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原著 :秋 田大学医短紀要 8( 2):1 2 2‑1 2 6,2 0 0 0

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原著 :秋 田大学医短紀要 8( 2):1 2 2‑1 2 6,2 0 0 0

開腹下胆嚢摘 出術 と腹腔鏡下胆嚢摘 出術 の比較検討 一 手術侵襲度 と術後 回復過程 の観点か ら‑

Compa r a t i veSt udy on Ope r a t i vel ns ul t

a nd Pos t ope r a t i veRecove r y bet we e n Ope n Chol ec ys t ec t omy a nd La pa r os copi cChol ec ys t ec t omy

伊 藤 登茂子* 浅 沼 義 博 * 焼 山 晶 子 * 杉 山 令 子* 小 野 正 子 * 菊 地 郁 子 **

安 藤 秀 明* **

Tomoko I TOH* Y os hi hi r o As ANUMA*syoko KEMUYAMA*

Rei ko SuGI YAMA*Mas a ko ONO*I kuko KI KUCH

I

**

Hi dea kiANDOH

* 辛 辛

は じめに

腹腔鏡下胆嚢摘 出術 ( 以下腹腔鏡下胆摘 と略 す)は ,1 9 8 9 年 Re d di c k ら1 ' ,pe r i s s a t ら

21

によ り初 めて報告 され,翌年 には山川 ら

3)4

、によっ て本邦 で も施行 されるに至 った手術術式である。

秋 田大学第 1外科 において も ,1 9 9 3 年 2 月 よ り, この腹腔鏡下胆摘 は開腹 下胆嚢摘 出術 ( 以下, 開腹 下胆 摘 と略 す) に代 わ って施 行 され てい る

5)6)

そ こでわれわれは,胆嚢結石症 を始め とす る 胆嚢疾患 に対す る開腹下胆楠 と腹腔鏡下胆摘 を 手術侵襲度,術後治療経過,術後 回復過程 の観 点 よ り比較検討 したので報告す る。

対象 と方法

1 9 8 9 年 7 月 〜1 9 95 年 9 月 に,秋 田大学第 1 外 科 で胆嚢結石症等 に対 して胆嚢摘 出術 を施行 し た1 2 6 例 の うちか ら, 無作為 に抽 出 した7 4 例 を対 象 とした。

この うち,前半 ( 1 9 8 9 年 7 月か ら 1 9 9 3 年 1 月) の 41 例 に対 しては開腹下胆摘 が,後半 ( 1 9 9 3 年

2 月 〜1 9 9 5 年 9 月)の 3 3 例 に対 しては腹腔鏡下 胆楠 が施行 された。そ こで,前者 を開腹下胆摘 秤,後者 を腹腔鏡下胆摘群 とし,入 院中の診療 記録 お よび看護記録 を もとに,主 に手術侵襲度

と術後 回復過程の観点 よ り比較検討 した。

手術侵襲度 の評価 として,入 院 日数,手術 時

秋 田大学医療技術短期大学部

*看護学科

**秋 田大学医学部附属病 院 4 階乗病棟

***秋 田大学 医学部第 1外科

Ke ywo r ds: 腹腔鏡下胆嚢摘 出術

開腹下胆嚢摘 出術

手術侵襲度

経 口摂取

(2)

間,出血量,白血球数お よびアラニ ンア ミノ ト ランス フェラーゼ ( ALT)の推移 を検討 した。

術後治療経過の評価 としては,胃チューブの抜 去 日, フォー レ抜去 日,腹腔 ドレーン抜去 日, 酸素投与期 間,輸液投与期間 を検討 した。 また 術後回復過程の評価 として,術後始めての排便 日,水分摂取 日,食事 開始 日,歩行開始 日を検 討 した。

開腹下胆摘群 41 例 の内訳 は,男 2 0 例,女 21 例, 平均年齢 は 5 3. 1±1 4. 6 歳であった。腹腔鏡下胆 摘群 3 3 例の内訳 は,男 1 7 例,女 1 6 例,平均年齢

は 5 1 . 0±1 2. 8 歳であった。

両群の原疾患 については,開腹下胆摘群 41 例 中 3 8 例,腹腔鏡下胆摘群 3 3 例 中 3 0 例が胆嚢結 石症であった ( 表 1)0

なお両群症例 とも術後合併症 は認めなかった。

また腹腔鏡下胆摘 で手術途 中か ら開腹 に移行 し た症例 はなかった。結果は,平均 ±標準偏差で 示 した。 両群の有意差検定 はSt ud e nt ■ st ‑ t e s t にて 行 い,危険率 p <0. 0 5 を有意差あ りとした。

