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学位論文題名Studies on the Efficient Carbohydrate Synthesis −Selective protecting and transformation of sugars and their applications一

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 熊 谷 大 樹

    

学位論文題名

Studies on the Efficient Carbohydrate Synthesis     

Selective protecting and transformation     of sugars and their applications

一糖質の選択的保護・変換法の開発と応用一

学位論文内容の要旨

  細胞 表層 の糖 鎖 が生 体内 における情報伝達に関与し 、種々の生理活性を示す重要 な物質であ る こと が近 年明 ら かに なっ てきており、糖鎖の詳細な 機能解明のためには、構造が 明確であり 純 度の 高い 試料 を 大量 に入 手することが必要不可欠で ある。糖鎖を合成するための 様々な化学 的 また は酵 素的 方 法が すで に報告されているが、化学 的に高選択的で効率の良いグ リコシル化 反 応に よる 糖鎖 合 成を 達成 するためには優れたグリコ シド形成反応そのものの開発 に加えて、

糖 供与 体・ 糖受 容 体の 簡単 な調製を実現するための位 置選択的化学修飾反応の開発 が重要な鍵 と なる 。本 研究 の 第1章 で は自 然界 にお ける 複 合糖 質の 機能 ・役 割 につ いて、第2章では糖鎖 合成において 有用な保護基、環状ジ−flブチルシリレンジイル基にっ いて述べている。糖質化合 物 は多 数の 水酸 基 を持 って おり、それらは皆似通った 反応性のために位置選択的修 飾は困難で あ る。 その ため 、 糖の 水酸 基を保護する戦略として隣 接する水酸基を反応性のみな らず立体的 な 構造 の差 異に よ って 同時 に保護することは効果的・ 実用的であると考えられる。 現在のとこ ろ 、こ のよ うな 保 護基 とし ては、イソプロピリデン基 、ベンジリデン基等がある。 しかし、こ れ らは 酸処 理や 水 素添 加に より脱保護されるが、より 穏やかな条件でしかも選択的 に取り扱う こ との でき る保 護 基の 開発 がさらに要求されている。 一方、t−ブチルジメチルシ リル(TBDMS) 基や1,1,3,3―テトライソプ口ポキシジシ口キサニリデン(TIPS)基などのシリルエーテル型保護 基 はフ ッ素 陰イ オ ンに より 選択的に脱保護することが できるために実戦的な糖鎖合 成にしばし ば 用い られ てい る が、 酸に 対して不安定であったり、 副生成物を形成することもし ばしばある ためにその利 用は一時的なものに限られ ている。ジ―flブチルシリレ ンジイル基(CDBS)は1,3― シ スジ オー ル構 造 と特 異的 に結合することが知られ、 生理活性天然物やヌクレオチ ド誘導体等 の 合成 研究 に用 い られ てい る。しかしながら、この保 護基を用いた糖鎖関連物質の 合成例は皆 無 である。そこで本研究で はジ‑t‑プチルシリレンジイ ル基の糖鎖合成における保護 基としての 安定性・有用 性を検討することを第一の 目的とした。メチルーpーD― ガラクトピラノシドをはじ め 種々の糖化合物をジ―rプ チルジク口口シランと反応 させたところ2,3一位、3,4―位への結 合 は全 く観 察さ れ ず、46―位のみにCDBS基が高選択 的・高収率で導入された。続 いて、この

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保護基の安定性を確かめるために典型的なニ種類のグリコシル化反応に適用した。合成したシ リル化糖を糖受容体、フッ化糖を糖供与体とし、グリコシル化反応を行ったところ効率よく二 糖誘導体を得ることができた。また、イミデート基を用いて活性化した糖を糖供与体とした時 も同様の結果が得られた。一方、糖ベプチドの合成における有用性についても検討を行った。

この際、CDBS基はオルトゴナルな2糖合成にも対応できることおよびアミノ酸誘導体とのカ ップリング等にも応用できることが判明し、重要なムチン型T抗原構造を合成できた。いずれ の場合も、CDBS基に由来する分解物は全く観察されず、糖鎖・糖ベプチド合成において極め て安定な保護基であることが判明した。CDBS基の脱保護はテトラH−プチルアンモニウムフ口 リド、またはトリェチルアミン三フッ化水素錯体で処理することにより選択的に高収率で達成 された。すなわち、選択的にしかも高収率で保護・変換・脱保護でき、グリコシル化反応の条 件下においても極めて安定な保護基であるこのCDBS基は糖鎖合成化学において極めて有用で あることが示唆された。

