九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Fe-B-Si系アモルファス合金の構造緩和に関する研究
高原, 良博
https://doi.org/10.11501/3062575
出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
Fe‑B‑Si 系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 構 造 緩 和 に 関 す る 研 究
高 原 良 博
目 次
第
1
章 序 論1 . 1
本 研 究 の 背 景1 . 2
本 研 究 の 目 的 と そ の 概 要4 1 i 4 1 i n u
︐U
第 2章 実 験 方 法
2 . 2 . 2
2 . 2 . 32 . 2 . 4
2 . 2 . 52 . 2 . 6
メ ス パ ウ ア 一 分 光 比 熱
B‑H曲線
X
線 回 折っ け
qu Rυ
﹁U円lワ
l q u n U
ハU
‑
‑ 4 1 4 i 1 i t i t i
‑
‑
つ ム ワ ム
2 . 1 試 料 の 作 製 2 . 2 測 定 方 法
2 . 2 . 1
電 気 抵 抗微 小 硬 度
第
3
章 物 性 の 不 可 逆 的 変 化 を 伴 う 構 造 緩 和 過 程2 1
3 . 1
電 気 抵 抗2 1
3.1. 1
等 温 焼 鈍 に よ る 変 化 •••••••••2 1 3 . 1 . 2
焼 鈍 に よ る 温 度 係 数 の 変 化 273 . 1 . 3
電 気 抵 抗 と 自 由 体 積3 1
3 . 2 メ ス パ ウ ア 一 分 光 ...‑ ー3 6 3 . 2 . 1
超 微 細 相 互 作 用 の 変 化 37 3 . 2 . 2 原 子 配 列 の 変 化3 . 3 総 括
4 2
49第
4
章 物 性 の 可 逆 的 変 化 を 伴 う 構 造 緩 和 過 程4 . 1
電 気 抵 抗4.1. 1
電 気 抵 抗 の 可 逆 的 変 化4.1. 2
4.1. 3
ク ロ ス オ ー バ ー 現 象 緩 和 時 間 の 分 布
ηノU円
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︿U a A 1 n H U n x u n 4 u q t u η f ' u p h u η /心
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41i
4 . 2 メ ス バ ウ ア 一 分 光 4. 3 比 熱
4.3. 1
比 熱 の 可 逆 的 変 化 4 . 3 . 2 緩 和 過 程 の モ デ ル4.3. 3
活 性 化 エ ネ ル ギ ー の 分 布4 . 4
総 括第 5章 構 造 緩 和 に よ る 物 性 の 変 化 挙 動 と ア モ ル フ ァ ス 構 造
5 . 1
ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 構 造5 . 1 . 1
金 属 ‑ メ タ ロ イ ド 系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 構 造 的 特 徴1 0 5 1 0 5
1 0 5 5 . 1 . 2 F e ‑ B ‑ S i
系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 構 造1 1 0
5.2F e 8 8 ‑ x B I 2 S i x ( 2 ; ; ;
玉x豆1 3 )
ア モ ル フ ァ ス合 金 の 物 性
5 . 2 . 1
微 小 硬 度 お よ び 保 磁 力1 1 7 1 1 7
5 . 2 . 2 結 晶 化 温 度 と キ ュ リ ー 温 度 ー ー ー .........1 1 9
5 . 2 . 3 構 造 緩 和 の エ ン タ ル ビ ー ‑ ー1 2 1
5 . 2 . 4 ア イ ソ マ ー シ フ ト お よ び 内 部 磁 場 ‑ ー1 2 5
5 . 3 物 性 の 変 化 挙 動 と ア モ ル フ ァ ス 構 造 と の 関 連1 3 1
5 . 4 総 括
1 4 1
第
6
章 冷 問 圧 延 に よ る 物 性 お よ び 構 造 の 変 化 と焼 鈍 に よ る 特 性 改 善 •••••••••••• ••••••••••••
1 4 3
6 . 1
冷 間 圧 延 の 影 響1 4 4
6 . 1 . 1 B ‑ H
曲 線 お よ び 電 気 抵 抗 •••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••1 4 4 6 . 1 . 2
メ ス バ ウ ア 一 分 光1 4 8
6 . 1 . 3
相 関 関 数1 5 8
6 . 2 焼 鈍 に よ る 磁 気 特 性 の 改 善
1 6 1
6 . 3
総 括1 7 0
第
7
章 結 論1 7 2
あ と が き
参 考 文 献
第 1 章 序
1. 1 本 研 究 の 背 景
主'A6岡
ア モ ル フ ァ ス 合 金 は , 原 子 配 列 に 結 晶 の よ う な 長 周 期 の 規 則 性 をもたないという構造的特殊性と,急、冷効果により組成のゆらぎの 少 な い 均 質 な 単 相 か ら な る と い う 組 成 的 特 殊 性 と に よ っ て , 在 来 の 結 晶 合 金 で は 得 ら れ な い 優 れ た 機 械 的 (1 )ベ3)' 磁 気 的 (4) ー (7 )ある いは化学的(8 )特性を有する. こ の た め 幅 広 い 応 用 の 可 能 性 を 秘 め た 新 し い タ イ プ の工業 材 料 と し て 注 目 さ れ て い る . ま た , 不 規 則 系 の 物 性 研 究 の 対 象 と し て も 大 き な 興 味 が も た れ て い る .
現 在 で は , ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 製 造 技 術 の 著 し い 進 歩 に よ っ て , 比 較 的 容 易 に 大 量 の ア モ ル フ ァ ス 合 金 が 作 製 で き る よ う に な っ た . そ の 結 果 , す で に 多 種 多 用 の ア モ ル フ ァ ス 合 金 が 実 用 化 さ れ て い る . そ の 主 な 用 途 は , 磁 気 ヘ ッ ド , 各 種 セ ン サ ー , 磁 気 シ ー ル ド 材 あ る い は 接 合 ろ う 材 な ど で あ る (9 ) し か し な が ら , そ の 市 場 規 模 を 見 て み る と , 当 初 期 待 さ れ て い た 程 大 き く な い の が 実 状 で あ る . この ような状況のなかで,市場規模の大きさ(約
1 6 0 0
億 円 と 見 込 ま れ て い る(1 0 ) ) や 省 エ ネ ル ギ ー 材 料 と し て の 有 益 性 か ら , 実 用 化 に 対 し て 工 業 的 に 大 き な 期 待 が 寄 せ ら れ て い る の が , 電 力 用 ト ラ ン ス 鉄 心 材 としてのFe‑B‑Si系アモルファス合金である.従来, この種の材料 と し て は 方 向 性 ケ イ 素 鋼 板 が 広 く 用 い ら れ て い る . しかし, これに 比 べ てFe‑B‑Si系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 は , 本 質 的 に 結 晶 磁 気 異 方 性 がな く , ま た 磁 壁 の 移 動 を 妨 げ る 結 晶 粒 界 や 析出物 が な い ため低 保 磁 力 , 高 透 磁 率 を示 しヒス テ リシス損が き わ め て 小さい.その上 , 電 気 抵 抗 が 結 品 の5‑‑‑‑6倍 と 高 く渦電流 損 が 小さいため,鉄損 は 方 向 性 ケイ素鋼 板 の 約
1 / 5
であるけ 1) 年々 エ ネ ル ギーコ ス ト が上 昇 して い る 現 在 , 鉄 損 の 低 減 化 に よ る電力 の 省 エ ネ ル ギ ー 化 は き わ め て 大 き な 経 済 的 波 及 効 果 を も た ら す と い え る . 例 え は ¥ 発 電 所 か ら一般 家 庭 ま で の 送 電 中 に 生 じ る 送 配 電 系 統 電 力 損 失 の う ち 鉄 損 に よ る 損 失 は 年 間 約60億kWh(1986年)と推定さ れている(1 2 ) 単 純 計 算 す ると, Fe‑B‑Si系アモルファス合金の実用化によ って年間 約48億kWhも の莫大な量の電力が 節 約 できることになる.また製造法に関しても,
アモルフ ァス合 金は方向 性 ケ イ 素 鋼 板 の よ う に 複 雑 な 製 造工程 を 必 要 と し な い た め工業 的 に 非 常 に 有 利 で あ る . 一方 , 飽 和 磁 束 密 度 に ついては,アモルファス合金は1.
