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博 士 ( 水 産 学 ) 清 水 幹 博

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 学 ) 清 水 幹 博

学 位 論 文 題 名

Studies on the ultrastructure and growth of skeletons of the test and spines in the sea urchin, Strongylocentrotus intermedius

( エ ゾ バ フ ンウ ニ に おけ る 殻お よ び棘 の 骨格 の 成 長に 関 する 微 細構 造 学的 研 究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  近年 ,日本 にお けるウ ニ漁業 の生産 高は 沿岸漁 業に大 きな役 割を占 める ように なっている。北 海 道 にお い て も , 工ゾ バ フ ン ウ ニ(Strongylocentrotus intermedius)は 沿岸 漁業の 重要ナ ょ漁 獲対 象種で あり, ウ二 資源の 重要性 の増大 に伴い,その人工種苗生産及び育成技術は急速に発達,

普及 し,各 地で種 苗生 産が行 なわれ ている 。この よう な栽培 漁業技 術の発 展に 伴い, ウニの成長 生理 に関す る基礎 的な 知見の 必要性 が高ま ってい る。 工ゾバ フンウ ニの成 長に 関して は資源学的 およ び生態 学的見 地か らの研 究は多 いが, 個体レ ベル での殻 組織の 成長に 注目 した研 究は少い。

  ウニ の対外 郭を なす殻 は真皮 に由来 する 多くの 石灰化 した小 殻板の 組合 せで構 築されており,

その 接合部 は縫合 線と して殻 表面に 認めら れる。 殻全 体の成 長は各 殻板の 成長 (大き さと厚さ)

と殻 板数の 増加に よる 。それ 故,ウ ニ個体 の成長 は, 個個の 殻板の 形成と 成長 に依存 し,その機 構を 明かに するこ とは 個体の 成長生 理の理 解に必 須で ある。 殻板と これに 付属 する棘 はカルサイ ト結 晶から なる骨 柱の 網目構 造とそ の網目 を満た す有 機質構 造によ り構成 され ており ,その成長 は骨 柱の増 加,伸 長に よりも たらさ れる。 また, 有機 質構造 には細 胞およ び繊 維成分 が含まれ,

骨柱 形成に 関与し てい ると考 えられ る。骨 柱構造 に注 目して 殻板の 成長を 論じ た研究 は数種のウ 二類 で多く みられ るが ,有機 質構造 に注目 した研究は少く,工ゾバフンウニでの研究は全くない。

  本研 究では ,工 ゾバフ ンウニ の殻板 の形 成およ び成長 機構に 関する 基礎 的知見 を得る目的で,

稚 ウ ニお よ び 成 体 ウ二 ( 殻 長 :5―72mm)の正 常殻, ならび に成体 ウニ の殻と 棘の再 生組織 を用 い, 主とし て有機 質構 造に注 目して ,殻板 ,棘お よび 関連組 織の細 胞なら びに 繊維成 分にっいて 光顕 ・電顕 (走査 型, 透過型 )によ る形態 学的観 察を 行なっ た。ま た,殻 板組 織の細 胞成分の由 来と その殻 板形成 に関 連する 機能を 検討す るため ,体 腔液中 の細胞 (体腔 球) にっい ての直接観

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察,あるいは対外培養による挙動の観察を光顕・電顕を用い行なった。

  殻板 有機 質構造 中の繊 維成分 は主と して 殻板縁 辺部に 分布し ,特 に縫合 線部に 多く見られた。

この 繊維は コラー ゲン 繊維様 の染色 性を示 し, 酸性粘 液多糖 類,糖 蛋白質 およ び脂質等と結合し てい ること が組織 化学 的に証 明され た。同 様の 繊維は ,棘で は棘を 殻板上 に固 定している支持組 織の 結合組 織に囲 口膜 では島 状石灰 化部位 の周 囲を満 たして いる結 合組織 に認 められた。殻板内 奥部 ,棘内 部及び 囲口 膜石灰 化部の 有機質 構造 には認 められ なかっ た。こ れら の繊維は電顕的に 哺乳 類のコ ラーゲ ン繊 維と類 似の横 縞模様 を示 し,前 コラー ゲン繊 維と考 えら れる細い繊維とと もに 存在し ていた こと からコ ラーゲ ン繊維 と判 断され た。殻 板縫合 線部で は, これらの繊維は膜 状構 造を織 りなし て骨 柱表面 を緊密 に覆っ てい た。コ ラーゲ ン繊維 は脱灰 され た骨柱の空所には 認め られず ,骨柱 基質 として の石灰 化への 関与 はない ものと 思われ た。殻 板及 び棘の再生組織で も コ ラー ゲ ン 繊 維 に 初期Ca塩 結晶 の沈 着は認 められ なかっ た。 これか らの観 察から ,ウ二 殻組 織中 のコラ ーゲン 繊維 は石灰 化に適 した微 小環 境を形 成する が,そ れ自身 は骨 柱の基質とはなら ず, 石灰化 を誘導 する よりは むしろ 形成過 程の 骨柱表 面を覆 うこと により ,骨 柱の形や大きさを 規制している可能性が考えられた。

