• 検索結果がありません。

原著 :秋 田大学医短紀要 8( 2):1 7 4‑1 8 2,200 0

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "原著 :秋 田大学医短紀要 8( 2):1 7 4‑1 8 2,200 0"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

( 7 8)

原著 :秋 田大学医短紀要 8( 2):1 7 4‑1 8 2,200 0

鷹巣 町在住 の在宅高齢者 ・障害者 の福祉機器 ・用具 と 住 宅改造 に関す る実態調査

TheFi e l dSt udyo nTe c hni c a lAi dsa ndHous eRe f bm oft heHo me ‑ ba s e dDi s a bl e dEl de r l ya tTa ka nos uTown

志* 治* 一 **

輔 ** 籾 日出樹 ** 大 諭樹彦**

Ta ka s hil s HI KAWA

*Ma

s a j iKI NJ O

*

sa i c hi W AKAYAMA

**

Shuns ukeKUDO

**

Hi de kiMoMI YAMA

**

Yu ki hi koOs AWA

**

は じめに

秋 田県では人口の高齢化が急速 に進み,近い 将来全国一の超高齢者県 になることが見込 まれ てお り,望 ましい高齢化社会の実現 を目指 して 様 々な取 り組みが必要 になって きている。特 に, 高齢者の自立促進や介護負担 の軽減 を図るため の在宅介護支援 システムの確立 は緊急 の課題 と なっている。

秋 田ウエルフェアテクノハ ウス研究会は,高齢 者 お よび障害者 のためのモデルハ ウスであ る

「ウエルフェアテクノハ ウス秋 田鷹巣」 を中心 に在宅介護 システムの確立 に向けた研究活動 を 展開す るとともに,その成果 を県内企業の福祉 機器開発 に結 びつけるための総合的な調査研究 を行 うことを目的に平成 8年1 0月に設立 された。

われわれは,福祉機器 ワーキ ンググループの

秋 田大学医療技術短期大学部

*作業療法学科

**理学療法学科

1 7 4

研究員 として,福祉機器 に関す る調査研究 を担 当 してお り,平成 8 年度 よ り, (1)在宅高齢 者や障害者の福祉機器 ・用具 ( 以下,機器)の 利用実態 とニーズ ・シーズ調査 , (2)各福祉 機器の評価, を継続 して行 っている。機器 に関 する研究 を行 うにあた り,使用実態 とニーズ を 把握す ることは,既存の機器の評価 と新 たな機 器開発のための貴重 な資料 ( シーズ) とな り不 可欠である。本論文では, 8年度か ら1 0年度 ま で実施 したニーズ ・シーズ調査 より得 られた結 果 について,事例紹介 を交 えなが ら若干の考察 を加 えて報告する。

鷹巣町の概況

鷹巣町は秋 田県の北部のほぼ中央,北秋 田郡 にあ り,内陸の田園の広が る盆地 に位置 してい

Ke yWo r d s: 在宅高齢者 ・障害者, 福祉機器 ・用具, 住宅改造,実態調査, 鷹巣町

秋 田大学医短紀要 8巻 2号

(2)

石川隆志/鷹巣町在住の在宅高齢者 ・障害者の福祉機器 ・用具と住宅改造に関する実態調査 ( 7 9 )

気候 は寒冷地であ り,冬 は 1月か ら 3 月まで は平均気温が氷点下 を下回 り,夏 は

30

度 を越す 猛暑 となることもある

産業 は,稲作 を中心 とした農業や縫製 ・木材 な どの製造業があ り,産業別就業人口では第三 次産業が5 0%を占めている。

また,古 くか ら交通の要所 であったことか ら, 国,県の出先機関や指導機関が多 く,北秋 田の 行政,文化の中心 としての役割 を担 って きた。

しか し,最近は人口の減少傾向が続 き,農業 の後継者の減少,若者の大都市や県外への流出, 少子化等,社会構造の変化の影響 を受け高齢化 が進 んでいる。平成1 2 年 1 月 1 日現在の人口は 2 2, 6 35 人 ( 男1 0, 81 7 人,女1 1 , 81 8 人)で,高齢 化率は25. 1%である。

