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博 士 ( 農 学 ) 小 林 昭 裕

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 小 林 昭 裕

学 位 論 文 題 名

山岳性自然公園における利用者の意識構造に関する研究 学位論文内容の要旨

  本 論文 は , 図24, 表46を含 む ,150ペ ー ジか ら なる和 文論文で ,別に33編 の参考論文 が添えら れている 。

  自然公園へ の関心や 利用の高 まりを背景に,環境特性を踏まえた,自然公園 にふさわし い利用体 験が得ら れる環境 の保全が求められている。そこで,自然 公園 に 対す る 利 用者 の欲求を 実現化す るのにふ さわしい 環境を管 理運営す る ための方策 や,利用 行為によ る自然環 境や利用体験への影響を許容範囲内にコ ントロ―ル すること が求めら れる。そ のため,利用者が何を求めて,どのよう な利用体験 をし,何 を得たの か,さら に利用行為がもたらすインパクトをどの 程度許容す るのか, といった 利用体験 に関わる―連のプロセスについて,利用 者の意識や 行動面か らの把握 が必要と なる。この分野では,米国において先進 的 研 究 は 見 ら れ る も の の , わ が 国 で は ほ と ん ど 行 わ れ て い な い 。   本論文は, 大雪山国 立公園を 事例とし,主として登山者を対象としたアンケ ート調査に 基づき, 利用者の 意識や評 価,行動にみられる基本的関係を把握し さらに,米 国との比 較を行い ,自然公 園における利用体験に基づく管理運営手 法の有効性 や必要性 について 考察した ものであ る。

  第1章では, 自然公園 の管理運 営に際し ,利用体 験に着目 した背景と本論文 の目的,全 体構成を 記述して いる。

  第2章では, 利用体験 の実現性 からみた 山岳性自 然公園を 位置づけるため,

利用者が望 む利用体 験の実現 性という 観点から,複数の野外レクリエーション 体験間での 比較検討 を行って いる。そ の結果,利用体験に対する期待や実現性 は,野外レ クリエー ション体 験の環境 やそこでの行動が類似した場合に共通性 が高く,逆 に類似し ない場合 に共通性 が低いことが明らかとなった。また,利 用体 験 を実 現 す る上 で自然性 や孤高性 を必要と する山岳 性自然公 園特有の 環 境特性を見 いだすこ とができ た。

  第3章では, 環境特性 への認識 に基づい た自然公 園区域内 の区分に対し,自     ―271一

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然が保たれた場所と内容,俗化したとする場所と内容をもとに,自然公園内に 多様な利用体験を提供する方策を検討している。その結果,利用者は環境の物 理面(人工性←→自然性)と社交面(衆人性←→孤高性)の2 つの次元に着目

  

し,個々の環境を位置づけていることが判明し,物理面と社交面での環境特性 に応じて自然公園内を複数の区域に区分する必要性を示した。また,自然公園 内の環境特性に対する利用者の認識に対し,来訪回数や行動径路といった事前 経験の影響を確認できた。

    

第4 章では,利用者が望む利用体験と利用体験に適した環境や活動の選択に みられる関連性にづぃて検討している。その結果,利用体験に期待した内容に 基づぃて利用者を区分することができ,区分された集団問では,登山形態や登 山日程,目的地など行動形態が異なることが確かめられた。また,区域ごとの 物理面や社交面での環境特性が,利用者の望む利用体験像に影響すると同時に,

利用体験を実現化するための場所の選択にも影響することが明らかとなった。

さらに,利用体験への期待が異なる場合,利用行為に伴うインパクトヘの対処 が異なることが判明した。

    

第5 章では,環境や利用体験が被るインパクトに対する許容限界の設定につ いて,利用者の規範をもとに考察している。その結果,許容限界に対する回答 の有無や許容限界値の大きさが,対象とした内容や区域の環境特性の違いによ って異なることを明らかにした。また,利用インパク卜の増加に伴って示され る許容限界値への回答を,累積曲線によって表すことによって,許容限界とし て合意しうる利用者の割合を示すことが可能となった。

  

第6 章では,利用体験の質を捉える指標としての満足度に関与する要因につ いて考察している。その結果,利用者の動機に示される欲求や欲求の充足度合 いが満足度に影響すること,欲求の程度が評価対象を重視する程度に影響する こと,利用体験に対する評価内容が満足度に影響すること,利用体験への評価 と満足度との関連性が,評価対象を重視する度合いによって左右されることが 明らかとなった。

  

7

章では総合考察として,第1 章から第

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章で得られた結果を,米国にお ける関連研究と比較し,利用者が期待した内容と環境や行動との関係は,文化 や社会的背景を異にする両国において共通していることが判明し,その普遍性 が認められた。インパクトに対する許容限界についても,米国における鯛査結 果と,本研究から得られた結果とに共通点が多く,利用体験の質に与える悪影 響を抑制するには,個人的規範に基づく許容限界の考え方を導入することが可

272 ‑

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能と考えられた。

  

以上,本研究は,これまで明確に位置づけられていなかった利用体験という 視点から自然公園の管理運営のあり方を捉えることによって,多様な利用体験 を実現できるための環境特性の把握,各種野外レクリエ―ション体験の場を有 効に使う上での事前情報の活用,現状の利用インパクトの許容性の判断および 管理の効果に対するモニタリングを含めた過剰利用への対応,既存の地種区分 に加え利用体験の視点からのゾ―ニングといった面で,自然公園の管理運営に おける新たな展望を示した。