7 T ( 1 7 k G )
程 度 で 方 向 性 ケ イ 素 鋼 板の2.OT (20kG)に比べて小さい. こ れ は メ タ ロ イ ド 原 子(Si,B)か らの電荷移動により Fe原子の3dホ ー ル が う め ら れ て 磁 気 モーメント が減少するためである. しかし, これはト ラン ス を 作 製 す る 際 , 積 層 を 増 や す こ と で 補 う こ と が で き る .これまでに, Fe‑B‑Si系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 を ト ラ ン ス 用 鉄 心 材 と し て 実 用 化 す る た め の 研 究 が 活 発 に 続 け ら れ て 来 て い る . す で に 単 ロール 式 液 体急冷 法 に よ る ア モ ル フ ァ ス 相 の 形 成 組 成 域 (1 3 )一(1 5 )
や , 結 品 化 温 度 , キ ュリ ー 温 度 , 保 磁 力 , 飽 和 磁 束 密 度 , 初 期 透 磁 率お よ び 鉄 損 の 組 成 依 存 性 (1 6 )ベ 19)が 明 ら か に さ れ , ま た 磁 気 特
性 に 及 ぼ す 不 純 物 元 素 の 影 響 に つ い て も 種 々 検 討 さ れ た (2 0 )ー(2 2 )
さらに,結晶化が磁気特性に及ぼす影響(2 3 ) ベ28 )や,結晶化の機 構 お よ び そ の 速 度 論 に つ い て の 広 い 組 成 域 に わ た る 検 討 (2 7 )ー(3 2 )
もなされている. 一方 , 鉄 損 評 価 法 の 適 性 化 や 最 適 な ト ラ ン ス 用 鉄 心 材 の 選 択 の あ り 方 な ど に 関 す る 検 討 も 行 わ れ て い る け3 ) (3")
しかしながら実用化に当たってはまだ未解決の問題が残されている.
な か で も 最 も 重 要 な 課 題 は ア モ ル フ ァ ス 構 造 の 安 定 性 で あ る (3 5 )
ア モ ル フ ァ ス 状 態 は , 高 温 で 安 定 な 液 体 状 態 を 超 急 冷 に よ っ て 室 温 に凍結したものであるから本質的に熱的非平衡状態にある.したがっ て 熱 的 な 刺 激 に よ り 構 造 変 化 を 引 き 起 こ し , 最 終 的 に は 平 衡 状 態 で ある結晶へ移行する.結晶化により優れた磁気特性が失われるが,
F e ‑ B ‑ S i
系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 は 高 い 結 晶 化 温 度( 7 2 3K
以上)を有する た め , 電 力 用 ト ラ ン ス の 通 常 の 使 用 環 境 に お い て は 結 晶 化 の 可 能 性 は ほ と ん ど な い と 言 っ て よ い . 問 題 と な る の は ア モ ル フ ァ ス 状 態 で の 構 造 変 化 , す な わ ち 構 造 緩 和 で あ る . ア モ ル フ ァ ス 状 態 は 非 平 衡 状 態 で あ る か ら 多 く の ア モ ル フ ァ ス 状 態 が 存 在 し わ ず か な 熱 的 刺 激によっても,より安定な(エネルギーの低し, )アモルファス状態へ と構造が変化する. こ れ は 稼 働 中 に お け る 磁 気 特 性 の 経 年 変 化 の 大 きな原因となる. したがって実用化に当たっては,いかにして構造 の安定なアモルファス状態を実現するかが最大の課題である. この 問題の中心となるのが構造緩和である. しかしながら,F e ‑ B ‑ S i
系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 構 造 緩 和 に 関 す る 詳 細 な 研 究 は ほ と ん ど 行 わ れ‑ 3 ‑
ていないのが現状である. これまで,アモルファス合金の構造緩和 に 関 す る 研 究 は , 主 と し て 複 数 の 遷 移 金 属 を 含 む 合 金 系 に つ い て な されてきた(3 B) (3 7 )
構 造 緩 和 現 象 は , 無機ガラ ス や 高 分 子 に おいては古 くか ら知られ て い る も の で , 非 平 衡 準 安 定 状 態 に あ る 物 質 の 本 質 的 な 性 質 の ひ と つといえる(3 8 ) 図
1 ‑ 1
は 結 晶 , 液 体 , 過 冷 却 液 体 お よ び ア モ ル フ ァ ス 状 態 で の 体 積 と 温 度 の 関 係 を 模 式 的 に 示 し た も の で あ る . 液 体 は , 準 静 的 に ゆ っ く り 冷 却 す る と 融 点Tmで 体 積 の 不 連 続 な 減 少を伴って結晶化する. しかし超急冷すると Tm以 下 で も 液 体 状 態 の ま ま 過 冷 却 液 体 と し て 存 在 し 続け , 体 積 は 液 体 の 延 長 線 上 を 連 続 的に減少する. こ れ は 液 体 状 態 で 原 子 に よ っ て 占 め ら れ て い な い 空 間 , す な わ ち 自 由 体 積 が 温 度 の 低 下 と と も に 減 少 す る た め で あ る . 過 冷 却 液 体 は ガ ラ ス 転 移 温 度Tgに至って粘性の増大(拡散係数の減 少)のために液体状態のまま固化しアモルファス状態となる. このと き 自 由 体 積 が 残 留 凍 結 さ れる た め 図 に み る よ う に 体 積 の 変 化 に 折 れ曲がりができる. こ こ で ガ ラ ス 転 移 温 度 と ア モ ル フ ァ ス 状 態 で の 体 積 は 冷 却 速 度 に 依 存 す る . 冷 却 速 度 が 速 い 場 合 は 高 い 温 度
(T
g2 )で 固 化 し ア モ ル フ ァ ス 状 態 2と な る . 遅 い 場 合 は , よ り 低 温(Tgl) で ア モ ル フ ァ ス 状 態
1
と な る . 前 者 は 後 者 に 比 べ て よ り 多 く の 過 剰 な 自 由 体 積 を 含 有 し エ ネ ル ギ ー 的 に よ り 不 安 定 で あ る . 一 般 に 作 製 し た ま ま の ア モ ル フ ァ ス 合 金 は 前 者 の 状 態 に あ り , 加 熱 に よ っ て 過 剰 な 自 由 体 積 の 減 少 を 伴 う 原 子 の 再 配 列 を 起 こ し , 図 中 の 矢 印 でI i
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過 冷 却 液体およびアモルフ ァ ス 状 態 で の 液体,
全 土 田 小口日目,
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図
Tg1,Tg2 ガ ラ ス 転 移 温 度. 体 積 と 温 度 の 関 係 .
T m :凝固温度(融点),
‑ 5 ‑
示 す よ う に よ り 安 定 な ア モ ル フ ァ ス 状 態 1へ構造変化する. これが 構造緩和である.
構造緩和においては,個々の原子が移動する距離はわずかである.
しかし,多くの原子が 複 雑 に か ら み 合 っ て 運 動 し 結 果 と し て ほ と んどすべての物性に影響をおよぼす. 一般 に , 結 品 に お い て 格 子 欠 陥 の 影 響 を 大 き く 受 け る 物 性 ほ ど 構 造 緩 和 の 効 果 も 大 き い と い え る .
このような類似性は,アモルファス構造を原子レベルでみた場合,
個 々 の 原 子 の ま わ り の 原 子 配 置 の 乱 れ は 均ーではなく,乱れの大き いところが緩和の中心として関与していることを示唆している.
一方 , 構 造 緩 和 に 伴 う 物 性 の 変化の温度および時間依存性には,
時 間 と と も に 単 調 に 変 化 し 続 け , 温 度 を 変 え て も 変 化 の 方 向 は 変 わ ら な い 場 合 と , 一 定 時 間 後 に 物 性 が 見 か け 上 の 飽 和 値 に 達 し 温 度 の 変 化 に よ っ て は 変 化 の 方 向 が 逆 転 す る 場 合 と が あ る . 便 宜 上 , 前 者は不可逆的変化(あるいは不可逆的構造緩和), 後 者 は 可 逆 的 変 化 (あるいは可逆的構造緩和)と呼ばれている.ただし, ここで言 う可 逆 的 変 化 と は , 熱 な ど の 外 的 刺 激 の 変 化 に 対 し て 着 目 し て い る 系 の み が 可 逆 的 な 応 答 を 示 す 現 象 の こ と で , 熱 力 学 的 な 意 味 で の 可 逆 的 変 化 で は な い . ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 実 用 化 に お い て , 可 逆 的 構 造 緩 和 現 象 は 重 要 な 意 味 を も っ て い る . す な わ ち , 構 造 に 敏 感 な 物 性 が 温度の変化に対して可逆的な変化を示すことは,アモルファス構造 が安定であることを意味しているからである. したがって,構造に 敏感な物性が可逆的 変 化 を 示 す よ う な ア モ ル フ ァ ス 構 造 の 実 現 こ そ
実 用 化 へ の 第 一 歩 と い え る .
