博 士 ( 環 境 科 学 ) 松 本 穂 高
学 位論 文 題名
Solifluction processes controlled by formation and melting of ground ice
(地中氷の形成と融解に伴うソリフラクションプロセス)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
怨 冷 地 域 のl亅 | 地 斜lmで は , ソ リ フ ラ ク シ ョ ン とufば れ る 」 ニ 砂 移 動 がjも !Iミ す る 。 そ の プ 口 セ ス 解IリJ は , 川 氷 河 環 境 のPl! 觧 だ け で な く , 斜1『lf発 達 の‑p測 モ デ ル1册 築 に 不 可 火 の た め , 地 形 学 の ニ ト 蝮 な51』 ! 越 と な っ て き た . 従 来 の り 『 究 で は , 平 節 凍 土 巾 の 地 中 氷 形JJEが ソ リ フ ラ ク シ ョ ン の 発 生 に1川 わ っ て お り , と く に そ の1'3Jt解 に と も な う 土 墳/Jく 分 上0^ が ジ ェ ル フ ラ ク シ ョ ン に よ る 流 励 川 象 を も た ら す と
| 旨 摘 さ れ た 。 し か し 地 |Il氷 の 状 態 , お よ び そ の 刪 ! 鮴 に よ る 環J竟 変 化 をI司llキ に 砒 洲 し た 例 は な く , し た が っ て ソ リ フ ラ ク シ ョ ン の プ 口 セ ス はt曖I昧 な ´ ふ が 多 レ ゝ . ホ ルf究 で は . ソ リ フ ラ ク シ ョ ン に 対 す る 地I||氷 の彳 殳1州にZ1:11し,(1)地III氷の :I火 態を知 るこ と,(2)地1|| )Jくの 形成と刪!解はどのようなソリフラ ク シ ョ ン プ ロセ ス を も た ら す かをJ. 巴攤 す る こ と , (3)J二 也ll| 氷 の 刪 ! 拘 譽 と ジェ | 」 フ ラ ク シ ョン と の| 刈係を 僻i潔に表 すこ とをIミI的と する 。
| 洲 龕 は ス ウ ェ ー デ ン .Karkevaggc流 域 お よ び ,lヒ 海 逝 人 賞1| | で お こ な っ た 。Ka| .kevaggeで は , 二 つ の ソ リ フ ラ ク シ ョ ン 口 ウ ブ 上 に | 没 定 し た34地 ´ ほ に お い て , 地I11氷 , 凍 土 刪 ! 解 深 , 地 , ド ノJく 他 , お よ び 地 表 ・ 地 |Ilの 上 砂 移 動 を 観 測 し た 。 こ れ ら の 繊 測 は2000イ1・ ニ の 刪 ! 解J9Hこ 行 っ た 。 そ の う ち1↓ 也 点 で は , 地 中 の 土 砂 移 勁 と 地 裟im黼 度 を1998イ1ミ8月 か ら2000乍6J] ま で lI| 暑IitJご と に 迎 統 測 定 し た 。 ー 方 火 ´ ! |t山 で は , 旭 府J問 辺 の14地 点 に お い て , 地 中 氷 , 凍 土 融 解 深 , お よ び 地 下/Jく 他 を 観 洲 し た 。 こ れ ら の 観 測 は1999イIニ の 刪 ! 解JWにfテ っ た 。 そ の う ち1地 点 で は , 地 中 の 土 砂 移 勁 , 地 | |1の 温 度 を1996 年8月 か ら2001乍6J1ま で , お よ び 地 表 の 凍 上 沈 下 を1998イIミ9月 か ら2001年10月 ま で111・ 、ljti‖ ご と に 述 統 測 定 し た 。 地 中 氷 状 態 の 観 測 は ,f|Iii地 域 に お い て 凍 土 の 刪 ! 解I】 ‖ 始 簡 に80c111深 ま で 凍 土 ボ ー ル ン グ を 実 施 し , 凍 土 サ ン プ ル を 分 * 『 『 す る こ と で 含 氷 比 , ま た は 氷 の 飽 和 度 を 求 め た 。 ま た 地 中 の 土f沙移 動の 辿統測 定に はひず みプ ロープ を用 い,1m深まで の移 動状況 を観 測した 。
調 査りf究のをij果は 以下 のよう にま とめら れる ,
(1)地中 氷の 状態