鷹巣町では,21 世紀 に向けた高齢化社会への 対応 として , 「 住民参加型の福祉 の まちづ くり」

を推進 してお り,平成 4 年 に発足 した 「ワーキ ンググループ」 を中心 に,各種の福祉サー ビス を行政 と住民の共同作業で行 ってお り,その実 践 は国内で も広 く知 られている

方 法

予備調査 として,鷹巣町内の在宅高齢者 ・障 害者1 6 8 名 を対象 に,アンケー トによる高齢者等 実態調査 を実施 した。その結果 に基づ き,起居, 移乗,移動,排涯,入浴 な どで機器 を利用 して いるか,家屋改造 を行 っている, もしくは利用 や改造の希望がある方 を抽 出 した。その うち, 訪問の同意が得 られた 3 4 名 ( 男性20 名,女性1 4 名,平均年齢6 8 歳) を対象 とし,生活状況や福 祉機器の利用実態 を詳 しく知 る 目的で,研究員 2 名 と鷹巣町役場の保健福祉課職員 1名が訪問 して,観察 ・聞 き取 り調査 を実施 した。調査内 容 については表 1に示す。 また,許可が得 られ たケースについては,家屋状況や基本動作の状 況 を中心 にビデオによる撮影 も行 った。

結果および事例紹介

対象者の障害の主な原因疾患 は,脳血管障害 後遺症1 7 名,脊髄損傷 6 名,切断 2 名,慢性関

節 リウマチ

2 名,その他 7 名であった ( 表 2 )0

日常生活活動 ( 以下 ,AD L)の 自立度は,厚生 省の障害老人の 日常生活 自立判定基準 ( 以下, 自立判定基準)で,生活 自立 J ランクが 1 9 名, 準寝 た きり A ランクが 9 名,寝 た きり B ランク

表 1 調査内容

1

.年齢

2.

性別

3.

原 因疾患

4.

家族構成 ・家族数

5.

障害老人の寝 た き り判定基準 による自立度

6.

福祉機器 ・福祉用異の利用実態

7.

家屋改造の実態

8.

専門家 による助 言の有無

9.

問題点の認識の有無

表 2 対象者の主 な原因疾患 ( 人)

脳血管障害後遺症

脊髄損傷 下肢切断

慢性 関節 リウマチ その他

秋 田大学医短紀要 第 8巻 第 2

1 7 5

(3)

( 8 0 )

石川隆志/鷹巣町在住の在宅高齢者 ・障害者の福祉機器 ・用具と住宅改造に関する実態調査

3

障害老人の寝 たきり判定基準 による自立度 (人)

生活 自立

J

ランク 19 準寝たきり

A

ランク

9

寝たき りBランク 3 寝たき り

C

ランク

3

4

家族構成

一人暮 らし

本人 と配偶者の二人暮 し 配偶者以外 との二人暮 し それ以上

3 6 4

1

rJi

ii

が 3名,寝 た き りCランクが 3名であ った (

3)

。家族構 成 は一 人暮 ら しが

3

件 ,本 人 と配 偶者 の

2

人暮 らしが

1 6

件 ,本 人 と兄弟 (姉妹) あるいは子供や孫 との

2

人暮 らしが

4

件,それ 以上が11件 であった (表 4)。

対象者の一般情報 に加 え,利用 している機器 の一覧 と, それ らを生活行為別 に件数で まとめ た もの を表

5

に示す。杖 ,車椅子等 の移動 に関 す る機器が

5 3

件 と最 も多 く, 自立判定基準 の

J

ランクか ら

C

ラ ンクまで対象者の移動能力 に合 わせ た ものが使用 されていた。起居 ・床上では, 手動 もしくは電動ベ ッ ド, リーチ ヤー等

1 3

件, 排涯 ではポー タブル トイ レや洋式便座 カバ ー, 排准用 自助具等

8

件 ,入浴 では渡 し板 や入浴用 椅子,洗体用 自助具等

7

件 であった。他 の生活 行為 ではほ とん ど機器 は使用 されていなか った。

ただ し, リウマチの方 は各生活行為 にわた り, 何 らかの機器 を必要 としていた。 また,独居 の

2

名が, コ ミュニケーシ ョン関連機器 と して 緊急 通報装 置 を準備 していた。 自立判定基準

C

ランクの

3

名 は,起居 ・床上,移動以外 の機 器 は使用 していなか った。

次 に,家屋状況 ではあ らか じめバ リアフリー を意識 して設計 ・新築 した人が

3

名お り,段差 の解消や移動スペースの確保 な どが な されてい

1 7 6

た。家屋改造 は

2 3

件で行 われてお り,角材 を利 用 した簡単 な手す りか ら,多額 な費用 をかけた 増築 を伴 う本格 的 な改造 まで多様 であ った。そ の一覧 と改造個所 を生活空間別 にま とめた もの を表