  殻板 有機 質構造 には,5型 の細胞 群が認 められ た。 そのー っは伸長した細胞突起を有する小形の 好塩 基性細 胞であ る。 この細 胞は特 徴的な 瘤状の肥厚部を有する多数の細胞突起を骨柱表面に緊密 に接 して伸 長し, 微細 構造的 にウニ 殻にお ける石灰化細胞と同定された。殻板有機質構造には,他 に 殻 組織 に 遊 走 し て きた 体 腔 球 と考え られ る顆粒 細胞(spherule cell),貧食 細胞(phagocytic cell),細胞質が比較的均質な細胞(均質細胞)等が認められた。均質細胞は振動細胞(vibratile cell) が変 形した ものと 思わ れた。 これら の細胞 が骨柱形成に直接関係している像は観察されなかった。

  走査 型電 顕によ る観察 では, 多くの 伸長 した細 胞突起 により 緊密 に骨柱 に接し ている石灰化細 胞が 殻板の 最も活 発な 成長部 位であ る縫合 線付 近に集 中して 多数認 められ た。 その瘤状肥厚を有 す る 細胞 突 起 は 成 長 しっ っ あ る 骨柱付 近で 蜘蛛の 巣様の 網目構 造を形 成し 骨柱を 取り囲 んでい た。 一方, 吸収を 受け ている と思わ れる骨 柱表 面ある いはそ の周囲 に,時 に複 雑な形態を示す扁 平細 胞が認 められ た。 特に複 雑な形 態をし た扁 平細胞 の周囲 は骨柱 が欠損 して いた。これらの像 から扁平細胞は骨柱吸収細胞と考えられた。

  工ゾ バフ ンウニ の体腔 液には ,貧食 白血球,顆粒球,振動細胞,ガラス様細胞(hyaline cell) お よ び腎 形 細 胞(reniform cell)等 の 体腔 球 が 同 定 され た。in vitroの 観察で ,貧食 自血球 は 凝集 塊形成 に主要 な役 割を演 じ,凝 集に際 しそ の細胞 突起か ら放出 される 包被 が特徴的網目構造 を形 成しな がら他 の体 腔球を 包み込 み,殻 の有 機質構 造に類 似の形 成をす るこ とが明らかに示さ

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れた。 また, 酸性 粘液多 糖類や 糖蛋白 を多 く含有 する振 動細胞 も凝集 塊形 成に密接に関与してい る もの と 考 え ら れた 。 体 腔液で は貧食 白血 球のみ が組織 化学的 にCa陽 性反応 を示し た。 以上の ことか ら,貧 食自 血球は 殻組織 の有機 質構 造の形 成に必 須であ り,石 灰化 細胞の先駆細胞となる と考え られた 。

  再 生 殻 及 び再 生 棘 で の最 初の 石灰化 は,石 灰化細 胞の細 胞内 空胞へ の微小Ca結晶 の沈着 とし て 認め ら れ た 。 再生 組 織 におい てもコ ラー ゲン繊 維へのCa結晶 の沈着 は認め られな かっ た。成 長した 結晶は 伸長 した薄 い細胞 質ある いは 断片化 した細 胞質で 包まれ てい たが,ルテニウムレッ ド(RR)を 含 む 液 で 固 定 す る と , 結 晶の 一 部 の 表 面にRR粒 子 が直 接 沈 着 し て認 め ら れ た こ と から, 結晶は 細胞 外で成 長する ことが 示さ れた。 また, 結晶の 周囲に は新 たな石灰化細胞群が取 り囲み ,この 細胞 質突起 を結晶 を直接 包摂 する細 胞に伸 ばし, 時にそ れ等 と合胞体を形成した。

以上の ことか ら, 両再生 組織に おける 石灰 化に関 し次の ような 過程が 考え られた。まず,゛一次 石 灰化 細 胞 。 の 細胞 内 空 胞に小Ca結晶 が生じ ,その 成長に 伴い 一次石 灰化細 胞の細 胞質 はそれ を被う ように 伸長 する。 その過 程で結晶を包む細胞質は部分的に破れ,結晶は細胞外へ露出する。

