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学位論文題名Synthesis and Characterisation of NewType of Cell Adhesive Glycopeptides

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 松 田 匡 雄

     学位論文題名

Synthesis and Characterisation of New Type of Cell Adhesive Glycopeptides

(新しい細胞接着性糖ベプチドの合成とその性質)

学位論文内容の要旨

  細胞間の相互作用は、細胞の接着や細胞間の情報の伝達、分化、免疫反応、免疫担当細 胞の血管内交通、傷の治癒、細胞の浸潤、ガンの転移、ウィルスの感染など、多くの生命 現象に重要な役割を果たしている。この相互作用は、細胞表面および細胞外マトリックス 内に存在する様々なりガンドと レセプターの特異的な結合により正確に保たれている。

  自血球の炎症部位への浸潤には、少なくともセレクチン、インテグリン、免疫グロブリ ンスーパーフんミリーの3種類の細胞接着性リガンドが関与していると考えられている。

セレクチンとそのりガンドである糖ペプチドや糖脂質の相互作用は、自血球が血管内皮細 胞に接着するための第一段階であるローリングを引き起こす。これにより、血液中の白血 球は血管内皮細胞上を転がるようになる。さらに,インテグリンと免疫グロブリンスーパ ーファミリーの相互作用により,自血球は一時的に血管内皮細胞に固定化される。固定化 された自血球は、更なるインテグリンを介した相互作用により炎症部位へと浸潤して行く。

  セレクチンは、E‐、P―、L.セレクチンの3種に分けられ、細胞表層に存在する特定の構造 を持っ糖鎖を認識し結合するこ とが知られている。特に、E‑セレクチンおよびP‑セレク チンはシアリルルイスXと呼ばれる4糖構造を認識しているとされている。この糖鎖は、

白血球が血管内皮細胞に結合する上で必要な構造であり、さらにガンの転移においても重 要な働きをしているとされている。したがって,リュウマチなどの抗免疫病剤やガンの転 移 の 阻 害 剤 と し て 、 様 々 な シ ア リ ル ル イ スX類 似 体 が 合 成 さ れ て い る 。   一方、細胞外マトリックスであるフィブロネクチンやビトロネクチン、フィブリノーゲ ンなどに存在する細胞接着性ペ プチドRGDSは、細胞表面に存在するインテグリンと相互 作用し、細胞の強固な接着に重要な役目を果たしている事が知られている。このベプチド 鎖を含むGRGDSは、マウスメラノーマ細胞ののフィブロネクチンーの接着を阻害し、さら にガン細胞の実験的肺転移をも抑制することが示されている。

  そ こ で、 私は 、RGDSと シア リル ルイスXおよびシアリルルイスXの特徴であるシアル 酸をそれぞれの特性を生かせるよう適当なスペーサーを介して結合させた非天然型の細胞 接着性糖ペプチド1および2(図1)を設計しその合成を行った。

  糖ペプチドの合成は、保護基の選択やそのカップリング条件、脱保護の条件の選択など 非常に困難とされている。そこで,今回の合成では,化学的手法と酵素的手法をあわせて

‑ 230

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用 い る こ と に よ り 高 収 率 で 効 果 的 に 合 成 を 行 う こ と が で き た 。 ま た、aー2.3−シ アル 酸 転 移 酵 素 お よ びt二ヒ ―1,3ーフ コー ス 転移 酵素 を用 いた 糖 転移 反応 にお いて 、 糖受 容体 の 分 子量 が 低分 子で ある に もか かわ らず 、比 較 的高 収率 (シ アリ ル 化―79.5%, フ コシル化ー 55.6% ) で進 行し てい る こと から ,こ れら の 酵素 は, 糖鎖 の構 造 ぱか りで なく そ の周りの構 造 も認 識 して いる と考 え るこ とカsで きる 。

  こ の 合 成 し た 糖 ペ ブ チ ド のE− ,P− ,L− セ レ ク チ ン へ の 結 合 カ を表 面ブ ラ ズモ ン共 鳴 法 を 用 い て 評 価 し た 。 そ の 結 果 を 表1に ま と め た 。 こ の 表 か ら 、 合 成し た糖 ベ プチ ドは シ ア リ ル ル イ スXと 比 べ てP‐ セ レ ク チ ン に 対 して 非常 に高 い 親和 性を 持つ こと が 明ら かと な っ た。 ま た、E‐ セレ クチ ンに 対し ても結合カの 上昇が認められた。しかし、L‐セレクチンに 対 して は シア リル ルイ スXと同 様ほ ぼ 結合 しな いこ と が示 され た。

