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学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 上 澤 真 平

学 位 論 文 題 名

Tephrostratigraphy and Tephrochronology of Proximal     Deposits from Stratovolcanoes: Implications for   Understanding of Growth Process ofaStratovolcano

(成層火山近傍堆積物のテフラ層序・年代学:成層火 山の成長プロセスの理解に向けて)

学位論文内容の要旨

  

成 層火 山は 爆発 的な噴火によってもたらされる火山砕屑物(テ フラ)と溶岩流と が重 なり 合っ て形 成される.成層火山はこれまでテフラと山体で 別々に研究が行わ れる 事例 が多 く, 山体では極表層部の完新世の活動を中心に研究 きれてきた.これ らの 研究 では ,成 層火山全体の形成史を編むことが困難であった ,これを解決する ため には ,山 体に 加え山麓のテフラをできるだけ過去にさかのぽ って精度良く編年 し, 山体 構成 物と 対比する必要がある,そこで,北海道でも代表 的な成層火山のー っで ある 羊蹄 火山 を例に,同火山のテフラと山体の両方を精度よ く編年し,テフラ と山 体構 成物 を, 岩石学的手法を用いて対比することによりーつ の成層火山全体の 構造 と形 成史 を明 らかにすることを目的とした.また,十勝岳火 山では融雪型火山 泥流 と考 えら れて いる「大正泥流」というーつの火山現象を取り 上げ,堆積物の層 序と 古地 磁気 学を 用いた定置温度の推定から,その詳細な噴火推 移と発生機構を検 討し た. 本論 文は 次の

3

部 で 構成 され てい る. 第1 部は 「 南西 北海 道, 羊蹄火山の 活動史と構造」,第2 部は「 羊蹄火山の完新世噴火史の再検討:長期噴火予測に向け て」 ,第

3

部 は「 融雪 型火 山 泥流 の発 生機 構:十勝岳火山1926 年 大正泥流を例に」

である.

  

1

部 では ,山 麓の テフ ラ およ び山 体を 高精細に調査し,岩石 学的手法を用いて 山体 とテ フラ を対 比することにより,編年が困難である富士山型 の成層火山である 羊蹄 火山 を編 年し ,その成長過程および噴火史を明らかにした. 年代値は新たに立 てたテフラ眉序に基づき,土壌や土壌中の炭化木細片から放射性炭素年代値を得た.

羊蹄 火山 山麓 の羊 蹄火 山起 源の テフ ラは

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層 認識 され た ,こ れら は時 間間隙を示 す厚い土壌と岩石学的特徴により,先羊蹄火山テフラと羊蹄火山テフラに大別でき,

さら に羊 蹄火 山テ フラは前期と後期に区分できる,これらの区分 に対応して,岩石 学的 特徴 から 山体 構成 物も

3

つの ステ ージ に区分できる,上記か ら,各ステージの 噴出 物の 体積 を見 積もり,時間―積算体積階段ダイヤグラムを作 成すると,これら の時 代区 分と 噴出 率,岩石の特徴,噴火様式が対応して変化して いることがわかっ た.すなわち,先羊蹄火山(50 〜40 ka) は,岩石がカルクアルカリ系列で爆発的な噴 火が 多く 噴出 率は

0.79 kma/ky

未 満で あっ たのに対し,7000 年の 休止期の後,羊蹄 火山 前期

(33

〜17 ka) の活 動 が始 まる とソ レアイト系列の岩石が 高い噴出率(平均

1.5 km3/ky)

で噴出し,急激に山体が成長した.さらに,羊蹄火山後期(〜142.5 ka) の 活 動 は ソ レ ア イ ト 系 列 で

P20s

Na20

に 富 み低 い噴 出率 (平 均0.05 kms/ky) で 溶岩 流主 体の 噴火 をしたことが明らかになった.また,羊蹄火山 前期の噴出率は世

63 ‑

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界 の 安 山 岩 質 成 層 火 山 の 中 で も 屈 指 の 噴 出 率 で あ る .

