(97)
原著 :秋 田大学医短紀要
9:97‑102,2001.実習教 育 にお ける情意領域 の分析
‑2年次 と3年次実習 の比較 か ら‑
AnalysISOfaffectivedomain in clinicaleducation
‑Comparison ofclinicalpracticein thesecond gradeandthird grade‑
斉一子nH突
伸佐
場
藤村稲
進上輔一御出
俊 佐
日藤山山
工 若 籾
彦信宏樹
諭 隆 賂
津 谷 竹
大塩佐
Yukihiko OsAWA ShunsukeKuDO HitoshiINABA Takanobu SHIOYA SaichiWAKAYAMA ShinichiSHINDO Masahiro SATAKE HidekiMoMIYAMA Sachiko UEMURA
は じめに
本 学科 で は
2年 次 の後期 に理 学療 法技術 論
Ⅱ
・同実習 ( 以下、技術論 Ⅱとす る) にて
2週 間
(75時間)の臨床実習 を
、 3年次では臨床実 習
Ⅰ・Ⅱで
9週 間
(81 0時間)の臨床実習 を行 っ てい る。各実習の成績評価 には到達 目標が設定 されてお り、それ に基づいて臨床実習指導者 に よる成績評価 、学生 自身の 自己評価が実施 され ている。技術論 Ⅱの到達 目標 は理学療法評価 を 中心 として、理学療法の知識の想起 ・解釈 ・問 題解 決 に関す る 「 認知領域」、理学療 法 の技 能 に関す る 「 精神運動領域」 と、理学療法士 とし てのふ さわ しい態度 に関す る 「 情意領域」 の項
目を設定 してい る。臨床実習 Ⅰ
・Ⅱの到達 目標
では理学療法の治療 ・アプローチ に重点 を置 き、
認知、精神運動領域が よ り臨床的 な理学療法へ と展 開す ることを狙 い としてい る。情意領域 に 関 しては、技術論 Ⅱと同様 の項 目を設定 してお り 、 2年次か ら3年次 にかけて一貫 した到達 目 標 としている。つ ま り、情意領域 を理学療法士 の基本的資質 として重要視 してい る。 この情意 領域 は
B.S.Blooml ) によ り提示 された興味 ・関心
・態度 ・価値観 と意志 に関す る教育 目標 で、 認知 領域 、精神運動領域 と並ぶ教育 目標 の一分野で ある
。しか し、最近
3年次 の臨床実習
Ⅰ・Ⅱにおい て、対人関係 や学習意欲 な どの情意領域 に問題 を持つ学生が多い とい う指摘 を、一部の臨床実
秋 田大学医療技術短期大学部 理学療法学科
Ke y Words:臨床実習
情意領域
態度
習慣
習指導者か ら受けていた。 この ことか ら、教官 側 として、臨床実習 Ⅰ・Ⅱ以前の対応 を検討す る必要性 を考えていた。特 に、臨床実習 Ⅰ・Ⅱ で情意領域の問題 を抱 える学生のほとん どが、
技術論 Ⅲではその ような問題が示 されていない ことか ら、技術論 Ⅲと臨床実習
Ⅰ・Ⅱでの情意 領域の特徴 を明 らかにす ることが重要 と考 えた。
また、 佐竹2 . らは臨床実習生の望 ま しい資質 とし て、情意領域 に関す る項 目が認知、精神運動領 域 よりも重要であった と報告 してお り、本学科 における情意領域 に関す るさらなる検討の必要 性 を指摘 していた。
そこで今 回、実習教育での情意領域 に関す る 成績評価 と自己評価 の結果 を分析 したので報告 す る。
対象 と方法
対象 は第
9期生の1
9名で、技術論 Ⅱの成績評 価表 を1
9部 と自己評価表 を1
9部、そ して臨床実 習
Ⅰ・Ⅱの成績評価表の38部 と自己評価表の36 部 について分析 した。
分析方法 は、各々の成績評価、 自己評価の到
達 目標 「 理学療法士 としての適性及びふ さわ し い態度」の小項 目である1 0項 目を情意領域の行 動評価表3 .を参考 にして、「 習慣」 と 「 態度」に 分類 した。態度はさらに 「 患者 に対す る信頼関 係への態度」 と 「 学ぼ うとす る態度」 の
