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博 士 ( 農 学 ) 島 田 謙 一 郎

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 島 田 謙 一 郎

学 位 論 文 題 名

食 肉 の 熟 成 に 伴 う 筋 原 線 維 Z 線 の 脆 弱 化 機 構 に 関 す る 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  本 論 文 は 総 頁 数90頁 の 和 文 論 文 で , 図40お よ び 弓f用 文 献70を 合 ん で い る 。   食 肉 の 品 質 は , 家 畜 韜 よ び 家 禽 の 品 種 , 年 齢 ,性 別, 飼養 条 件, およ び屠 畜後 の熟 成 の 良 否 な ど に よ っ て 大 き く 左 右 さ れ る が , 食 肉の 品質 を決 定 する 要素 の中 で最 も重 要 なも のは 軟ら かさ であ る。 家畜 や家 禽の 骨 格筋 を食 肉と して 利用 する 場合 ,屠畜後,

骨 格 筋 は 非 生 理 的 条 件 に お か れ る こ と に な り , 骨格 筋の 主成 分 であ る筋 線維 内で 起こ る 様々 の生 化学 的変 化を 経る こと によ って , 食肉 の物 性は 生筋 のそ れと は大 きく異なっ た も の に な る 。 す な わ ち , 熟 成 す る こ と に よ っ て食 肉は 軟ら か くな ると とも に, 風味 の 改 善 顔 ど の 附 加 価 値 を 獲 得 す る 。 従 っ て , 良 好な 軟ら かさ の 食肉 を得 るに は, 屠畜 し た 後 に 一 定 の 熟 成 期 間 が 必 要 で あ る 。 熟 成 に 伴う 食肉 の軟 化 は, 筋原 線維 構造 と筋 肉 内 結 合 組 織 の 脆 弱 化 に よ っ て も た ら さ れ る こ とが 明ら かに さ れて いる 。筋 原線 維構 造 の 脆 弱 化 の 中 で ,Z線 の 脆 弱 化 は 食 肉 の 軟 化 に 大 き く 寄 与 し て い る と 考 え られ てい る 。Z線 は 骨 格 構 造 を 成 すZー フ ィ ラ メ ン ト と そ の間 隙を 充填 す る無 定形 物質 から 構成 さ れ て い る 。Zー フ ィ ラ メ ン ト はaー ア ク チ ニ ン で形 成さ れて お り, 無定 形物 質と して は り ン 脂 質 が 存 在 し , 食 肉 の 熟 成 中 に り ン 脂 質 の 約30%が 遊 離 す る こ と が 明 らか にさ れ てい る。

  食 肉 の 熟 成 に 伴 うZ線の 脆弱 化は0.1 mMくa ゛ によ り最 大に 誘起 され るが ,Z線 の微 細 構 造 と そ の 構 成 成 分 , お よ びZ線 の 脆 弱 化 に 対 するCa2゛の 作 用機 構の 詳細 につ いて は 未 だ 解 明 さ れ て い な い 。 本 研 究 に お い て は , 食 肉 の 熟 成 に 伴 うZ線 の 脆 弱 化機 構を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し て ,Z線 の 構 造 , 構 成 成 分 の 同 定 , 食 肉 の 熟 成 に伴 うそ れ ら の 変 化 , さ ら にZ線 の 脆 弱 化 に 対 す るCa2゛ の 作 用 機 構 に つ い て 追 究 し た 。 (1)食 肉の 熟成 に 伴うZ線 の構 造変 化

