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博士(地球環境科学)浮田甚郎 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(地球環境科学)浮田甚郎 学位論文題名

A Study on the Parameterization of the Internal        Stress of Sea ic       ,‑       ice

(海 氷の内部 応カのパ ラメタリ ゼーション に関する研究)

学位論文内容の要旨

  極 域海洋 全体にわ たって広 く見られ る海氷は 、一般的 に大小様々 な形状を 持った氷 板 の 集合体 である。 それらの 氷板の隙 間は、海 水面が直 接大気にさ らされて いるか、 もし く は薄い 氷によっ て覆われ ている。 冬季の北 極海など では、氷板 が密に存 在する状 態が 一 般的で 、その場 合氷板同 士の隙間 は非常に 幅の狭い 形状を持っ ており、 リードと 呼ば れ る。各 々の氷板 は、大気 ・海洋か らの外カ を受けて 、互いに接 触・衝突 を繰り返 しな が ら破壊 ・変形を 伴って流 動する。 この為リ ードの開 閉が起こり 、それは 熱力学的 又力 学 的 に 大 気 ー 海 洋 間 の 相 互 物 理 素 過 程 に 大 き な 影 響 を 及 ぽ し て い る 。   熱 力学的 には、海 面での熱 ・水蒸気 フラック ス量は、 リードの開 閉により 大きく左 右 さ れてい る。例え ば、熱の 鉛直輸送 を考えた 場合、冬 季の北極域 などでは 面積にし て約 1% しか 占 め ない り ー ドを 通 して 運 ばれる熱 が全体の 半分以上を 占めると 積算され てい る 。又冬 季におけ るりード の開閉は そこでの 海氷の生 成を通して 海水の沈 み込を促 しそ の結果海洋の熱塩循環に深くかかわっている。

  大きな スケール(10ー100km)でカ学的 にとらえ た場合、 リードの開閉は氷板の衝突を伴 い それに よって生 じる氷板 同士のコ ンタクト ・フオー スによる内 部応カを 生む働き をす る 。その 結果、此 のスケー ルで海氷 の捉えた 場合、特 に冬季や沿 岸部では 内部応カ の空 間 的 差 異 に よ る 影 響 が 大 気 ・ 海 洋 か ら の 影響 に 拮 抗す る 事が 、1970年 代よ り の観 測 に よって 明らかに されてい る。さら に過去の 研究によ り、リード が閉じる 事によっ て氷 板 の端や りード内 にある薄 い氷が変 形し、そ の結果リ ッジ及びキ ールが形 成され、 ここ で の変形 にともな う単位面 積当たり のエネル ギーの変 化率が、リ ッジング ・キーリ ング に よる海 氷位置エ ネルギー の増加及 びその形 成にとも なう摩擦に よるエネ ルギーの 散逸 に よって 、第一義 的に説明 され、内 部応カと 歪み速度 のテンソル 内積を、 リードを 挾ん だ 氷板同 士が閉じ る量及び スライド する量の 一次関数 と考えられ ている。 しかしな がら そ の定量 化に関し ては未だ に解明さ れていな い部分が 多く存在す る。そこ で、本研 究で は 海氷 の 内部 応 カ のパ ラ メタ リ ゼ ーション にっいて 次の4つの項 目に整理 を行い考 察を 行った。

  (1) 内 部応 カ は 過去 の 研究 で は非 線形の粘 性又は塑 性として表 現されて きたが、 特 に海氷のようにdeviatricとnon‑deviatricな部分が結合する場合、一般的な定義及び言語が な い為に 過去に議 論がかみ 合わない 側面があ った。本 研究ではま ず粘性・ 塑性流体 、粘 性 係数、 降伏曲線 、等方性 などにつ いて一貫 性のある 定義を与え た。その 結果、内 部応 カを歪み速度の関数とみなしoperator normを評価する事によってdeviatricとnon‑deviatric な 部分が カップリ ングする 事により 粘性係数 が無限大 になる様な 場合にお いても粘 性係

(2)

数を用 いずに一 貫した議論 が行える 事を示し た。又過 去提唱さ れた内部 応カのほと んど が、separation of flow and mater甜propeniesと呼ばれる特徴を有する事を明らかにした。

  以上の 枠組みの 中で、リー ドの閉じ る面積及 びスライ ドする量 を歪み速 度の強度で 無 次元化 したもの を、リッジ ング関数 と定義し 、この関 数が海氷 の変形場 、特にその 非回 転成分 に依存す ると考えた 場合、先 のテンソ ル内積は 歪み速度 の不変量 の関数とし て表 され、 ここで海 氷力学にお ける内部 応カの決 定とぃう 問題は、 リッジン グの関数表 現を 求める という問 題と、内部 応カのニ つの不変 量である 、シアー 内部応力 (最大剪断 内部 応力) とノーマ ル内部応力 (平均圧 縮内部応 力)と歪 み速度の 不変量で ある収束・ 発散 及びシ アー(シ アー・モー ション) をどの様 に対応さ せるかと 、最後に どのように 内部 応 カ の 強 度 を 表 現 す る か と い う 3つ の 問 題 に 帰 着 す る 事 を 明 ら か に し た 。   (2) リ ッジ ン グ 関数 を どう 表現す るかとい う問題に 対し本研 究では、 海氷が密に 存 在する 場合のり ードの開閉 及びスライデイングを表す為に単純な構造のモデルを作った。

