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博 士 ( 環 境 科 学 )藏 崎 正 明 学 位 論 文 題 名

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 )藏 崎 正 明

学 位 論 文 題 名

Biosynthesis of Cadmium ‑ binding a‑ fragment of Metallothionein       without Participation of  B (Ami'no ‑ terminal)‑ fragment in       Esherichia coli

( 大 腸 菌 に お ける メ 夕 口 チ オ ネ イ ン の カ ドミ ウ ム 結合 a − フ ラ グ メ ント の ロ(ア ミノ 末端 )− フラグ メン 卜の      関 与 の な い生 合 成 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  重金 属 結合 低分 子 量蛋 白質 メ タロ チオ ネ イン は, 哺 乳動 物に お いて ,61および62のアミノ酸 残 基か ら 構成 され , その 分子 量 は6500―7000で ある。この蛋白質の 生化学的特徴とし て,システ イ ン残 基 が, 全ア ミ ノ酸 残基 の うち 約30% ,20残基 存在 し,そのシステイ ン残基を介して7ー20 原 子の 重 金属 と結 合 する こと , その他,構成ア ミノ酸残基には,芳 香族アミノ酸残基 を全く含ま ナよ いこと,さらにメタ ロチオネイン生合 成が,重金属その 他で誘導されること などが挙げられて いる 。

  未解 決 の問 題も 残 され てい る が,メ夕口チオ ネインは,その生理 学的な機能として ,カドミウ ムお よび水銀ナょどの有 害重金属の解毒, 亜鉛および銅などの生体必須微量重金属の恒常性の維持,

さ らに , 生体 に種 々 の傷 害を 与 えるストレスお よび放射線からの防 御等重要な生理作 用に関与し て いる と 考え られ て いる 。ま た ,最近,アルツ ハイマ―型老人性痴 呆症の脳内に,メ 夕口チオネ イ ンの イ ソ蛋 白質 の 顕著 な減 少 が報告され注目 を集めている。これ らの全ての機能は ,メタロチ オネ インが重金属と結合 することに基づく と考えられている 。

  メ夕 口 チオ ネイ ン は, これ ら の重 金属 を 結合 する 際に2っのクラ スタ―(房状)構 造を持っと い う特 徴 を有 して い る。 っま り ,メ 夕口 チ オネ イン 分子 中に,重金属を中 心に2っの 領域,すな わ ち蛋 白 質のカルボ キシル末端側にある ロ・フラグメント とアミノ末端側の ローフラグメントの2 っ に分 か れて 存在 し てい る。 こ の立 体構 造 は, 核磁 気共 鳴の分析により,a−フラグ メントには 4原 子, ロ― フ ラグ メン ト には3原子 のカ ド ミウ ム等 の 重金 属が 結 合し てい ることが 明らかにさ

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れている。またメ夕口チオネインが生合成される際には,このロ―フラグメントのアミノ末端側 から,順次生合成されることがよく知られている。

  d および口・フラグメントが,おのおの独立して単独でも細胞内で重金属を結合した形で生合 成されることができるか,ことにカルボキシル末端側のロ―フラグメントがアミノ末端側のロ―フ ラグメントの関与なしに重金属を結合し生合成されるかどうかに関する研究が行われるならば,

メタロチオネインの機能と重金属結合に関する問題の解決に寄与すると期待されているが,この ような研究はこれまで全く行われていなかった。この研究を遂行するには,遺伝子工学的な手法 を用いてフラグメントのみを生合成することが,最も有効的な方法である。現在までに,我々の ヒト・メ夕口チオネインの発現を合めいくっかの研究室において,ロ―およびロ・両フラグメント をもつ天然型のメ夕口チオネインを大腸菌内で発現させることに成功している。しかし,これら 単一にa‑フラグメントおよびロ・フラグメントを,それぞれ別々に生合成させ,その生合成過程 において,重金属と結合する能カを保持できるかという研究は全くなされておらず,これまでそ れに成功したという報告もない。

  本研究の目的は,メ夕口チオネインのa・フラグメントが,通常先に生合成がはじめられるロ・

フラグメントの関与ナょしに生合成されるか否か,d→フラグメントが,単独でも細胞内で重金属 を結合した形で生合成されるか否かを明らかにすることである。

  本学位論文研究の結果を以下に述べる。まず,メ夕口チオネインのd,フラグメントをコード する遺伝子を人工的に合成し,すでに我々によって開発されたメ夕口チオネインを大腸菌内に生 合成させることができる遺伝子に結合させ,その融合遺伝子を大腸菌内に組み込んだ。大腸菌内 にメタロチオネインが存在しないことを既に確認しており,本研究に用いる実験系として最適で あると考えられる。このば・フラグメントのみの遺伝子をカドミウム存在下で,大腸菌内で発現 させ,その発現蛋白質を大腸菌の菌体よルゲルろ過法により精製した。その結果,分子量3500ぐ らいと推定されるカドミウムを合むピークが認められ,様々な知見から,これは,カドミウムと 結合したa‑フラグメントであると推定された。このカドミウムを含む画分を,陰イオン交換ク ロ マトグラフ法を用いてさらに精製を行い,得られた精製d・フラグメン卜の解析を行った。

