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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 柳 内 秀 勝

     学位論文題名

INtIetabolic ChangeslnHumanCD36DefiCienCy     DisplayedbyGlucoseLoading      ( ブ ド ウ 糖 負荷 に よ り 明 ら か に な っ た      ヒ ト CD36 欠 損 症 に お け る 代 謝 性 変 化 )

学位論文内容の要旨

    血 清遊 離脂 肪酸 は、 受動 輸送や転送蛋白な どによる促進輸送により組織に取り込 まれる。転送蛋白として、これまでにfatty acid binding protein(脂肪酸結合蛋白)、

fatty acid trarsporterprotein(脂肪酸転送蛋 白)、CD36などが知られている。特に CD36は 、 最 近 のinvitr0の 実 験に よ り脂 肪酸 の取 り込 みに おけ る生 理学 的機 能が 明 ら かに なり つっ ある が、 ヒト の脂肪酸代謝に及 ぼす影響に関する検討は殆どなされて いない。

    CD36は 、 血 小 板 、 単 球 な ど に 発 現 す る88kDの 膜 糖 蛋 白で あり 、そ の欠 損症 が 知 られ てい る。CD36欠損 症は 、血 小 板、 単球 の両 方に 欠損 して いるType|と 血小 板 に お い て の み 欠 損 し て い るType‖ とに 分類 され る。 現在 まで に3つ の遺 伝子 変異 が 報 告さ れて おり 、プ ロリ ンか らセ リ ンへ のア ミノ 酸置 換を生じるnt478でのCT置換、

フ レ ー ム シ フ ト に よ ル ス ト ッ プ コ ド ン を 生 じ るnt539で の2塩 基欠 失、nt1159で の 1塩 基 挿 入 な ど が あ る 。Typel欠 損 が 既 知 変 異 の ホ モ 接 合 体で 、TypelI欠損 がへ テ ロ接合体であるこ とを我々は明らかにしている。

    CD36は 、心 臓、 骨格 筋: 脂肪 細 胞な ど脂 肪酸 代謝 を活 発に 行な って いる 組織 に も 多く 発現 して いる が、 これ らの 組 織に おけ るType| およ びTypelI欠損 によ る発 現 量 の差 異お よび 脂肪 酸代 謝に 及ぼす影響は明ら かになっていない。今回、糖負荷によ り 脂 肪 酸 代 謝 を 高 め る こ と に より 、Typelお よびType‖欠 損の 血清 脂肪 酸代 謝に 及 ぼす影響を検討し た。

    CD36欠 損 症 の 表 現 型 は 、 空 腹 時EDTA加 血 を 採 取 し 、Fluorescein― isothiocyanate(FITC) 標識 抗CD36モノ クロ ‐ナ ル抗 体(FA6ー152;|mmunoteCh, Miami,F| )を 用い たフ ロー サイ ト メト リ― にて 決定 した。遺伝子型は、DNAをEDTA 加 血 よ り 抽 出 し 、restrictionfragmentlengthp01ymorphiSm(RFLP)−polymeraSe ChainreaCtion(PCR) 法 に て 、nt478で のCT置 換 (nt478T) 、nt539で の2塩 基 欠 失 (nt539delAC) 、nt1159で の1塩 基 挿 入 (nt1159insA) を 解 析 し た 。     対 象 は 、 正 常 者16例 、Type15例 、 お よ びType‖16例 の女 性ボ ラン テイ アで 、

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3群間の年齢、Body Mass Index、血圧、空腹時の血清脂質、グルコ―ス、インスリ ン等に有意な差を認めなかった。15時間絶食後、75gブドウ糖液を負荷し、30分ご とに180分間採血し、血漿グルコース、血清インスリン、遊離脂肪酸を含めた脂質を 測定した。