  ま た 、RGDSの 効 果 に っ い て 、 イ ン テ グ リ ン ロ1鎖 と そ の モ 丿 ク ロ ーナ ル抗 体 の結 合の 阻 害 カ に つ い て 表 面 ブ ラ ズ モ ン 共 鳴 法 を 用 い て評 価し た。 モ 丿ク ロー ナル 抗体 の 向き をそ ろ え る た め 、 ま ず 、 ア ミ ノ シ ラ ン キ ュ ベ ッ ト の 表 面 に ブ ロ テ イ ンAを 固定 化し そ の上 にモ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 固 定 化 し た 。 こ う し て 作 成し たキ ュベ ッ トを 用い て実 験を 行 った 結果 、 イ ン テ グ リ ンp1  (3.2g/ml) が 存 在 す る 系 に お い て 化 合 物1IC50=0.55 mMと い う 結 果 を 示 し た 。 こ れ は 、 同 じ 系 に お い てRGDSが示 したIC50=1.16 mMよ りも よい 結 果で ある 。 ま た 、 化 合 物1は 、 活 性 化 ヘ ル バ ーT細 胞 の コラ ーゲ ンコ ー トブ レー トへ の接 着 も強 く阻 害 す るこ と が確 かめ られ て いる 。

  こ れ ら の 結 果 よ り こ の 合 成 し た 非 天 然 型 糖 ベ ブ チ ド は 、RGDSお よ び シ ア リ ル ル イ スX の そ れ そ れ の 特 性 お よ ぴ レ セ ブ タ ー と の 結 合活 性を 失っ て いな いた め、 新し い 細胞 接着 の モ ジュレーターとなり得る ことが示された。

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H‑Lys‑Gly   .Col, /¥/COt'JH

‑  /CONH‑

Arg‑Gn/‑Asp‑Ser‑OH

Arg‑Gn/‑Asp‑Ser‑OH

Selectin Ligand

k.(M.s・ ) kわ (s| ) K. (M| )

978.1 i.sxio' 6.6X J o'

229.6 26XIO ' 8.11XIO'

114.5 4.5 X10 2.5XIW

89.1  9.2X10 ' 9.7XIOJ

k.,(M's')    451.2     21.1 k̲,(s')   I.IXIO'  1.7XIO"

K^(Ml)   4.IXIO'   1.ZX10'

1

L‑sclcciin

  SU'‑RGDS   su' LacNAc‑RGDS   R (,DS   kー.(Mts|)    180.1     ユ1 2.7     298     4.l   kー(s|)     I.qXIO   3.6X|n     2.9X102   7.7X IO   K‐(MI     9.5X|0   R.7XIO'     I.OX|0     54

1

‑ 231‑

      o i       6 6       o x m       LI

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学位論文審査の要旨

主査  教授  西村紳一郎 副査  教授  山岸晧彦

副査  教授  西  則雄(大学院地球環境科学研究科)

副査  教授  坂入信夫(大学院地球環境科学研究科)

副査  助教授  吉田  孝

    学位論文題名

Synthesis and Characterisation of New Type of Cell Adhesive Glycopeptides   (新しい細胞接着性糖ベプチドの合成とその性質)

  細胞同士の相互作用は、細胞の接着をはじめ細胞間における情報の伝達、細胞 の分化、免疫応答、傷の治癒、ガンの転移、ウィルスの感染などの重要な生命 現象に関与している事が知られており、これらの現象は多種類の細胞接着分子 の相互作用が複雑に関与する事により精密に制御されていることが知られてい る。近年、これらの接着分子の阻害剤を合成し細胞接着を制御することによル ガンの転移を阻止したルリュウマチ関節炎を軽減する事が可能となると考えら れ、セレクチンやインテグリンといった様々な細胞接着分子の阻害剤の合成研 究が盛んに行われている。しかし、これらの阻害剤はあるーつの分子にターグ ットをしぼっているため複雑な相互作用が関与する細胞接着を効果的かつ強カ に制御する事は極めて難しく、新しいコンセプトに基づく阻害剤の設計が望ま れている。

