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博 士 ( 医 学 ) 外 木 秀 文

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 外 木 秀 文

学 ′ 位 論 文 題 名

Glutathione Reductase 遺 伝 子 の

ア ン チ セ ン ス 発 現 ベク タ ー を 用い た 発 現 抑制 細 胞 株 の 樹 立 と 酸 化 的 ス ト レ ス に 対す る 感 受 性の 評 価

学 位論 文 内 容 の要 旨

    Glutathione(GSH)は細胞内の重要なアンチオキシダントの1つであり、glutathione peroxidase(GPX)の基質として過酸化水素や有機的過酸化物を還元する一方、自らは酸化 されてglutathione disulfide(GSSG)となる。Glutathione reductase(GR)はGSSGをGS Hに還元する酵素で、glutathione synthetaseと共に細胞内GSHレベルを維持するのに重要 な酵素と考えられており、この酵素の活性の低下は、細胞や組織の酸化的ストレスに対す る抵抗性を減弱させ、未熟児においては気管支肺異形成症(BPD)などの酸素性組織障害の合 併と無関係ではなぃと推測される。本研究ではGR活性低下と組織障害の関係を検証するた めアンチセンスRNA発現ベクターによる遺伝子の発現抑制効果を利用してGRの発現が抑制さ れ た細胞株 を樹立し、GR活性低下を評価するため以下の実験を行なぃ結果を分析した。

1.  ヒトGRc DNAのクローニングl990年に発表されたヒトGRcDNAの遺伝子配列をもとにRT

―PCR(reverse trascription PCR)法により約1.4kbのcDNAを増幅し、発現ベクターpRc/CMV に組み込んだ。これを大腸菌株JM109にトランスフウクション後,クローンを単離し、CHO

(Chinese hamster ovary)K‐1細胞に導入しGRの一過性の過剰発現をもたらしたクローンに ついて塩基配列を解析した。その結果、塩基置換のないクローンpRc/CMVHGR135を得た。

2. アンチセ ンスGR発現 ベクター 導入によるCHO安定細胞株の樹立pRc/CMVHGR135のイン サート(HGR135)を発現ベクターMEP4(ハイグロマイシン耐性)に組み込んで得られたアンチ センスクローンMEPRGHl35 (metallothionein llaプロモーターに対して逆方向に接続)をCH O細胞にpolybreneを用いて濃度比l/10のpRc/CMVNe0(ネオマイシン耐性)と同時にトランス フェクションし、G418(ネオマイシンアナログ)により選択を行った。得られた11の細胞

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株 の う ちG17でGR活 性は 正常CHO細 胞コ ント ロー ルの48Xに 低下 して いた 。ゲ ノムDNAサ ザン ブロ ット につ いて 、MEPRGH135の プロ モー ター ノcDNA部分 をプ ロー ブと して行ったハイブリ ダイゼイションで、この外来DNA相応の2.4kbのXbal/Xhol断片、EcoRI断片(6.3kb.0.78kb) 及びPstl断片(O.85kb,0.8kb)を検出した。また11. 7kbのHindlll断片は検出されず、この べ ク タ ー が ゲノ ムに 挿入 され てい るこ とを 示唆 した 。ノ ーザ ン ハイ ブリ ダイ ゼー ショ ンで はGRメ ッ セ ージ は減 弱を 認め たが 、ア ンチ セン スGRメッ セー ジ は検 出し なか った 。そ の他 GR活 性 の 低 下を 認め た4つの 細胞 株 でサ ザン 法、PCR法、 もし く はハ イグ ロマ イシ ン耐 性能 によりこのべクター由来のDNAの存在を確認した。

3.GR活性低 下細胞に対する酸化的ストレステスト

!! t‑butyl  hydroperoxide (t‑BuOOH1盤生Q髮饗  G17とコン トロールのCHO細胞を、プレ ー ト に 播 種 し、0、1、5、lOmMの 最 終濃 度と なる ようt―BuOOHを添 加し た培 養液 で4時 間イ ンキ ュベ ート しそ の影 響 を調 べた 。lOmMお よび5mMのt−BuOOH負 荷でG17ではコントロールに 比べLDH逸脱 比(X)の有意な増大(lOmM: 57.3士4.7vs 32.1土1.9X.P〈O.05,5mM:3.7士 1.l  vs0.8土0.6X.P<0. 05)を認めた。細胞内GSH濃度はtーBuOOH無負荷状態におぃてG17 で有意に減少(25.7土え.5 vs 36.1土1.9nmol/mg protein,P〈0.05)しており、1ーlOmMの 範囲 で負 荷量 の増 大に 従 ってG17では 漸減 した 。コントロール細 胞ではlOm¥l負荷で減少を認 めた が、G17に 比較 する と高 値で あっ た。 細胞 内GSSG濃度 はコ ント ロー ル細胞でt−BuOOH負 荷量 の増 大に 伴い 増加 した。一方G17では、O―ImMのt−BuOOH負荷ではコントロールに比し有 意に 高値 であ るが (OmM:0.61土O.19 vsO.36土0.09,ImM:1.77土O.17 vsl.15土0.23 nmol/mg protein,P<0.05)、5mM、lOmMとt―BuOOHの負荷増に伴うGSSG濃度の上昇はみられ ず、コントロールのそれに比較して低値 となった。