  アミノ酸分析の結果は,30%以上の高いシステイン含有量を示し,リジン,セリン,アラニン 残基の測定値等,アミノ酸配列から予測されるd亠フラグメントの理論値とよく一致していた。

さらに,a−フラグメントには含まれない芳香族アミノ酸残基およびアルギニン,ロイシンおよ びスレオニン残基は,精製d―フラグメント中には存在しなかった。これらの結果より,この大 腸 菌内に生合成されたカドミ ウムを含む蛋白質は,a―フ ラグメン卜であると同定された。

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  次に このa−フ ラグメ ン卜に 含まれ たカ ドミウ ムが, ば―フ ラグ メン卜のシステイン残基と結合 し てい る か 否 か を, 検 討 す る た めに 紫 外部 の吸収 スペク トルに よる解 析を 行った 。中性 領域の pHに お い て ,a― フ ラ グ メン ト は ,245255nmに 吸 収 の肩 を 持 ち , その 肩 は , 酸 性条 件 下 で 消 失し た 。 こ の 現象 は ,Cd―SHの 結 合 が,245―255nmに 吸 収 を 持 ち ,酸 性 条 件 下 でカド ミウ ム を 離 す と 吸 収 が消 失 す る と いうKagiら (1961) お よ びVasakら (1981)の 報 告 に 一 致し て い る。 こ の 事 実 より,a― フラグ メント はシ ステイ ン残基 を介し てカド ミウ ムと結 合して いるこ とが明 らか になっ た。

  さ ら に , こ のa− フ ラ グ メン ト1分 子あ たり何 原子の カド ミウム が結合 してい るか を,ア ミノ 酸 分析 ,SH分 析お よ び 重 金 属分 析 の 値 よ り求 め た 結 果 ,d・ フ ラ グ メ ント1分 子 は ,天然 のメ タ ロチ オ ネ イ ン のn− フ ラ グ メン ト と 同様 に,4原子 のカド ミウ ムと結 合して いるこ とが確 認さ れた。 以上 ,本研 究にお いて得 られ た,分 子ふる いによ る分子 量, アミノ 酸分析 ,吸収 スペクト ル の解 析 お よ び カドミ ウムとaー フラグ メン トとの モル比 の結果 から, 大腸 菌内で 生合成 された a― フラグ メン卜 は, ローフ ラグメ ントの 関与 なしに ,単独 で4原子の カドミ ウムを 結合 した形で 生合成 され ること が,は じめて 明ら かにさ れた。

  以 上 を ま と める と,本 学位 論文研 究にお いて, 遺伝 子工学 的手法 を用い て大腸 菌内 にd→ フラ グメン トの みを発 現させ る系を 開発 し,本 研究の 目的に 挙げた ,カ ドミウム存在下の細胞内でa・ フラグ メン 卜を発 現させ ること に初 めて成 功した ことを 述べた 。さ らに, その精 製蛋白 質の解析 か ら,a― フ ラ グメ ン ト が , 天然 の メ タロ チオネ イン の場合 と同様 に,カ ドミウ ム4原子と 結合 した状 態で 存在し ,生合 成過程 で最 初に作 られるロ・フラグメントの関与なしに,、単独でも生合 成され るこ とを初 めて立 証し その 意義に っいて 考察し た。

  また 本研究 の特色 として ,遺 伝子操 作を行 った大 腸菌 を用い ること により ,金属 蛋白 質が細胞 内で生 合成 される 過程に おける 蛋白 質と重 金属と の結合 能を解 析し たとい う点が 挙げら れる。生 合成さ れた 蛋白質 と重金 属との 結合 機構に 関する 過去の 研究で は, 精製し た金属 蛋白質 より重金 属を取 り除 き,そ の後に 重金属をァポ蛋白質に添加するという手法がとられており,その手法fま,

細胞内 の反 応をそ のまま 反映し てい るとは 言い難 い。

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学位論文審査の要旨

  重 金 属結 合 低 分 子 量蛋 白 質メ夕 口チオ ネイン は, システ イン残 基が, 全ア ミノ酸 残基の うち 約30%,20残基存 在し, そのシ ステ イン残 基を介 して重 金属と 結合 してい る。さらに生合成が,

重 金 属 そ の 他 で 誘 導 さ れ る こ と も , こ の 蛋 白 質 の 特 徴 と し て よ く 知 ら れ て い る 。   メ 夕口チ オネ インの 生理学 的な機 能とし て, カドミ ウムな どの有 害重 金属の解毒,亜鉛などの 生 体必須 微量重 金属の 恒常 性の維 持など重要な生理作用に関与していると考えられている。また,