こ の よ う な 物 性 の 不 可 逆 的 あ る い は 可 逆 的 変 化 の 機 構 と し て , つ ぎ の よ う な
2
種 類 の 短 範 囲 規 則 性 の 変 化 が 考 え ら れ て い る (3 9 )す な わ ち ト ポ ロ ジカ ル な 短 範 囲 規 則 性 と 化 学 的 短 範 囲 規 則 性 で あ る . 前 者 は 原 子 の 種 類 に 関 係 な く 単 に 原 子 の 空 間 的 配 置 に 関 す る 短 範 囲 規則性で,アモルファス構造全体にわたる枠組み(ネットワーク)を 形成する.これに対して後者は, こ の ネ ッ ト ワ ー ク の 中 で 異 種 原 子 の 配 位 の 多 様 性 に よ っ て 生 じ る 短 範 囲 規 則 性 で , 配 位 の 仕 方 に よ っ て は 局 所 的 な 組 成 の 平 均 組 成 か ら の ず れ が 生 じ る . この 2つ の 短 範 囲規則性の変化は, 厳 密 に は 全 く 独 立 し た も の で は な く 相 互 に 依 存 していると考えられる. ト ポ ロ ジ カ ル な 短 範 囲 規 則 化 に よ る 構 造 変 化は結晶化の場合と全く異なることが,
x
線 回 折 に よ っ て 得 ら れ た 動 径 分 布 関 数 の 変 化 か ら 確 認 さ れ て い る ("0ト ("2 ) ま た , 優 れ た 零 磁 歪 特 性 を も っ (Co,F e, N i) 7 3 ‑(S i, B) 2 7系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 に お い て は , 化 学 的 短 範 囲 規 則 性 を 十 分 に 発 達 さ せ る こ と に よ り ア モ ル フ ァ ス 構 造 が 安 定 化 す る こ と が 知 ら れ て い る ( 4 3 ) Fe‑B‑Si系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 に お い て も 可 逆 的 構 造 緩 和 現 象 が 観 測 さ れ る な ら ば , 同様の効果が期待できる.つ ぎ に , 以 上 で 述 べ て き た よ う な 熱 的 刺 激 に よ っ て 起 こ る ア モ ル フ ァ ス 構 造 の 変 化 の 問 題 に 加 え て , 実 用 化 に 際 し て は ア モ ル フ ァ ス 合 金 に 機 械 的 加 工 を 施 す こ と が 必 要 と な る 場 合 も あ る .
電 力 用 トランスの作製に必要な幅広長尺のアモルファスリボンは,
単ロール式液体急冷法によって作製される. この場合.片面冷却の ためロールとの接触面には空気の巻き込みによる小孔が生じ易く,
自由面には凹凸ができ易い. こ の こ と は ト ラ ン ス を 作 製 す る 際 の 占 積率(体積率)の大幅な低下の原因となる. Fe‑B‑Si系アモルファス 合 金 の 場 合 , す で に 述 べ た よ う に 飽 和 磁 束 密 度 が 方 向 性 ケ イ 素 鋼 板
より小さいため積層を増やすことで, これを補わなければならない 状況にある. し た が っ て , 占 積 率 の 低 下 は ト ラ ン ス の 巨 大 化 の 原 因
となるため解決すべき重要な問題である(3 4 ) この改善策として,
冷問圧廷により 厚さを均一化することが必要となる. しかしながら,
冷間圧廷を行うとアモルフ ァス 合 金 の 構 造 や 物 性 が 著 し い 影 響 を 受 ける.特に磁気特性は大幅に劣化する. このため,実用化に当たっ て は , 冷 間 圧 廷 が 構 造 や 物 性 に お よ ぼ す 影 響 に つ い て 詳 し く 調 べ て お く 必 要 が あ る . ま た , 圧 延 に よ っ て 劣 化 す る 磁 気 特 性 の 改 善 の 方 策についても検討が必要である.
1 . 2
本 研 究 の 目 的 と そ の 概 要本研究ではI
F e ‑ B ‑ S i
系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 構 造 緩 和 過 程 を 電 気 抵 抗 や 比 熱 の 測 定 お よ び メ ス バ ウ ア 一 分 光 分 析 を 通 し て 多 角 的 に 検 討 す る こ と に よ り , 構 造 緩 和 の 機 構 と そ の 速 度 論 , 構 造 緩 和 に お け る 原 子 の 再 配 列 挙 動 , お よ び ア モ ル フ ァ ス 構 造 と 構 造 緩 和 と の 関 連 に つ い て 明 ら か に し , ア モ ル フ ァ ス 構 造 の 安 定 性 に 関 す る 新 た な 知見を得る.ま た , 実 用 化 の 際 に 必 要 と な る 冷 問 圧 廷 が 構 造 や 物 性 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て も 詳 し く 検 討 を 行 い , 併 せ て 本 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 電 力 用 ト ラ ン ス 鉄 心 材 と し て の 実 用 化 に 資 す る こ と を 目 的 と す る .
本論文は 7章 か ら 構 成 さ れ て い る . 本 章 に 続 く 各 章 に お い て 述 べ る 研 究 の 概 要 は 以 下 の と う り で あ る .
第 2章 で は , ま ず 本 研 究 に 用 い た 試 料 の 作 製 法 お よ び 実 験 方 法 に ついて述べる.
第
3
章 で は , 作 製 し た ま ま の ア モ ル フ ァ ス 合 金 に つ い て , 焼 鈍 に よ る 構 造 緩 和 過 程 を , 構 造 の 変 化 に 敏 感 な 物 性 の ひ と つ で あ る 電 安 抵 抗 の 測 定 と メ ス パ ウ ア 一 分 光 分 析 に よ り 詳 し く 検 討 す る .そ の 結 果 , 焼 鈍 に よ っ て ア モ ル フ ァ ス 構 造 の 擬 平 衡 状 態 が 得 ら れ ることを明らかにする. こ れ は ト ポ ロ ジ カ ル な 短 範 囲 規 則 化 に よ り ア モ ル フ ァ ス 構 造 の ネ ッ ト ワ ー ク が 安 定 化 す る た め で あ る . ま た 焼 鈍 に よ る 電 気 抵 抗 の 変 化 挙 動 は , 液 体 状 態 か ら の 超 急 冷 の 過 程 で 過 剰 に 凍 結 さ れ た 自 由 体 積 の 消 滅 に よ っ て 説 明 で き る こ と を 示 す .
一 方 , 電 気抵 抗 の 変 化 と 対 応 し てFe原 子 の 周 り で 局 所 的 な 原 子 の 再 配 列 が 起 き て い る こ と を 明 ら か に す る . ま た , こ の よ う な 局 所 的 な 原 子 の 再 配 列 挙 動 や 自 由体 積 の 消 滅 に 対 す る 活 性 化 エ ネ ル ギーに は 合 金 組 成 に よ る 著 しい違いがあること示す.
さらに, このような構造緩和の結果, Fe原 子 の 周 り の 最 隣 接Fe原 子 数 の 分 布 が 変 化 し 平 均 の 最 隣 接Fe原 子 数 が 増 加 す る こ と を メ ス バ ウ ア ー ス ペ ク ト ル の 解 析 に よ り 明 ら か に す る . ま た 構 造 緩 和 に よ るキュリー温度の増加は, こ の 平 均 の 最 隣 接Fe原 子 数 の 増 加 に よ っ て 説 明 で き る こ と を 示 す .
第
4
章 で は , ア モ ル フ ァ ス 構 造の 安 定 性 と 密 接 に 関 連 し た 物 性 の 可 逆 的 変化 を 伴 う 構 造 緩 和 過 程 を 取 り 上 げ る . 第3
章において,焼 鈍 に よ り ア モ ル フ ァ ス 構 造 に 擬 平 衡 状 態 が 出 現 す る こ と が わ か っ たので, こ の 擬 平 衡 状 態 の 焼 鈍 温 度 依 存 性 に つ い て 電 気 抵 抗 と 比 熱 の 測 定 を 中 心 に 詳 し く 検 討 す る .