2つに 分類 した。技術論 Ⅱは習慣 ・態度共 に 5項 目に、
その うち患者 に対する信頼関係‑の態度 に
2項 目、学ぼうとす る態度 に
3項 目を分類 した。臨 床実習
Ⅰ・Ⅱでは習慣が
6項 目、態度が
4項 目 で、患者 に対す る信頼関係への態度は
1項 目、
学 ぼうとする態度は
3項 目に分類 した ( 表
1 ) 。なお、習慣の項 目
6番 「 環境整備、整理整頓が で きる」 は臨床実習
Ⅰ・Ⅱのみ、態度の項 目7 番 「 患者 に対 して、実習生 としての節度ある対 応がで きる」 は技術論 Ⅱのみの評価項 目として 挙 げ られていた。
成績評価 と自己評価 の評価基準 は、学生の レ ベルでで きた項 目を 「 合」、で きなか った項 目 を 「 否」、合 とす るには問題があるが否で もな い もので一定の指導 ・助言 を要するものを 「 境 界」としている。今 回は各評価の 「 合」、「 境界」、
「 否」の数 を総数の割合で示 した。
表
1.理学療法士 として適性及びふ さわ しい態度に関する到達 目標
Ⅰ.習慣の項 目
1.時間・ 規則 を守ることがで きる
2.
状況に即 した挨拶 と言葉づかいができる
3.医療人 としての身だ しなみに心がけられる
4.
職員に対 して、実習生 としての節度ある対応がで きる
5.指示された役割を責任 を持って果たせ る
6
.環境整備、整理整頓ができる
注*ⅠⅠ.
態度の項 目
a)
患者に対する信頼関係への態度
7 .患者に対 して、実習生 としての節度ある対応がで きる 注**
8.
患者に対 して、人間性 を尊重 した誠実な対応がで きる
b)学ぼうとする態度
9
.適性 ・ 知識 ・ 技術に対する向上心・ 探究心を発揮で きる
10.必要な援助を自発的に他 に求めることができる ll.適正な自己評価がで きる
注 * :臨床実習 Ⅰ
・Ⅰ Ⅰのみの項 目 注 ** :技術論 Ⅰ Ⅰのみの項 目
大津諭樹彦/実習教育 における情意領域の分析‑ 2年次 と3年次実習の比較か ら‑ (99)
結 果
1.技術論 Ⅱの結果 ( 図 1)
成績評価では習慣 の項
目1番 「 時間 ・規則 を 守 ることがで きる」
、 2番「 状況 に即 した挨拶 と 言葉づかいがで きる」
、 3番「 医療人 としての身 だ しなみに心がけ られる」
、4番「 職員 に対 して、
実習生 としての節度 あ る対応がで きる」
、 5番
「 指示 された役割 を責任 を持 って果たせ る」で 全員が合 と評価 されていた。態度の項 目では、
患者への信頼関係への態度の項 目7 番 「 患者 に 対 して、実習生 と しての節度 あ る対応 がで き る」
、8番 「 患者 に対 して、人間性 を尊重 した 誠実 な対応がで きる」で全員が合であった。学
(〜) 100
90
80 70 60 50
ほ うとす る態度では11 番 「 適正 な自己評価がで きる」で全員が合 となっていた。
学生 に よる 自己評価 の結果 は、項 目
4番 「 職 員 に対 して、実習生 としての節度ある対応がで きる」以外の習慣の項 目で、全員が合 と評価 し ていた。態度では患者への信頼関係‑の態度の 項 目7 番 「 患者 に対 して、実習生 としての節度
ある対応がで きる」で全員が合 と評価 していた。
学ぼ うとする態度の項 目では、項 目9 番 「 適性 ・ 知識 ・技術 に対する向上心 ・探求心 を発揮で き
る」
、11番 「 適正 な 自己評価 がで きる」で全員 が合 としていた。
1 2 3 4 5 7 8 9 10 11
(〜) 100
90
80 70 60 50
自 己 評 価
1 2 3 4 5 7 8 9 10 11
習 慣 の 項 目 態 度 の 項 目
( 注)口内の数字は具体的な割合を示す
図 1.技術論 I l の成績評価 と自己評価の結果
2.