その結果、リッジング関数を、海氷の歪み速度の不変量である収束・発散とシアーと.リー ド・パ ターンに ・より表現 する事が出来、ある一定の広がりを持った海氷域でのりードが 閉じる 面積・ス ライドする 量が、各 々のりー ドごとに 計算した 量の加重 平均として 表せ た。更 に各々の りードにつ いて、リ ードが閉 じる面積 ・スライ ドする量 はャ収束・ 発散 とシア ーに線形 依存し、そ れらの係 数は氷板 の形状及 び歪み速 度テンソ ルの主軸に 対す るりー ドの向き に依ること が示された。.これにより以前から示唆されていた、リッジン グ関数 に対する ジオメトリ ーの影響 を初めて 直接定量 化するこ とに成功 した。更に 、等 方的な ジオメト リーを仮定 したシミ ュレーシ ョンを行 い、リッ ジング関 数に関して 、本 研究で 求めたモ デル値と人 工衛星に 搭載され た合成開 口レーダ ーを使っ て得られた 観測 値との 比較を行 った。その 結果、特 に海氷の 変形にお いて、シ アーが収 束・発散に 卓越 している時に、モデル値と観測値が良く一致した。

  (3) 次に 本 研 究で は 、内 部 応 カと 歪 速 度が1対1に 対 応す る とい う 条 件に 注 目 して シアー ・ノーマ ル内部応カ と収束・ 発散とシ アーとの 対応とぃ う問題を 考察した。 まず 変形に ともなう 海氷の単位 面積当た りのエネ ルギー変 化率に関 する仮説 により、シ アー 内部応 カとノー マル内部応 カの関係 を、リッ ジング関 数、収束 ・発散と シアーの比 率,

内部応 カと歪み 速度の方向 性のずれ を表す角 度によっ て表現し た。ここ でりッジン グ関 数を与 えた時、 導かれた関 係式は内 部応力平 面上にお いて、一 定の許さ れる閉じた 領域 に 対応 し た。 次 に 、内 部 応カ と 歪 み速 度 が1対1に対 応 す るとぃ う条件は 、この領域 の 境界線 上でのみ 満たされる とぃうこ とを示し た。又こ の関係式 によって 定義される 境界 線上の 点は全て 、その各々 のノーマ ル内部応 カにたい してシア ー内部応 カを最少に する 条 件を 満 たし て い るこ と も示 し た 。即 ち 、 内部 応 カと 歪 み速 度が1対1に 対応すると ぃ う条件 と、ノー マル内部応 カにたい して、シ アー内部 応カが最 小になる ように、収 束・

発散と シアーの 比率を求め るとぃう ことが等 しいこと を証明し た。又シ アー内部応 カと シアー の方向性 の一致が、 シアー内 部応カを 最小にす る必要条 件として 導かれた。 これ により、separationofnowandma.teddpropertiesの枠組みの中において、人工衛星等を使つ た観測 により求 めたりッジ ング関数 より、直 接内部応 カの流れ の場に対 する依存性 を求 める手法を示した。

  (4) 内 部応 カ の 強度 に つい ての関 数表現に 関する問 題では、 単に違っ た関数表現 を 与えた 数値実験 の結果によ って全体 を理解し ようとし た過去の 研究手法 に対し、こ こで はまず 特定の関 数表現に依 らない分 析手法を 確立し、 それを基 に実際の 漂流ブイの 観測 データ を用いて 内部応カの 役割につ いて解析 を行った 。その結 果モーメ ンタムバラ ンス におい てシアー ・ノーマル 内部応カ が及ぽす 影響、シ アーの方 向性が及 ぽす影響、 変形 場の影 響、内部 応カの強度 が及ぽす 影響に分 けて評価 できるこ とを示し た。この事 によ り内部 応カの強 度の関数表 現を求め る為に、 将来どの 様な観測 を行えば 良いかを明 らか

(3)

にした。

  

以上の研究により、現在ある海氷モデルの限界及び問題点が明らかになり、又それら

を改善するための観測を含めた手法、更に将来メソスケールで季節海氷域もし<は氷縁

海氷域におけるカ学・熱力学過程をモデル化するための手法について知見を得た。

(4)