そ の 結 果 , ま ずFe‑B‑Si系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 に お い て も 焼 鈍 温 度 の 変 化 に 対 し て 電 気 抵 抗 の 可 逆 的 変 化 が 起 こ る こ と を 初 め て 明 ら か に す る . こ の よ う な 可 逆 的 変 化 は ア モ ル フ ァ ス 構 造 内 で の 化 学 的 短 範 囲 規 則 性 の 変 化 に よ る も の で あ る . こ の 可 逆 的 構 造 緩 和 過 程 で の 構 造 変 化 は , 単一の 熱 活 性 化 過 程 に よ っ て 記 述 で き な い こ と を ク ロ ス オ ー バ ー 現 象 の 観 測 に よ り 明 ら か に し , 緩 和 時 間 が 対 数 正 規 分 布 を 有 す る 過 程 と し て 記 述 で き る こ と を 示 す . ま た 電 気 抵 抗 の 可 逆 的 変化が, Fe 原 子 お よ びSi原 子 の 短 範 囲 の 拡 散 に よ る 配 位 の 変 化 に よ
るものであることを述べる.
つ ぎ に , 比 熱 も 電 気 抵 抗 と 同 様 に 焼 鈍 に 対 し て 可 逆 的 に 変 化 す る ことを示し, こ れ ら の 物 性 の 可 逆 的 変 化 が ア モ ル フ ァ ス 構 造 の 可 逆
的な変化によるものであることを検証する.また, これらの物性の
可 逆 的 変 化 量 に は 合 金 組 成 に よ る 違 い が み ら れ る こ と を 示 す . さ ら に,比熱の可逆的変化を説明するための簡単なモデルを考え, この モ デ ル を 用 い て こ の 可 逆 的 構 造 緩 和 過 程 に お け る 活 性 化 エ ネ ル ギ ー の分布を算出する.
第 5章 で は , 第 3章 お よ び 第 4章 で 明 ら か に し た 構 造 緩 和 に よ る 物 性 の 不 可 逆 的 あ る い は 可 逆 的 変 化 挙 動 と ア モ ル フ ァ ス 構 造 と の 関 連について考察する.
まず,金属‑メ タ ロ イ ド 系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 構 造 に 関 し て こ れ までにわかっている特徴を概観する.つぎに, DuboisとLe Caerに よって提案されているFe‑B‑Si系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 構 造 モ デ ル に つ い て 具 体 的 に 検 討 し , こ の 構 造 モ デ ル が 妥 当 な も の で あ る こ と を 構 造 に 敏 感 な 諸 物 性 の 組 成 依 存 性 に つ い て の 実 験 結 果 よ り 示 す .
ま た , 構 造 緩 和 に よ る 電 気 抵 抗 , 比 熱 お よ び メ ス バ ウ ア ー パ ラ メ ー タの変化挙動の合金組成による違いを, こ の 構 造 モ デ ル の 観 点 か ら 説明する.
第
6
章 で は , 実 用 化 の 際 に 考 え ら れ る 冷 間 圧 延 が ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 物 性 や 構 造 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て 調 べ る . ま た , 圧 延 に よ っ て 劣 化 す る 磁 気 特 性 の 改 善 の 方 策 に つ い て も 検 討 す る .41i 寸ii
そ の 結 果 , 冷 間 圧 延 に よ っ て ア モ ル フ ァ ス 構 造 は ト ポ ロ ジ カ ル に は よ り 乱 雑 化 す る こ と , ま た 圧 延 前 に は ほ ぼ 試 料 面 内 に 配 向 し て い た 磁 気 モ ー メ ン ト が , 全 体 と し て ラ ン ダ ム な 配 向 に 近 づ く こ と 等 を 明らかにする.さらに, 5 %程度の圧廷により Fe原 子 間 距 離 の 増 加 のためにヤング率や Fe原子の無反跳分率は一豆大きく減少するが,
圧 延 率 の 増 加 と と も に 歪 み の 増 加 に よ っ て 次 第 に 圧 延 前 の 値 ま で 戻 ることを示す.
一 方 , 冷 間 圧 廷 に よ り 軟 磁 性 材 料 と し て の 特 性 は 著 し く劣化する が, こ の 短 所 も キ ュ リ ー 温 度 以 上 , 結 晶 化 温 度 以 下 の 温 度 域 で 焼 鈍 す る こ と に よ り , か な り 短 時 間 で ほ ぼ 圧 延 前 の 状 態 ま で 回 復 さ せ る
ことが可能なことを明らかにする.
最後に第
7
章 で は , 本 研 究 を 通 じ て 得 ら れ た 結 果 を 総 括 的 に 整 理 して結論とする.第 2 章 実 験 方 法
2 . 1
試 料 の 作 製母 合 金 は つ ぎ の よ う に し て 作 製 し た . 電 解 鉄 ( 純 度
99.9%)
と高 純度ケイ素(純度99.999%)
お よ び フ エ ロ ボ ロ ン(C < 0.2%)
を 原 料と し て 所 定 の 組 成 に 秤 量 し た 後 , 高 純 度 ア ル ミ ナ る つ ぼ を 用 い て ア ル ゴ ン ガ ス 雰 囲 気 中 で 高 周 波 溶 解 し 溶 湯 を 内 径 約
4 m m
の 不 透 明 石英管で吸い上げて直ちに水冷凝固させた.つぎに, この母合金から
図
2 ‑1
に 示 す よ う な 単 ロ ー ル 式 液 体 急 冷 装 置 を 用 い て , 大 気 中 で リボ、ン状アモルファス合金を作製した.急、冷用ロールは直径1 1 0 m m
の 純 銅 製 で 回 転 数 約4 0 0 0 r p m
, 噴 射 ノ ズ ル の 直 径 はO . 5 m m
,ノズルとロ ー ル の 間 隔 は 約
1 m
皿,噴射ガス圧9 . 8
,̲,1 9 . 6 k P a ( O . 1
,̲,O . 2 k g / m m
2 ) の 条 件 で 作 製 し た . 得 ら れ た 試 料 の 寸 法 は 厚 さ が2 5
,̲,35μm
, 隔 が 約1 m m
であった.試料がアモルファス状態であることの判定条件は,
x
線 回 折 測 定(単色CuKα線 使 用 ) に お い て 結 晶 性 の 回 折 ピ ー ク が 認 め ら れ な い こ ととした. この際,
x
線 を 照 射 す る 面 は 必 ず 自 由 表 面 ( 液 体 急 冷 時 に ロ ー ル と 接 触 し な か っ た 面 ) と し た . ま た , 同 時 に メ ス バ ウ ア ー ス ペ ク ト ル の 測 定 も 行 い , ア モ ル フ ァ ス 合 金 に 特 有 の 拡 が っ た6
本 の 吸 収 ピ ー ク が 観 測 さ れ る こ と を 確 認 し た .試 料 の 組 成 は 化 学 分 析 に よ っ て 決 定 し た . 実 験 に 用 い た 試 料 の 組 成 表 示 は す べ て 分 析 結 果 に よ る 組 成 で
at%
表示である.qtU
41i
. . . , . . ‑ ‑ Quartz tube
Molten a l l o y
o ̲/'nduction c o ; I
0‑ 。
Ribbon
¥ O
R o t α t i n g d i s k
図
2 ‑1
単 ロ ー ル 式 液 体 急 冷 装 置 の 概 略 図 .誘 導 加 熱 コ イ ル で 溶 解 さ れ た イ ン ゴ ッ ト は , ア ル ゴ ン ガ ス 圧 に よ っ て 石 英 ノ ズ ル の 先 端 か ら 高 速 回 転 し て い る 銅 製 ロ ー ル 上 に 吹 き 付 け ら れ て ア モ ル フ ァ ス リ ボ、ン となる.
2. 2 測 定 方 法
2.2. 1 電 気抵 抗
アモルファスリ ボ ン を 約
5 0
皿皿の長さに切って電気抵抗測定用の 試 料 と し た . 試 料 は 電 流 お よ び 電 圧 端 子 を 点 溶 接 し た 後 , 熱 電 対 とともに図
2 ‑2
に示したような一端が真空に号│けるようになった内 径1 0 m m
の 透 明 石 英 官 に入れ て 固 定 し た. リ ー ド 線 に は 直 径O . 1 m m
のニ ッ ケ ル 線 を 用 い た . 電 気 抵 抗 の 測 定 法 は ポ テ ン シ オ メ ー タ を 用 い た直流四端子法を採用した.