    糖負荷後30分後、血清遊離脂肪酸は、正常者において急速な減少(60.1%)を 示し、Type lIでは、31.7%の減少を示した。―方、Typelにおいては、16.5%の滅 少を示したのみで、また糖負荷後120分間、正常者に比ベ有意な高値を示した。脂肪 酸を除く血清脂質で唯一有意な変化を示したのが、トリグリセライドで、陽性者で漸 滅を示したのに対し、Typelでは、むしろ60分までの奇異的上昇および滅少の遅延 を示した。この減少の遅延は、Type lIにおいても認められ、120分の値が、陽性者 に比ベ有意な高値を示した。糖負荷後60、90分のグルコースが、Typel(136.8土4.6、 122.2土8.3 mg/dl)、Type lI(122.6土7.6、112.6士5.2)の両方において、陽性 者(101.2土7.2、97.6土4.3)に比ペ有意な高値を示した。しかし、インスリン値は、

どの時間においても3群間で有意な差を認めなかった。また、インスリン感受性の指 標を検討したが、グルコ―ス濃度の3時間の積算値が、TypeI(356.1土34.0 mg/dl xh)、Type lI(33S.0土52.2)の両方で正常者(299.0土48.7)に比ベ有意な高値を 示したが、インスリン抵抗性の指標であるインスリンの積算値、homeostasis model

assessment (HOMA)指数 、空 腹時 グル コ―ス・インスリン比に3群間で有意な差

を認めなかった。

    筋肉にCD36を過剰発現させたラットの空腹時脂肪酸濃度が、有意な低値を示し、

また、収縮によルコントロールの約3倍の脂肪酸を燃焼させるなどの報告があり、in

vitroや実験動物を用いた研究において、CD36の脂肪酸トランスボー夕一としての機

能が示唆されていた。しかし、ヒトにおけるTypel、Type lIでの脂肪、筋肉組織での 発現の差違および両欠損の脂肪酸を含めた脂質代謝への影響は、現在のところ明らか になっていない。本研究の結果で、正常者で糖負荷後の速やかな脂肪酸レベルの低下 を示したのに対し、TypeI欠損で、早期脂肪酸クリアランスの著明な低下を認め、血 清脂肪酸クリアランスには、少なくとも2っ以上の機序があり、そのうちの1つは、

急速でかつCD36依存性であることが示唆された。血清トリグリセライドは、陽性者 において糖負荷により暫時的滅少を示し、インスリンによるりボ蛋白リパ―ゼの活性 化が示唆されたが、Typelにおいて、―時的な奇異的増加および滅少の遅延を認めた。

この結果は、CD36欠損マウスで血清トリグリセライドが高値で、CD36のトランス フェクションにより低下したという報告に合致する。この卜リグリセライドの高値の 機序としては、代謝の遅延した遊離脂肪酸がCD36非依存性に脂肪酸を取り込む肝臓 に取り込まれ、肝臓での卜リグリセライド合成が促進レたためと考えられる。以前、

CD36欠損がインスリン抵抗性の原因であると報告されたが、今回の検討では、イン スリン抵抗性の各指標にCD36欠損者と正常者の間で有意な差を認めず、ヒトにおけ るCD36欠損のインスリン抵抗性への関与は否定的であった。Typel、Type‖の両方 で、糖負荷後60、90分でのグルコースおよび3時間でのグルコースの積算値が有意 な高値を示したが、代謝の遅延した脂肪酸の肝臓への流入による糖新生の亢進による

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学位論文審査の要旨

     学 位 論 文 題 名

Metabolic ChangesmHumanCD36De 丘 CienCy     DisplayedbyGlucoseLOading      ( ブ ド ウ 糖 負 荷 に よ り 明 ら か に な った      ヒ ト CD36 欠 損 症 に お け る 代 謝 性 変 化)

血清 遊離 脂肪 酸は、 受動 輸送 や転 送蛋白などにより組織に取り込まれる。転送 蛋白として、fatty acid binding protein、fatty acid transporter protein、CD36 な ど が 知 ら れ て い る 。CD36は 、 血 小 板 、 単 球 な ど に 発 現 す る88kDの 膜 糖 蛋 白 で あ り、 そ の 欠 損症 が知 られ てい る。CD36欠損 症は 、血小 板、 単球 の両 方 に 欠 損 して い るType‑Iと血 小板 にお いて のみ 欠損 して いるType‐ ‖と に分 類 され る。Type‐IはCD36遺伝 子変 異の ホモ 接合体 と複 合ヘ テロ 接合体であり、

