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博 士 ( 環 境 科 学 ) 寺 脇 利 信 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 寺 脇 利 信

学 位 論 文 題 名

   大 型 褐 藻 ア ラ メ お よ び カ ジ メ の 群 落 形 成 に 関 す る 実 験 生 態 学 的 研 究

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  人間 の生活 に係わ る環 境問題 が地球 規模で 検出 され, 環境科 学にお ける重 要課 題として論議さ れて いるな かで, 地球と 地域 の環境 の保全 ,すな わち, 地球 生態系 を保全 する方 策模索する取り 組み が,あ らゆる 分野で 求め られて いる。

  海域 におけ る環境 の中 でも, 沿岸域 の藻場 は, 大型の 海藻群 落によ って形 成さ れ,藻場生態系 とし ての構 造と機 能を示 し, 重要な 一次生 産の場 として の環 境価値 を有す るとと もに,有用魚介 類が 多く生 息する 環境を 形成 するた め,漁 場,食 糧生産 ,さ らにレ ジャ一 等の面 からも,経済価 値を 有する 産業資 源とし て極 めて重 要にな ってお り,そ の保 全なら びに維 持が緊 急の課題となっ てい る。

  しか し,従 来,沿 岸域 での開 発行為 におけ る埋 め立て などの 際に, 環境価 値が 軽視される傾向 が強 かった ことに 加えて ,大 規模ナ ょ地理的スケールで藻場が消失してしまう゛磯焼け現象。が生 じる など, 我が国 沿岸で は, 藻場は 衰退の 一途を 辿って いる 。

  本研 究では ,大型 褐藻 のアラ メおよ びカジメの生育を制限する要因の中で,砂の被覆にっいて,

その 影響と 群落の 植生構 造と の関係 を,物 理的環 境条件 の観 測結果 との総 合化に より定量的に把 握し ,砂底 で,人 為的な 管理 をでき るだけ 減らし て,安 定で 持続す る群落 を形成 させる技術の開 発に 資する 。

  本論 文撒以 下の7章か ら成る 。

  第1章 は 緒 諭 で あ り , 本 研 究 の 背 景 , 目 的 お よ び 研 究 方 法 の 概要 に っ い て 述べ て い る 。   第2章 で は,ア ラメ および カジメ の地理 的分 布範囲 内でも ,砂の 被覆は ,藻 体の生 育への 直接 的な 制限を 引き起 こす一 方で ,藻食 動物の 採食圧 を低減 する 方向に も作用 するな ど,局地的に,

群落 形成に 重大に 関与す るこ とを確 認した 。

  第3章 で は,両 種の 地理的 分布範 囲内で ある 三浦半 島西部 におい て,群 落形 成に関 する光 量お よび 藻食動 物の採 食圧の 影響 がほと んど無 視でき ,かっ ,砂 底から 離れて いるた めに砂の被覆の

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影響も無視できる群落の季節変化および形成過程を把握するとともに,砂底と接する岩礁での群 落の調査地点を探索した。その結果,アラメ群落では水深2〜4mの,一方,カジメ群落では水 深8〜  llmの砂底と接する岩礁の群落に調査区を設定すれば,砂の被覆にっいての詳細な調査に 適していることが分かった。

  第4章では,砂底と接する岩礁での両種の群落にっいての観察,近接する砂底での砂面変動,

および浅海域での漂砂の要因である波浪条件を通年に亘り連続的に観測し,群落の分布および植 生構造と砂の作用の関係を定量的に把握することに努めた。その結果から,衰退時期(秋)の個 体密度が,砂底から離れた群落の50%以上を保ち,群落が安定して存続すると見倣せる岩面の年 間平均比高は,アラメでは30cm以上,カジメでは20cm以上が必要であることを明らかにした。な お,アラメ群落の垂直分布の中心域の水深3mでは,主に波浪の影響で,砂の侵食および堆積が 繰り返され,砂面から比高が小さいとアラメが生育せず,より砂の被覆の影響に耐えられるホン ダヮラ類のオオバモクが生育する。また,アラメ群落では,比高が大きいとわずかの砂が被覆す るのみであるが,カジメ群落の垂直分布の中心域の水深10mでは,主に流れの影響で,全域に徐々 に浮遊砂が堆積することによりカジメの生育が抑えられ,工ンドウモクが全域で混生する状態と なる機構を明らかにした。

  第5章では,群落構造への砂の被覆の影響を最も決定づける,両種の個体に対する砂の被覆の 影響にっいて,室内実験により詳細な検討を進めた。その結果から,砂の被覆の影響は,細菌の 繁殖に伴う藻体の分解に因ると推察され,種別ではカジメで,実験した水温範囲では高温ほど,

表皮が未発達な初期発育段階の藻体ほど,また,藻体の部位では葉部生長点および新根において 傷害が大きく現われることを明らかにした。

  第6章では,カジメが群落を形成している岩礁に近接する砂底において,耐波浪性を有し,めヽ つ,砂底からの高さが異なる生育基盤(コンクリートブ口ック)を設置し,形成期のカジメ群落 の植生構造に及ぼす砂の被覆の影響を明らかにすることを試みた。その結果,水深10mで,砂層 厚30cmの砂底に設置した,高さ75cm以下のブロックに形成されたカジメ群落は,全体として,個 体密度が低く,藻体も砂底に接する岩礁と比較して小型であった。その理由は,波動がかなり強 いため,砂面が変動し易かったことと,砂底上におけるブロックの生育基盤としての規模が極め て小さいために,カジメヘの砂の被覆の影響が明瞭になるためと推論した。さらに,浮遊砂など による海水の濁りが大きいことと,水深が深くても砂底での反射光のために明るいこと等の影響 も加わり,カジメより浅所で不安定な環境に分布するアラメが,自然の岩礁で垂直分布の下限以 下の推進にあるブロック上に入植しやすくなると結論した。以上のように,砂底に人工的に造成