定 速 加 熱 に よ る 電 気抵 抗 の 変 化 は , 試 料 を 入 れ た 石 英 管 を 真 空
( 1 0 ‑
3Pa 以 下 ) に 引 き な が ら 無 誘 導 に 巻 い た 電 気 炉 の 中 に 入 れ , 加 熱し な が ら 同 時 に 測 定 し た . 加 熱 速 度 は
0.05K/s(3KI
皿in)であった.方 , 等 温 焼 鈍 お よ び 等 時 間 焼 鈍 は 試 料 の 入 っ た 石 英 管 を 真 空 に 引 き な が ら 所 定 の 温 度 の 塩 浴 (NaN02 ‑KN02 )中に侵漬して行った.試料 が 焼 鈍 温 度 に 達 す る ま で の 平 均 時 間 は
1 2 0 s
で あ っ た . 電 気 抵 抗 の 変 化 は , 所 定 の 時 間 毎 に 焼 き 入 れ に よ り 焼 鈍 を 中 断 し て 液 体 窒 素 中 で測定した. こ の 際 , 冷 却 は 石 英 管 を 氷 塩 水
(253K)
中 に 焼 き 入 れ る と 同 時 に 冷 却 し た ヘ リ ウ ム ガ ス を 石 英 管 内 に 導 入 す る 方 法 で 行 っ た . 初 期 冷 却 速 度 は30K I
sで あ っ た . な お 液 体 窒 素 温 度 の 変 動 は 測 定 試 料 と 同 じ 組 成 の ダ ミ ー を 用 い て 補 正 し た .﹁h
d
414
Current Leads
二ご> Vacuum
Q‑ring
Potential Leads
Quartz Tube
ー +Thermocouple
Sample
L φ 10 I ̲
図
2 ‑2
電 気 抵 抗測定 用 の 試 料 ホ ル ダ ー2.2. 2
メ ス パ ウ ア 一 分 光メ ス バ ウ ア ー ス ペ ク ト ル の 測 定 は エ ル シ ン ト 社 製 メ ス パ ウ アー装 置
A M E ‑ 5 0
を 用 い て 行 っ た . 線 源 に はO . 3 7 G B q ( 1 0
皿C i )
の57C o
を用い,1 4 . 4 k e V
の7線 を 使 用 し て 透 過 法 に よ り 室 温 大 気 中 で 測 定 し た . 線 源 は の こ ぎ り 歯 状 波 で 駆 動 し 速 度 の 校 正 は 純 鉄 の 薄 膜(25μm)
を 用 い て 行 っ た . ま た 得 ら れ た 測 定 デ ー タ の 解 析 に は 九 州 大 学 大 型 計 算 機 セ ン タ ー のF A C O MV P ‑ 1 0 0
を用いた.試料は長さ
1 5 m m
の 短 冊 状 に 切 っ た も の を 用 い , 中 央 に 直 径1 0 m m
の 穴のあいたアル ミ製 の ホ ル ダ ー に 穴 を 覆 う よ う に な ら べ , 両 端 を 粘 着テー プ で 固 定 し て 測 定 に 供 し た . 焼 鈍 は 内 径 約2 m m
の 不 透 明 石 英 管 に 試 料 を 真 空 封 入 し て 塩 浴( Na N 02 ‑ K N 0 2
)中で行い,冷却は石英管ごと氷塩水中
(253K)
に焼き入れて行った.2.2. 3
比 熱比 熱 の 測 定 は 次 の よ う に し て 行 っ た . 測 定 に 使 用 し た 装 置 は , 理学電 機 製 の 高 感 度 示 差 走 査 熱 量 計
D S C ‑ 8 2 3 0 B
お よ び 熱 分 析 ス テ ーション
T A S ‑ 1 0 0
で あ る . 本 実 験 で は デ ー タ の 解 析 を 効 率 良 く す す め るために,T A S ‑ 1 0 0
をR S ‑ 2 3 2 C
コ ネ ク タ ー を 用 い て パ ソ コ ン( P C ‑ 9 8 0 1
F)と 接 続 し 測 定 デ ー タ か ら の 比 熱 曲 線 の 計 算 な ら び に 解 析 を 行 っ た. こ こ で 比 熱 は 次 の よ う に し て 算 出 し た . 示 差 走 査 熱 量 計 に よ っ て 測 定 さ れ る の は , 基 準 試 料 に 対 す る 測 定 試 料 の 単 位 時 間 当 た り の 熱量変化(示差走査熱量 )dH I d tで あ る . い ま 加 熱 速 度 をdTId t ,
可t
'
41i
1
モ ル 当 た り の 質 量 をMと す る と 定 圧 の 測 定 条 件 試 料 の 質 量 をm
,1 ) ( 2 . 下 で は 次 式 に よ り み か け の 定 圧 比 熱 Cpが得られる.
dH 1 1 dH
M
Cr=一一 ・一一 ・一一=一一一 ・一一一 (J
. r n o l ‑
1 •K ‑
1)d
t
dT m d T m dt M測 定 は 純Alを 以 下 こ の み か け の 比 熱 を 単 に 比 熱 と 呼 ぶ こ と に す る .
試 料 の 質 量 高 純 度 ア ル ゴ ン ガ ス フ ロ ー 中 で 行 っ た .
標準試料とし,
実 験 に 先 立 ち 装 は約
2 0 r n g
, 加 熱 速 度 はO .33K ! s ( 2 0 K ! r n i n )
とした.温 度 の 校 正 に は
N i
の キ ュ リ ー 温 度( 6 3 1 K )
を用 置の校正を行った.7 . 0 3
,S n
お よ びPbの 融 解 熱 そ れ ぞ れ3 . 2 6
,熱量の校正にはIn,
︐ ︑Tlu
試 料 の 熱 処 理 は 試 料 を 内 径 約
2 r n r n
の 一方,4 . 7 7 k J ! r n o l
を用いた.所 定 の 温 度 の 塩 浴
( N a N 0
2‑ K N 0
2 )中 不透明石英管に真空封入した後,所 定 の 時 間 焼 鈍 し た 試 料 は 石 英 管 ご と 氷 塩 水 中 に侵漬して行った.
( 2 5 3 K
)に焼き入れて冷却した.2. 2. 4 B‑H曲線
B‑H曲 線 の 測 定 に は 交 流 に よ る 磁 気 誘 連 法 を 用 い た . 測 定 方 法 は以下のとうりである. 空 隙 磁 束 補 償 用 コ イ ル を 付 し た 磁 束 検 出 コ イ ル に 試 料 を 挿 入 し そ れ を 励 磁 用 ソ レ ノ イ ド コ イ ル の 中 へ 設 置 す る . 励 磁 用 の コ イ ル に 交 流 電 流 を 流 し て 励 磁 す る と , 電 磁 誘 導 に よ り 磁 束 ゅ の 時 間 変 化 d
1 > I d t
に 比 例 し た 電 圧 Vが発生する.v=‑
一 一n ‑‑ddt> 1 一 一
一 一 ・‑nSdB ‑‑‑dt( 2 . 2)
ここで nは磁束検出コイルの巻数, 5は 試 料 の 断 面 積 そ し て Bは試 料の磁束密度である. こ の 電 圧 を 適 当 な 時 定 数 の 積 分 回 路 を 通 し て 時 間 で 積 分 す る と 試 料 の B に 比 例 し た 電 圧 を と り 出 す こ と が で き る .
この電圧をデジタル記録計のY軸に入力する. 一方 , 励 磁 コ イ ル に
発生する磁界はコイルに流した電流に比例するので, この電流に比
例 し た 電 圧 を 抵 抗 を 用 い て と り 出 し デ ジ タ ル 記 録 計 の X軸 に 入 力 す る.つぎにデジタル記録計のデータを X ‑ yプ ロ ッ タ ー に 出 力 し て B‑H曲 線 を 得 る . な お 励 磁 コ イ ル の 磁 界 は ガ ウ ス メ ー タ を 用 い て 校正した.
測定には長さ 80mmに 切 っ た ス ト レ ー ト の リ ボ ン を 用 い , 測 定 は す べ て 室 温 で 行 っ た . 焼 鈍 は 内 径 約2mmの 不 透 明 石 英 管 に 試 料 を 真 空 封 入 し て , 塩 浴 (NaN02‑KN02 )を 用 い て 行 っ た . 冷 却 は 石 英 管 ご と 氷 塩水中
( 2 5 3K
)に焼き入れて行った.ハUU
4Bi
2 . 2 . 5 X
線 回 折作 製 し た す べ て の リ ボ ン 状 試 料 は , 実 験 に 供 す る 前 に ア モ ル フ ァ ス 状 態 で あ る こ と を 確 認 す る た め X線回折ノ々ターンの測定を行った.
