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博士(農学)李 世訪 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(農学)李   世訪 学位論文題名

果樹類,園芸植物のウイ口イド及び ウイ口イド性病害に関する研究

学位論文内容の要旨

  ウイ口イドによって起こる疾病は特に永年性作物(果樹類及び園芸植物)に発生し,潜在感染 している場合が多くI時として甚大な被害を引き起こす場合も少なくない。本研究は,これまで 病原不明であったセイ ヨウナシからウイ口イド様RNAの検出,ウイ口イドRNAの構造解析,

モモ,スモモのウイロイドの分離,同定及び発生状況の調査,及び,園芸植物のキクに病害を起 こすキク矮化ウイ口イド(CSVd)の分離,ゲノムの塩基配列の決定,検出法の確立及び実用的 な遺伝子診断法を開発することを目的として行ったものである。

  1)セイヨウナシウイ口イドの検出,分離,同定:山形県に発生したくぼみ果病試料(山形株)

及び福島県の粗皮病試 料(福島株)の果皮及び葉から抽出した低分子RNAをキュウりに接種 した結果,ホップ矮化 ウイ口イド(HSVd)特有の矮化,葉巻病徴が現れた。本ウイロイドと HSVd数系 統 を8M尿素 変性 ,5%PAGEで 移 動度 を比 較した結果, 福島株(粗皮病)と山形 株(くぼ み果病)は共に297塩基を有 するHSVd・plumと同じ移動 度を示した。HSVdグルー プに共通の合成オリゴヌクレオチドをプ口ーブとして,ドットブ口ットハイブリダイゼーション を行ったところ,前述 のセイヨウナシウイ口イドの2分離株は共に反応して,HSVdグル‐プ に近縁なウイロイドであることが明らかになった。

  セイヨウナシから分 離したウイ口イドをキュウりで増殖後,抽出した低分子RNAを鋳型に し 逆 転 写 後 ,PCRで 増 幅 し たcDNAをpUC119のSmal切 断部 位に 挿入 して , 大腸 菌JM109 を形質転換させた。本ウイロイドの2分離株の塩基配列を決定した結果,山形株(くばみ果病)

及び福島 株(粗皮病)はHSVd hop分 離株に比べそれぞれ4塩基,2塩基の置換が認められ た。以上のことから,セイヨウナシから分離.したウイロイドは共にHSVdグループに属する新 しい分離株であり,HSVd―pearと結論した。

  これとは別にセイヨ ウナシ30試料より抽出した 全核酸をりターンPAGEで検定した結果,

HSVd・pearよ り 遅 く 泳 動 す る 約315塩 基 の 大 き さ の ウ イ ロ イ ド を 分 離 し た 。

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  2)モモ及びスモモからホップ矮化ウイ口イド(HSVd)の検出,同定:山梨県から採集した モモ及び青森県と熊本県から採集したスモモから低分子RNAを抽出し,キュウりで接種険定,

及 び ,5%PAGE検 定 を行 った と ころ ,HSVdが 検出 さ れた 。山 梨県 産 のモ モか らは 既に HSVdの検 出が 報告 され て いた が,本研究によって初め て青森県及び熊本県のスモ モにも HSVdか存在していることが確認された。また,熊本県のスモモの苗木は山梨県に由来してい る こ と か ら ,HSVd・plumが 山 梨 県 か ら 苗 木 によ っ て伝 搬さ れた こ とが 推測 され る。

  3)キク矮化ウイ口イド(CSVd)の分離,同定,及び,遺伝子診断法の開発:日本産キク試 料か ら抽出した低分子RNAをキク ,トマト,及び,ビ口ードサンシチに接種した結果,キク

(ミスルト品種)には黄色斑点,トマトには無病徴,及び,ビ口ードサンシチには葉巻症状が現 れた。

  罹 病キク(品種ポピュラー) の2株より抽出した低分子RNAを鋳型にし,逆転写したcDNA をPCR法 に よ り 増 幅 後 ,BamHI分 解 に よ り 得 ら れ た 完 全 長CSVd. cDNAをpUC119の BamHI切断部位に挿入し,クローニングした。CSVdの全塩基配列を決定し,354塩基からなっ てい ることを明らかにした。イギリス分離株(CSVd ‑E)と比較すると4塩基の置換が認めら れ,これら分離株をCSVd―J(日本株)とした。

  キ クか ら抽 出し た低 分 子RNAと ジゴ キシ ゲニ ン(DIG)で標識したcDNAプ口ーブ とドッ トブロットハイブリダイゼーションを行った後,発色反応,及び,発光反応の検出感度を比較し た 結 果, 両反 応の 間で は 差異 が認 めら れず , いず れも 低分子RNA2 ngまで検出で きた。

CSVd感染 キク より 抽出 し た全 核酸 を用 いて も 低分 子RNAと 同様 ,CSVd. cDNAプ 口―ブ と特異的にハイブリダイゼーションすることが明らかとなった。ドッ卜ブ口ットハイブリダイ ゼーション法は少なくとも7.5%リターンPAGEより検出感度が100倍高いことが判明した。本 法はプ口ーブの作製が簡単で,放射性同意元素のような半減期がなく,取扱いが安全であること から,優れた実用的な遺伝子診断法であると言える。

