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博 士 ( 医 学 ) 竹 内

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 竹 内    董      学 位 論 文 題 名

   慢 性 関 節 リ ウ マ チ に お け る ヒ ト 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル ス の 発 現

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    【は じ めに 】

慢 性 関 節 リ ウ マ チ(RA)は 関 節 の 滑 膜 組 織 の 炎 症 と 組 織 破 壊 を 特 徴 と す る 全 身 性 炎 症 性 疾 患 で あ る 。 そ の 本 態 は 自 己 の 滑 膜 組 織 に 対 す る 免 疫 応 答 に よ る と 考 え ら れ て い る が 、 そ の 引 金 と な っ て い る 抗 原 に つ い て は 長 年 に わ た り 種 々 の 細 菌 、 ウ イ ル ス が 候 補 に 上 げ ら れ 世 界 中 で 研 究 さ れ て き たが 今ま で に未 だ確 実 なも のは 見 っか って い ない 。

1980年代 に 入りhuman immunodeficiency virus typel (HIV‑1)やhuman T‑celllymphotropic virus typeI (HTLV‑Dの 感 染 者 でRAと 酷 似 す る 関 節 炎 が 発 症 す る こ と が 報 告 さ れ 、RA患 者 の 滑 膜 組 織 を 免 疫 組 織 学 的 に 検 索 す る と 、Hn.V‐I、HIV‑1関 連 抗 原 が 半 数 以 上 で 陽 性 に な る と 報 告 さ れ て いる 。し か し 、 一 般 にRA患 者 は 、HIV‑1、FrrLV‑Iの 感 染 を 受 け て い な い こ と か ら 、HIV‑1、HTLV‑Iと 相 同 性 の あ る 遺 伝 子 を 持 っ た レ ト ロ ウ イ 少 ス がRAの 発 症 と 深 く 関 係 し て い る の で は な い か と 推 察 さ れ る 。 一 方 、 イ ー ス ト か ら ヒ ト ま で 殆 ど 全 て の 生 物 の ゲ 丿 ム 中 に 数 千 コ ピ ー も の 内 在 化 し た レ ト ロ ウ イ ル ス が 含 ま れ 生 殖 細 胞 を 通 じ て プ ロ ウ イ ル ス の 形 で 親 か ら 子 へ 安 定 し た 形 で 遺 伝 し て い る 。 最 近 、 動 物 で は 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル ス は 免 疫 異 常 を 引 き 起 こ し た り 、 自 己 免 疫 疾 患 の 病 因 的 関 与 を 示 唆 す る 報 告 が み ら れ る が 、 ヒ ト に お い て は 未 だ そ の 生 理 的 機 能 あ る い は 病 原 性 は 殆 ど 知 ら れ て い な い 。 本 研 究 で は 長 いopen reading frame(ORF)を持 ち、 蛋 白ま で翻 訳 され る可 能 性を 持つ ヒ ト 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル スERV3、 A4‑1を 用 い て RAへ の 病 因 的 関 与 を 検 討 し た 。

    【材料と方 法】

  RA患 者 の 新 鮮 滑 膜 組 織 、 培 養 滑 膜 細 胞 、RA患 者 と 健 常 人 の 末 梢 血 単 核 球(PBMC)、 胎 盤 組 織 、 ヒ ト 尿 細 管 上 皮 の 培 養 細 胞(hKEC)を 材 料 と し て 用 い た 。 常 法 に 従 っ てDNAを 抽 出 し ヒ ト 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル スERV3env、 廴4‑lenvを プ ロ ー ブ と し て 用 い て サ ザ ン ブ ロ ッ ト 法 を 行 い 、 制 限 酵 素 断 片 長 多 型(RFLP)解 析 し た 。 材 料 か らAGPC法 に よ り 全RNAを 抽 出 し 一 部 はpoly(A)‑RNAを 選 別 し 、 常 法 に 従 っ て ノ ー ザ ン プ ロ ッ ト 法 、Reverse transcription(RD‑PCR法 を 行い 、ロW3、X4‑1 の発 現 を検 索し た。また培養滑 膜細胞ではサイト カインのinterleulan‑ip(IL‑ip)、interleukin‑2(IL ‑ 2)、interkeukin‑6(IL‑6)、tumor necrosis factor‑a (TNF<c)、interferonイ(IFN‐Y)を細胞培養液に添加 し 、 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル ス の 増 強 や 抑 制 を 試 み 、hKECの そ れ と 比 較 し 内 在 性IL‑6の 発 現 も 併 せ て検索した。