X線 源 に は グ ラ フ ァ イ ト モ ノ ク ロ メ ー タ で 単 色 化 し たCuKα線(出 力
4 0 k V
,1 0 0 m A )
を 用 い た . 試 料 を1 5 x 2 0 m m
の 窓 の 空 い た ガ ラ ス 製 ホ ル ダ ー に 窓 を 覆 う よ う に 並 べ て は り つ け , 試 料 の 自 由 表 面 ( 液 体 急 冷時にロールと接触しなかった面)側にX線 が あ た る よ う に 設 置 し た。測定は28
が1 00‑ ‑ ‑ 1 0 0
。の範囲を0 . 0 3 30 / s ( 20 / m i o )
の 速 度 で 走 査して行った.
一方 , ア モ ル フ ァ ス 構 造 の 変 化 を 調 べる た め に 相 関 関 数 の 測 定 も 行った. こ の 場 合 , 散 乱 ベ ク ト ル
Q(
二4πsio ) (
/え)の大きいところ ま で 測 定 す る た め に , 波 長 え の 短 い 単 色 化 し たM:oKα線(出力4 0 k V
,1 0 m A )
をX線 源 と し て 用 い た . 測 定 はQ = 8 ‑ ‑ ‑ 1 3 0 o m ‑
1の 範 囲 を2 θ
の 走 査 速 度0 . 0 0 8 3 0 / s ( O . 5 0 / m i o )
で 行 っ た . ま た , 相 関 関 数 の 解 析 は 文 献( 4 4 )
の方法によった.2.2. 6
微 小 硬 度微 小 硬 度 の 測 定 は マ イ ク ロ ビ ッ カ ー ス 硬 度 計 を 用 い て , 荷 重
0 . 9 8 N
, 測 定 時 間3 0 s
の 条 件 で 行 っ た . 測 定 面 は す べ て リ ボ ン の ロ ー ル 面 ( 液 体急冷時にロールと接触した面)側とし,表面をノ〈フ研磨したあと 黄 銅 板 上 に 固 定 し て 圧 痕 を 打 っ た . 同 一 試 料 に 対 し て2 0
個 所 の 測 定 を行った.第 3 章 物性の不可逆的変化を伴う 構造緩和過程
作 製 し た ま ま の 試 料 で は ア モ ル フ ァ ス 構 造 は 比 較 的 高 い エ ネ ル ギ ー 状 態 に あ る . こ の た め 熱 的 な 刺 激 に よ っ て 容 易 に 原 子 の 再 配 列 を 起 こ し , よ り 安 定 な ア モ ル フ ァ ス 構 造 へ と 緩 和 す る . こ の と き 物 性 の 不 可 逆 的 な 変 化 を 伴 う . こ の よ う な 構 造 緩 和 に お い て 重 要 な 役 割 を 演 じ る の は , 液 体 状 態 か ら の 超 急 冷 の 過 程 で 過 剰 に 凍 結 さ れ た 自 由 体 積 で あ る . ここでは, こ の 構 造 緩 和 過 程 を 構 造 に 敏 感 な 物 性 の ひ と つ で あ る 電 気 抵 抗 の 測 定 に よ り 調 べ , 得 ら れ た 結 果 を 自 由 体 積 と の 関 連 に お い て 解 析 す る . 更 に メ ス バ ウ ア ー ス ペ ク ト ル の 測 定 を 行 い , 構 造 緩 和 過 程 に お け る 局 所 的 な 原 子 の 再 配 列 挙 動 を 明 ら か にする.
3 . 1
電 気 抵 抗3.1. 1
等 温 焼 鈍 に よ る 変 化図
3 ‑1
‑‑.,図3 ‑ 3
はFe? 5 B 1 0S
i 1 5 , F e? 8 B?S
i 1 5および:F e,/ 9 B 1 0S
i 1 1の 各 ア モ ル フ ァ ス 合 金 を , 作 製 し た ま ま の 状 態 か ら 図 中 に 示 し た 各 温 度 で 等 温 焼 鈍 し た と き の 電 気 抵 抗 の 時 間 変 化 を 示 し た も の で あ る . 縦 軸 は 電 気 抵 抗 の 変 化 量(L1R=R(t)‑Ro)を 作 製 し た ま ま の 状 態 で の 抵 抗 値R0
( 7 7 K
で 測 定 ) で 規 格 化 し て 示 し た . い ず れ の 場 合 も 電 気抵 抗 は 短 時 間 で 急 激 に 減 少 し , そ の 後 , 焼 鈍 時 間 と と も に ゆ る41i n
fu
。 1 0 20 30 40 50 60 70 Time , t / k s
。
668κ
,ー、
~
‑0.4
、、ー'
Qこo
。
¥ ミ
、
ー0.2l 678κ
‑0.4
。 し 2 3 4 5 6 ア Time , t / k s
。
‑0.2 603K
‑町、、
ざ ‑0.4
r : Z 0
" " "
ミ ー 0.2 Fe75 8 ' 0 S i l 5 643K
図
3 ‑1
Fe75B10S i
15ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 等 温 焼 鈍 に 伴 う 電 気 抵抗変化.作 製 し た ま ま の 状 態 か ら 図 中 に 示 し た 各 温 度 で 焼 鈍 . 結 晶 化 温 度 は
828K.
電 気 抵 抗 は す べ て77K
で測定.‑0.4
‑0.6
o 50 100 150 200 250 300
Time , t/ks
O
‑0.2 Fe7S87S;15
623K
‑司、
ポー
0.4
、‑‑‑
0‑0.6
ぞ o
ミ ー 0.2 668K
O
‑0.2
• • • •
678K
688K
‑0.4
‑0.6
0 2 3 4
R ‑ ﹀6
Time , t/ks
図
3 ‑2
F e7 8 B7S
i 1 5ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 等 温 焼 鈍 に 伴 う 電 気 抵抗変化.作 製 し た ま ま の 状 態 か ら 図 中 に 示 し た 各 温 度 で 焼 鈍 . 結 品 化 温 度 は
7 8 5 K.
電 気 抵 抗 は す べ て77K
で測定.qぺυ
つ ム
~-0.5
553K
。
、、‑
,...‑1.0
c i ' 0
¥、
Qこ
勺
‑0.5 Fe798'OSi" 573K
‑' . 0
0 1 0 20 30 40 Time , t / k s
~
。
、̲̲.
603κ
a : ? ‑0.5
'‑...
ミ ー ' . 0
0 2 3
Time , t / k s
4
図
3 ‑ 3
Fe7 9B10Sillア モ ル フ ァ ス 合 金 の 等 温 焼 鈍 に 伴 う 電 気 抵抗変化.作 製 し た ま ま の 状 態 か ら 図 中 に 示 し た 各 温 度 で 焼 鈍 . 結 晶 化 温 度 は
704K.