6

に示す。改造内容 で最 も多か ったのは手 す りの設置で,改造個所 は浴室が

1 8

件 , トイ レ

1 7

件 ,廊下

1 2

件,玄関

9

件 とい う順 であった。

それ らの改造 は 自立判定基準

C

ラ ンクを除いた

J

か ら

B

ラ ンク全体 にわた り行 われていた

これ らの機器 の選択 や利用,家屋 の新築 ・改 造 に際 して,作業療法士や理学療法士,バ リア フリーに詳 しい建築家等 に よる助言 を受 けた も の は

1 7

件,受 け なか っ た もの は

1 7

件 で あ った (表 7)。助言提供者の多 くは医療 関係者 お よび 紹介 された建築家であ り,継続的な フォロー を 受 けているケースは少 なか った。助言 を受 けな か った

1 7

件 の うち独 力 で情 報 を得 たケ ー ス も あ ったが,相談す る職種や窓口がわか らなか っ た との意見が多かった。 また,機器や家屋改造 について,本 人や家族が何 らかの問題 を感 じて い る ものは

21

件 と過半数 を超 していた。その概 要 については表

7

に示すが,電動車椅子 や天井 走行 リフ トの性 能面での不満 な ど機器 自体 の問 題,不適切 な手す りの位置や浴室, トイ レの改 造 な ど対象者 に適応 してない とい う問題,せ っ

秋田大学医短紀要 第 8巻 第 2号

(4)

82坤ilRdh

表 5 対象者の一般情報および利用 している福祉機器 ・用具の件数 と内容

慧 ≡ 空

ここ主,i.I

.. ・: ̲ ̲ : { L :

匪 二二二二一‑二 」

‑ 悪一十̲ ̲̲ ̲さ坐̲ ̲̲'

L 15 ̲〝L j一 ' A A i l i M ヰ

‑ ± 二 二 土 二二ト ー 1 1 ペグJ L W , 〜

一L一 一 W‑

1 屋内用車椅子. リ ー ‑ チャ ー 屋外用

車椅子.屋外用電動三輪車,改造自

̲ ‑ L ̲ ̲ ̲; 車椅子, 改落首転

一‑ 一W′

墜乙̲ 電

ピヱF.至旦旦⊇き7Fl=̲9之些摩翠‑ ̲̲̲̲̲

椅子. リ

クライニング式電動車椅子.電動ヘッド,天井走行リ

̲ 装具

L旦旦旦些具 ̲̲

二⇒ ‑ ≠

二巨

・ナ 千 草 土 計

l

F TE暦 妄 二

l

二:lT二 =^= *1 ‑

整雷撃婆輿 測 準璽兜 隻禦 望旦坦 車椅子,シャワーチェア,浴槽内滑りどめマット,7カー 屋内用車椅子,屋外用車椅子,電動ベッド,エアマットトランス ファーボード

憂垂頭重葺†

q T

tTi)o o)

# j i j t L; B g

(8) )

(5)

表 6 家具改造の箇所 と内容

左片麻垂)ー 土

Ty

l

完 工 王

. ト1

葦監

三 宝 ]≡

ララ病て画面薩曹「 ‑I

工 二 二 :」

聖 二茸 F = {

士 ±

エ + + 寸 土 ± 士 ⊥

・ F 五二 二7 ニl l

十 十 ⁚ 十十 十十 工

の手すり.ト イレ

内前手すり(和式).浴室内入り口縦手すり.

l l l

/

浴室(見やすいスイッチ).台所(手す

レ手すり.浴室手すり,浴室内格子

イレ手すり,浴室手すり,ベッド手すり,浴室内

1‑ ・=‑ J

。寒 遠歪 要 覧 一 ≡ 二

] 二 ≡ 三

(82 )

))tLoo;

(6)

