出されていたa、ロ、

d、E、 く‑PKCの内 、TPOによ っ てPKC‑Eの 表出 バ ター ンと細胞内 局在が変化 し、活 性化されたことが示唆された。この変化はPKC阻害剤によって阻害された。さらにPKC― E特異的阻害剤であるPKC‑E translocation inhibitor peptideはTPOによるPKC‑との表 出バターンと細胞内局在の変化およo<yrPOのIL―3依存性コロニー形成増強作用を阻害し た。以上よりIL‑―3依存性未分化造血前駆細胞の増殖を増強するTPOのシグナル伝達の少 なくとも一部にPKC‑Eが関与することが強く示唆された。

【考案】

  TPOのシグナル がJAK−STAT経 路やMAPキナーゼ経路により伝達されることが報告さ れているが、これらのシグナルのみでTPOの細胞増殖作用に十分か否かは結諭が得られ ていない。そこで、本研究ではPKCに焦点を当てて検討し、未分化造血前駆細胞ではァ を除 く5種の亜分子が表出され、細胞の種類によって表出されるPKC亜分子のバターン が異なること、IL―3依存性増殖を増強するTPOのシグナル伝達の少なくとも一部にPKC― Eが関与する ことを示し た。前駆細 胞増殖増強の機序として、アポトーシスの抑制や DNA合成刺激な どがあげら れる。TPOがGO期を短縮 したことか らは後者の可能性が強 いと考えられるが、前者の可能性を完全には除外できない。本研究ではGF109203Xなど の選択的PKC阻害剤と、より特異性の高いPKC‑E translocation inhibitor peptideを用 いたが、後者の阻害効果は前者よりは弱く、その一因として後者の細胞膜透過が不十分で あった可能性が示唆される。

  PKC‑Eを過剰発現した線維芽細胞はヌードマウスにおける腫瘍形成能と増殖速度を増 すこと、自血病細胞株でPKC‑Eを過剰発現するとサイトカイン除去によるアポトーシス

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に抵抗性となること、などのこれまでの報告はTPOの細胞増殖刺激シグナルの少なくと も一部にPKC‑Eが関与するとする本研究結果と合致する。しかし、c−Mplを表出する UT‑7細胞 で は 、TPOの 増殖 刺激はPKC‑Eで はな く、PKC‑QとPKC‑ロによ って 伝達 さ れるとの報告もあり、増殖刺激とPKC―Eの関係については細胞の種類やTPOの濃度など も含めてさらに検討する必要があると思われた。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Involvement of protein kinase C‑ in slgnaltranSduCtionof thrombopoietininenhanCementofinterleukin − 3 − dependent     prolif ・erationofprimitiVehematopoietiCprogenitorS      ( IL − 3 依 存 性 未 分 化 造 血 前 駆 細 胞 増 殖 を 増 強 す る      トロンボポエチンのシグ ナル伝達へのPKC ―£の関与)

  c―mplのり ガン ドであるト 口ンボポェ チン(TPO)は1994年にク口ー ニングされ 、 血小板産生を調節する主要なサイトカインとして報告された。その後TPOは単独または IL→3などのサイトカインとの組合わせにより、赤芽球前駆細胞や多能性前駆細胞の増殖 をも支持することが判明し、一方、TPOのin vivo投与は血小板のみでなく赤血球や自血 球の増加をもたらし、TPOが未分化造血前駆細胞の増殖を刺激することが証明された。

  TPOのシグ ナル伝達は 広く研究さ れ、JAK―STAT経路やMAPキナーゼ経路がその増殖 刺激に関与することが報告されているが、プ口テインキナーゼC ‑(PKC)の関与も少数な がら 報 告さ れ ている 。PKCには 少なくとも11のアイソフ ォーム(亜 分子)があ り、

種々の細胞の生存、増殖、分化に関与することが知られている。そこでIL―3依存性マウ ス未分化造 血前駆細胞 増殖に与え るTPOの作用を検討し、TPOのシグナル伝達にPKCが 関与するか 否かを6種の亜分 子(a、 ロ、ア、d、E、モ)に焦 点を当てて検討した。

  マウス未分化造血前駆細胞を用いると、TPO単独ではコ口二ー形成を支持しないが、

IL−3と相乗的に作用し、コ口二ー数を2倍に増した。巨核球コ口二ーの増加は観察され たが、増加したコ口二ーは主として赤芽球混合(GEMM)コ口二ーであった。無血清培養の 結果からこの相乗作用は血清中の因子を介したものではないことが確認された。分化抗原 陰性.stem cell antigen陽性細胞(Lin・Sca―1゛celDでもTPOはIL―3と相乗的に作用して コ口ニー数 を増加させ 、TPOは直 接未分化造血前駆細胞に作用することが示された。