氷 の 挺 は , 両 地 域 と も 地 表 付 近 で 多 く 深 搭15ほ ど 少 な い 傾 向 が 見 ら れ た 。 そ の 中 に い く っ か の 「 氷 に 高 む 眉 」 が 形 成 さ れ て い た 。 氷 に 富 む 屈 で は , 氷 の 飽 和 度 が100% 以 上 , す な わ ち 過 剰 氷 が 形 成 さ れ,凍 土サ ンプル の直 接観察 によ ルアイ スレ ンズの 存在 も確認 でき た。
(2)地中 氷の 形成・ 融解 とソリ フラ クショ ンプ ロセス
Karkevaggeで は , 凍 土 融 解j伽 に 顕 著 な 土 砂 移 動 が 発 生 し た 。 こ の 移 動 は , 弾 性 変 形 お よ び 塑 性 変 形 の メ カ ニ ズ ム に よ る ジ ェ リ フ ラ ク シ ョ ン で あ っ た 。 ジ ェ リ フ ラ ク シ ョ ン は 融 解j切 の 初 期 の み 発 生 し , 融 解 前 線 が 深 く な る と , 水 分 飽 和 が 継 続 し て い た に も 関 わ ら ず 停 止 し た 。 し た が っ て , ジ ェ ル フ ラ ク シ ョ ン の 発 生 に は , 飽 和 状 態 以 外 の 要 因 が あ る と 考 え ら れ た 。 一 方 大 雪 山 で は , 水 分 飽 和 は ほ と ん ど 見 ら れ な か っ た 。 そ れ に も か か わ ら ず , ジ ェ リ フ ラ ク シ ョ ン が 融 解 期 初 期 に 発
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生 し た 。 し た が っ て , や はル ジ ェ リ フラ ク シ ョ ン発 生 に 対 して 飽 和 状 態以 外 の 要 因が あ る と 考え
られ た 。 そ こで , 大 雪山に おける 地中の土 砂移動 状況を ,地弧 および 地中氷 状態と 比較検 討した。
まず ひずみ プ口ー ブ観測 により ,凍結
JOI
に3回,/r'7ilfc17J9n
こ3回のイベ ントが発生したことを捉え た。 このう ち凍南liJ9
】のイ ベント は,い ずれも その発 生II寺に 凍結前 線が存在した深度が,氷に南む 嗣の 分斫→J
に対応 してい た。ま た融解 川のイ ベントで も,そ の発HIお におけるiVd!f07前線深度が,氷 に南 む嗣の 分布に 対応し ていた 。これ は,tLI'iliJqJに地中 氷が形 成される ことで 凍上が 発生し ,融Io'IJ91
に そ の地 中 氷 が 溶け る こ と でフ ロ ス ト クリー プおよ びジェ ルフラク ション が発生 したこ とを 示す 。氷にIf
む J襾の 刪!解 とジェ リフラ クショ ンの発生が一致するI瑚係は,Karkevaggcにおいても観 測さ れた。 以上よ ルジェ リフラ クショ ンは,飽 羽1Mの 布Aほに 関わらず ,地中 氷の.im
こ胤定 されるこ とが 硼;か められ た。た だし60cm以 深では ,氷に ↑汀むJ
卿の形 成によ り凍上 は起こっ たもの の,その 融 解0S
に ジ ェ リ フ ラ ク ショ ン は 発 生し な か っ た。 こ れ よ り, ジ ェ ル フラ ク シ ョ ンを 誘 発 す る地 中 氷は,浅iキ|5にJ形成されたものに限られることが分かった。(3)地中氷の剛!向譽とジェリフラクションとのI刈係
ジ ェリフラクションに剣する地中氷の役:刊を一般化するため,PG1(PotenlialGclinLIctionIndex) を 捉 叭す る 。
PGl
は ,凍 土 の 含 氷比 か ら そ の土 刪の 液性限 外f||I
を引い たもの で,指 数が正 の場合 に はf
倦 在 的に ジ ェ リ フラ ク シ ョ ンが 発 生 し うる 状 態 ,n
の 」揚 合 に は 安定状 態にあ るとい える。そ の結架,PGlは多くの地点で,jlも上J州よりもやや下音15のJnで大きなmI{を示した。これは,j|ふ上Jf.j がよ 襾角礫JH
に1:u当 するこ とを反1映している。また,l)GIを尖|際の地中上砂移劫状況と比*交して み る と, 移 勘 が 発生 し たJflf