EEIjC82坤

トー

‑」

(.D

表 7 福祉機器 ・用具 と家屋改造への助言の有無 ・問題点の認識 と内容 ・調査等による特徴把握 と助言指導内容

量 産 点の内容 内環境の未整備 , 」昼型と そ ̲ h ̲ J u J . 姓担空風と 吸星重量

ii ii i i ii i 沼は

監 ∃ 芸 ]

1

70̀c

v A ( 左片麻 痩)

動ベッ ド の機能を , 5用し ソ フ ァ ‑がわL ) に 使用趣味活動を 持っ て 間がかかり ながら も自 分なり 1 = 家事を こ f d : し て いる, 旅行な ど タ 捷極的 関では自 分の能力に合わせて 後ろ 向き で 屋内 へ. 屋内 では装

. = 一 室 過 示使[ て た ‑ ( ‑ L T i . 雇え憂さ 窟斉頁便

r = ピ ‑ チサン ダルを 使用. 買い物用力 ‑ト 等を 有効活用 でバリ ア フリ ーを 意識し て 建築自 立度を 維持する 1 = め機器導入 蔓! ヒ 萱 ̲ 7 2 を 王 吐垂 . ̲ 丞虞や些些で役割を 持っ ている一 一 ̲ W ー ア フ リ ーの観点で 増築済みだが, 段差や階段手すL ) の長さ など 施 者が対応で き ていな い部分有り

や改造へのニーズはあっ たが. 知識がな かっ T = 用で外出の機会が増え明る く な っ た

が大工で 本人の能力に合わせた改造を 実施. 玄関の出入り は靴の 脱に合わせて工夫. シ ルバーカ ーを 外出時に 有効利用 中で 援助さ れて いる 部分有り

リ ア ブ リ ‑を 考慮し f = 住宅. 降雪対策, 玄関に おける ペダル式昇降

洋式の生, %スタ イ ル‑の 統一移動空間の環境整備,

ま ホームヘルパーの導入も 必要. 円背に 合わせた

屋内環境の整備

滑り 止めT j Z ヒ ̲ q ? ̲ gI J t

浴室, ト イ レ は洋式化と 暖房の設置が望まし い. 過剰

努力傾向への指導 男 弓70̀c

v A ( 左片麻 痩)

声 串

柿 二 二

片麻 痩)

巨 吾 キ ト 術後(下肢障害)

:慧 l J

̲ ̲LJ̲ ニューロパテー 左大 . 片蘇痔,パーキソニズ

Ei i

墜堕甥 (四割 支晦座主 姓旦堕1王娘壁書 ) 墜癖 ̲̲ "̲̲̲̲

椎損傷 (下肢障害) 行障害

673TSSAA一淫 諾 窪,2 1 二 .L旦 嘩 ;

̲ 卜 6L ,7̲L ̲ 蛋 .Lf:

L二聖 I A; :‑

三等 」 工

J「 1 p T

・ 、F t > r

=庫琵 1 垂 が排准後の後始末が大変 一 一 一T ・

込み式浴槽と ト イ レ が使いにく い

1

逢霊へのシ ャ ワ 二王 壬 Z と至 壬L ) ̲ q 2 重 込土

狂塾重量些指導̲‑̲

ヒ イ レ 内手すり など本人に合っ て い

ない部分につい二旦貫 ー̲

ト イ レ ‑の i , ヤ ワ ー便座の串入

. ■. )1軒̲垢j t の

■1

体の改造

将来的な

浴室改造への助言 に対してディサービス利用を助言

l

‥ 川 : . 1 ∴

杢A型能力にあ7̲li企奉呈土星連̲‑ ̲̲̲ 浴室への手すりの設置

F1f't;への曙房東面 六二蒲面高さ面面垂と葡重 み台の導入

星室¢筆全盤里鯉 旦煙いにくさに71LT取茎 イL/‑の曝房設置

J室への車すり選軍や塗捜些楚毒

置9ifBL=星型茎昼辛の導入 互艶 埋草仁畢量蟹遇塵里孝̲A̲̲ ̲̲̲

将来的にはポータブルトイレの設置が必要

運董塁麹 蓑 改造部分を 有効に 姦 蒜 歪 活用する も 過剰

努力傾向

.民営借家0:

し たト イ レ と , 衿 室を 使え て いな し

. ' t‑

、 ̲ : ‑・ ・ ・ .‑

・= ∴

L . ... .