  一方、第3章ではL−フコース誘導体を設計するために有用な前駆体であるL「ガラクトース の合成方法について述べている。L‑フコースは生体膜の糖脂質や糖夕ンパク質に広く存在して おり、重要な役割を担っている。例えば、L‑フコースは、ヒト血液型を決定する因子、また、

セレクチンファミリーの結合リガンドとして重要な役割を持っシアリルLeXエピトープの一部 をなすものとしても知られている。それゆえ、L−フコースを合んだ生物学的に活性のあるオリ ゴ糖を設計するためには、簡単かっ効果的な合成ルートの開発が必要である。しかし、L「フコ ースは高価な単糖であり、さらにはCー6位がメチル基であるためにこの位置での化学的修飾が 非常に困難である。一方、L‑ガラクトースはC―6位がヒド口キシメチル基であることを除けば、

L‑フコースと酷似した単糖であり、細胞表層にある糖鎖構造の機能を解明するためのマーカー としてL‑ガラクトースからL‑フコース類似体を合成した報告もなされている。しかしながら、

L‑ガラクトースもまた、化学合成に用いるには高価な糖である。そのため安価な原料から効率 的にL′ガラクトースを合成することができれば、L「フコース含有糖鎖の構造・機能解明に大 いに役立っと考えられる。そこで、容易に入手できるD−ガラクトースからL−ガラクトースを 合成するための合成ルートを開発する事を第二の目的とした。D−ガラクトースを酸性条件化で エタンチオールと反応させることにより、鎖状のガラクトース構造ヘ変換した後、一級水酸基 をTBDMS基、二級水酸基をイソプロピリデン基で選択的に保護した。ついで、C−1位の還元、

C6位の酸化という二段階の鍵となる反応を経由して、脱保護の後、L‑ガラクトースを非常に 効率よく合成することに成功した。

  最 後に第4章で は、第2‑3章で考案した2つの手法を用いた実際の応用例について述べて いる。CDBS基により選択的に保護されたD―ガラクトース誘導体と螢光物質でラベルしたL‑

ガラクトース誘導体とを各々調製し、グリコシル化反応を行い、H型血液型糖鎖類似体の合成 に成功した。

  以上の研究により、申請者は糖鎖合成をより効果的に実現する極めて有用な2つの新規方法 論を考案レた。汎用性に富む有用な糖鎖の合成のために大きく貢献するものと考えられる。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 教授 助教授

西村紳一郎 山岸晧彦

西  貝Ij雄(大学院地球環境科学研究科)

坂入信夫(大学院地球環境科学研究科)

出村  誠

    

学位論文題名

Studies on the Efficient Carbohydrate Synthesis     

―Selective protecting and transformation

    OfSugarSandtheirappliCationS

    

―糖質の選択的保護・変換法の開発と応用―

  細 胞 表 層 の 糖 鎖 が 生 体 内 に お け る 情 報 伝 達 に 関 与 し 、 種 々 の 生 理 活 性 を 示 す 重 要 な 物 質 で あ る こ と が 近 年 明 ら か に な っ て き て お り 、 糖 鎖 の 詳 細 な 機 能 解 明 の た め に は 、 構 造 が 明 確 で あ り 純 度 の 高 い 試 料 を 大 量 に 入 手 す る こ と が 必 要 不 可 欠 で あ る 。 し か し な が ら 、 生 体 内 に 存 在 す る 糖 鎖 は 極 微 料 で あ り 、 そ の 構 造 を 損 な わ ず に 大 量 に 抽 出 す る こ と は 膨 大 な 時 間 を 要 す る 作 業 で あ る 。 一 方 、 糖 鎖 を 合 成 す る た め の 様 々 な 化 学 的 ま た は 酵 素 的 方 法 が す で に 報 告 さ れ て お り 、 こ れ ら の 方 法 は 目 的 と す る 糖 鎖 を 大 量 に 得 る こ と が で き 、 螢 光 プ 口 ー ブ を 導 入 し た り 、 硫 酸 化 を す る な ど し て 新 た な 機 能 を 付 加 す る こ と も 可 能 で あ る 。 化 学 的 に 高 選 択 的 で 効 率 の 良 い グ リ コ シ ル 化 反 応 に よ る 糖 鎖 合 成 を 達 成 す る た め に は 優 れ た グ リ コ シ ド 形 成 反 応 そ の も の の 開 発 に 加 え て 、 糖 供 与 体 ・ 糖 受 容 体 の 簡 単 な 調 製 を 実 現 す る た め の 位 置 選 択 的化 学 修 飾反 応 の 開 発が 重 要 な鍵 と な る。