  この背景にあって申請者は、二つの異なる細胞接着分子のりガンドとなる糖鎖 およびべプチド鎖を同一分子内に共存させる事により、これまでにないタイプ のメカニズムに従う阻害活性を示す糖ペプチドへと誘導する事を企図している。

すなわち、ヘテ口ピフんンフショナルリガンドという新しい概念を提唱した。

また、申請者は一般に困難とされている人工糖ベプチドの合成において化学的 合成法と酵素的合成法をあわせて用いる事により効率的にその合成を行う事に 成 功し た 。本論文 は、4章 からなりそ の内容は以 下のように 要約できる 。   第1章では、本 研究の背景、目的、およびその意義を明確に述べている。

  第2章では、細胞外マトリックスであるフィブ口ネクチン由来の細胞接着性テ トラペプチド"RGDS,,と分子内にカルポキシル基を持つユニークな糖質 シ

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アル酸 を適当なスベーサーを介して持つへテロビファンクショナルリガンド を化学 的に合成し た。RGDSは、非 常に小さい構造でありながら細胞表面に 存在する細胞接着夕ンバク質 インテグリン と相互作用する事が知られてい る。さらにこのべプチドは、ガンの転移を阻害する事も知られており、この合 成したへテロビフんンクショナルリガンドも同様の活性を示す事が期待される。

  第3章では、糖鎖構造にもはっきりとした役割を持たせるため、糖鎖の構造を より複雑にしたへテロビフんンクショナル糖ベプチドの合成を行っている。糖 鎖の構造としては、自血球と血管内皮細胞の相互作用に重要な役割を果たして いる細胞接着夕ンバク質 セレクチン のりガンドであるシアリルルイスX構 造、Neu5Aca2+3Gal[31→4[Fuca(1→3)]GlcNAc、を選択した。また、ベプチド鎖 にはRGDSに 加え適当な スベーサー となり得るようりジンおよぴグリシンを 導 入し たKGRGDSを 選択 し た。ま た、この人 工糖ペプチ ドを合成す るにあ たりすべての工程を化学的合成法により行う事は、糖鎖とべプチドの化学的性 質の大きな違いから非常に困難と考えられる。そこで、申請者は化学合成法と 酵素合成法を併用することにより簡便かつ効率的にこの合成を行い高収率で目 的物を得ることに成功した。

  第4章では、第3章で合成したヘテロビフんンクショナルリガンドの生理活性 を表面プラズモン共鳴法により評価した。第一に、合成糖ベプチドとセレクチ ンの相互作用について検討した。その結果、ヘテロビフんンクショナルリガン ドは、 本来のりガ ンドである シアリルルイスXよりP−セレクチンには約10 0倍、E− セレクチン には約20倍強 い接着能カを持つことが示された。この 事から 合成した糖 ベプチドは 、糖鎖構造によルセレクチンに結合しRGDS構 造によりその結合が強められたと考察した。次に、この化合物とインテグリン の相互作用について検討した。インテグリンp1とそのモノク口ーナル抗体の 結合の 阻害活性に より評価し た結果、合成糖ベプチドは、RGDSの約半分の 濃度でも強い活性を示すことを発見している。また、活性化したへルバーT細 胞のインテグリンを介したコラーゲンに対する結合もこの合成糖ベプチドによ り強く阻害されることが示されている。これらの結果から、この合成したへテ ロビフんンクショナル糖ペプチドリガンドが、その糖鎖とぺプチド双方の構造 によりそれそれの活性を「協同効果」として増強していることが示された。

  第5章では、本論文を総括している。

  以上のように申請者は、二つの異なる細胞接着性リガンドを同一分子内に持つ 細胞接着性人工糖ベプチドを合成し、ヘテロピフんンクショナルリガンドとい うまったく新しい概念を提唱した。この概念は、独自の仮説に基づき考案され ており高く評価できる。よって審査員一同は申請者が博士(理学)の学位を受 けるに充分な資格を有するものと認定した。

表 1 ‑ 231‑    げo伽[i−    66    びo卯xm    LI

参照

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