I ̲ー ∴ ∴ 一 :

" ‑ ニー

ベッ ド を 希望し

ていたが.現時点の能力では不要,不随意運動にL手すりや家具のEil定寝室とイレの間取り

進行性の

疾患で疲労しやすく動作の省力化が必要 民営借家のため改造には限界あるも.負荷軽減の1=めに生活動作の洋式化 将来的には施設入所も

不適応部分への助言,浴室は妻の介助に限界有りディサービスの利用を助1 現在環壁上卦ナ旦介助方′圭の亀重し̲聖/旦リの2Ba墜聾虹 ̲̲‑

線 の 長 さ 段差 .移 動 に努 力が 必

家 で改 造 困難 .和 洋折 衷 で移 動 に努

力が必

1 有

l . :'Tl‑ . bL:: ‑T1‑

:' 1. ':.. ・A;I:i;:.:::.::.'l<E.:∴ .:. , I

l l

JL

q Tt )o 3 t e k L; ( 8

3

)

(7)

・ 8 4、 石J I 健 吉/鷹巣町在住の在宅高齢者 ・障害者の福祉機器 ・用具と住宅改造に関する実態調査 か く改造 した個所 で も移動距離が長い,冬期間

は寒 いなどの理 由で有効 に使えていない とい う 問題.機器や改造 に対 して対象者や家族が適応 で きていない等の問題があった。冬期間におけ る居室 とそれ以外のスペース ( 廊下 ・トイ レ ・ 浴室 な ど) との温度差 による活動量 の低下や, 積雪 による外出機会の減少 は寒冷地特有の問題

として対象者 に共通 していた。

全対象者の訪問調査で把握 した特徴 と, 指導 ・ 助言内容 を表 7 に付記 した。対象者の認識以外

にも様 々な問題があった反面,対象者が経験 の 中で,様 々な工夫 を していることもわかった。

以下 に,生活上の工夫,機器や改造が適応 し ている事例,適応 していない事例,機器や改造 が必要 な事例 について紹介する。

1)適応 している事例

事例 7 ( 女性,7 2歳, 自立判定基準 J‑ 1) 脳血管障害後遺症で左片麻痔がある も ,ADL は自立 してお り,家事等の生活観連動作 も行 っ てお り主婦 としての役割 を碓持 していた。生活 範 囲 も広 く屋外での移動 はシルバ ーカーを利用 していた。大工である夫 との二人暮 しで,手す り取 り付 け等の改造 は本人の能力 に合わせて夫 が材料 を購入 し行 っていた。玄関の出入 りは, 靴 の着脱動作 の違いによ り,出る時は座位で靴 を履いてか ら立 ち上が り,入 る時 には手す りを 利用 し立位の まま靴 を脱 いで とい う方法であっ た。

事例1 3 ( 男性 ,49歳 ,自立判定基準 J‑ 1) 糖尿病性 ニューロパテ一による,左大腿部切 断があ り,車椅子生活であった。ADLは屋内, 屋外 とも自立 していた。家族 は妻 との二人暮 ら しであ り,仕事 を持 っている妻 にかわ り,家事 等 の役割 を担 っていた。

機器 は車椅子 と昇降式ベ ッ ドがあ り, トイ レ, 廊下への手す りが設置 されていた。廊下への手 す りは,歩行訓練のための平行棒代わ りにも利 用 していた。 また,浴室内 にはケース 自身のア イデアによる本人が入浴する時 にのみ使用で き るような取 り外 し可能 な渡 し板が用意 されてい た。屋 内は車椅子で移動 で きるようにスロープ が設置 されてお り,台所 は車椅子での使用 を考

1 8 0

えて,流 し台 とダイニ ングテーブルを併用 し, 必要 な調理用品 を手の届 く範囲 に配置 していた。

事例34 ( 女性, 85歳, 自立判定基準 C‑ 2)

脳血管障害後遺症で左片麻痔があ り,息子 と の二人暮 しであった。ほぼ寝た きりで ADLは全 介助状態 だが,エ アマ ッ トを導入 してか ら裾創 がで きな くなった。臥床時間が長 く,排涯はオ ムツを使用 しているが,ポータブル トイ レでの 排涯の確立や座位時間の延長等,獲得で きそ う な行為 もあ り,機能維持拡大のためのホームプ ログラムが必要 と思われた。