の 付 近でl
)GI
が 大き な 他 を 示す こ と が 分か った。し たがっ て,PGlはジェ リフラクションの発生をI説|〃Jしうるといえる。以上より,ジェリフラクションによる移勁(G) を胤 定する 盤INは,
J
)GI,斜i
『If何i
斜(の ,およ び深さ(D
)であ り,Gはこれらの1刈数,すなわちG /
(J)Gl,¢D)と表すことができる。以上 のよう に,凍 土巾に 氷に常 むJHがで きるJ場 合|そのJf・jが形成される‖Sに冰上が発生し,融解 するll奇1こフ口ストクリープとジェリフラクションが発生することを,型r外観測により初めて1|It安j妃 える ことに 成功し た。ま た地中 氷のJl彡 成と刪 !觧がソリフラクションの発生に!R蝮な役剥を来たすこ と を | リ
j
ら か に し , ソ リ フ ラ ク シ ョ ン プ ロ セ ス の 一 般 化 に 大 き くn
| 袱 す る 結 来 をi
!I
た 。‑ 351 ‑
学位論文審査の要旨 主査 教授 平川一臣 副査 教授 杉本敦子 副査 准教授 渡邉悌二 副査 准教授 石川 守 副査 助教 澤柿教伸
副査 教授 松岡憲知(筑波大学大学院 生命環境科学研究科)
学位論文題名
Solifluction processes controlled by formation and melting of ground ice
(地中氷の形成と融解に伴うソリフラクションプロセス)
寒 冷地 喊の 山地 斜面 では ,ソ リフ ラクションと呼ばれる 土砂移動が発生する.そのプロセ ス解 明は ,周 氷河 環境 の理 解だ けで なく,斜面発達の予測 モデル構築に不可欠のため,地形 学の 主要 な課 題と なっ てき た. 従来 の研究では,季節凍土 中の地中氷形成がソリフラクショ ンの発生に関わっており,とくにその剛蜘翠にともな う土壌水分ヒ昇がジェリフラクションに よる 流動 現象 をも たら すと 指摘 され た.しかし地中氷の状 態,およびその融解による環境変 化を 同時 に槻 湖jした 例 はな い. 布研 究では,(1)地中氷の状態を知ること,
(2)
地中氷の形 成と 剛噺 翠はどのようなソリフ ラクションプロセスをもたらすかを把握すること,(3)地中氷 の 剛 め 翠 と ジ ェ リ フ ラ ク シ ョ ン と の 関 係 を 簡 潔 に 表 す こ と が 主 要 な 課 題 で あ っ た . 調査はスウェーデン・ Karkevagge[Yct;J或および北海道大雪山でおこなわれた,Kirkevaggeでは,34
地点に韜いて地中氷,凍士融解深,地下水位,およて尉也三蓑・地中の土砂移動にっいて2000 年の 融解 期Iこ観 測が 実 施さ れたI
そ のう ち1地 点で は, 地中 の土 砂移動,地表面温度につい て1998年8
月 から2000
年6
月 まで1
時間 ごと に連 続測 定さ れた 。大 雪山では,旭岳周辺の14
地 点に 韜い て, 地中 氷, 凍士 融解 深, 韜よて問圷水位にっい て1999年の融解期に槻測が実施さ れた .そ のう ち1地点 で は, 地中 の土 砂移 動, 地中 の温 度に つい て1996年8
月から2001
年6
よ まで ,地 表の 凍上 沈下 にっ いて1998
年9月から2001
年10月まで1時間ごとに連続測定された.地中 氷の 状態 につ いて は, 両地 域と も凍土の融解開始前に
80cm
深まで凍土ボーリングにより 試料 を採 取し て含 氷比 ,氷 の飽 和度 が求められた.きらに 地中の土砂移動にっいて,ひずみ プローブによってIm深まで観測が実施された.ー352 ‑
調査研究の結果
(1)
地中氷の状態氷 の 量 は , 両 地 域 と も 地表 付 近 で 多く 深 部 ほど 少 な い傾 向 が 見ら れ る .ま た い くっ か の
「氷に富 む層」 が形成さ れていた ,氷に 富む層で は,氷 の飽和度 が100y0以上,すなわち過剰 氷 が 形 成 さ れ , 凍 土 サ ン プ ル の 直 接 観 察 に よ ル ア イ ス レ ン ズ の 存 荏 も 確 認 さ れ る .