最 近,ア ル`ソ ハイマ ー型 老人性 痴呆症の脳内に,メタロチオネインのイソ蛋白質の顕著な滅少が 報 告され 注目を 集めて いる 。これ らの全 ての機 能は ,メ夕 口チオ ネイン が重金属と結合すること に 基づく と考え られて いる 。

  メ 夕口チ オネ インは ,重金 属と結 合する 際に クラス ター( 房状) 構造 をとるという特徴を有し て い る。っ まり, メタ ロチオ ネイン 分子中 に, 重金属 を中心 に2っの領 域,す なわち 蛋白 質のア ミ ノ末端 側のロ ―フラ グメ ントと カルボキシル末端側にあるd―フラグメントの2っに分かれ,ロ―

フ ラ グ メ ン卜 に は3原 子, ロ― フラグ メン トには4原 子のカ ドミウ ム等の 重金 属が結 合して いる こ とが明 らかに されて いる 。また メ夕口 チオネ イン が生合 成され る際に は,このローフラグナン ト のアミ ノ末端 側から ,順 次生合 成され る。

  こ のロ・ 及びd・フ ラグ メント の生合 成にお ける役 割,相互関係にっいての研究はこれまで全く 行 われて いなか った。

  本 研 究の 目 的 は , メタ ロ チオネ インのa‑フラ グメン トが, はじめ に生 合成が される アミノ 末 端 側ロ― フラグ メント の関 与なし に,単 独で重 金属 を結合 した形 で生合 成されるか否かを明らか に するこ とであ る。

  申 請者は ,メ 夕口チ オネイ ンのロ ―フラ グメ ントを コード する遺 伝子 を人工的に合成し,申請 者 らによ って開 発され たメ タロチ オネイ ンを大 腸菌 内に生 合成さ せるこ とができる遺伝子に結合 さ せ,そ の融合 遺伝子 を大 腸菌内 に組み 込んだ 。大 腸菌内 にメタ ロチオ ネインが存在しないこと

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豐 雄

夫 也

   

   

   

   

和 喜

哲 俊

島 藤

原 幸

小 齋

保 道

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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は確認しており,本研究の実験系として最適と考えられた。このロ・フラグメントのみの遺伝子 をカドミウ厶存在下で,大腸菌内で発現させ,その発現蛋白質を大腸菌の菌体よルゲル濾過法に より精製した。その結果,分子量3500ぐらいと推定されるカドミウムを含むピークが認められ,

カドミウムと結合したa・フラグメントであると推定された。このカドミウムを含む画分を,陰 イオン交換ク口マトグラフ法を用いてさらに精製を行い,得られた精製a―フラグメントの解析 を行った。

  アミノ酸分析の結果は,30%以上の高いシステイン含有量を示し,d―フラグメントの実験値 は,アミノ酸配列から予測される理論値とよく一致していた。この結果より,大腸菌内に生合成 さ れ た カ ド ミ ウ ム を 含 む 蛋 白 質 は ,d一 フ ラ グ メ ン ト で あ る と 同 定 さ れ た 。   次にこのa+フラグメントに含まれたカドミウムが,システイン残基と結合しているか否かを,

検討するために紫外部の吸収スペクトルによる解析を行った。中性領域のpHにおいて,ロ フ ラグメントは,245―255nmに吸収の肩を持ち,その肩は,酸性条件下で消失した。この事実よ り,ロ―フラグメン卜はシステイン残基を介してカドミウムと結合していることが明らかになっ た。

  さらに,このd―フラグメン卜1分子あたり何原子のカドミウムと結合しているかを,アミノ 酸分析,SH分析及び重金属分析の値より求めた結果,天然のメタロチオネインのn,フラグメ ン ト と 同 様 に , 4原 子 の カ ド ミ ウ ム と 結 合 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。   以上まとめると,申請者の学位論文研究において,遺伝子工学的手法を用いて大腸菌内にa・ フラグメン卜のみを発現させる系を開発し,カドミウム存在下の大腸菌体内でd−フラグメント を発現させることに初めて成功した。さらに,ば―フラグメン卜が,天然のメタロチオネインの 場合と同様に,カドミウム4原子と結合した状態で存在し,生合成過程で最初に作られるロ・フ ラグメントの関与なしに,単独でも生合成されることを初めて立証し,その意義にっいて考察し た。

  また本研究の独創的な点として,遺伝子操作を行った大腸菌を用いることにより,金属蛋白質 が細胞内で生合成される過程において,蛋白質と重金属との結合を解析したこと及びメ夕口チオ ネインの一部分を人工的に生合成させ得ることを示したことが挙げられる。さらに本論文は,細 胞内における金属蛋白質の重金属結合機構及び重金属選択性の解明に大きく貢献することが期待 され,高く評価できる。

  審査員一同は,参考論文(24編)の内容,専門試験および語学試験の結果とも併せて申請者が 博 士 ( 環 境 科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 ナ ょ 資 格 を 有 す る も の と 認 定 し た 。

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