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    【 結  果】

1) RFLP解析

  PBMCか らDNAを 抽 出 し 、 制 限 酵 素MspIで 消 化 しRFLP解 析 を 行 う と 、ERV3を プ ロ ー ブ と す る と2.8kb、3.4kbの2種 類 のRFIPを 有 す る バ ン ド が 見 ら れ た 。 そ の 頻 度 は60名 のRA患 者 と55名 の 健 常 人と で 比 較 す ると 有 意 差 は 認 めら れ な か っ た(Z 2= 4.379、p>0.10、df=2)。同様 に九4‑1を調 べ る と 、 数 十 種 の 断 片 の ー 部 にRFLPカ 混 ら れ た が 、 そ の 頻 度 は76名 のRA患 者 と42名 の 健 常 人 と で 比較 すると 有意差 は認 められ なかっ た(Z 2=3.440、p>0.20、df=2)。

2) 胎盤 におけ る内在 性レト ロウ イルス の発現

  10個 の 胎 盤 でERV3、A,4‑1の 発 現 を 調 べ た 。ERV3で は3.5kb、7.3kb、9.Okb3種 のmRNA、A4‑1 で は3.Okb、3.6kb2種 のmRNAの 発 現 が 確 認 さ れ た 。 発 現 量 に は 個 人 差 が 認 め ら れ 、 発 現 の 見 ら れ な い 検 体 も 存 在 し た 。 パ イ オ イ メ ー ジ ン グ ア ナ ラ イ ザ ー を 用 い て 定 量 的 に 解 析 す る と 、ERV3 とM‑1の発 現は比 例して いる ことが 明らか になっ た( 仁0.926)。

3) 滑膜 組織、PBMCにお ける内 在性レ トロウ イル スの発 現

  ノ ー ザ ン ブ ロ ッ ト 法 、RT‑PCR法 を 用 い てERV3、 九4‑lenvの 発 現 を 調 べ た 。 新 鮮 滑 膜 組 織 、 培 養 滑 膜 細 胞 、PBMCい ず れ で もERV3で は3.5kb、9.0 kb2種 のmRNA、 入4‑1で は 胎 盤 と 異 な る サ イ ズ ヮ4.2kbl種 のmRNAが み ら れ た が 、RT‑PCR法 で 検 索 し て も 全 く 転 写 の 見 ら れ な い も の も 認 め ら れ た 。 滑 膜 組 織 やPBMCに お い てERV3、 九4‑1の 発 現 量 に は 個 人 差 が 存 在 し た が 、RAの 活 動 性 や 治 療 薬 に 相 関 は 見 ら れ ず 、 逆 に 健 常 人 のPBMCで もERV3、A.4‑1の 発 現 が 見 ら れ た 。 ま た 、 ERV3とM‑lの 発 現 の 強 さ は 胎 盤 と 同 様 に 滑 膜 組 織 に お い て も 比 例 す る 傾 向 が み ら れ た 。   一 方 、IL‑6の 発 現 はRA患 者 のPBMCで 有 意 に 増 加 し て い た (Z2=7.304、pく0.01)が 、ERV3の 発 現と は相関 してい なか った。

4) サイ トカイ ンによ るERV3の 発現へ の影響

  サ イ ト カ イ ン に よ る 培 養 滑 膜 細 胞 で のERV3の 発 現 誘 導 を試 み た 。500U/mlの 濃 度 でIL‑2、Iし‑ip

、 凡 石 、TNF‑a、IFN‑y添 加 培 養 液 に4時 間 滑 膜 細 胞 を 培 養 後RNAを 抽 出 し 、ERV3とIL‑6の 発 現 につ いて検 討した 。II一 .6の発現 はIL‐1p、冊頂‐aで増加し、II一‐2、凡‐6、IFN_Yで抑制されたが、

ERV3の 発 現 量 に は サ イ ト カ イ ン 添 加 に よ る 変 化 が 認 め ら れ な か っ た 。 一 方 、hKECに お い て 同 様 な 実 験を 行 う と 、 凡‐2、II一‐6、IFN‐Y添 加 では 変 化は 認めら れなか ったが 、nlp添加 により 凡石の 発現 と平行 してERV3の発現 が増強 して いた。