臨床実習
Ⅰ・Ⅱの結果 ( 図
2)成績評価 では、習慣 の項 目3 番 「 医療人 とし ての身だ しなみに心がけ られる」
、 6番「 環境整 備、整理整頓がで きる」で全員が合 と評価 され ていた。 しか し、項 目 1番 「 時間 ・規則 を守 る ことがで きる」
、 2番 「 状況 に即 した挨拶 と言 葉づ かいがで きる」
、 4番 「 職員 に対 して、実 習 生 と して の節 度 あ る対 応 が で きる」
、 5番
「 指示 された役割 を責任 を持 って果たせ る」で は境界が
3‑ 5%(
1‑ 2名)見 られた。態度 では、患者への信頼関係への態度 を示す項 目
8番 「 患者 に対 して、人間性 を尊重 した誠実 な対 応がで きる」に合が全体の
97%あ り、 境界が
3%(\1 100
90
80 70 60 50
(㌔) 100
90 80 70 60 50
(1名)あった。学 ぼうとする態度 を示す項 目
9番 「 適性 ・知識 ・技術 に対する向上心 ・探求 心 を発揮 で きる」には境界が全体の
18%(7名)、
項 目1 0番 「 必要 な援助 を自発的に他 に求めるこ とがで きる」 には
24%(9名)、11 番 「 適正 な自 己評価がで きる」 には 5
%(2名)の境界が見 られた。 また、否 も項 目9‑11 番 に 3
%(1名) ずつ見 られた。
自己評価では、習慣 の項 目
1‑6番で合が
83‑97%
、境界が
3‑17% (2‑ 4名)見 られた。
態度では、 信頼関係への態度 を示す項 目8 番「 患 者 に対 して、人間性 を尊重 した誠実 な対応がで きる」で合 が
94%、境界 が
6% (2名) 、学 ぼ
成 績 評 価
1 2 3 4 5 6 8 9 10 11
自 己 評 価
1 2 3 4 5 6 8 9 10 11
習 慣 の 項 目 態 度 の 項 目
( 注)口内の数字は具体的な割合を示す
図 2.臨床実習 I・l l の成績評価 と自己評価の結果
大津諭樹彦/実習教育における情意領域の分析‑2 年次と3 年次実習の比較から‑
(101)うとす る態度 を示す項 目
9‑1 1 番では境界が
8‑31% (3‑
11 名)見 られた。
考 察
今回、技術論 Ⅱに比べ て臨床実習
Ⅰ・Ⅱの成 績評価、 自己評価 に境界、否の割合が多 く見 ら れた原因 としては、実習期間の長 さが影響 して いた と考 えられた。すなわち、技術論 Ⅱでは実 習期間が
2週間 と臨床実習
Ⅰ・Ⅱの
9週間に比 べ ると短 く、情意領域での問題が顕在化 しない ままに終わったことが考 えられた。すなわち、
情意領域の評価 には一定の時間が必要 と思われ、
期間の短 さが技術論 Ⅲ終了時で教官側、臨床実 習指導者共 に情意領域の問題 について指摘する ことの難 しさに繋が った もの と考 えられた。技 術論 Ⅲの実習 目標 には
、 2年次か ら
3年次への 円滑 な実習の導入 となるように、学生各 自の問 題や課題 を整理することなどが挙 げ られている が、 このことか ら、 これ までの技術論 Ⅱ終了後 にレポー トな どの関係資料の提出のみ としてい た ま とめ を、今後情 意領域 の教育 を配慮 した ワークシ ョップ形式 な どによる報告会 など十分 な学内でのフィー ドバ ックの時間を設ける必要 性が示唆 された。
また今 回の結果、習慣 に比べ態度の項 目で、
特 に 「 学ぼうとす る態度」 において成績評価、
自己評価共 に境界、否 の割合が多 くなる傾向を 示 していた。 ここで言 う習慣
3は、理学療法士 として自然 に振 る舞 えるように身に付 くべ き内 容であ り、一度形成 されるとほぼ一定の行動 と なる特徴 を持 っている。 これに対 して態度 とは、