Type− ‖は 変 異 遺 伝子 と正 常の へテ ロ接 合体 であ る。 今回、 申請 者は 、CD36 欠損 の血 清脂 肪酸代 謝に 及ぼ す影 響を 検討 する ため 、正 常者16例、Type−|5 例 、 お よびType‑II16例 に75gブ ド ウ 糖 液 負 荷 試験 を施 行し 、30分ご とに180 分間 採血 し、 血漿グ ルコ ―ス 、血 清インスリン、遊離脂肪酸を含めた脂質を測 定した。糖負荷30分後、血清遊離脂肪酸は、正常者において急速な減少(60.1% 滅少 )を示し、Type―‖では、31.7%の滅少を示した。一方、Type−lにおいて は 、 そ の減 少 は16.5% に と ど ま り 、 糖 負 荷 後120分ま で正常 者に 比ペ 有意 な 高値 を示 した 。脂肪 酸を 除く 血清 脂質で唯一有意な変化を示したのが、卜リグ リセ ライドで、正常者で漸滅を示したのに対し、Type−IおよびType−‖に減少 の遅 延を 認め た。糖 負荷 後60、90分の グル コ― スが 、Type−I、Type‐‖の両 方に おい て、 正常者 に比 ペ有 意な 高値を示した。しかし、インスリン値は、ど の時 間に おい ても3群間 で有 意な 差を 認め なかっ た。 また 、イ ンスリン抵抗性 の指 標に も3群 間で 有意 な差 を認 めな かっ た。正 常者 が糖 負荷 後の速やかな脂 肪 酸 ク リア ラ ン ス を示 した のに 対し 、CD36欠 損で は著 明なク リア ラン スの 遅

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延を認めることから、血清脂肪酸クリアランスには、少なくとも2 っ以上の機 序があり、そのうちの1 つは、急速でかつCD36 依存性であることが考えられ た。また、欠損者における糖負荷後のトリグリセライドおよびグルコース濃度 の高値の機序として、代謝の遅延した遊離脂肪酸がCD36 非依存性に肝臓に取 り込まれ、肝臓でのトリグリセライドおよびグルコ―スの合成を促進したため であると考察した。さらに、以前、CD36 欠損がインスリン抵抗性の原因であ ると報告されているが、今回の検討から、ヒトにおけるCD36 欠損のインスリ ン抵抗性への関与は否定的であった。しかし、今回検討した対象者は、20 歳前 後の若年者であったため、インスリン抵抗性が問題になるのは、中年以降であ る こ と を 考 慮 す る と加 齢 に よ る 影 響 の 検 討 も 必要 であ ると考 えら る。

   公開発表に際し、副査の宮崎勝巳教授から、 CD36 転送に係わる脂肪酸の長 さ、CD36 分子の糖鎖の含量と機能に関する質問があった。次に、副査の小林 邦彦教授から、CD36 とそれ以外の脂肪酸転送蛋白との関係、 CD36 欠損とイ ンスリン抵抗性、動脈硬化との関連に関する質問があった。また、主査の石橋 輝雄教授からは、肝臓における脂肪酸と糖新生の関係および糖負荷により脂肪 酸の取り込みをみた根拠に関する質問があった。最後にフロアーからCD36 の 脂肪酸取り込みの速度、取り込みの機序についての質問があったが、いずれの 質問に対しても、申請者は、自らの論文や参考文献を引用し、妥当な解答を行 った。

   この論文は、CD36 分子の脂肪酸転送体としての意義を、CD36 欠損症を対 象に研究を行い、ヒト生体に於けるCD36 分子の機能とその意義を初めて明ら かにしたこと、また、この研究成果から、従来報告されていたCD36 欠損症の インスリン抵抗性への関与は誤りである可能性を示したこと等が高く評価され た。今後、人における脂肪酸代謝研究に新しい局面を開くことが期待される。

   審査員一同は、これらの成果を高く評価し申請者が博士(医学)の学位を受

けるのに充分な資格を有するものと判定した。

参照

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