    【 考  察 】

  ERV3のRFIーP解 析 に お い て 白 人 種 を 対 象 と し た 成 績 で は 、RA患 者 で は 健 常 人 と 比 較 し て3.4kb 断 片 の 有 意 な 増 加2. 8kbを ホ モ に も つ患 者 の 減 少 が報 告 さ れ て い るが 、 日 本 人 を対 象 と し た 我々 の 検 索 に お い て 同 様 な 傾 向 を 示 し た も の の そ の頻 度 に は 両  ̄者 間 に 有 意 な 差は 存 在 し な かっ た 。 単 な る 偶 然 に よる 可 能 性 あ るぃ ` は 検 索 し た人 種 、 病 変の程 度の 違いに よる可 能性が あるが 明か ではな い。

  新 鮮 滑 膜 組 織 、 培 養 滑 膜 細 胞 、PBMCに お い て ヒ ト 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル ス の 発 現 に つ い て 検 索 す る と 、ERV3で は3.5kb、9.Okb2種 のmRNAが 見 ら れ た が 、 胎 盤 に 特 異 的 なmRNAと 報 告 さ れ て

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いる7.3kb mRNAは見られず胎盤での何等かの生理的役割を担っている可能性が考えられた。九4‐ 1では滑膜細胞やPBMCにおいて4.2kb1種のmRNAが見られ、胎盤とは異なるサイズであった。

読み取り枠の差異、またはマルチコピー型なので別のコピーの発現の可能性が考えられ、胎盤と は異なる蛋白の生成、生物学的機能が示唆された。

  SLE患者で報告されているように、RA患者のPBMCにおいても健常人と比較し有意に凡‐6の発 現が増強していた。也―6は血清中のIgG産生亢進やpolyclonalBcenacnvationなどを起すことか ら、RAの病態は関節局所だけでなく全身性の系統的免疫異常の疾患であることを裏付けるもの と推察された。

  ERV3と廴4‐1の発現は比例していたことから、複数の内在性レトロウイルスの発現を調節する 共通の因子が存在する可能性が示唆され、それがRA関節液中で亢進しているサイトカインでは ないかと考え検索した。しかし、滑膜細胞ではERV3の発現は検索したサイトカインでは影響を 受けなかった。一方、hKECでは凡‐1pによりII一石の発現と平行してERV3の発現が増強したことか ら、ある種の細胞ではヒト内在性レトロウイルスの発現がサイトカインによって調節、活性化さ れることが示された。このことは正常では発現の見られない内在性レトロウイルスがサイトカイ ンによって誘導活性化されることがあり、それらが作る蛋白が抗原となったり、または他の細胞 性 遺 伝 子 を 活 性 化 し て 何 等 か の 疾 患 の 病 態 に 関 与 す る こ と も 十 分 考 え ら れ た 。   今回、ヒト内在性レトロウイルスERV3、廴4.1がRAの発症に直接関与する証拠は得られなかっ たが、ヒトゲノムの中に多数存在する内在性レトロウイルスがRAの発症に何等かの役割を果た している可能性は依然として残されていると考えられた。今後、mLV.I、mV‐1などと相同性の 高い内在性レトロウイルスを発見し検索することが発症機序の解明に有効であると同時にRAの 治療に寄与するものと考えられた。

1、RA患者 と健常人の間ではヒト内在性レトロウイルスERV3、A,4‑1のRFLPに有意な差は存     在しなかった。

2、胎盤においてERV3、A,4‑1の発現が確認された。その発現の強さには個人差がみられERV3と

・M‑1の発現の程度は相関していた(r=0.923)o

3、RA患者の滑膜組織や末梢血単核球(PBMC)でERV3、A,4‑1の発現が確認された。その発現に     は個人差が認められ病勢の活動性や治療に無関係であった。

4、 RA患 者 のPBMCで は 健 常 人 と 比 較 し て 有 意 に IL‑6の 発 現 が 認 め ら れ た 。 5、廴4‑1では胎盤と異なる4.2kbのmRNA分子が滑膜細胞やPBMCで認められ、異なる蛋白が生     成されている可能性が示唆された。

6、培養滑膜細胞ではサイトカインによって、ERV3の発現の増強や抑制は見られなかった。

7、一方、ヒト尿細管上皮の培養細胞(hKEC)においては、IL‑ipにりERV3の発現の増強が認め     られ、それはIL‑6の発現量と相関していたことから、細胞によってはサイトカインにより     内 在 性 レト ロ ウ イル ス が誘 導され何 等かの病 因に関 与する可 能性が 示唆され た。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学 位 論 文 題 名