このよ うな結 晶お よび゛ 一次石 灰化細 胞。 の周囲 には゛ 二次石 灰化細 胞。 が集まり,その細胞突 起 は 一 次 石 灰 化 細 胞 の 細 胞 質 に 接 し , 時 に 合 胞 体 を 形 成 し てCa結 晶 の 成 長 を 促進 す る 。   以上 の観察 結果か ら,ウ ニ殻板 およ び棘の 骨柱成 長にお いて は,体 腔球の貧食自血球に由来す る石灰 化細胞 が骨 柱成長 部位に 集積し ,カ ルサイ ト結晶 を細胞 外沈着 の様 式で成長させるものと 恩われ る。し かし ,再生 殻板に おける 最初 の石灰 化は石 灰化細 胞の空 胞内 で起こることから,幼 生にお ける骨 片形 成や殻 板新生 におけ る初 期の石 灰化は 細胞内 石灰化 の様 式をとることが推定さ れた。

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    山 田 寿 郎 副 査    教 授    高 橋 裕 哉 冨IJ 査   助教授   麦谷泰雄

  ウニ 類の殻 および これに 付属す る棘 はカル サイト 結晶の 柱状 骨格が 複雑な 立体構造をとる無脊 椎動物 ではユ ニー クな中 胚葉性 外骨格 であ る。そ の結晶 学的構 造や形 成機 構は生物硬組織の進化

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の面から興味が持たれている。一方,ウ二類は沿岸漁業において重要性を増しっっある水産資源 として,近年,種苗生産による増殖事業が各地で進められているが,それに伴う疾病による大量 へい死や成長障害など多くの問題が発生している。体重の大部分を占める殻や棘の成長機構はウ ニ個体の成長に重要な関わりを有し,また疾病の予防治療の基礎として重要であるにも拘らず,

その構造上の顕微鏡標本作成の困難のため骨格形成過程やそれに関与する細胞組織の微細構造学 的 研 究 は 少 な く , 骨 格 細 胞 の 起 源 や 分 化 に 関 す る 知 見 も 乏 し い 現 状 に あ る 。   申請者は本論文において,工ゾバフンウニの殻の成長過程および殻と棘の再生過程にっいて,

特に骨格の軟組織に注目して超微構造を中心とする形態学的観察を行い,骨柱成長に関与する細 胞の分化,骨組織の形成様式を明らかにしようとした。さらに,体腔球の培養時の挙動の観察か ら骨格組織細胞の先駆細胞となる体腔球の特定にっいても検討を加えている。評価される主な内 容は概ね以下の通りである。

1.光顕,電顕(透過型,走査型)および軟X線観察により成長中の各殻板縫合線付近の縁辺成 長部に豊富な繊維束を見出し,それが組織化学的,微細構造的にコラーゲン繊維に極めて類似す る繊維であることを確かめた。しかし,それらは脊椎動物の多くの硬組織にみられる基質コラー ゲンのように骨質自体の有機基質となって石灰化を誘導することはなく,むしろ骨柱表面を覆つ てその形状を規制することを指摘し,脊椎動物硬組織におけると同様に基質コラーゲンの石灰化 への関与を主張するTravis説を明確に否定する結果を得た。

2.骨柱間の空間を満たす軟組織に5種類の細胞群を同定した。これらのうち,複雑な細胞突起 を伸ばして成長部位の骨柱表面を被覆する多数の好塩基性細胞が石灰化細胞であることを明らか にしてその特異な形態的特徴を記載した。また,骨柱表面にみられる吸収面上に特殊な扁平細胞 を見出し,これが骨柱吸収細胞であることを示して骨柱の成長がその吸収を伴いながら進行する ことを明らかにした。

3.体腔球の微細構造および培養時における挙動を観察し,これを概ね5種の細胞群に分類した。

そのうち貧食白血球は形態および凝集塊形成の挙動が石灰化細胞に極めて類似することから,貧 食 白 血 球 は 殻 板 に 侵 入 し て 石 灰 化 細 胞 の 先 駆 細 胞 に 分 化 す る も の と 推 定 し た 。 4.殻板と棘の切除実験により再生過程を観察し,初期石灰化は再生芽に集合する一次石灰化細 胞のゴルジ装置由来の細胞内空胞で起こり,次いで形成された結晶は細胞外に出て新たにそこに 集合する二次石灰化細胞に囲まれ細胞外で成長するという,二段階石灰化モデルを提唱した。こ れはウ二幼生の骨片形成における細胞内石灰化,成体の棘における細胞外石灰化の従来の観察例 に基づく論争を統一的に理解する新たな説として評価される。

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  以上の成果は,ウニ外骨格の成長機構にっいて形態学的に貴重な多くの新事実を明らかにした もので,ウニ個体の成長生理の基礎として水産増殖学に寄与するところが大きく,また,生物硬 組織学への貢献の面からも高く評価される。よって,審査員一同は本論文を博士学位論文として 相当の業績であると認定した。

参照

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