  コ口二ー構成細胞数の変化を顕微鏡下に連日観察すると(¨mapping study¨)、IL‑3単 独群とILー3十TPO群の間で、細胞倍加時間に有意差はなかったが、コ口二ー構成細胞が 100個になるまでの平均日数はIL―3十′FPO群で有意に短く、TPOは静止期にある未分 化造血前駆細胞のGo期を短縮することによルコ口二ー数の相乗的増加をもたらすことが 示唆された。

148

馬 博

一 正

中 香

田 浅

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

  選択的PKC阻害剤であるカルフォスチンCとGF109203XはTPOのIL―3依存性コ口二一 形成への相乗作用を抑制し、その濃度からnovel PKCの関与が示唆された。そこで直接的 証拠を得るため、Lin・cellを対象に6種のPKC亜分子に対する抗体を用いてどのPKC亜分 子がTP○によって活性化されるかを免疫細胞学的に検討した。表出されていた口、ロ、

6、E、 く‑PKCの 内、PKC‑Eの表出 パ夕  ̄ン と細胞 内局 在がTPOによ って 変化し 、活 性化されたことが示唆された。この変化はPKC阻害剤によって阻害された。さらにPKC,― E特異的阻害剤であるPKC‑E translocation inhibitor peptideはTPOによるPKC―との表 出パターンと細胞内局在の変化およぴrPOのIL‑3依存性コロニー形成増強作用を阻害し た。以上よりILー3依存性未分化造血前駆細胞の増殖を増強するTPOのシグナル伝達の少 なくとも一部にPKCーEが関与することが強く示唆された。

  口答発表に際し、副査の武蔵教授からGo期短縮が報告されている他のサイ卜カインの シグナル伝達におけるPKC‑Eの関与について、また造血幹細胞以外の細胞での細胞増殖 シグナルにおけるPKC‑との関与について質問があったが、申請者はGo期を短縮するIL― 6、IL‑11などについてはPKC‑Eの関与に対する報告がなく申請者も検討していない旨回 答し、またPKCーとを過剰発現した線維芽細胞はヌードマウスにおける腫瘍形成能と増殖 速度を増すこと、自血病細胞株でPKC‑とを過剰発現するとサイトカイン除去によるアポ トーシスに抵抗性となることなどの報告があり、TPOの細胞増殖刺激シグナルの少なく とも一部にPKC−Eが関与するとした本研究結果と合致することを回答した。次に副査の 浅香教授から、TPOによりblast cellではなくGEMMコ口二―が増加した理由、PKC‑と 以外のPKC isoformの検討について、本研究をどのように臨床応用できるのかについて 質問があった。申請者はコ口ニーアッセイにおいて、TPOは未分化造血前駆細胞Go期を 短縮する結果、培養期間内にblast cellコ口二―が増殖、成熟してGEMMコ口二ーとなる可 能性 よりGEMM増 加の 理由 を説 明し、PKC‑E以 外のisoformの検 討ではPKC染色におい て、細胞内局在や染色バ夕―ンの変化がなく活性化が示されなかった旨回答した。臨床応 用については直接には結びっかないが、細胞増殖のシグナル伝達を明らかにし、それを阻 害する事により、癌に対する分子標的療法にっながっていく可能性がある事を回答した。

最後に主査の田中教授より、PKC‑Einhibitor peptideの特異性についてと、PKC―との translocationについてPKC染色以外の方法やtranslocationしたのは一過性の可能性はな いかとの質問があった。申請者はinhibitor peptideの特異性の高さが報告されているこ と、ウエスタンブロット法を使用してPKC‑Eのtranslocationを証明しようと3度試みた が細胞数が少なく確認できなかったこと、活性化の持続については数度の実験において時 間 を 変 え て施 行 し、 それ ぞれ の時 間にお いて 活性 化が 示され たこ とを 回答し た。

  本研究はマウス未分化造血前駆細胞におけるTPOの作用とそのシグナル伝達にPKC‑E が関与することを科学的に報告したという点で高く評価された。今後TPOのシグナル伝 達のさらなる解明が期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるのに 十分な資格を有するものと判定した。

参照

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