2! 壷 塑 塵 墜 塞 撞 生 堕 髪 饗  G17お よ び コン トロ ールCHO細胞 を 通常 濃度 酸素 投与 条件 下で 72時 間 培 養 した 結果 、培 養液 中LDH濃度 に有 意差 は認 めら れな かっ たが 、95X酸素 投与 条件 下 で は 有 意 にLDHの 逸脱 の増 大を 認 め、G17のそ れは コン トロ ー ル細 胞の それ を有 意に 上ま わった。

    以 上 の 結果 のう ち、LDH逸脱 比 の増 大はG17がこ れら のオ キ シラ ディ カル の刺 激に 対し てよ り脆 弱で ある こと を 意味 する 。こ れら の実 験の 経過 を通 してG17のGR活性は既してコン トロールの50%以下であり、t−BuOOH暴 露時測定したGPX活性は、高 濃度(lOmM)暴露時におぃ

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態で、G17がコントロールに比ベ、GSHの低下およびGSSGの増大をみせたことは、通常の培 養条件下で細胞が自ら産成するオキシラディカルの処理の過程でG17ではGR活性低下により GSSGからGSHへの還元が滞った結果と考えられる。この実験でG17についてみられた現象、

すなわち、コントロールと異なり5mM以上のt−BuOOH負荷時にImMのtーBuOOHに暴露した時以 上のGSSGレベルの上昇をみないことは、G17のGSH基礎値がコントロール細胞より低いこと により説明がっくように思われる。培養液中に放出されるGSSGの量(部分的に細胞のGSSG ポンプの機能を表す)は、2つの細胞群で差異はなぃので,他のGSSG代謝経路(タンパクの 酸化などによる)の働きに差がなければ、GPXの基質となるGSH初期レベルが低ければ、相 応にGSSG産生が減少し、同濃度のt―BuOOH暴露時においてはコントロール細胞でのGSSG生成 はG17に比ベ増大する。ImMのt―BuOOH負荷では、GSSGの産生が比較的少なぃためGR活性の差 により、コントロールではより多くのGSSG分子がGSHに還元され、結果的にG17に比較して GSSGの低値およびGSHの高値を現出すると考えられる。しかし、t−BuOOHを負荷した際の時 間的推移をみた実験によると、G17では高濃度t−BuOOH負荷時によりすみやかにGSHがより低 いレベルでの平衡状態に達する傾向があり、GSH濃度が低いためにt―BuOOHの濃度が高くて も、G17における4時間後のGSSGの増加をもたらさなぃ結果となったと考えられる。以上よ り、GSHの濃度の低下はt−BuOOHの中和能に影響し、GSSGレベルの上昇ではなく、GSHのレベ ルの低下がLDHの逸脱比増に相関していることからも、これがオキシラディカルによるスト レスが細胞・組織障害を引き起こす際の重要なパラメーターであることが示された。以上 より、GR活性の減少は、CHO細胞においてはGSHレベルの低下を介して、オキシラディカル に対する細胞の抵抗性を減弱させていると結論でき、アンチセンス発現ベクターを用いた GR発現抑制系はGRの生理作用ならびに活性低下の影響を解析するのに有用であると思われ た。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Establishment of Chinese hamster ovary cell lines with reduced expression of glutathione reductase   after antisense‑oriented gene transfection and   assesment of the sensitivity to oxydant injury.

(Glutathione Reductase 遺伝子のアンチセンス発現ベクターを用いた      発現細 胞株の樹立と酸 化的ス卜レス に対する感受性の評価)

Glutathione reductase (GR)はGSSG(酸化型グルタチオン)をGSH(還元型グル タ チオ ン) に還 元す る酵 素で ,細胞内GSHレベルを維持し,酸化的ス卜レスに対 す る防 御機 構の1っと なっ ている. 本研究ではGR活性低下と組織障害の関係を検 証するため,アンチ センスGR発現ベクタ一導入によりGRの発現が抑制された細胞株 を樹立しGR活性低下 を評価する事を目的とし,以下の実験を行い結果を分析した,

[ ヒトGRcDNAの クロ ーニ ング ]既 知の ヒ トGRcDNAの塩 基配列をもとに作成した プライマーを用いてRT−PCR(reverse trascription PCR)法により約1.4kbのcDiNA を 増幅 し, 発現 ベク ター に組 み込 み, 大 腸菌 株に トラ ンスフェクション後,ク ロ ーン を単 離し ,CHO (Chinese hamster ovary)細胞に導入しGRの一過性の過剰 発 現をもたらしたクローンについて 塩基配列を解析した.その結果,塩基置換の な いクローンpRc/C¥{VHGR135を得た .[アンチセンスGR発現ベクター導入による CHO安 定細 胞 株の 樹立 ]pRc/C¥tVHGR135のイ ンサ ー卜(HGR135)を発現ベクター

