第32回群馬脳腫瘍研究会
日 時:2004年 1月 24日 (土) 場 所:群馬ロイヤルホテル 代 表:斉藤 人 (群馬大院・医・脳脊髄病態外科学) 当番世話人:坐間 朗 (日高病院 脳神経外科)一般演題1>
座長 栗原 秀行(桐生厚生 合病院脳神経外科) 1. 立藤岡 合病院における髄膜腫76例の検討 山口 玲,黒崎みのり,甲賀 英明 田中 壯佶 ( 立藤岡 合病院 脳神経外科) 朝倉 (前橋赤十字病院 脳神経外科) 【目 的】 髄 膜 腫 の 治 療 の 問 題 点 と し て, incidental meningiomaや高齢者の症例の治療適応については, 症 例毎・施設毎の判断に拠っていると思われる. 立藤岡 合病院における髄膜腫症例をデータベースより検討し た. 【方 法】 1989 年 1月 1日∼2003年 12月 31日 ま での 15年間に当院脳外科に入院した髄膜腫症例 76例 (105入院) を対象とした. 年齢, 性別, 組織型, 発生部位, 主訴, 高齢者の割合, 手術症例の割合などについて調査 した. 【結 果】 発生部位としては大脳半球円蓋部が 最も多く, 次に多いのは前頭蓋底であった. 手術施行例 は 68%, 非手術例 32%であった. 術前血管塞栓術は 21% に施行されていた. 摘出度は Simpson grade 2が 39%で 最も多かった. 性別は女性が男性の 2.6倍であり, 50∼79 までで 76%を示した. 主訴は incidentalが 24%と最も多 く, 次に頭痛が 15%であった. 初回入院時 65歳以上の高 齢者は 44例で手術を施行されたものは 29 例 (66%), 経 過観察例 15例 (34%) であった. 【 察】 日本脳腫 瘍統計および他の文献と比較検討する. 2.著明な浮腫を伴い悪性髄内腫瘍との鑑別を要した微 小囊胞性髄膜腫の一例 楮本 清 ,早瀬 宣昭,卯木 次郎 (埼玉県立がんセンター 脳神経外科) 黒住 昌 (同 臨床病理部) 症例は, 67歳女性, 2003.10. 18自宅で痙攣発作を生じ, 近医より左前頭葉腫瘍の診断で, 10.28当科に入院した. 【神経学的所見】 意識は清明, 運動性失語, 右片麻痺 (MMT 上肢 3/5, 下肢 2/5). MRI では, 左前頭葉に 5× 4×3cm,内部に low intensity areaを伴う不規則な enhan-ced mass. 内側は falxに接し腫瘍の後半部に径 2cmの囊 胞部が存在し, 周囲脳浮腫が著明. MRI からは脳表に主 座をもつ oligo系の悪性髄内腫瘍も えられたが, Tl-SPECT では high washout pattern, 血管撮影では, ant. falx artery及び MMA より腫瘍濃染像が見られ髄膜腫の 術前診断で, 腫瘍血管塞栓術後, 摘出術を施行した. 手術 では腫瘍は黄色内容液を入れた多囊胞性の傍矢状洞髄膜 腫の所見であり, 周囲脳組織への明らかな浸潤は見られ なかった. 病理所見 : 類円形核と好酸性の狭い胞体を持 つ腫瘍細胞が相互に細い細胞突起で連結しながら細かい 網目を作っている. 核の大小はあるが, 異型は乏しく 裂像はない. 細胞間は水腫性で, 微小囊胞変性が目立つ. 間質に血管が発達している. 以上より微小囊胞性髄膜腫, WHO grade 1の診断とした. 本例は大小の腫瘍内囊胞を 有する腫瘍で著しい浮腫を伴い CT および MRI のみで は, 悪性髄内腫瘍との鑑別は困難であった. 一方, 以前本 研究会で同様症例を発表したが, 微小囊胞性髄膜腫は腫 瘍内囊胞を形成する傾向があると えている. 3.高齢者の囊胞性髄膜腫と思われる1例 長岐 智仁,栗原 秀行,曲沢 霜田 茂,河野 徳雄 (桐生厚生 合病院 脳神経外科) 囊胞性髄膜腫は CT, MRI 導入後, 稀ならず発見され る腫瘍であるが,Nauta type 2のように,囊胞壁が腫瘍細 胞で形成されている症例では, その摘出が不十 である と再発をきたしやすい, MRI で増強されない囊胞壁は摘 出する必要はない, など治療法について様々な見解が報 告されている. 今回私たちは, 70歳で左半身麻痺の運動 知覚障害で発症した右頭頂葉, 囊胞性髄膜腫と えられ, 現在治療中の 1例を報告する. 