電 気 抵 抗 は す べ て77K
で測定.や か に 減 少 し て い る . 長 時 間 側 で は 電 気 抵 抗 が ほ と ん ど 変 化 し な く
なり,擬平衡値を示すところがみられる.また, この擬平衡値には
焼 鈍 温 度 依 存 性 が 認 め ら れ る . こ れ ら の 合 金 を そ れ ぞ れ678K(Feγ5 BIOSiI5), 688K(Fe?SB7Si15)お よ び603K(Fe79BI0Sill)で.さら
に 焼 鈍 を 続 け る と い ず れ も10ks付 近 か ら 電 気 抵 抗 の 急 激 な 減 少 が 観 察された. こ の 減 少 は , 短 時 間 側 で み ら れ る 減 少 よ り も 著 し く 急 勾 配で起こり,
x
線 回 折 の 結 果 か ら 結 晶 化 に よ る も の で あ る こ と が わ かった. し た が っ て 図 に 示 し た 焼 鈍 時 間 の 範 囲 内 で は 試 料 は い ず れ も ア モ ル フ ァ ス 状 態 で あ り , 観 測 さ れ た 電 気 抵 抗 の 減 少 は 構 造 緩 和 に よ る も の で あ る . 構 造 緩 和 に よ る 電 気 抵 抗 の 減 少 はFeSlB19 ‑xSix (3豆x
豆10)合金("5 )についても報告されている. Fe‑B‑Si系 ア モ ル ファス合金の場合, こ こ で 示 し た よ う に 等 温 焼 鈍 に よ る 構 造 緩 和 で は電気抵抗には減少のみが観測され, Fe‑Ni‑M:o‑B系(" 6 )やFe‑TM:‑B (TM:二Ti,V, Cr, Mn)系(,,? ) ア モ ル フ ァ ス 合 金 な ど に み ら れ る よ う な 抵 抗の増加現象は観測されない. これは,第4
章 で 示 す よ う に 電 気 抵 抗 の 増 加 に 寄 与 す る と さ れ て い る 化 学 的 短 範 囲 規 則 化 が , 本 合 金 系 で は 電 気 抵 抗 の 減 少 を も た ら す こ と に よ る .こ こ で 注 目 す べ き こ と は , 長 時 間 側 で 電 気 抵 抗 が ほ と ん ど 変 化 し な く な り 擬 平 衡 値 を 示 す と こ ろ が 観 測 さ れ る こ と で あ る . これは電 気抵抗からみた起こるべき不可逆的構造変化が, こ の 時 点 で す べ て 起 こ っ て し ま っ て , ア モ ル フ ァ ス 構 造 が 各 焼 鈍 温 度 に お け る 一 種 の 擬 平 衡 状 態 に な っ た た め と 考 え ら れ る . す な わ ち , 作 製 し た ま ま
‑25‑
の 状 態 で は ア モ ル フ ァ ス構 造 は 熱 的 に 非 常 に 不 安定 な 原 子 配 列 を し て お り , 熱 的 刺 激 に よ っ て 再 配 列 を 起 こ す けれ ど も , 熱 処 理 条 件 に よっては一 気 に熱 平 衡 状 態 の 原 子 配 列 す な わ ち 結 晶 化 へ と 進 む の で はなく, 一 旦ア モ ル フ ァ ス 状 態 の 中 の よ り 安 定 な 状 態 に 対 応 す る 原 子配列を実現して, こ の 状 態 で 見 か け 上 原 子 の 再 配 列 を 停 止 す る も の と 考 え ら れ る . ア モ ル フ ァ ス 状 態 に こ の よ う な 安 定 状 態 が 存 在 す る こ と は , 実 用 材 料 と し て 用 い る 際 の 熱 処 理 条 件 を 与 え る も の と し て き わ め て 重 要 で あ る . こ の こ と に つ い て は 第
4
章において詳しく 議論する.ところで, Fe‑B‑Si系アモルファス合金について,構造緩和による
0 . 1 2 ‑ ‑ ‑ 0 . 1 5 %
の密度の増加("8 )および粘度の増加("9 )が報告されて い る . こ れ は 液 体 状 態 か ら の 超 急 冷 の 過 程 で 過 剰 に 凍 結 さ れ た 自 由 体 積 が 焼 鈍 に よ る 構 造 緩 和 に よ っ て 消 滅 す る た め で あ る . したがっ て , こ こ で 観 測 さ れ た 電 気 抵 抗 の 減 少 は , 自 由 体 積 の 消 滅 お よ び 再 分 布 を 伴 う 原 子 の 再 配 列 す な わ ち ト ポ ロ ジ カ ル な 短 範 囲 規 則 化 に よ る も の と 考 え ら れ る . そ こ で , 次 に 電 気 抵 抗 と 自 由 体 積 の 関 連 に つ いて検討する.3.1. 2
焼 鈍 に よ る 温 度 係 数 の 変 化般 に 金 属 , 合 金 の 構 造 的 な 変 化 は 電 気 抵 抗 の 温 度 係 数 に 反 映 される. し た が っ て , 構 造 緩 和 の 前 後 に お け る ア モ ル フ ァ ス 構 造 の 違 い は , 温 度 係 数 の 差 と し て 観 測 さ れ る は ず で あ る . そ こ で , 焼 鈍 の 前 後 に お い て 電 気 抵 抗 の 温 度 係 数 の 測 定 を 行 っ た . 図 3‑4は
F e
79BI0Sillア モ ル フ ァ ス 合 金 を603K
で2 . 7 k s
焼 鈍 し た と き の 焼 鈍 の 前 後 に お け る 電 気 抵 抗 の 温 度 変 化 を 示 し た も の で あ る . 電 気 抵 抗は焼鈍前の試料の
300K
に お け る 抵 抗 値Ro( 3 0 0 )
で 規 格 化 し て 示 し て い る . 測 定 は 加 熱 に よ る 構 造 変 化 が 無 視 で き る 低 温 領 域( 3 2 3 K ‑ ‑ ‑ 4 7 8 K)
で行い,O . 05KI s (3KI
皿i o )
の 加 熱 速 度 で 昇 温 し た . 黒 丸 は 焼 鈍 前 の 試 料 を 定 速 加 熱 し た と き の も の で , 白 丸 は 焼 鈍 後 再 び 加 熱 し た と き の も の で あ る . い ず れ の 場 合 も 電 気 抵 抗 は 温 度 に 対 し て 直 線的に増加している. こ の こ と は , 遷 移 金 属 を 含 む ア モ ル フ ァ ス 合 金の電気抵抗は,T> θ o / 2 ( θ
。はD e b y e
温 度 で 本 合 金 で は 約300K)
の 高 温 域 で は , 温 度 の
1
次 に 比 例 す る と い うC o t e
とM:e i s e l
の 理 論 的 考察(5 0 )と一致 す る . ま た 図 か ら 明 ら か な よ う に 焼 鈍 に よ っ て 電 気 抵 抗 は 減 少 し 抵 抗 の 温 度 係 数 αは 増 大 し て い る . 表3 ‑ 1
は 焼 鈍 による300K
での抵抗の変化L1RI
R( 3 0 0 )
(L1 R = R a s ‑ R a n n)およ び 温 度 係 数 の 変 化 Aα(=α2‑α1)を他のアモルファス合金につい て の 結 果 も 含 め て 示 し た も の で あ る . こ こ で 温 度 係 数 αは 昇 温 速 度 が安定した 378~478K での測定値を最小二乗法により直線近似(図の実線)して求めた.またL1R
I
R( 3 0 0 )
は こ の 直 線 を300K
へ 外 挿ワt'
心q r
δ1.02
O r0
Fe79 810 Si"
1.04
Qごo
注
1.00α2>α1 Aα=α2‑αl
• First run o Second run Heating rate 0.05 K/s
0.98
300 400
了
e m p e r a t u r e
,ア/K500
図 3‑4 定 速 加 熱 に よ る 電 気 抵 抗 の 温 度 変 化 .
・ 印 は 作 製 し た ま ま の 試 料 に 対 す る 測 定 値 .
0
印は603K
で2 . 7 k s
焼鈍後の測定値.加 熱 速 度 は
O .05K /s(3K / m i n ) .
表
3 ‑ 1
焼鈍に伴う300K
で の 電 気 抵 抗 お よ び 温 度 係 数 の 変 化 . LJR=Ras‑Rann, LJα=α2一α1・Sample Heat treatment L1
R / R
C300K) Aα C%) CK‑1 )0.27X10‑5 Fe75B10Si15 678K‑3.6ks 0.36
Fe78B7si15 688K‑4.8ks 0.38 0.12X10‑5
Fe79B10Si11 603K‑2.7ks 0.83 2.05X10四 5
することにより求めた. いずれの合金でも焼鈍によ って
300K
での 電 気 抵 抗 は 減 少 し 温 度 係 数 は 増 大 し ている. 一方 , 図3 ‑ 5
は焼 鈍の前後におけるX
線 回 折 測 定 の 結 果 で あ る . 図 中 に は 比 較 の た め に 結 晶 化 後 の 測 定 結 果 も 示 し た . 焼 鈍 に よ る 回 折 プ ロ フ ィ ル の 変 化 はほとんどみられず,試料がアモルファス状態であることがわかる.他の合金につ いても同様の結果が得られた.