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す る基盤 上では ,藻 場を構 成する 大型海 藻の群 落形 成に及 ぼす漂 砂なら びに 浮遊砂の影響が強ま る ため, 基盤と 自然 環境の 作用の 規模の 差異の 考慮 が重要 になる 。これ らの ことから,砂底に造 成 する人 工的な 生育 基盤の 設計に あたっ ては, 対象 とする 海藻類 からみ て, より厳しい環境条件 を 想 定し ,砂底 と接す る岩 礁で群 落が安 定に存 続す る比高 の3倍程度 以上を 確保す ること が必 要 で あるな どの, 人為 的に海 藻群落 を形成 させる 技術 へまと めた。

  第7章 では, 本研究 の成 果を踏 まえ, 大型海 藻群落 を形 成させ る技術 に関す る問 題意識 が,研 究 段階か ら事業 段階 へ移行 しつっ ある現 状にお いて ,海浜 域の, 特に, 所々 に岩礁域が入り組ん で 複雑な 環境条 件と なり, 多様な 生物が 生息す る゛ 磯浜。 の生態 系の正 確な 把握を指向し,地域 な らびに 地球規 模で の環境 の保全 に資す る位置 づけ での, 今後の 研究の 方向 性にっいて,総合的 に 考察し た。

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

吉田 伊藤 馬渡 増田

忠 生 浩 司 駿 介 道 夫

  沿岸 浅海域 の海 底には 安定し た基盤 があれ ば大 型褐藻 の群落 (藻場 )が 形成さ れる。しかし人 為的 な干渉 により その形 成が 妨げら れたり影響を受けることが多い。沿岸域での開発行為の際に,

海中 の生態 系の環 境価値 が軽 視され ること も多く ,植 物生産 と動物 との平 衡を乱 して゛磯焼け現 象 。 が 生 じ て 藻 場 が 滅 少 し て い る の で , そ の 対 策 が 必 要 と な っ て い る 。   申請 者は藻 場を 構成す る大型 褐藻の うち, 本州 太平洋 に生育 するア ラメ ・カジ メを対象とし,

その 生育を 制限す る要因 にっ いて把 握し, 砂地海 底に 安定で 持続し うる群 落を, 人為的な管理を 最小 限にし て,形 成させ る技 術開発 の基礎 となる 研究 を行な った。

  論文 は7章から ナょり ,第1章で は結 論とし てこの 研究の 背景, 目的 と研究 方法の概略を述べ,

第2,3章 で は ア ラメ ・ カ ジ メ の生育 に影響 する要 因の うち, 光の量 と質, 藻食動 物の 量,海 底 の砂 による 藻体の 被覆の 影響 のそれ ぞれが 単独で 群落 の形成 や構造 に著し く作用 している場所を 調査 して, とくに これま で不 明であ った砂 の影響 を明 らかに した。 さらに 神奈川 県三浦半島西岸

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の広い範囲でアラメ・カジメ群落の状況を調査して,そのなかで砂の影響を調べるのに好適な場 所を選定した。

  第4章におい て,アラメ群落(水深3m),カジメ群落(水深10m)内に設置した調査区で,

波の強さと砂面の変動を長期にわたり連続観測し,同時に群落の変化を追跡して,砂の影響のな い場所との比較をおこなって,砂による被覆によってアラメ,カジメの密度が滅少し,より耐性 のあるホンダヮラ類がそれに置き替わることを示した。

  この結果に基づき,砂の被覆の影響を室内実験によって検討し,高温ほど傷害が大きく,また,

藻体の生長部分や新生された付着器が傷害を受けやすいこと,アラメよりもカジメのほうが影響 を受けやすいことを証明した(第5章)。傷害は砂の表面に生育する細菌類によるものと結論さ れた。

  第6章では,砂質の海底に設置した人工基盤に新しく形成される群落の成立過程を調べること により,形成期の植生構造に及ばす砂の影響を明らかにした。耐波浪性があり,高さの異なる人 工基盤(コンクリートブロック)を天然群落に近い水深10mの砂底に置いて3年間にわたり調査 した結果,天然群落に較べてカジメの個体密度が低く,藻体も小型であり,アラメが混生してい た。これは波が強くて砂面の変動が大きく,.砂底からの反射光のために明るいことなどによるも のと考察された。これらの結論は,砂質海底に人為的な海藻群落を形成させる際に考慮されるべ き基盤の設計と適地選定に指針を与えるものである。

  第7章においては,これまでに得られた結果から,総合考察を行い,海藻群落を大規模に造成 する際にこの 研究で開発されたような実験生態学的なァプローチの重要性を強調している。

  以上の研究成果は,海洋の生態系を構成する生物群集の理解,とくに複雑な環境条件が入り組 んだ海浜域の生物群集の生態学的な研究に寄与するとともに,そのような場所に人工的な生育基 盤を設置して人為的な海藻群落を造成するプ口ジェクトを企画するための基本的な知見を与える ものとして,大きな貢献をするものである。

  最終試験,試問(学力,外国語)の結果も満足すべきものであり,審査員一同は申請者が博士

( 環 境 科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

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