  食 肉 の 熟 成 に 伴 うZ線 の 構 造 変 化 に 関 す る こ れ ま で の 研 究 は , 単 離 し た 筋 原線 維の 位 相 差 顕 微 鏡 に よ る 観 察 や 食 肉 か ら 作 製 し た 超 薄切 片の 電子 顕 微鏡 観察 によ って 行わ れ て 韜 り , い ず れ の 場 合 も 人 工 産 物 の 影 響 が 払 拭で きな かっ た 。そ こで ,熟 成中 の食 肉 に お け るZ線 の 構 造 変 化 を 正 確 に 把 握 す る た め に , 試 料 を 直 接 凍 結 し て 薄 切し ,そ の ま ま 観 察 す る 方 法 を 用 い た 。 屠 畜 直 後 韜 よ び 熟成 後の 牛肉 韜 よび 豚肉 から 凍結 切片 を 作 成 し , 微 分 干 渉 顕 微 鏡 お よ び 位 相 差 顕 微 鏡 でZ線 の 構 造 を 観 察 し た 。 微 分干 渉顕 微 鏡 に よ る 観 察 か ら 屠 畜 直 後 の 骨 格 筋 で は , サ ル コ メ ア に 韜 け るZ線 部 分 が 豊富 な物 質 の 存 在 に よ っ て 高 く 隆 起 し た 構 造 物 と し て 認 めら れた が, 熟 成に 伴っ てそ の高 さが 明 ら か に 減 少 し ,Z線 か ら 構 成 物 質 が 失 わ れ る こ と が 新 し い 知 見 と し て 得 ら れた 。位 相 差 顕 微 鏡 に よ る 観 察 に お い て も 熟 成 に 伴 いZ線 が 消 失 し た こ と か ら ,Z線 を 構 成 す る 物 質 が 食 肉 の 熟 成 に 伴 っ て 遊 離 す る た め にZ線 構 造 の 脆 弱 化 が 惹 き 起 こ さ れる こと が 明ら かに なっ た。

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(2)Z線の構成成分

  食肉 の熟成に伴うZ線の脆弱化は,骨格構造を形成するZーフィラメントとその間隙 を埋 める無定形物質のいずれかの消失に起因するものと考えられる。従って,先ず第 1にZー フィラメン トを形成 しているaーアクチニンが関与しているか否かを明らかに す るた め に, 牛肉韜よ び豚肉の 熟成に伴 うaーアクチ ニン含量 の変化をSDS‑PAGEと イムノブロッテイングにより調べると,プロテアーゼによるaーアクチニンの加水分解 もaー アクチニン含量の変化も全く認められなかった。このことから熟成に伴うZ線の 脆弱 化はゝ無定形物質の減少によるものであることが分かった。次に,無定形物質が どの ような成分により構成されているのかについて検討した。屠畜直後の骨格筋から 調製 した筋原線維を脂質を可溶化する界面活性剤であるTriton X‑100で処理すると,

微分 干渉顕微鏡 像では,Z線部分の 隆起が低下し,豊富に存在していた物質が減少す るこ とが観察さ れ,位相 差顕微鏡 像ではZ線が殆ど観察されなくなった。この結果は 食肉 の熟成に伴 うZ線の構 造変化と 一致し,Triton X‑100で可溶化される物質が食肉 の熟 成中にZ線か ら遊離す ることを 示してい る。Z線に 存在する 脂質成分を同定する ために,筋原線維から調製したI‑Z‑I brushを材料として脂質を抽出し,薄層クロマ卜 グラ フイー翁よ び薄層自 動検出装 置によって調べたところ,Z線の無定形物質は極性 脂質 韜よび中性 脂質で構 成されて おり,脂質の組成はりン脂質が60.4%,トリアシル グリセロールが26.6%,コレステロールが6.8%および遊離脂肪酸が4.7%であった。さ らに ,リン脂質を分画してその構成を調べると,ホスファチジルコリンが41.6%,ホ スファチジルエタノールアミンが37.8%,リゾホスファチジルエタノールアミンが6.8

%,ホスファチジルイノシトールが6.7%,ホスファチジルセリンが3.4%,リゾホスファ チジルコリン h13.0%韜よびスフインゴミエリンが1.8%であった。各種家畜のZ線を構 成する脂質含量とaーアクチニン含量を合計すると,いずれの畜種の骨格筋に韜いても 筋原 線維タンパ ク質100gあた り5〜7gになり,ほぼ一定であった。この数値は干渉顕 微鏡 により調べられた既報の結果,即ち筋原線維に占めるZ線構成物質の割合は約6% とい う値と非常 に良く一 致した。 次に,Z線の無定形物質である脂質のどの成分が食 肉の 熟成に伴いZ線から遊 離するの かを検討 すると,Z線から遊 離する脂質成分は中 性脂 質ではなく ,極性脂 質である ことが判 明し,食 肉の熟成 に伴うZ線の脆弱化はZ 線部 分からの極性脂質すなわちりン脂質が遊離するために惹き起こされることが明ら かになった。