¥IEP4に組み込んで得られたアンチセンスクロ―ンMEPRGH135をCHO細胞にpolybrene を用いてモル濃度比1/10のpRc/ChtVNeoと同時に 卜ランスフェクションし,ネオマ イ シン アナ ログG418によ り選 択を行った,得られた11の細胞株 のうちG17でGR活 性は正常CHO細胞コント口ールの48Yoと低下していた,G17のゲノムD[¥IrAサザンブロツ 卜について,¥tEPRGH135のプロモーターノcDNA部分をプローブとして行ったノヽイブ

彦 暹

   

   

邦  

  真

林 巻

小 葛

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

ス ト レ ス テ ス ト ]1)tーbutyl hydroperoxide(t−BuOOH)投 与の 影響  G17と コ ン ト 口 ー ル のCHO細 胞 に 対 し てIO.1,5|lOmMのtーBuOOHに4時 間 暴 露 し そ の 影 響 を 調 べ た .lOmMお よ び5wvのt−BuOOH負 荷でG17で はコ ント ロー ルに 比べ 細胞 障 害 の 指 標 と な るLDH逸 脱 比の 有意 な増 大を 認め た. 細胞 内GSH濃度 はt一BuOOH無 負 荷状態においてG17で有意に減少しており,1−lOmMの範囲で負荷量の増大に従ってG17 では 漸減 し た. コン トロ ール細胞ではlOmM負荷で減少を認めたが,G17のそれに比較 すると高値であった.細胞内GSSG濃度はコントロール細胞でt一BuOOH負荷量の増大に 伴い増加した.一方G17では,OーImMのt−BuOOH負荷ではコントロールに比し有意に高 値であるが5一10rmhfとtーBuOOHの負荷増に伴うGSSG濃度の上昇はみられず,コントロー ルの それ に 比較 して 低値 とな った .2) 高濃 度酸 素投与の影響  G17およびコントロ ールCHO細胞で95a'o酸素投与条件 下で72時間培養した結果,コントロール条件時に比し 有意にLDH逸脱比の増大を認め,G17のそれはコントロール細胞のそれを有意に上まわっ た. [結 論 】以 上の 結果 はG17がこれらのオキ シラディカルの刺激に対してより脆弱 であることを意味する.また,t一BuOOH OmM負荷で,G17がコ ントロールに比し,GSH の低 下お よ びGSSGの 増大 をみせたことは,通常の培養条件下でG17ではGR活性低下に よりGSSGからGSHへの還元が滞った結果と考えられる.GSHの濃度の低下はt−BuOOHの 中和 能に 影 響し ,GSSGレ ベル の上 昇で はな く,GSHのレベルの低下がLDHの逸脱比増 に相関していることからも,これ がオキシラディカルによるストレスが細胞・組織障 害を引き起こす際の重要なパラメ ーターであることが示された.また,本研究で行つ たアンチセンス鎖導入によってGRの活性低下細胞株を作成しそのオキシダントストレ スにたいする抵抗性を解析する手法は,従来のBCNU(1,3―bis(2―chloroethyl)−1−ni‑

trosurea)など を用 いてGRの活性低下の影響を 分析する方法に比較して,薬剤そのも の細胞毒性がない点で優れていると言える,

本研究は アンテセンスR tx4Aによる遺伝子発現の抑制効果を利用することで,BCNU な どの 薬剤 を用 いた 実験系の欠点を克服したGR活性低 下細胞の実験系をCHO細胞に お い て作 成し ,こ れを 用い て, オキ シダ ント スト レスに対するGR活性低下の影響を 分 析 した もの であ る. この結果,CHO細胞においては,GR活性の約50%のほ下により , GSHの 有意 な低 下及 びGSSGの有意な増大を認め,さらにある程度のオキシダントの 負 荷により細胞が傷害されやす くなることが示された.細胞における活性酸素の処理に 関わる問題は,未熟児の酸素 治療に伴う各種の障害の原因・治療に関わるばかりでな く ,癌 化の 機構 ,癌 の治療,老化等の諸問題とも関わ っており,その処理機キ冓の1 っ であ るglutathione redox cycleを維持する酵素であるGRについて従来より優れ た 分 析系 を作 成し ,そ の活 性低 下の 影響 につ いて 新しい知見を加えたことは,意義 の あ るこ とと 言え る. 本研 究は .ヒ トGRcDNAのク 口ーニングに始まり,アンチセン ス ベ クタ ーの 作成 ,GR活性低下安定CHO細胞株の選択およびその遺伝型の解析をふま え て上記の問題を議論したもの で,論文内容はオリジナリティがありかつ一般的で普遍 的 な 評 価 に 耐 え る も の で , 博 士 ( 医 学 ) に 値 す る と 判 定 い た し ま し た .

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