結 果

1. 手術侵襲度の評価

入院 日数は開腹下胆摘群 2 5±8. 1 日, 腹腔鏡下 胆摘 群 1 7±8. 9 日であ り,腹腔鏡下胆摘群 で有 意 に短縮 していた ( 表 2)。 さらに,術前入 院 日数では各 1 1±4. 8 日 , 8±7. 2 日と差 はなかった が,術後入院 日数は各 1 4±6. 1 日 , 9±5. 0 日で あ り,腹腔鏡下胆摘群で有意 に短縮 していた。

また手術時間は両群間に差 は認めなかったが, 出血量 は各 9 0 ±8 0. 5 m9 ,3 0±4 2. 2 mBであ り,腹 腔鏡下胆摘群で有意 に減少 していた。

白血球数の変動 については,診療記録 中に検 査 データが確認で きた各 1 6 名 について検討 した ところ,開腹下胆摘群,腹腔鏡下胆摘群の術前 値 は各 5 5 5 0±4 2 8. 8/ m d, 61 6 3±3 9 7. 1 / m r Bで あ

り, ともに術後 1‑4 日で有意 に増加 していた。

しか し術後 5‑7 日では両群 とも術前値 に回復 していた ( 表 3 )。

ALT の変動 については,前項 と同 じ各 1 6 名 について検討 した ところ,開腹下胆摘群では術

表 1 対象の背景

開 腹 下 胆 摘 群 腹 腔 鏡 下 胆 摘 群

胆 嚢 結 石 症 3 8 3 0

胆 嚢 ポ リ ー プ 2 2 1

アデ パ オマト ーシ 心ス

急 性 胆 嚢 炎 1

表 2 手術侵襲度

開 腹 下 胆 摘 群 腹 腔 鏡 下 胆 摘 群 t 検 定

4 1例 3 3 例 p値

入院日数 ( 日) 25± 8. 1 17± 8. 9* 0. 0003 術前入院日数 ( 日) 11± 4, 8 8± 7. 2 0. 0823 術後入院日数 ( 日) 14± 6.1 9± 5. 0* 0. 0003 手術時間 ( 分) 97± 27. 9 1 12± 44. 3 0. 0801 出血量 ( nQ ) 90± 80. 5 30± 42. 2* 0. 0002

* p < 0・ 05

(3)

( 28) 伊藤登茂子/開腹下胆嚢摘出術 と腹腔鏡下胆嚢摘出術の比較検討

表 3 白血球数の変動

( / mm

3)

術 前 1 ‑ 4 術 後 日 5 ‑ 7 術 後 日 開 腹 下 胆 摘 群 5550 7050 * 5250

n ‑1 6 ± 428. 8 ± 850, 7 ± 399. 4 腹 腔 鏡 下 胆 摘 群 6163 8281 * 6131

*術 前 値 に 対 し p< 0. 05 表 4 A LTの変動

( T U/P)

術 前 術 後 術 後

1 ‑ 4 日 5 〜 7 日 開 腹 下 胆 摘 群 26 48 * 51

*術 前 値 に 対 し p< 0. 05 表 5 術後治療経過

開 腹 下 胆 摘 群 腹 腔 鏡 下 胆 摘 群 t 検 定

4 1例 3 3 例 p値

胃チューブ抜去 日 ( E ] ) 2± 0. 8 1± 0. 5* 0. 0004

フォー レ抜去 日 ( 日) 2± 0. 8 1± 1. 2 0. 0880

酸素投与期間 (E ]) 輸液投与期間 (冒)

1± 0. 9 6± 1. 9

1± 0. 8 3 ± 1. 3*

0.1956

< 0. 0001

*p< 0・ 05 表 6 術後 回復過程

開 腹 下 胆 摘 群 腹 腔 鏡 下 胆 摘 群 t 検 定

4 1例 3 3 例 p値

術後初めての排便 日 ( 日) 3 ± 1. 3 3 ± 1. 4 0.1278

水分摂取 日 ( 日) 3± 0. 9 1± 0. 8* < 0. 0001

* p< 0. 05

(4)

前 2 6±4. 4U/ β,桁 後 l‑ 4 日 48±9. 9U/ β, 術後 5‑ 7 日 51±8. 1 U/ Bであ り,桁 後 l‑4

日 , 5‑7 日ともに術前値 に較べ有意 に増加 し てい た ( 表 4 )。一 方,腹 腔鏡下胆摘 群 で は各 1 9±2. 9 U/ 9 ,3 3±1 9. 6 U/ 9 ,2 9±5. 5 U/ Q で あ り,桁後 l‑4日目のみが術前値 に較べ有意 に 増加 していた。