  こ の よ う な 背 景 に あ っ て 申 請 者 は 、 効 率 的 に 糖 鎖 を 構 築 す る 方 法 を 研 究 す る た め に 、 糖 質 の 選 択 的 保 護 法 と 変 換 法 を 開 発 し た 。 本 論 文 は5章 か ら な り そ の 内 容 は以 下 の よう に 要 約で き る 。

  1章 で は 、 自 然 界 に お け る 複 合 糖 質 の 機 能 ・ 役 割 に つ い て 述 べ て い る 。   2章 で は 、 糖 鎖 合 成 に お い て 有 用 な 保 護 基 に つ い て 述 べ て い る。 す な わち 、 隣 接 す る 水 酸 基 を 一 度 に 保 護 で き 、 フ ッ 素 陰 イ オ ン に よ り 選 択 的 に 除 去 す る こ と が でき る 環 状ジ 一rーブ チ ル シリ レ ンジ イル基(CDBS)を六員環 の糖質の46―位 の

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み に高 選択 的に 、高 収率 で導 入することに成功した。続いて、この保護基の安 定 性を 確か める ため にグ リコ シル化反応に適用したところ、効率よくニ糖誘導 体 を得 るこ とが でき た。 また 、比較的嵩高いフ夕口イル基を持つ糖質を糖供与 体 とし た時 には 、CDBS 基 との 間での立体障害が生じるため、位置選択的グリコ シ ル化 反応 が達 成さ れた 。一 方、糖ペプチドの合成における有用性についても 検 討を 行っ た。 この 際、

CDBS

基はオルトゴナルな二糖合成にも対応できること お よび アミ ノ酸 誘導 体と のカ ップリング等にも応用できることが判明し、重要 な ムチ ン型

T

抗 原構造 を合 成で きた 。い ずれ の場 合も 、CDBS 基に由来する分解 物 は全 く観 察さ れず 、糖 鎖・ 糖ペプチド合成において極めて安定な保護基であ ることが判明した。CDBS 基の脱保護はテトラ門ーブチルアンモニウムフ口リド、

ま たは トリ エチ ルア ミン 三フ ッ化水素錯体で処理することにより選択的に高収 率で達成された。すなわち、選択的にしかも高収率で保護・変換・脱保護でき、

グ リコ シル 化反 応の 条件 下に おいても極めて安定な保護基であるこのCDBS 基は 糖 鎖 合 成 化 学 に お い て 極 め て 有 用 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。

  

第3 章では、L ―フコース誘導体を設計するために有用な前駆体であるL ―ガラ ク トースの合成方法について述べている。L ―フコースは高価な単糖であり、さ ら には

C

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位が ヌチ ル基 であ るためにこの位置での化学的修飾が非常に困難で あ る。一方、L ―ガラクトースはC ー6 位がヒド口キシヌチル基であることを除け ば 、L ―フコースと酷似した単糖であり、細胞表層にある糖鎖構造の機能を解明 するためのマーカーとしてL ―ガラクトースからL ―フコース類似体を合成した報 告 もなされている。しかしながら、L ―ガラクトースもまた、化学合成に用いる に は高価な糖である。そこで、本研究ではD ーガラクトースのC ―1 位アルデヒド 基の還元、C −6 位水酸基の酸化を選択的に行うことにより、L −ガラクトースを合 成 することに成功した。この合成法により、高価なL ーガラクトースを大量に得 る ことができ、それを用いることにより、L −フコースの生体内で果たす役割を 解明するための糖鎖分子合成に役立っと考えられる。

  

4

章 で は 、 第

2‑3

章 で 考 案 し た

2

つ の 手 法を 用い た実 際の 応用 例に つい て 述 べている。CDBS 基により選択的に保護されたD −ガラクトース誘導体と螢光物 質 でラペルしたL ―ガラクトース誘導体とを各々調製し、グリコシル化反応を行 い、H 型血液型糖鎖類似体の合成に成功した。

  

第5 章では、本文を総括している。

  

以上 のよ うに 、申 請者 は糖 鎖合 成を より 効果的 に実 現す る極めて有用な2 つ

の 新規 方法 論を 考案 した 。こ れらは汎用性に富む有用な糖鎖合成のために大き

く 貢献 する もの と考 えら れる 。審査員一同はこれらの成果を高く評価し、申請

者 が 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 受 け る に 十 分 な 資 格 を 有 す る 者 と 認 定し た 。

参照

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