2 )適応 していない事例

事例 5 ( 男性,6 6歳, 自立判定基準 J‑ 1) 脳血管障害後遺症で左片麻痔があった。妻 と の二人暮 しで,機器 は使用 していなかった。 4 年前 に将来 に備 えバ リアフリーの観点で増改築

してお り,屋内外 にスロープ, トイ レ,浴室, 階段 などに手す りを設置 した。 しか し,敷居 の 段差があ り,階段手す りも上 りきった平面部分 の手前で切 れているな ど,バ リアフリーの観点 に施工 業者 が うま く対応 で きてい ない部分 が あった。

事例1 7 ( 女性,86歳, 自立判定基準 J‑ 2) 神経痛 による下肢障害であった。ADLは屋 内, 屋外 とも自立 していた。 家族 は夫 との二 人暮

らしであった。

機器は介助用車椅子,浴室滑 り止めマ ッ トが あ り,増築で トイ レ,浴室,台所等 に手す りを 設置 していた。 また,浴室の湯沸か しスイ ッチ は,高齢者 にも表示が見やす く使用 しやすい も のであ った。増 築部分 の移動 動作 は しやす く なったが, トイ レが寒い,玄関の段差がある, ベ ッ ドのマ ッ トレスにふ とんを重ねているため, ベ ッ ドのギ ヤツジアップや高 さ調整機能が制限 され,本人に適応 していない とい う問題 もあっ た。玄関の段差が大 きく,踏み台か椅子の利用 が望 ま しいケースであった。屋外移動時 には, 手押 し車 を歩行補助 に利用 していた。

事例27 ( 男性,7 5 歳, 自立判定基準 A‑ 1) 頚部硬膜外腫壕 による両下肢障害があった。

知人のヘルパーか ら助言 を受け,玄関横 スロー プや廊下 は手す り設置など改造済みであったが,

秋田大学医短紀要 8 2

(8)

石川隆志/鷹巣町在住の在宅高齢者 ・障害者の福祉機器 ・用具と住宅改造に関する実態調査

(85)

段差が多い,本人のソファーが低 く立 ち上が り

に くいな ど,本人に適応 していない部分 もあっ た。浴室は渡 し板 や浴槽内のブロック,すの こ を利用 していたが,妻のみの介助では危険が予 想 され,入浴 はデ イサー ビスの利用が望 ましい と考え られた 。 3 世代家族で同居 とはいえ,完 全 に生活空間が分離 してお り,家族の介護能力 の評価が不十分 なケースであった。

3 )機器や改造が必要 な事例

事例1 0 ( 男性 ,6 3 歳, 自立判定基準 J

‑ 1)

脊髄腫蕩術後の両下肢障害があった。ADLは 屋 内はい ざ りと松葉杖,屋外 は松葉杖 を使用 し 自立 していた。家族 は 3 世代で 6 人であった。

機器 は松 葉杖 のみで,改造 は行 われ てい な かった。寝室か ら トイ レ,浴室への廊下はいざ りで移動 しているが,動作 に過度な努力 を要 し 時間がかかることよ り,廊下への手す りの設置 と浴室への手す り設置, シャワーチェアの導入 が必要 と思われた。松葉杖使用 による行動範囲 の狭小 化 と移動 能力低 下 に対 して,砂 利道 に なっている玄関か ら道路 までのアプローチの整 備や電動三輪車や電動車椅子の利用が有効 と思 われた。

考 察

今 回の訪問調査の対象者 は,機器や改造 に対 してニーズのある方であったため, 在宅高齢者 ・ 障害者 の実態の一面が明 らかになった と考 える べ きであ り,全体 を反映 した ものではないか も しれない。 しか し,実際 に訪問 し機器や改造の 実態や対象者の基本動作能力の評価 を行 うこと により,在宅高齢者 ・障害者 と家族が生活や介 助の工夫 を している反面,数多 くの問題 を抱 え ていることがわかった。それ らは機器や改造の 問題,適応 の問題,対象者 を取 り巻 く家族や社 会資源の問題 などであ り, さらに,寒冷地 とい

う地域特有の問題 もあった。

利用 されている機器 は自立度 にかかわ らず主 に移動動作 に関係す るものが多 く,杖や車椅子 の存在が在宅高齢者 ・障害者 にとって生活空間 拡大のための重要 な役割 を果た していることが 明 らかになった。屋外 においては,電動三輪車

