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博 士 ( 獣 医 学 ) 北 村

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 北 村    浩

     学 位 論 文 題 名

ス ト レ ス に よ る 末 梢 サ イ ト カ イ ン の 誘 導 と そ の 機 序      ― 齧 歯 類 を 用 い た 検 討 ―

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  脳が生体防御能に多大な影響を与えていることは古くから良く知られている。

その典型がストレスによる免疫修飾である。従来、ストレスによる免疫修飾は、

下垂体一副腎皮質系や交感神経一副腎髄質系由来の作動物質が免疫細胞表面の受容 体に直接作用することによって行われると考えられてきたが、このような直接的 な機構だけでは複雑かつ多様な免疫修飾を説明するのは困難である。むしろ、脳 が一旦、インター□イキン(IL)などの多様な免疫調節活性を有する免疫サイトカ インの産生を調節し、これによって間接的にも免疫機能を調節している可能性が 考えられる。本研究では、実際にストレス時に脳が末梢臓器におけるサイトカイ ンの産生を調節しているのか否か、またそれがどのような機構によるものである のかにっいて、ラットとマウスを用いて検討した。

  1,マウスを閉所に閉じこめ、いわゆる拘束ストレスを負荷して、血中IL−6と主 要な産生臓器と考えられる脾臓や肝臓でのIL―6mRNAの発現パターンを調べ、大 腸菌菌 体内毒素で あるりポ多糖体(LPS)を投与したときと比較した。マウスに 拘束ス卜レスを負荷すると、血中コルチコステ口ン濃度の増加と並行して血中IL− 6濃度の増加が見られた。また、これに先立ち、脾臓や肝臓でIL―6mRNAの増加 がみられ、これらの臓器で確かにILー6が産生されていることが示唆された。さら に、臓器当たりの総ILー6mRNA量を比較したところ、脾臓より肝臓の方がはるか に多かった。一方、LPSをマウスの腹腔内に投与すると、全身性の炎症になるこ とが知られているが、この時にも両臓器でIL−6mRNAの増加がみられた。しかし、

拘束ストレス時とは異なり、脾臓での発現がより著明であった。拘束ストレス時 のIL−6産生細胞を免疫組織化学的手法で調べたところ、肝臓では肝実質細胞が、

脾臓では血管周囲の単核球が主であった。一方、LPS投与時は、肝臓では類洞内 のおそらくクッパー細胞と思われる細胞で、脾臓では赤脾髄のマク口ファージで 主にIL−6の産生が認められた。以上の結果より、拘束ストレス時のILー6産生には 脾臓よりむしろ肝臓の、特に肝実質細胞が重要であり、LPS投与時の反応とは大 きく異なることが明らかになった。

  2.近年、ストレス反応時における脳内IL−1の役割が注目されている。そこで 次に拘束ストレス負荷の代わりにIL←1をラットの脳室内に投与して、末梢サイ トカインの変化を調べた。ラットの脳室内にりコンビナントヒトIL―1Bを微量投

(2)

与す ると 、肝 臓や 脾臓 でのIL―6mRNAの増加と並行して血中IL―6濃度の増加が 確認 され た。これらのILー6応答はマウスに拘束ス卜レスを負荷したときにみら れる 応答 とほぼ同じであった。またこのILー6誘導は自律神経節の遮断薬である クロリソンダミン投与で大幅に抑制できた。一方副腎を摘除したラットではILー 6誘導 はさ らに亢進したが、これもク口リソンダミン投与によって抑制された。

IL−1脳室内投与によって、IL―6に加えて、同じく代表的な免疫サイ卜カインで あるIL−1や腫 瘍壊 死因 子(TNF)も 誘導 が確認できた。エLー1の誘導については クロ リソ ンダミン処置で抑制できたが、TNFについては影響が見られなかった。