慢 性 関 節 リ ウ マ チ に お け る ヒ ト 内 在 性 レ ト 口 ウ イ ル ス の 発 現

   慢性関節リウマチ(RA) は関節の滑膜組織の炎症と組織破壊を特徴 とする全身性炎症性疾患であり、成人における最も頻度の高い自己免 疫疾患である。その本態は自己の滑膜組織に対する免疫応答によると 考えられているが、その引金となっている抗原については長年にわた り種々の細菌、ウイルスが候補に上げられ世界中で研究されてきたが 今までに未だ確実なものは見っかっていない。

   一方、殆ど全ての生物のゲノム中に数千コピーもの内在化したレト ロウイルスが含まれ生殖細胞を通じてプロウイルスの形で親から子ヘ 安定した形で遺伝している。最近、動物では内在性レトロウイルスは 免疫異常を引き起こしたり、自己免疫疾患の病因的関与を示唆する報 告がみられるが、ヒトにおいては長年の研究にもかかわらず未だその 生理的機能あるいは病原性はほとんど知られていない。本稿では長い open reading frame( 〇RF) を持ち、蛋白まで翻訳される可能性がある ヒ ト 内 在 性 レ ト ロ ウ イ ル ス ERV3 、 4‑1 を 用 い て theumatoid arthritis(RA) への病因的関与を検討した。新鮮滑膜組織、培養滑膜細 胞 、末梢 血単核 球 (PBMC) での ERV3 、A4‑1 の発現を検索した。培養 滑膜細胞、ヒト尿細管上皮の培養細胞 (hKEC) を用いて、サイトカイ ン による ERV3 の 発現増 強につ いて IL‑6 の 発現と併せて検索した。

  ERV3 に ついて は 60 名 の RA 患 者と 55 名の 健常人の間で、 4‑1 につ い ては 76 名の RA 患者と 42 名の 健常 人の間 でRFLP 解析を行うと、一 部 に RFLP が存在 したが 、その RFLP に有意 な差は存在しなかった。

ノーザンブロット法を用いて、胎盤においてはERV3 、 A4‑1 の発現が 確認された。その発現の強さは個人差がみられERV3 と A4‑1 の発現の 程度は相関していた(r=0.926) 。また、 RA 患者の滑膜組織や末梢血単 核 球 (PBMC) でERV3 、 4‑1 の転 写を 確認し た。その発現には個人差 が認められ病勢の活動性や治療薬に無関係であり、健常人の PBMC で も その発 現が確 認され た。 A,4‑1 では 胎盤と 異なる 4.2kb サイズの

敬 暹

   

   

木 巻

吉 葛

西

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

mRNA が滑膜 細胞や PBMC で認められ、胎 盤とは異なる蛋白 が生成さ れている可能性が示唆された。次に内在性レトロウイルスの発現調節 機構におけるサイトカインの影響を調べるために、滑膜細胞の培養液 に5 種のサイトカインIL‑2 、11‑1D 、IL‑6 、TNF‑cx 、IFN‑y を500 U/ml の 濃度で添加した結果、ERV3 の発現は変化しなかった。しかし同様な 実験をヒト尿細管上皮の培養細胞(hKEC) を用いて調べると、11‑1[3 に よってERV3 の発現は増強され、それは IL‑6 の発現と比例していた。

このことは、細胞によってはサイトカイン添加により内在性レト口 ウイルスが誘導される場合があり、何等かの病因に関与する可能性が 示唆された。

   今回、ヒト 内在性レトロウイル ス ERV3 、A,4‑1 が RA の発症に直接 関与する証拠は得られなかったが、ヒトゲノムの中に多数存在する内 在性レトロウイルスがRA の発症に何等かの役割を果たしている可能 性は依然として残されていると考えられた。

   口 頭 発表 にお い て副 査の 葛 巻教 授よ り 1 ) RA 患者からの PBMC は

継代培養したものかどうか 2 )サイトカインの内在性レトロウイルス

発現への影響について、培養滑膜細胞、 hKEC 以外でも調べているか

どうか3 )胎盤と滑膜細胞での A,4‑1mRNA のサイズが異なる機構につ

いてはどう考えるか、副査の西教授より1 )蛋白まで翻訳されている

可能性はどうか、生田教授より1 )HIV‑1 との関連について、小林教

授より1 ) HTLV‑I との関連、などに ついて質問があったが、申請者

はおおむね妥当な回答をなした。葛巻、西両教授には個別に審査を頂

き、合格と判定された。 内在性レトロウイルスの発現とぃう新たな観

点から、RA の発症機序を研究したことは意義が大きく、学位授与に

値するものと考えられる。

参照

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