(3)Z線を構成する脂質成分に及ぼすの2十の影響

  I vitroで,屠畜直後の鶏,豚および牛の骨格筋から調製した筋原線維をCa2十を合む 溶液 で処理してCa2十濃度,pH韜よび温度依存性を調べると,Z線の脆弱化の程度とり ン脂 質の遊離量はよく対応し,食肉の熟成条件ともよく一致することが明らかになっ た。4℃aを用いたオートラジオグラフイーによりZ線の脂質は0.1 mM Ca2゛の存在下で,

Caに結合した。標準脂質を用いて調べた結果,Ca2十と結合する脂質は主としてりン脂 質で あり,負の電荷を持っホスフんチジルセリンやホスファチジルイノシトールのCa 結合 能は高く,正と負の電荷を持っホスファチジルエタノールアミンやスフインゴミ エリ ンのCa結合能 は低いこ とが分か った。以上の結果から,食肉の熟成に伴うZ線の 脆弱 化は屠畜後の非生理的条件下で0.2 mMに上昇したCa2゛がりン脂質と結合し,Ca2

+.リン脂質複合体を形成して可溶性になり,Z線から遊離することによって惹起され ると結論した。

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    高橋興 威 副 査    教 授    島崎敬 一 副査    助教授   服部昭仁

学 位 論 文 題 名

食肉の熟成に伴う筋原線維Z 線の脆弱化機構に関する研究

  本 論 文 は 総 頁 数90頁 の 和 文 論 文 で , 図40お よ び 引 用 文 献70を 合 ん で い る 。   食 肉 の 品 質 を 決 定 す る要 素 の 中で , 軟ら か さ は最 も 重要 で あ る。 食 肉 は熟 成 す る こ と に よ っ て 軟 化 す ると と も に, 風 味が 改 善 され 食 昧が 向 上 する 。 熟成 に 伴 う 食 肉 の 軟 化 は , 筋 原 線維 構 造 と筋 肉 内結 合 組 織の 脆 弱化 に よ って も たら さ れ る 。 筋 原 線 維 構 造 の 中 で ,Z線 の 脆 弱 化 は 食 肉 の 軟 化 に大 き く 寄与 し てい る と 考 え ら れ て い る 。Z線 は 骨 格構 造 を成 すZー フ ィラ メ ント と そ の間 隙 を 充填 す る 無 定 形 物 質 か ら 構 成 さ れて お り ,Zー フ ィ ラメ ン ト はaー ア ク チニ ン で 形成 さ れ て い る こ と , お よ び 無 定形 物 質 とし て はり ン 脂 質が 存 在し て い るこ と が報 告 さ れ てい る 。食 肉 の 熟成 に 伴 うZ線 の 脆 弱化 は0.1 mM Ca2゛ に より 誘 起 される。

本 論 文 は ,Z線 の 構 造 と 構 成 成 分 , お よ びZ線 の 脆 弱 化に 対 するCa2゛ の作 用 に つ い て 追 究 し , 食 肉 の 熟 成 に 伴 うZ線 の 脆 弱 化 機 構 を 明 らか に す るこ と を目 的 と し てい る 。得 ら れ た結 果 は 以下 の 通り で あ る。

(1)食 肉の 熟 成に 伴 うZ線 の構 造 変化

  食 肉 の 熟 成 に 伴 うZ線 の 構 造 変 化 に 関 す る 既 往 の 研 究で は , 試料 作 成 の過 程 で 生 ずる 人 工産 物 の 影響 が 払 拭で き なか っ た。この 点を解決 するた.め に,屠畜 直 後 お よ び 熟 成 後 の 牛 肉 およ び 豚 肉か ら 凍結 切 片 を作 成 し, 光 学 顕微 鏡 によ り 観 察 し た 。 微 分 干 渉 顕 微 鏡 観 察 に よ っ て , 屠 畜 直 後 にはZ線 部 分 が豊 富 な物 質 の 存 在 に よ っ て 高 く 隆 起 して い る が, 熟 成に 伴 っ てそ の 高さ が 顕 著に 減 少し , Z線 か ら 構 成 物 質 が 失 わ れ る こ と を 見 出 し た 。 位 相 差 顕 微鏡 に よ る観 察 にお い て も 熟 成 に 伴 いZ線 が 消 失 す る こ と か ら ,Z線 を 構 成 す る 物 質 が 食 肉 の 熟 成 に 伴 っ て 遊 離 す る た め にZ線 構 造 の 脆 弱 化 が 起 こ る こ と を 明 示 し て い る 。 (2)Z線 の 構成 成 分