  2部 で は , 羊 蹄 火 山 山 頂 周 辺 の 完 新 世 の 噴 火 堆 積 物 に 着 目 し , そ の 活 動 史 を 明 ら か に し た . 山 頂 周 辺 の 火 口 群 と そ れ ら に 対 応 す る 噴 出 物 は そ れ ぞ れ 全 岩 化 学 組 成 の 特 徴 に よ り 区 別 で き る , こ れ ら の こ と か ら , 山 頂 周 辺 で は 火 口 と マ グ マ 系 を 変 え な が ら , そ れ ぞ れ0.1 kDi3以 上 の 溶 岩 流 出 を 伴 っ た こ と が わ か っ た . こ の う ち 最 新 の 活 動 は 完 新 世 中 頃 か ら 約2500年 前 ま で 活 動 し た 北 山 火 口 群 の 活 動 で あ り , こ の 活 動 は す で に0.1 kD13の 溶 岩 流 出 を 伴 っ た 噴 火 を し て い る こ と か ら , そ の 活 動 は 終 了 し た 可 能 性 が 高 い . よ っ て , 次 の 噴 火 は 火 口 と マ グ マ 系 を 変 え て 山 頂 周 辺 で 噴 火 す る 可 能 性 が 高 い と 考 え ら れ る .

  3部 で は , 大 正 泥 流 堆 積 物 の 層 序 , 岩 相 お よ び 古 地 磁 気 学 的 検 討 に よ る 定 置 温 度 の 推 定 か ら 大 正 泥 流 は 熱 水 を 噴 出 し た 可 能 性 が 高 い こ と を 明 ら か に し た . 大 正 泥 流 は 山 体 崩 壊 に よ っ て 融 か さ れ た と 考 え ら れ る 融 雪 水 の み で は そ の 総 水 量 を 説 明 で き な い . さ ら に , 大 正 泥 流 発 生 時 に 熱 水 系 が 爆 発 し 熱 水 が 噴 出 し た と い う 構 築 し た モ デ ル を 基 に , 熱 水 量 の 見 積 も り を 試 み た . 過 去 の 泥 流 の 速 度 の 記 録 と 重 カ モ デ ル の 計 算 と の 比 較 か ら , 岩 屑 な だ れ の 初 速 度 を 見 積 も り , 爆 発 の エ ネ ル ギ ー を 計 算 し た . 見 積 も ら れ た エ ネ ル ギ ー の す べ て が 熱 水 に よ っ て 与 え ら れ た と 仮 定 し て 熱 水 量 の 計 算 を 試 み た が 約lX 104  D13程 度 で あ り , そ の 量 は 大 正 泥 流 を 発 生 す る の に 必 要 な 量 ( 約5x i06 D13: 融 雪 水 以 外 で 必 要 な 水 量 ) と 比 較 し て 二 桁 以 上 小 さ か っ た . し か し , こ れ は 最 低 値 で あ り , さ ら に 検 討 の 余 地 が あ る . 一 方 , 近 年 の 十 勝 岳62‑11火 口 で の 電 気 比 抵 抗 か ら の 推 定 で は , 大 正 泥 流 を 発 生 さ せ ら れ る だ け の 熱 水 量 ( 約4X 106m3)を 蓄 え て い る 可 能 性 を 示 し て い る こ と か ら , 大 正 泥 流 を 発 生 さ せ た 熱 水 系 も 同 等 の 熱 水 量 を 蓄 え て い た 可 能 性 も 十 分 考 え ら れ る . こ れ ら の こ と は , 大 正 泥 流 形 成 に 熱 水 が 大 き く 関 与 し た こ と を 強 く 示 唆 し て い る .