秋田大学医短紀要 8 2

の導入が,歩行能力の低下 した対象者 にとって 有効 な移動手段 と考え られた。家屋改造では, 入浴,排池 ,移動 に関わる部分で行 われてお り, ADLで も難易度 の高い活動場面 での能力補助

としての改造の必要性が明 らかになった。

自立判定基準の B,C ランクについては,対 象者が少 なかったことより,機器や改造の必要 性や適応 についての考察 には注意が必要である が,今 回の結果では機器の利用 は起居 ・床上 と 移動 のみであ り,ケースや家族か らは介護方法 や介護負担 に関する問題があげ られたことか ら, 介護方法の指導や能力低下 を防 ぐホームプログ ラムの導入,訪問 リハ ビリテーシ ョンや適所 リ ハ ビリテーシ ョンなどの対応が必要 と思われた。

機器の選定や導入,家屋改造 にあたって,専 門家の助言 を受 けた人は半数に過 ぎなかったこ とか ら,情報提供の方法や中間ユーザー として の専 門職の関わ り方 に検討が必要 と思われた。

作業療法士の機器 に対す る役割 は,①利用者の 担当 として,本人お よびその家族,介助者 に直 接働 きかけ,機器導入か ら活用 まで を支援する セラピス トの役割,②機器 に関する専 門職 とし て,他職種,機器関連企業 ・機関 ・団体等 に対

して,機器利用状況の提供や研究 ・開発への助 その ため,機器 の直接 の利 用者 ( エ ン ドユ ー ザー)である対象者のニーズ を把握 した上で, その有効 な活用や適応 を援助す ることが求め ら れる。 また,住宅改造 にあたっては,計画段階 か らチームの一員 として建築士,施工業者 に資 料や情報 を提供するなど,対象者の生活 を考慮 し,家族 を含 め た援助 を行 う役割 を担 ってい る

2'

。 さらに,介護保険制度下では, これ まで の福祉用具供給 システムに 「 高齢障害者への福 祉用具貸与 (レンタル)な らびに購入費支給サー ビス」 とい う新 しいシステムが加わ り,福祉用 具の供給 システムが これ まで以上 に複雑化,多 様化すること

3

、が指摘 されてお り,これ まで以 上 に制度 を理解 した対応が求め られる。

機器利用者 と専 門家 との関係 は点 としての関

わ りではな く,継続的な線 としての関わ りが必

要であるが,今 回の結果 より専 門家の関与が少

1 81

(9)

( 8 6 ) 石川隆志/鷹巣町在住の在宅高齢者 ・障害者の福祉機器 ・用具と住宅改造に関する実態調査

ない こと,助言 を受けた人で も一時的な関わ り でフォローア ップはほ とん どなされていない こ とがわかった。作業療法士 について述べ ると, 調査時点では鷹巣町内の医療機関や保健 ・福祉 施設 には勤務 してお らず,近隣の市町村 にも少 ない とい うマ ンパ ワーの問題があった。 また, 関わ りがあって も病院勤務のセラピス トとして の関わ りであ り,継続的な関わ りはで きていな かった。病院や施設 に勤務す る作業療法士が在 宅の高齢者 ・障害者 に十分関われていない とい う点は,鷹巣町のみではな く全県的 に共通す る 問題 と思われる

4

。在宅 に関わる作業療法士や 理学療法士が まだ不足 しているとい う実態 もあ るが, 介護保険制度が発足 し, 訪問 リハ ビリテー シ ョン等で在宅高齢者 ・障害者の援助 に関わる 作業療法士や理学療法士 も少 しずつ増 えて きて いる。加齢 に伴 う機能低下や各種疾患 による障 害 を生活上の障害 ととらえ,その対応策 を立案 し援助する作業療法士や理学療法士の責任 は, 今後 ます ます重大 になってい くと思われる。一 方,今 回の調査 で, 自立度 にかかわ らず,機器 や改造が利用 されていることが明 らかになった が,介護保険制度では,自立度の高い高齢者 ・ 障害者が,受け られるサー ビスには限度がある