理学療法士 として成長 しようとす る姿勢 と、患 者 との信頼関係 を作 り上げ ようとする行動か ら な り、その内容 は環境 などに影響 を受けやすい 特徴 を持 っている。 この ことか ら、長期 にわた る臨床実習 Ⅰ
・Ⅱでは、学習意欲、 自主性 など の態度面 は大 きな影響 を受けるもの と考え られ た。 この態度面 に影響 を与 える大 きな要因 とし ては、実習施設の人間関係 な どのス トレスが考 えられた。一般 に臨床実習では大 きなス トレス を受 けやすい こ とが報告 されてお り4、今 回の 結果 もそのことが反映 していたのではないか と
考 えられた。 また、臨床実習の早期 に学生は、
自分の理学療法士 に対する適性 に悩むことが多 い ことも報告 されてお り
5、我 々 もこれ まで に 同様のケースを経験 している。 さらに、 目的達 成型の学内教育 と問題解決型の臨床教育の違い に戸惑いを感 じ、そのギャップを乗 り越 える対 応方法 を十分 に持 っていなかった学生 も、態度 面で境界、否 と評価 される要因になった とも考 えられた。 これ らの ことか ら
、3年次の臨床実 習 Ⅰ
・Ⅱに向けて、学内での早期教育
6、による 情意領域 に関す る問題解決学習法
7など、具体 的な介入方法 を検討する必要性があると考 えら れた。
しか し、一方では評価基準の問題 も考 えられ た。つ ま り、習慣 の項 目は 「 時間 ・規則 を守 る ことがで きる」や 「 状況 に即 した挨拶 と言葉づ かいがで きる」 など具体的に観察で きる行動 と して評価 しやすい側面 を持つ。 これに対 して、
態度の項 目は 「 適性 ・知識 ・技術 に対す る向上 心 ・探求心 を発揮で きる」、「 必要 な援助 を自発 的に他 に求めることがで きる」 など、評価基準 が達成 目標 として暖味 にな りやすい側面 を持つ。
このことか ら、臨床実習指導者 と学生間の到達 目標の評価基準 を明確化するな どの対応が必要 と考 えられた。
今 回の結果 は、横 断的 な研 究であ り、第
9期 生の特徴 を示す に留 まるが、今後 は情意領域 に 関わる教育 を具体的に進めて、情意領域の変化 について縦断的な研究 を進める必要性があると 考 えられた。
まとめ
2
年次 と
3年次 における実習教育 における情 意領域 の特徴 を明 らかにす るために、技術論
Ⅲと臨床実習 Ⅰ
・Ⅱの成績評価 と自己評価の結果 か ら到達 目標 を抽 出 し分析 を行 った。
その結果、臨床実習 Ⅰ
・Ⅱは技術論 Ⅱと比べ
て、情意領域 の評価 に境界や否が多 く、その中
で も態度の項 目に境界、否 の評価が多 くなる傾
向を示 した。一般 に態度面 は実習環境 などに影
響 を受け不安定 となる特徴 を持つ と言われてい
る。 この ことか ら、特 に態度面の成長 を促すた
めに、臨床実習以前で情意領域 に関わる問題解 決学習法 など早期学内教育 と、臨床実習指導者 との評価基準の共有化 を図る必要性が示唆 され た。
引用文献
1)ち.S.
ブルーム著,梶 田叡一,渋谷憲一,藤 田恵璽訳
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佐竹将宏,田村美枝子,籾 山日出樹
(1997)臨床実習生の考える実習指導者像お よび実 習生像,秋 田理学療法
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臨床実習教育の手引 き第
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版,社 団法人 日本理学療法士協会
,53‑61
4
)冨田昌夫,高橋正明
(1998)臨床実習の今 日的課題.理 学療 法 ジ ャー ナ ル
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