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学位論文審査の要旨

中 川 光 竹下 村上 新井田清 吉 本 充 遠 藤 邦

学 位 論 文 題 名

弘 徹 亮 信 宏

彦(日本大学文理学部)

Tephrostratigraphy and Tephrochronology of Proximal     Deposits from Stratovolcanoes: Implications fOr   UnderStandingofGrOWthPrOCeSSOfaStratOVOlCanO

(成層火 山近傍 堆積物の テフラ 層序・年代学:成層火山の成長プロセスの理解に向けて)

  

成層火山の成長プロセスを理解するためには,成層火山を編年したり,個々の噴火現象を 詳しく理解したりしなけれぱならない.成層火山では,山体構成物と山麓のテフラ(火砕物)

を対比すれぱ火山体を編年でき,より山体近傍のテフラの産状からその噴火様式や推移が理 解できる.しかし,成層火山はその山体近傍での露頭条件の悪さから,山体の表層のごく一 部しか編年が進んでおらず,個々の噴火推移の詳細についても理解が進んでいないのが現状 である.そこで,本研究は北海道でも代表的な成層火山のーっである羊蹄火山を例に,成層 火山全体の構造と形成史を明らかにすることを目的とし,テフラと山体の高精細な地質学的 調査に加え,大量の岩石学的データを用いて両者を対比し編年することに成功した.また,

一つの噴火現象の推移を理解するための例として,十勝岳の大正泥流を取り上げた.大正泥 流の研究では,泥流を発生させた広義の火口近傍テフラである岩屑なだれ堆積物の層序と分 布を詳細に記載し,加えて古地磁気学を用いた定置温度の推定から,その噴火推移と発生機 構を明らかにした.この研究から,火山における熱水変質体の崩壊・堆積という,現在の羊 蹄 火 山 表 層 部 で は 見 ら れ な い 成 層 火 山 の 成 長 プ ロ セ ス が 理 解 で き た .

  

第1部では羊蹄火山の全体の形成史を検討した.羊蹄火山山麓の羊蹄火山起源のテフラは

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層認識された.これらは長い時間間隙を示す厚い土壌と岩石学的特徴により,3つのグル ープに分けられる.一方,山体構成物も層序と岩石学的特徴から3つのステージに区分でき る.この3つのテフラグループと山体構成物グループは岩石学的特徴によって下位よりそれ ぞれ対比できる.このことから,羊蹄火山の活動は7,000年以上の休止期を境に,先羊蹄火

    

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授 授

授 皴

教 授

教 教

教 雛

助 教

査 査

査 査

査 査

主 副

副 副

副 副

(4)

(>542ka)と 羊 蹄 火 山 に , さ ら に 約3500の 休 止 期 を 境 に 羊 蹄 火 山 は 前 期(33 17.5kめ と後 期(14 2.5ka)に 分 け ら れ る . そ し て , こ れ ら の 活 動 期 ご と に 噴 出 率 , 噴 火 様 式 , マ グ マ タ イ プ が 異 な る こ と が わ か っ た . ま た , こ の こ と は ー つ の マ グ マ 系 が ー つ の 活 動 期 に 対 応 し て い る こ と を 指 摘 し た . 噴 出 物 の 積 算 階 段 図 か ら , 羊 蹄 火 山 前 期 の 噴 出 率 はl.5kD13と 高 く , 3317.5kaの 間 に 急 激 に 山 体 を 成 長 さ せ て い る こ と が わ か り , 安 山 岩 質 成 層 火 山 と し て は 世 界 的 に 大 き な 噴 出 率 で あ る . こ の よ う に , 山 麓 の テ フ ラ お よ ぴ 山 体 を 高 精 細 に 調 査 し , 岩 石 学 的 手 法 を 用 い て 山 体 と テ フ ラ を 対 比 す る こ と に よ り , 編 年 が 特 に 困 難 な 円 錐 形 成 層 火 山 で あ る 羊 蹄 火 山 を 編 年 し , そ の 成 長 過 程 お よ ぴ 噴 火 史 を 明 ら か に し た .   2部 で は , 羊 蹄 火 山 山 頂 周 辺 の 完 新 世 の 噴 火 堆 積 物 を 新 た に 発 見 し そ の 活 動 史 を 明 ら か に し た , さ ら に , 噴 火 履 歴 か ら 長 期 噴 火 予 測 を 試 み て い る . 山 頂 周 辺 の 噴 出 物 は 層 序 , 火 口 位 置 お よ ぴ 岩 石 学 的 特 徴 に よ り 区 別 で き る . 山 頂 周 辺 で は 火 口 と マ グ マ 系 を 変 え な が ら , そ れ ぞ れ0.1 kD13以 上 の 溶 岩 流 出 を 繰 り 返 し た こ と を 明 ら か に し た . こ の 活 動 履 歴 か ら , 次 の 噴 火 は 火 口 と マ グ マ を 変 え て 山 頂 周 辺 で 噴 火 し , 山 麓 ま で 到 達 す る よ う な 溶 岩 流 出 を す る 可 能 性 が 高 い と 結 論 づ け た .