(2)
地中氷の形成・融解とソリフラクションプロセスKarkevagge
では,凍土剛噸期に顕著な土砂移動カ.ミ発生した,この移動は,塑性変形およぴ フローの メカニ ズムによ るジェリ フラク ションであった‐ジェリフラクションは剛埆翠期の初 期のみ発 生し, 鬲蜘補ロ 線が深く をると ,水分飽和が継続していたにも関わらず停止した.し たが って,ジ ェリフ ラクショ ンの発 生には, 飽和状態 以外の 要因があ ると考 えられた 。一方 大雪 山では, 水分飽 和はほと んど見 られなか った、そ れにも かかわら ず,ジ ェリフラ クショ ンが剛め 鬱明初 期に発生 した.し たがっ て,やはルジェリフラクション発生に対して飽和状態 以外 の要因が あると 考えられ た.大 雪山にお ける地中 の土砂 移動状況 を,地 温および 地中氷 状態 と 比 較検 討 し た結 果 , 凍結 期に3回,鬲 蚋職8に3回のイベ ントが発 生した ことがひ ずみ プロ ーブ観測 から捉 えられた .この うち凍結 期のイベ ントは ,いずれ もその 発生時に 凍結前 線が 存在した 深度が ,「氷に 富む層 」の分布 に剤応し ていた .また剛 噸蝴の イベント でも,その 発生時に おける
f
埆翠 前線深度 が「氷 に富む層J
の 分布に対 応してい た.こ れは,凍 結期 に地中氷 が形成 されるこ とで凍上 が発生 し,鬲蚶罕期にその地中氷が溶けることでフロストク リー プおよび ジェリ フラクシ ョンが 発生した ことを示 す,咏 に富む層 」の剛 蝸翠とジ ェリフ ラク ションの 発生が 冖致ナる 関係は ,Karkevaggeにお いても槻 測され た.以上 よルジェ リフ ラク ションは ,飽和 層の有無 に関わ らず,地 中氷の量 に規定 されるこ とが碓 かめられ た,た だし60cm
以深で は,「氷 に富む層 」の形 成により 凍上は 起こった ものの ,その融 解時にジ ェ リフラク ション は発生し をかった ,これ より,ジェリフラクションを誘発すーる地中氷は,浅 部に形成されたものに限られることが明らかにされた.(3)
地中氷のiilrj6Cr
とジェリフラクションとの関係ジェ リフラク ション に対する 地中氷 の役割を 一般化 するため ,PGI (Potential GeliflUct
ioii IndeX)
が提唱された,PGIは,′凍土の含氷比からその土層の淵1:'L限界値を引いたもので,指数が正 の場合 には潜在 的にジェ リフラ クション が発生 しうる状 態,負の場合tこは安定状態 にあ る こ とを 意 味 する .
PGI
は 多くの 地点で, 最上層 よりもや や下部の 層で大 きな値を 示し た. す な わち 最 上 層が 表 面 角礫 層に相 当するこ とを反 映してい る.また ,PGIを実際の 地中 土砂 移動状況 と比較 してみる と,移 動が発生 した層の 付近で 大きな値 を示す .したが って,PGI
は ジェ リ フ ラク シ ョ ンの 発 生を説 明しうる とぃえ る.以上 より,ジ ェリフ ラクショ ンに よる 移 動 (の を 規 定す る 要 因は ,PGI
, 斜 剛 瞬斜 ( ヲ ), お よ び深 さ 働 であ り , のま これ らの関数,すなわちG=f(PGI,ヲ,助と表すことができる・以上のよ うに, 凍土中に 「氷に 富むJ啻亅がで きる場 合,その 形成時に凍上が発生し,融解 時に フロスト クリー プとジェ リフヲ クション が発生す ること を,野外 観測に より初め て直接 捉えるこ とに成 功した。 また地中 氷の形 成と鬲蝋翠がソリフラクションの発生に重要な役割を 果たすこ とを明 らかにし ,ソリフ ラクシ ョンプロセスの一般化に大きく貢献する結果を得た。
以 上の と おり ,申 請者
f
講 斡合 気候 環 境下 の土 砂移 動に っい て新 知見 を得 たも のであり,凍 土学 ,周氷洞瑚騨ならび滞四綻学の発展に貢献lるところ大である。よっ て,申請者iヨゴ専士(環境科学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。