‑ 273ー

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

山岳性自然公園における利用者の意識構造に関する研究

  本 論 文 は 、 図24. 表46を 含 む 、150ペ ― ジか らな る和 文論 文で 、別 に33編の 参 考論 文が 添えられている.}

  自然公園への関心 や利用の高まりを背景に、環境特性を踏まえた,自然公 園にふさわしぃ利 用体験が得られる環 境の保全が求められている。そのため,利用者の意識や 行動をべ―スに利 用体験の質を把握し ,過剰利用によるインパクトのコントロ―ル手法や、適 正な利用のあり方 を検討する必要があ る。この分野では、米国におぃて先進的研究が見られる ものの,わが国で はほとんど行われ. でいなぃい

  本論文は、大雪山 国立公園を事例とし、主として登山者を対象としたアン ケ一卜調査に基づ き‐利用者の意識や 評価、行動にみられる基本的関係を把握し、さらに、米国との比較を行い、

自 然公 園に おけ る利 用体 験に 基づ く管 理 運営 手法 の有効性や必要性について考察したもので ある。

  第1章では,自然公園の管理運営に際し,利用 体験に着目した背景と本論文の目的、全体キ冓 成を記述している。

  第2章で は ,利 用体 験の実現性からみた山岳 性自然公園の位置づけについて,複数の野外レ ク リ工 ―シ ョン 体験 間で 比較 検討 した 結 果野 外レ クリエーション体験の環境やそこでの行動 が類似した場合、利 用体験に対する期待や実現性に共通性が高いことが明らかとなった。また、

利 用体 験を 実現 する 上で 自然 性や 孤高 性 を必 要と する山岳性自然公園特有の環境特性を見い だすことができた。

    第3章では.環境特性への認識に基づき、自 然公園区域内の区分について検討した結果,利 用者は環境の物理面 (人工性←→自然性)と社交面(衆人性←→孤高性)の次元におぃて、個々 の環境を位置づけて ぃることが判明し,自然公園内での利用体験の多様性を 保つには、物理面 と 社 交 面 で の 環境 特性 に 応じ て‐ 自然 公園 内を 複数 の区 域に 区分 する 必要 性が あ るこ とを 示した。また,自然 公園内の環境特性に対する利用者の認識に対し,事前経 験による影響を確

274−

郎 寛

昭  

  悦

川 井

浅 石

授 授

教 教

査 査

主 副

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認できた。

  第4章 で は利 用者が 望む利用 体験と 利用体験 に適し た環境や 活動の選 択にみ られる関 連性 につ いて検 討した結 果,利用体験に期待した内容に基づぃて利用者を区分することができ,区 分さ れた集 団間では 、行動形態が異なることが確かめられた。また.区域ごとの環境特性が,

利用 者の望 む利用体 験像に 影響する と同時に 刑用体 験を実現 化する 場所の選 択にも影讐する こと が明ら かとなっ た。さらに、利用体験への期待が異なる場合,利用行為に伴うインパク卜 への対処が異なることが判明した。

  第5章で は,イン バクト に対する 許容限界 の設定 について、利用者の規範をもとに検討し、

言午 容限界 に対する 回答の有無や許容限界値の大きさが対象とした内容や区域の環境特性の違 いに よって 異なるこ とを明らかにした。また、利用インパクトの増加に伴って示される許容限 界値 への回 答を、累 積曲線によって表すことによって,許容限界として合意しうる利用者の割 合を示すことが可能となった。

  第6章 で は利 用体験 の質を捉 える指 標として の満足 度に関与 する要因 につい て考察し た結 果. 利用者 の動機に 示される欲求や欲求の充足度合いが満足度に影響すること.欲求の程度が 評価 対象を 重視する 程度に 影響する こと,利 用体験 に対する 評価内 容が満足 度に影響するこ と、利用体験へのIl『価と満足度との関適性が、|甲価刔巌をlI視する度合いによって左右される ことが明らかとなった。

  第7章で は総合考 察とし て、得ら れた結果 を米国 における関連研究と比較したところ‐利用 者が 期待し た内容と 環境や行動との関係は文化や社会的背景を異にする両国におぃて共通し.

その 普遍性 が韶めら れた。インパク卜に対する許容限界についても,米国における調査結果と 共通 点が多 く,利用 体験の貿に与える悪影響を抑制するには,個人的規範に基づく許容限界の 考え方を導入することが可能と考えられた。

  以上 ,本研 究は,こ れまで明確に位置づけられてぃなかった利用体験とぃう視点から,利用 者の意識構造を把握することによって.利用体験の実現,過剰利用への対応.事前情報の活用、

利用 体験を べースと したゾーニングとぃった面で、自然公園の管理運営における新たな展望を 示し たもの であり, 今後の研究発展のみならず,公園の管理運営に大きく寄与するものと高く 評価される。

  よっ て、審 査員一同 は別に 行った学 力確認 試験の結 果と合わ せて, 本論文の提出者小林昭 裕 は 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 が あ る も の と 認 定 し た 。

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参照

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