  3部 で は , 大 正 泥 流 堆 積 物 の 層 序 , 岩 相 お よ び 古 地 磁 気 学 的 検 討 に よ る 定 置 温 度 の 推 定 か ら 大 正 泥 流 は 熱 水 を 噴 出 し た 可 能 性 が 高 い こ と を 明 ら か に し た . 大 正 泥 流 は 山 体 崩 壊 に よ っ て 融 か さ れ た と 考 え ら れ る 融 雪 水 の み で は そ の 総 水 量 を 説 明 で き な い . さ ら に , 本 研 究 で は 大 正 泥 流 発 生 時 に 熱 水 系 が 爆 発 し 熱 水 が 噴 出 し た と い う 構 築 し た モ デ ル を 基 に , 熱 水 量 の 見 積 も り を 試 み て い る . 過 去 の 泥 流 の 速 度 の 記 録 と 重 カ モ デ ル の 計 算 と の 比 較 か ら , 岩 屑 な だ れ の 初 速 度 を 見 積 も り , 爆 発 の エ ネ ル ギ ー を 計 算 し た . 見 積 も ら れ た エ ネ ル ギ ー の す べ て が 熱 水 に よ っ て 与 え ら れ た と 仮 定 し て 熱 水 量 の 計 算 を 試 み た が , 約1X l04ni3程 度 で あ り , そ の 量 は 大 正 泥 流 を 発 生 す る のに 必 要 な 量 (約5x l06 D13:融 雪 水 以外 で 必 要 な 水量 ) と 比 較 し て ニ 桁 以 上 小 さ か っ た . し か し , こ れ は 最 低 値 で あ り , さ ら に 検 討 の 余 地 が あ る . 一 方 , 近 年 の 十 勝 岳62‑11火 口 で の 電 気 比 抵 抗 か ら の 推 定 で は , 大 正 泥 流 を 発 生 さ せ ら れ る だ け の 熱 水 量 ( 約4x l06 D13)を 蓄え て い る 可 能 性を 示 し て い るこ と か ら , 大正 泥 流 を 発 生さ せ た 熱 水 系 も 同 等 の 熱 水 量 を 蓄 え て い た 可 能 性 も 十 分 考 え ら れ る . こ れ ら の こ と か ら , 大 正 泥 流 形 成 に 熱 水 が 大 き く 関 与 し た こ と を 強 く 示 唆 し て い る こ と を 指 摘 し た .

  こ の よ う に , 本 研 究 で は , 高 精 細 な 地 質 学 的 デ ー タ に 加 え , 大 量 の 岩 石 学 的 デ ー タ を 自 ら 収 集 し , 従 来 編 年 が ほ と ん ど な さ れ て こ な か っ た 円 錐 形 成 層 火 山 の 全 体 を 編 年 す る こ と に 成 功 し て い る , さ ら に , 大 正 泥 流 の 研 究 で は こ れ ま で の 発生 メ カ ニ ズ ムを 覆 す 結 果 を 得て い る . こ れ ら の 成 果 は , 火 山 学 ・ 岩 石 学 的 に 重 要 で あ る だ け で な く , 長 期 的 な 噴 火 予 測 の 基 礎 的 研 究 と な り , 防 災 対 策 た ど 社 会 的 要 請 に も 貢 献 で き 高 く 評 価 で き る ,

  よ っ て 著 者 は , 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る

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参照

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