症例は 70歳男性. 平成 12 年 10月頃より, 一過性の左半身脱力発作出現し, 他院で 右頭頂部に囊胞を伴う parasagittal meningioma と診断 され, 経過観察されていた. 平成 15年 8月初旬より左半 99 Kitakanto Med J 2009;59:99∼101身脱力発作が頻回となり, 8月末には左半身の脱力が持 続性となり, 平成 15年 9 月 3日, 当科受診. 左半身に中 等度の麻痺, 知覚障害を認めた. CT, MRI にて右頭頂葉 の囊胞は著明に増大していたが, 充実性の腫瘍部 に増 大は認めなかった. その後, 左半身麻痺は急速に進行し たが, 高齢であり, 患者, 家族が侵襲の大きい手術を希望 しなかったため, 局所麻酔にて囊胞腔にオマヤリザー バーを設置し, 囊胞内容を吸引した. 左半身麻痺はほぼ 消失したが, その後囊胞液の再貯溜が続き, 囊胞液の吸 引除去を繰り返しており, 今後 なる外科処置を検討中 である. 本例は比較的高齢で, 充実性腫瘍が比較的小さ く, かつ上矢状洞に及んでおり, 全摘出困難と判断し, オ マヤリザーバー設置を行ったが, 今後の治療法などにつ き, 御討論いただきたい. 4.Chordoid meningiomaの2症例 菅原 一,深沢 洋子,藤巻 広也 木暮 修治,石内 勝吾,斉藤 人 (群馬大院・医・脳脊髄病態外科) 佐々木 惇,中里 洋一 (同 第一病理学教室) 吉田 貴明 (利根中央病院 脳神経外科) 田村 勝 ( 立藤岡 合病院 康管理センター) 【症例1】 7歳, 男児. 1週間程前より複視と感冒様症状 あり. 2003年 6月下旬, 38度台の発熱と痙攣発作を認め, 近医に入院.WBC,CRP の上昇と頭部 CT にて右後頭葉 に囊胞性病変を認めたため脳膿瘍を疑い, 穿刺吸引術を 施行.検鏡,培養上細菌は陰性.MRI にて右側脳室三角部 に広範な perifocal edemaを伴った enhanced massを認 め, 当院紹介入院. 持続する発熱と小球性低色素性 血, CRP, IgG の上昇あり. 感染の focusは同定できず, 抗生 剤投与にても解熱しなかった. 悪性神経膠腫を疑い, 7月 28日 rt. parietal transcortical approach にて摘出術を施 行し, 腫瘍は肉眼的に全摘出された. 病理組織所見では 粘液様基質を背景に類円形の核と好酸性の突起を有する 腫瘍細胞がびまん性に増殖, 一部で索状配列ないしは clusterを形成していた. 形質細胞とリンパ球の炎症性浸 潤を認めた.免疫染色では vimentin陽性,EMA 一部で陽 性, GFAP陰性, S-100陰性. MIB-1 LI は 5.1%. 以上よ り chordoid meningioma (WHO grade 2) と診断した.術 後, 炎症徴候は正常化し, 血も改善した. 局所照射 56Gyを施行. 現在, 復学している. 【症例2】 64歳, 男 性.1992年 1月痙攣発作にて発症.7月当院入院.画像上, 右前頭葉腫瘍を認め, 悪性神経膠腫が疑われた. 発熱, 血, 炎症徴候なし. 化学療法 (CBDA, MCNU) と局所照 射 40Gyの後, 部 摘出術を施行. 術後, 局所照射 20Gy を追加した. 再増大を認めたため, 1995年 4月摘出術 (Simpson s grade 2) 及び局所照射 40Gy, 1996年 10月摘 出術 (Simpsons grade 1)を施行した.2000年腫瘍死し永 眠された. 我々は chordoid meningiomaの 2症例を経験 した. 本腫瘍では 血,高 γグロブリン血症,炎症反応等 の Castlemann症候群に類似した症状の合併と高度のリ ンパ球形質細胞浸潤が高率に認められるが, 成人例では 必ずしも特徴的な臨床像を呈するとは限らない. また, 周囲の広範な脳浮腫など通常の meningiomaとは異なる 画像所見より悪性神経膠腫などと鑑別が困難な場合があ り, 注意を要する. 治療, 予後については報告例が少なく 確定的なことが判らないのが現状である.