2. 術後治療経過の評価

胃チ ューブ抜去 日は,開腹下胆摘群 2±0. 8 日, 腹腔鏡下胆摘群 1±0. 5 日であ り, 腹腔鏡下胆摘 群で有意 に短縮 していた ( 表 5 )。

一方, フ ォー レ抜去 日,腹腔 ドレー ン抜去 日, 酸素投与期 間には,両群 間に差 は認めなかった。

輸液投与期 間 については,開腹下胆摘群 6±

1 . 9 日,腹腔鏡下胆摘群 3 ± 1 . 3 日であ り,腹腔 鏡下胆摘群で有意 に短縮 していた。

3. 術後回復過程 の評価

水分摂取 日は開腹下胆摘群 3±0. 9 日, 腹腔鏡 下胆摘群

1

±0. 8 日であ り, 腹腔鏡下胆摘群で有 意 に短縮 していた ( 表 6 ) 。

食事 開始 日も,各 3 ± 1 . 1 日 , 2±0. 9 日であ り,腹腔鏡下胆摘群で有意 に短縮 していた。

術後姶 めての排便 日は,各 3 ± 1 . 3 日 ,3±1 . 4 日と両群 間 に差 はなか った。

考 察

腹腔鏡下胆嚢摘 出術 は,本邦で は 1 9 9 2 年 に保 険適用が な されて以来急速 に普及 して きた術式 である。従来の開腹下胆嚢摘 出術 と較べ て,腹 壁切 開創が小 さい こと,腹壁 の筋 肉 を切離 しな い ことな どの長所があ り,そのため患者側か ら は入院期 間が短縮 で きる,手術後の回復 が早 い, 創 が小 さいので美容上す ぐれてい る等 の利点が

を自験例 において検討 した

手術侵襲度,術後治療経過,術後 回復過程の いずれ において も腹腔鏡下胆嚢摘 出術 が開腹下 胆 嚢摘 出術 よ りす ぐれ てい る こ とが 明 らか に

なった。

まず手術侵襲度の評価 では,術後入 院 日数が 腹 腔鏡 下胆摘群 で 9±5. 0 日と有意 に短縮 して お り, これが入院 日数の短縮 につ なが った と考

え られる。入 院 日数の短縮 は,患者や家族の生 活 にとって 日常性 の早期 回復や早期社会復帰 に もつ なが ることと考 える。薮下 らの腹腔鏡下胆 嚢 摘 出術 を受 け た患 者 へ の 調 査 結 果 に よ る と7 ,9 6 例 の 87. 5% の患者が 「 早 く退 院で きて 満足 してい る」 と回答 している。 この ことか ら ち,手術侵襲が少 ない ことは,患者 の身体 的 ダ メージが少 ないばか りではな く,心理 ・社 会的 ダメージ も開腹下胆摘 に較べ て少 ない といえる。

また白血球数の変動 をみ る と,両群 とも術前 値 に較べ て術後 1‑4 日で有意 に増加 していた が,術後 5‑7 日では術前値 に回復 していた。

す なわち,胆嚢摘 出術 自体 は開腹手術 で も腹腔 鏡下手術 で も,手術侵襲度 としては比較 的軽 く, 術後 1 週以内 には炎症反応 は鎮 静化 してい る も の と推察 される。

またALTの変動では,開腹 下胆摘群では術 後 1‑4 日, 5‑ 7日とも術前値 に較べ て有意 に増加 していた。一方,腹腔鏡 下胆摘群では術 後 1‑4 日では増加 していた ものの,術後 5‑

7日では術前値 に回復 していた。ALTの増加 は,胆嚢摘 出の操作 時 に肝臓 を圧迫 した り,術 中の一時的な肝血流 の低下 によって発生す る と 加が開腹下胆摘群 に較べ て早期 に改善す ること は,肝臓 に対す る手術侵襲が よ り少 ない ことに よる と考 え られる。

術 後治療経過の評価 として,手術 時体内 に挿 入留置 された各種 チューブの抜去 日と酸素 お よ び輸液の投与期 間 を検討 した。 胃チ ューブ抜去 日は開腹下胆摘群で 2±0. 8 日, 腹腔鏡下胆摘群 で 1 ±0. 5 日であ り,後者 で有 意 に短 か った。

胃チ ューブは全身麻酔 を施行 した全症例 に挿入 され,術後 の腸管麻痔が回復 して患者が腸嬬動 を自覚 した時点, または医師が腸嬬動音 ( グル 普) を聴取 した時点で抜去 され ている。後述す る ように,腹腔鏡下胆摘群では開腹下胆摘群 と 較べ て水分摂取 日,食事 開始 日とも有意 に短縮

していることも考慮す る と,術 後 の腸管麻痔 か らの回復が早 い ことが明 らか となった。

一方, フォー レ抜去 日,腹腔 ドレー ン抜去 日,

酸素投与期 間では両群間に差 は認 めなか った。

(5)