そのため,機器や改造の導入や適応 について ど の ような形で援助 してい くかについては,今後 費用の面 を含めて検討が必要 と思われる。

在宅での生活支援 においては,家族の介護能 力 も含 めた将来起 こ りうる変化 をも見通 した総 合的な関わ りが重要 と思われる。そのためには, 単一の職種がかかわるだけでは限界があ り,今 回の訪問スタッフの ような多職種 による支援体 制の確立が必要 と考える。例 えば,地域の訪問 看護ステーシ ョンや在宅介護支援 セ ンター と病 院,施設 に勤務す る リハ ビリテーシ ョンスタッ フとの連携強化が望 まれる。 また,医療保険や 介護保険では十分 にカバーで きない部分 につい ては,市町村 の福祉 サー ビス充実への働 きかけ 午,鷹巣町における 「 手す り取 り付 け隊」 のよ

1 8 2

うなボランテア活動への参加等,専 門家 として 積極 的 に関わってい くことも大切であろう。

尚,今 回の訪問調査 によ り,必要性があ り対 応可能 と判断 されたケースについては,保健福 祉課の職貞 を通 じて,社会資源の活用 などの対 応が取 られた。

(この研究は通産省NEDOの研究助成 を受 け た。)

調査 にご協力いただ きましたケース をは じめ 町役場職員,町民の方々に感謝 申 し上げます。

本論文の要旨は第 3 2 回 日本作業療法学会 ( 栃 木)お よび第 8 回秋 田県作業療法学会 ( 協和 町) において報告 した。

引用文献

1 )園田啓示 ( 1 9 9 9 ) 作業療法士の役割.古川 宏 ・黒岩貞江 ( 編)義肢,装具, リハ ビリ テーシ ョン機器,住宅改造.協 同医書 出版 社,1 6 6‑1 8 4

2) 島田克充 ( 1 9 9 9 ) 住宅改造 と作業療法.古 川 宏 ・黒岩貞江 ( 編)義肢,装具, リハ ビリテーシ ョン機器,住宅改造.協 同医書 出版社 ,2 9 5‑2 9 7

3)黒田大治郎 ( 20 00)介護保険法 と身体障害 者福祉法の視点か らみた福祉用具の課題.

作業療法 ジャーナル 3 4(4) .2 7 5‑2 8 3 4)石井良和 ・石川隆志 ・高橋恵一 ( 20 00)介

護保険制度施行 に係 る実態調査 ・結果報告.

第 9 回秋 田県作業療法学会口演 参考文献

1)鷹巣町 ( 2000)たかのす町勢要覧

2 )秋 田 ウ ェ ル フ ェ ア テ ク ノハ ウス研 究 会 ( 1 9 9 7 ) 平成 8 年度秋田ウェル フェアテク ノハ ウス研究会調査研究報告書

3)秋 田 ウ ェル フ ェ ア テ ク ノハ ウス研 究 会 ( 1 9 9 8) 平成 9 年度 ウェルフェアテクノハ ウス研究会調査研究報告書

秋 田大学医短紀要 第 8巻 第 2

表 6 家具改造の箇所 と内容 左 片 麻 垂 )ー 土一Ty l 完 工 王.ト1葦監三宝]≡ララ病て画面薩曹「 ‑I 工 二 二 :」聖 二茸F ={士±「「 エ++寸土±士⊥・F 五二 二7 ニll 十十⁚十十十十工 の手すり.ト イレ 内前手すり( 和式 )

参照

関連したドキュメント

[r]

3.. これ らは,学生 が 自分 自身 の 日常生活の中で, または奄法以前 の授業 の中において知 ることがで きる 項 目である.高橋 5) が,経口与薬に関する学生の レディ

山内 7) による障害者理解 の枠組みに,今 回 の障害者 福祉援助実習での学生 の実習前 と後 の印象 の変化を以 下 のよ うに当てはめて考 えることがで きる.障害者, 相手 を理解 しよ

スキ ンケア 7) は白癖症,裾癌 の有無 を確認. 栄養状態の推移 :治療の経過中に,利尿剤や栄養 剤,血液製剤 の投与 を行 った症例 はなか った.治療 期間

さて,表 4‑1 の推定結果を見ると,パラメター推定値の中に統計的に有意ではないものが少な からず含まれている。(後述・表

ある。また、MCNP

ing・以下ADL)において,上肢を用いた動作中に息切

[r]