  食 肉 の 熟 成 に 伴 うZ線 の 脆 弱 化 に つ い て 生 化 学 的 に 追 究 し ,SDS ‑PAGEと イ ム ノ ブロ ッ テイ ン グ によ りQー アク チ ニ ンの 含 量 は食 肉 の熟 成 中 に全 く 変化しな

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い ことを見出 し,熟成に 伴うZ 線の脆弱化 は無定形物 質の滅少に よるものであ る ことを明ら かにした。 筋原線維を Triton X‑100 で処理すると,微分干渉顕微 鏡 像 で は Z 線 部分 の隆 起が低下し ,位相差顕 微鏡像では Z 線が殆 ど観察され な く た る こと か ら, 脂質が Z 線から 遊離するこ とを見出し た。Z 線 に存在する 脂 質 を同定するために,筋原線維から調製したI‑Z‑I brush を材料として脂質を抽 出 し,薄層ク ロマトグラ フイーおよ び薄層自動 検出装置に よって調べ, Z 線の 無 定形物質は りン脂質お よび中性脂質で構成されており,リン脂質が61 %,ト リ アシルグリ セロールが 27 %,コレステロールが7 %および遊離脂肪酸が 5 %で あ ることを明 らかにした 。さらに,リン脂質を分画して調べ,ホスフんチジル コ リンが 42 %, ホスフんチ ジルエタノールアミンが38 %,リゾホスファチジル エ タノールア ミンが 7 %,ホス フんチジルイノシトールが7 %,ホスフんチジル セ リンが3 %,リゾホスファチジルコリンが3 %船よびスフインゴミエリンが2 % で あることを 明らかにし た。Z 線を構成する脂質含量とa ーアクチニン含量を合 計 すると,いずれの畜種の骨格筋においても筋原線維のタンパク質 100g あたり5

〜 7g であった。 食肉の熟成 に伴いりン脂質が遊離するのに対し,中性脂質は遊 離 し絵いこと を見出し, 食肉の熟成 に伴う Z 線の脆弱 化はりン脂 質が遊離する ために起こると結論している。

( 3 )Z 線を構成する脂質成分に及ぼすC 矛゛の影響

   牛 ,豚および鶏の骨格筋から調製した筋原線維をCa2 十を含む溶液で処理して Ca2 ゛濃度 , pH および温度 依存性を調べ,Z 線の脆弱化の程度とりン脂質の遊離 量 がよく対応 することを 明らかにした。 4 ℃a を用いて調べた結果,主としてり ン 脂質がCa2 ゛と結合し,負の電荷を有するホスファチジルセリンやホスフんチ ジ ルイノシト ールの Ca 結合 能は高く,正と負の両電荷を持っホスフんチジルエ タ ノールアミ ンやスフイ ンゴミエリンの Ca 結合能は低いことを見出した。以上 の 結果を総合 して,食肉 の熟成に伴 う Z 線 の脆弱化は 屠畜後の非 生理的条件下 で Ca2 ゛がりン脂質と結合し,(膂゛・リン脂質複合体を形成して可溶性になり,

Z 線 か ら 遊 離 す る こ と に よ っ て 惹 起 さ れ る と 結 論 し て い る 。    以 上の成果は 食肉の熟成 に伴うZ 線の脆弱 化機構を多 面的かつ詳細に追究し て多くの新知見を見出したものであり,学術上応用上貢献するところが大きく,

高 く評価され る。よって 審査員一同は,最終試験の結果と合わせて,本論文の

提出者島田謙一郎は博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格があるものと認

定した。

参照

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