と こ ろ で , 液 体 状 態 か ら の 超 急 冷 の 過 程 で ア モ ル フ ァ ス 合 金 中 に 凍結される自由体積の量は冷却速度に依存する. Alliaら(5 1 )は冷 却速度の異なるいくつかの
F e 8 1
・5Bl 4・5Si4アモルファス合金につい て , 透 磁 率 の 磁 気 余 効 と 室 温 に お け る 電 気 抵 抗 お よ び そ の 温 度 係 数 との相関を調べた. こ こ で 透 磁 率 の 磁 気 余 効 は 自 由 体 積 に き わ め て 敏 感 な 物 性 で あ る . そ の 結 果 , 両 者 の 聞 に は き わ め て 良 い 相 関 が 存 在 し , 自 由 体 積 の 減 少 は 室 温 に お け る 電 気 抵 抗 の 減 少 と 温 度 係 数 の 増 加 を も た ら す こ と を 見 い だ し た . ま た , 彼 ら は 遷 移 金 属 を 含 む ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 電 気 抵 抗 に 関 す る 理 論 に 構 造 緩 和 過 程 を 原 子 レ ベ ル で の 応 力 の 変 化 に よ っ て 記 述 す る 考 え を 導 入 す る こ と に よ り , 構 造 緩 和 に よ る 電 気 抵 抗 の 温 度 係 数 の 変 化 Aα と自由体積の変化 .dV
との聞に次式の関係を導いた(4 B) (52)
Aα=c'.d V (3. 1)
ここで,
c
は試料の組成および作製条件(特に急冷速度)によって決 まる定数である.F e ‑ B ‑ S i
系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 場 合 は C<0
であり,由体積の減少は温度係数の増加をもたらす. したがって表
3 ‑1
nu
u
η/ ω
(a) Fe 798'0 Si"
As‑quenched
(と
C
コ
¥A LO
↑ 一 L 心 L O )
Annealed
603K‑2.7ks
‑α‑Fe
.. Fe"l8
0
f() f()
的 . こ
~
A
C¥JV
¥ ( と
ω c ω
﹂C
(C)
0 0マ.N
問一
V
AU
e
7 ι︒
ゐYE CM VJ
V﹃
FV
30
0 40050
060
070
02 θ
(Cu Kα)800 900
図
3‑5 X
線 回 折 プ ロ フ ィ ル .( a ) 作 製 し た ま ま の 状 態 .
(b) 603K
で2 . 7 k s
焼鈍後.( c )結晶化後.
に 示 し た 焼 鈍 に よ る 室 温
( 3 0 0 K
)での電気抵抗の減少および温度係 数 の 増 大 は , 焼 鈍 に よ っ て 自 由 体 積 が 減 少 し た こ と を 示 し て い る . 液 体 状 態 か ら の 超 急 冷 の た め に 不 安 定 な 位 置 で 凝 固 さ せ ら れ た 各 原 子 が , 焼 鈍 に よ り 超 急冷 の 過 程 で 凍 結 さ れ た 過 剰 な 自 由 体 積 の 消 滅 を 伴 っ て 原 子 間 ポ テ ン シ ャ ル の よ り 安 定 な 位 置 へ 変 位 し , ア モ ル フ ァ ス 構 造 が よ り 安 定 な 構 造 へ 変 化 す る も の と 理 解 さ れ る .以 上 述 べ た よ う に , 図
3 ‑1 ‑ ‑ ‑ ‑
図3 ‑3
に 示 し た 電 気 抵 抗 の 変 化 は , 過 剰 な 自 由 体 積 の 消 滅 と 密 接 に 関 連 づ け ら れ る こ と が わ か っ た . 過 剰 な 自 由 体 積 の 消 滅 は 不 可 逆 的 な 現 象 で あ る か ら , 図 に み ら れ る電気抵抗の変化も不可逆的なものである.次節では, このような電
気抵抗の変化挙動を液体金属の電気抵抗を表す式を自由体積をノミラ
メ ー タ と し て 書 き 換 え た モ デ ル を 用 い て 解 析 す る .
3.1. 3
電 気 抵 抗 と 自 由 体 積アモルファス合金の電気抵抗に関しては, こ れ ま で に 多 く の 測 定 結 果 が 報 告 さ れ て い る . そ し て 多 く の 場 合 , 液 体 金 属 の 電 気 抵 抗 に 関するZiman理論(5 3 )に基づいた解析がなされている.llizutani (54)
は , ア モ ル フ ァ ス 合 金 の 電 気 抵 抗 は そ の 磁 性 状 態 に 応 じ て 論 ず る 必 要 が あ る こ と を 指 摘 し て い る . そ れ に よ る とZiman理 論 に 基 づ く 解 析 が 十 分 に 有 効 で あ る の は , 温 度 に 依 存 し な い 小 さ な 磁 化 率 を 示 す 合金で, S,ρ‑伝 導 電 子 の み が 伝 導 現 象 に あ ず か る 場 合 で あ る .
41i q︿υ
しかしながら, Fe‑B‑Si系 合 金 の よ う に 実 用 上 有 用 で あ る ア モ ル フ ァ ス 合 金 の ほ と ん ど が 遷 移 金 属 を 主 成 分 と し 室 温 以 上 に キ ュ リ ー 温 度をもっ強磁性合金である. このような合金では
s
,ρ‑伝導電子に 加えて原子のまわりにある程度局在した d‑電子も伝導に関与する.さらに伝導電子と磁気モーメントとの相互作用も起こる. このため 伝 導 電 子 の 挙 動 は 極 め て 複 雑 に な り 理 論 的 取 り 扱 い は か な り 難 し い 状況にある.そこで, こ こ で は 現 象 論 的 な 観 点 か ら 図
3‑ 1 ‑ ‑ ‑
図3
‑3
に示した等温焼鈍による電気抵抗の変化を解析する.前 節 で 明 ら か に し た よ う に 抵 抗 の こ の よ う な 変 化 は 自 由 体 積 の 減 少によるものである. 一方 , 自 由 体 積 の 変 化 は 構 造 因 子 の 変 化 を も たらすことが知られている (55) KeltonとSpaepen(56)は自由体積 と構造因子のこのような関連を根拠にして, Ziman理 論 に よ っ て 与 えられる電気抵抗の式は自由体積をノ々ラメータとして書き換えられ
ることを示した.それによると作製したままのアモルファス合金を 等 温 焼 鈍 し た 場 合 に 観 測 さ れ る 電 気 抵 抗 の 時 間 変 化 LJR(t)!Roは, つぎのような式で自由体積の時間変化V
パ t )
と関係づけられる.A R( t)
r
T T T r V。
+Vf(O)1Ro ‑
l 一
VH T3 f
{
VO+~f(t) 一 V o +
V f (0) ( 3. 2)ここで K は 組 成 お よ び 作 製 条 件 に よ っ て 決 ま る 定 数, VHは原子を 剛体球と考えたときの体積である.また, Voは ア モ ル フ ァ ス 合 金 が 最 も 緩 和 し た 状 態 に あ る と き の 原 子 体 積 で あ る . な おV
パ
0)‑v ,
(t=O). とこ ろでv , (
t )は 粘 性 に 対 す る 自 由 体 積 理 論 (5 7 )によ り粘度の変化 η(t )
と次式の関係にある.り(
t ) =
7} 0 (T)exp{γ V~
/V, ( t ) } ( 3 . 3)
ここで旬。 (T)は温度因子,
r
は 幾 何 学 的 因 子 と 呼 ば れ る も の で0 . 5 < r
< 1 の値をとる V~ は原子の拡散のためのジャンプに必要な自由体積の臨界値を表す.また,
F e ‑ B ‑ S i
系 ア モ ル フ ァ ス 合 金 に つ い て の ク リ ー フ の 測 定 結 果 か ら 次 式 が 成 り 立 つ こ と が わ か っ て いるけ8 )
り(t) =可(0)
+
~ t ( 3. 4) し た が っ て 等 温 焼 鈍 過 程 で の 自 由 体 積 の 時 間 変 化 V,(t )
は 次 式 で 表すことができる.V
,
(t)=rV車 / B( t) ( 3. 5)的 )=ln
[品目P{~ 却+ ] 1 +山)
( 3. 6)図
3 ‑1
‑‑..,図3 ‑3
に お い て 実 線 で 示 し た 曲 線 は 式 (3 . 2
)によ る計算結果である. い ず れ の 場 合 も 測 定 値 と 良 く 一致している.計 算 に 際 し て は
K
,V パ 0 )
および月1
7}o(T)
をノミラメータとした.また
r
V京 =0 . 1
V 0とし, V。として近似的にr
‑鉄の原子体積(1.2 1 X 1 0 ‑ 2 n m
3)を 用 い た . さ ら にV
Hは 剛 体 球 の 直 径 を 鉄 原 子 の 原 子 直 径で近似して求めた.計算に用いた各ノミラメータのうちKとV
パ
0)は組 成 ご と に 焼 鈍 温 度 に よ ら ず ほ ぼ一定 の 値 を 示 し た . これは, これ
q︿υ
qt u