学 位 論 文 審 査 の 要旨

主 査 副 査 副 査 副 査 副 査 副 査

教授 教授 教授 教授 助教授 教授

若 土 正 暁 松 野 太 郎 池 田 元 美 本 堂 武 夫 大 島 慶 一郎

山 形 俊 男(東 京大学理学 研究科)

     学位論文題名

AStudyontheParameterizationoftheInternal     Stress of Sea ice

     丶_

     (海氷の内部応カのパラメタリゼーションに関する研究)

  海氷 は、主に風 と海流か らエネル ギーを受 けて運動 する。例えば、オホーツク海や南 極海の海氷域のように、開水面が数多く存在し、そのため各氷盤が自由に動けるような、

氷密 接度の比較 的小さい 場での海 氷の運動 は、ほと んど風と海流に依存している。とこ ろ が、 北 極 海の 冬 季 の海 氷 域の ように、 氷密接度 が90%以上 もあり、し かもまわ りを 陸地 で取り囲ま れた地理 的環境下 にある海 氷は、大 気や海洋からの外カを受けても自由 に動 き回ること ができず 、氷盤ど うしの接 触・衝突 を絶えず繰り返しながら破壊や変形 を伴いつつ流動している。そのため、北極海の海氷域では、リード(水路)の開閉やりッ ジン グ(氷丘脈 化)など のカ学現 象がいた るところ で起こっている。従って、このよう な海 氷域の運動 を理解す るために は、風と 海流の他 に、上で述べた氷盤どうしの接触・

衝突 などの相互 作用に起 因する「 内部応力 」を考慮 する必要があることは古くから指摘 され ていた。

  しか し、この「 内部応力 」を現場 で直接測 定するこ とは実際上不可能に近く、そのた め従 来は、それ を運動方 程式にお ける他の 測定可能 な項を除いた残差項としてとらえ、

そ の量 を 評 価し て き た。 そ の評 価した値 から、特 に北極海 のような海 氷域の運 動に、

「内部応力」が果している役割は小さくはなく、決して無視できる量でないことが分かっ た 。1970年代に、AIDJEX(Arctic Ice Dynamics Joint Experiment)という 、北極海 氷 のカ 学に関する 大規模な 国際共同 観測が数 年間にわ たって実施された。その観測の成果 に基 づいて構築 された海 氷力学モ デルの中 で、この 内部応カの概念がはじめて導入され た。 その海氷モ デルは、 特に内部 応カにつ いてまだ 検討すべき問題点が少なからずある

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にもかかわらず、ほとんど改良されないまま、今まで海氷や気候に関する研究者達に広 く使用されてきた。

  本研究は、その海氷の内部応カのパラメタリゼーションについて理論的に明らかにし たものである。この研究の成果を要約すると以下のようになる。まず、粘性・塑性流体、

粘性係数、降伏曲線、等方性などについて一貫性のある定義を与え、その枠組みの中で、

リッジングの関数表現問題、内部応カと歪み速度の不変量との対応問題、内部応カの強 度 を ど の よ う に 表 現 す る か と い う 問 題 、 の 三 つ の 問 題 を 明 ら か に し た 。   それら三つの問題のうち、最初のりッジング関数をどう表現するかという問題につい ては、海氷の歪み速度の不変量である収束・発散とシアーとりード.パターンを基に、

単純な構造のモデルを開発した。そのモデルを用いた数値実験の結果を、人工衛星に搭 載された合成開口レーダから取得された観測値と比較・検証を行ったところ、良い一致 が得られた。

  次に、内部応カと歪み速度との対応問題について、両者が1対1に対応するための条 件は、ノーマル内部応カに対するシアー内部応カが最小になるように、収束・発散とシ アーの比率を求めることに等しいことを証明した。同時に、シアー内部応カを最小にす る 必 要 条 件 が 、 シ ア ー と の 方 向 性 の 一 致 に あ る こ と も 明 ら か に し た 。   最後に、内部応カの強度をどのように表現するかという問題では、まず特定の関数表 現によらない解析手法を確立し、それを基に北極海における漂流ブイの観測データを用 いて内部応カの役割についての解析を行った。その結果、運動量保存にシアー・ノーマ ル内部応力、シアーの方向性、変形場、内部応カの強度などが及ぼす影響について、そ れぞれについての評価が可能なことを示した。また、内部応カの強度の関数表現を求め るために、今後実施すべき観測内容の提案を行った。

  本研究は、以上のように内部応カについて深く考察し、その物理的意味を具体的に示 レ、さらに現存する海氷モデルの限界や問題点などを明らかにすることにより、それら を改善するための観測を含めた研究手法を提示した。これらは、今後の海氷・気候研究 の進展への大きな貢献として高く評価される。

  以上の結果は、申請者が研究者として研究活動を行うために必要な高度な研究能カと 学カを有していることを示している。よって審査員一同は申請者が博士(地球環境科学)

の学位を受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

参照

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