また、脳内IL―1投与後、血中IL−6の増加に引き続いて、代表的な急性相夕ンバ ク 質 で あ る ハ プト グ 口 ビン の肝 臓内mRNA量お よび 血中 濃度 の増 加が認 めら れ た。以上の結果より、脳内IL一1は肝臓や脾臓でのILー6、IL−1、TNFの誘導を促 すが、そのメカニズムはサイトカイン毎に異なっており、IL―6やIL―1の様に誘 導に 自律 神経 系が 関与 する ものと 、TNFの 様に 別の 経路 による もの があること が明 らか にな った 。ま た、 血中に 放出 されたサイトカインが急性相夕ンバク質 の 誘 導 と い っ た 生 体 防 御 反 応 の 一 端 を 担 っ て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。   3. 11―1やコルチコト口ピン放出ホルモンなどストレス反応に関わるとされる 脳内 メデ ィェ 一夕 ーは 、同 時に炎 症急 性期反応の脳内メディェーターとしても 知ら れて いる。両反応の間には共通の反応もあるが、上記のようにIL一6産生細 胞の 違い など 大き く異 なる 点も多 い。 そこで炎症時やス卜レス時に特異的な役 割を 果た す脳 内の 新規 遺伝 子を見 出す ため に、LPS投与 または 拘束 ストレスを 負 荷 し た マ ウ スと 無 処 置マ ウス の脳 からmRNAを調 製し 、両 者で 発現に 差異 の ある遺伝子をRNA arbitrarily primed−polymerase chain reaction (RAPーPCR) 法で 検索 した 。そ の結 果、 拘束時 にだ け変 動す る遺 伝子 を11個、LPS投与時に だけ 変動 する 遺伝 子を10個 、双方 で共 通に変動がみられる遺伝子を24個、それ ぞれ 見い だし た。 この うち142.5はLPS投与時にだけ脳内の発現量が増加した遺 伝子 であ る。 この 遺伝 子は 、脳の みな らず全身の臓器でも発現量が増加し、な かで も脾 臓や 肺な ど免 疫担 当細胞 の多 い臓 器で は、LPS投与30分と いう極めて 急性 の時 期から著しい増加が見られた。従って、142.5は免疫担当細胞の機能分 子のーつであり、炎症時の免疫ー脳相関に携わる分子のーっと予想される。一方、

脾 臓 や 肝 臓 の142.5のmRNA発現 量は 、拘束 スト レス 負荷 やIL−1脳室内 投与 時 でも 増加 が見られたことから、この分子もIL−6、IL−1、TNFと同様に、脳によ って 発現 調節 を受 ける こと が分か った 。なお、その応答はク□リソンダミンで 抑制 され ないので、自律神経系の関与は無いと思われる。142.5を始めとして、

今回 見出 した 新規 遺伝 子の 構造と 機能 の解析によって、ストレス時や炎症時の 脳と免疫系の複雑な相互連関を分子レベルで明らかに出来るものと考えている。

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学位論文審査の要旨

主査   教授   斉藤昌之 副査   教授   岩永敏彦 副査   教授   小沼   操

副査   助教授   森松正美(岩手大学農学部)

     学位論文題名

ストレスによる末梢サイトカインの誘導とその機序      ―齧歯類を用いた検討―

  ス トレス刺激が脳を介して免疫 機能を修飾することは広く 知られているが、その分子機 構については不 明な 点が多い。本研究では、脳に よる免疫制御に多様な免疫 修飾能をもつサイトカインが 果たす役割を明 らか にする目的で、末梢サイトカ イン産生に及ぼすストレス 負荷の影響とそれに関与する 因子・機構につ いて 、ラットとマウスを用いて検 討した。

  1. マウ スに 拘束ストレスを 負荷すると、30分後より睥 臓や肝臓でインター口イキン (凡)―6 mRNA 増加 がみられ、その後血中IL‑6濃 度が上昇した。さらに、臓 器当たりの総IL−6mRNA量を比較したところ、

脾臓 より肝臓の方がはるかに多か った。IL‑6産生細胞を免疫 組織化学的手法で調べたとこ ろ、拘束ストレ ス時 は肝臓では肝実質細胞が、脾 臓では血管周囲の単核球が 主であった。以上の結果より 、拘束ストレス 時 のIL 6産 生 に は 肝 臓 の 、 特 に 肝 実 質 細 胞 が 重 要 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。   2. ストレスによる末梢ILー6誘 導における脳内IL‑1の役割を明らかにするために、ラットの脳室内に微量 のIL‑1を投与したところ、拘束ス トレス時と同様に末梢IL6の誘導が認められた。この時、IL‑1や腫瘍壊 死 因子(TNF)も 誘 導さ れる こと が確 認 され た。IL‑6IL‑1の誘 導については交感神経 節の遮断薬である ク ロリ ソ ンダ ミンの前処置で 抑制できたが、TNFについて は影響が見られなかった。一 方、これらの誘導 は副 腎摘除によって消失すること はなかった。以上の結果よ り、ストレス刺激は脳内IL−1を介して末梢サ イ ト カ イ ン の 誘 導 を 促 す こ と と 、 交 感 神 経 の 役 割 が 重 要 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。   3. スト レス 時に脳内で重要 な役割を果たす新規遺伝子 を見出すために、拘束ストレ スによって発現が 変化 する遺伝子をRNA arbitrarily primed−polymerase chain reaction法で検索した結果、35個の変動遺 伝子 が見いだされた。これら遺伝 子の構造と機能の解析によ って、ストレス時の末梢サイ トカイン誘導に 関わ る新たな脳内分子を明らかに する手掛かりが得られた。

  以 上のように、本研究は、脳に よる末梢サイトカインの産 生調節について、脳内関与分 子、サイトカイ     ―1127

(4)

ン産生細胞、及び介在経路を明らかにしたものであり、哺乳動物の神経科学及び免疫学への貢献が大であ る 。よっ て審査員一同は北村浩氏が博士(獣医学)の学位を受ける資格が充分であると認めた。

1128

参照

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