( 3 0 ) 伊藤登茂子/開腹下胆嚢摘出術と腹腔鏡下胆嚢摘出術の比較検討 これは開腹下胆摘群で も,術後合併症等 の問題

がな く順調 に回復 したことによると考 えられる

輸液投与期間は, 腹腔鏡下胆摘群 3 ± 1 . 3 日で あ り,開腹下胆摘群 6 ± 1 . 9 日に較べ て有意 に短 縮 していた。 これは後述の ように,腹腔鏡下胆 摘群で腸管麻痔か らの回復が早いため,経 口摂 取が早 ま り,輸液 をする必要がな くなるため と 考 えられる。

術後回復過程の評価の うち,術後の水分摂取 日,食事開始 日は,腹腔鏡下胆摘群が開腹下牌 摘群 に較べ て有意 に早かった。 これは腹腔鏡下 胆摘群の方が,術後の腸管麻痔か らの回復が早 いことを意味 している。一般 に術後腸管麻庫 は, 全身麻酔 の影響,術 中の腸管 の露 出や ma ni pu‑

腹腔内臓器の用手的操作 を行 わない腹腔鏡下胆 摘術 の方が開腹手術 に較べ て,腸管 に及ぼす影 響が少 ないのは自明であ り,そのために経 口摂 取が早 くで きる もの と考 えられる

結 論

腹腔鏡下胆嚢摘 出術 は,従来の開腹下胆嚢摘 出術 に較べて手術侵襲度が少 な く,術後入院期 間は短縮 された。 また術後腸管麻痔が早期 に回 復 して経口摂取が早 まることが明 らかであった。

あわりに

1 9 9 6 年 4 月 よ り,われわれは腹腔鏡下胆嚢摘 出術症例 に対 し,クリニカル ・パスを作成 し利 らクリニカル ・パス導入の意義 について検討 し たい。

文 献

1) Re ddi c kEJ ,01 s e nDO ( 1 9 8 9) La pa r os c opi c l a s e r c hol e c ys t e c t o my:A c ompa r i s o n wi t h

mi ni ‑ l a p c hol e c ys t e c t omy.Su r g Endos C 3 : 1 31 ‑ 1 3 3

2) pe r i s s a t ∫ , Col l e t D, Be l l i a r d R ( 1 9 9 0 ) Ga l l s t o ne s :La pa r os c o pi c

t

r e a t me ntI c hol

e‑

c ys t e c t omy,c hol e c ys t os t o my,a ndl i t hot r i ps y.

Su r gEn dos C4:1‑5

3) 山川達郎,酒井滋,石川泰郎 ほか ( 1 9 9 0) 腹腔鏡的胆嚢摘 出術 の手技.臨外 45:1 2 25

‑1 25 9

4 )吉田和彦,桜井健司 ( 1 9 9 2) 腹腔鏡下胆嚢 摘 出術.外科 5 4: 1 41 2‑1 41 9

5 )田中淳一,小 山研二,阿保七三郎 ( 1 9 9 6) 秋田県 における腹腔鏡下手術の現況 :腹腔 鏡下胆 嚢摘 出術 を中心 と して.秋 田医学 2 2:1 1 7‑1 2 2

6)安藤秀明,田中淳一,小 山研二 ,金子律子, 白川秀 子 ( 2 0 0 0) 内視 鏡 下 手術 にお け る Da ySu r g e r y. 消化器外科 NURSI NG 5 : 7 6

‑81

7)薮下和久, 小西孝司, 角谷直孝 ほか ( 1 9 9 4) 腹腔鏡下胆嚢摘 出術 の術後 アンケー ト調査.

胆道 8:35 2‑35 8

8 )内山勝弘,高田忠敬,安田秀喜 ( 1 9 9 2) 腹 腔鏡下胆嚢摘 出術 一開腹術 との対比 ‑.胆

と 豚 1 3:2 3‑2 8

9 )柴田信博 ( 1 9 9 3) 胆嚢摘 出術 におけるアプ ローチの選択 とその成績.胆道 7:1 2 8‑

1 32

1 0) 浅沼義博,小 山研二,大和 田康夫,佐藤寿 雄 ( 1 9 8 4) 術後黄痘.肝胆 揮 9 :1 81‑1 87 l l ) 山崎修,松 山光春,堀井勝彦ほか ( 1 9 9 7)

腹腔鏡下胆嚢摘 出術 の合併症 に関する検討.

胆道 1 1:40 9‑41 7

1 2) 神 田達夫,中村茂樹 ,畠山勝義 ( 1 9 9 9) 術

後腸蝶動障害.外科治療 8 0:1 0 6 5‑1 0 67

参照

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