  こ れまで日本ではCSVdが報告されていたが,これは単なる伝搬試験によるものであり,著 者 は キク から 抽出 した 全 核酸 ,及 び, 低分 子RNAを 用 いて ,PAGE検 定,3゜P及びDIG標 識CSVd.cDNAをプ口一ブとして 用いたドットブロットハイブ リダイゼーションにより,北 海道 ,栃木県,静岡県,及び,香川県産キクよりCSVdが検出され,日本に広く分布している ことを初めて明らかにした。

  逆 転写 ―ポ リメ ラー ゼ ゜チ ェイ ン・ リア ク ショ ン(RT―PCR)法で増幅したCSVd.cDNA をDIG標識したCSVd. cDNAプ口 ーブとポリスチレン製のマイ ク口プレートでハイブリダイ

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ゼーションを 行い,その後アルカリホスファターゼ(ALP)標識抗DIG抗体と反応させ,発色 反応により検 出するPCR―マイクロプレートハイブリダイゼ―ションによるCSVdの検定を検 討した。その 結果,本法は高感度の遺伝子診断法として実用性が高く,CSVdの検出に有効で あることが確認された。

  以上のように病原不明のセイヨウナシ,モモ,スモモより抽出した低分子RNAの接種実験,

PAGE検定,遺 伝子診断,ウイロイドゲノムの構造解析を通して,ウイロイドが果樹類に広く 分布していることを確認した。また,キク矮化ウイ口イドを中心としたウイ口イドの検出法の開 発を試み,実用的かつ簡易的な遺伝子診断法を確立した。

学位論文審査の要旨

    主査  教授  木村郁夫     副査  教授  生越  明     副査  教授  喜久田嘉郎     副査  助教授  上田一郎

  本論文は260ページの和文論文で表37,図61,引用文献146を含み6章で構成されている。別に 参考論文1編が添えられている。

  本研究はこれまで病原不明のセイヨウナシ,モモ、スモモ,及び,キクの疾病をウイ口イド性 病害で あることを罹病組織から分離 した低分子RNAの接種試験,ウイロイドゲノムの全塩基 配列を 決定して構造解析,PAGE検定により,病原ウイ口イドを決定し,実用的な遺伝子診断 法とし て,アルカリホスファ夕一ゼ を標識した抗DIG抗体を用い たPCRーマイク口プレート ハイブリダイゼーション法を確立した。  

  1)セイヨウナシウイ口イドの検出,分離,同定:ナシくぼみ果病(山形株)及び,粗皮病(福 島株) の果皮及び葉から抽出した低 分子RNAをキュウりに接種した結果,ホップ矮化ウイロ イ ド(HSVd)に 特有 な矮 化, 葉 巻病 徴が 現れ た。 ま た, 本試 料とHSVd数 系統を8M尿素変 性 ,5%PAGEで 移動 度 を比 較し た結 果 ,前 記2株 は 共にHSVd ‑ plum (297塩基)と同一 移動度 を示した。HSVdグループに共通の合成オリゴヌクレオチドをプ口ーブとして,ドット ブ口ッ トハイブリダイゼーションを 行った結果,山形及び福島の2分離株は共に反応して,

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HSVdグ ルー プに近 縁なウ イ口イ ドであ るこ とを明 らかに した。

  セ イ ヨ ウナ シ か ら 分 離し た ウ イ ロ イド を キ ュ ウ り で増 殖 後 , 抽 出し た 低 分 子RNAを 鋳 型 と し て , 逆 転 写 後 ,PCRで 増 幅 し たcDNAをpUC119の 制 限 酵 素Smal切 断 部 位 に 挿 入 し て , 大 腸 菌JM109を 形質 転 換 さ せ た。 本 ウ イ ロ イド の2分 離 株の 塩 基 配 列 を決 定した 結果, 山形 及 び 福 島 の 分 離 株 はHSVd・hop分 離 株 に 比 べ , そ れ ぞ れ4塩 基 ,2塩 基の 置 換 が 認 め られ た 。 以 上 よ り , セ イ ヨ ウ ナ シ の2分 離 株 は 共 にHSVdグ ル ー プ に 属 す る 新 し い 分 離 株 で あ り , HSVd―pearと結 論した 。  

  ま た , 別に セ イ ヨ ウ ナシ30試 料 より 抽 出 し た 全核 酸 を り 夕 一ンPAGEで検 定 の 結 果 ,2試 料 か らHSVd・pearよ り 遅 く 泳 動 し , 約315塩 基 の 大 き さ の 別 の ウ イ 口 イ ド を 分 離 し た 。   2)モ モ 及 び ス モ モ か ら ホ ッ プ 矮化 ウ イ 口 イ ド(HSVd)の 検 出 , 同定 : 山 梨 県 から 採 集 し た モ モ 及 び 青森 県 と 熊 本 県か ら 採 集 し たス モ モ か ら抽 出した 低分子RNAを キュウ りで 接種検 定,

及 び ,5%PAGE検 定 の 結 果 ,HSVdが 検 出 さ れ た 。 山 梨 県 産 の ス モ モ ・ モ モ か ら は 既 に HSVdの 検 出 が 報 告 さ れ て い た が , 本 研 究 に よ っ て 初 め て 青 森 県 及 び 熊 本県 の ス モ モ に も HSVdが 存 在 し て いる こ と が 確 認さ れ た 。 ま た ,熊 本 県 の ス モモ の 苗 木 は山梨 県に由 来して い る こ と か ら ,HSVd―plumが 山 梨 県 か ら 苗 木 に よ っ て 伝 搬 さ れ た こ と が 推 測 さ れ る 。   3)キク 矮 化 ウ イ 口 イド (CSVd)分 離 , 同定 , 及 び , 遺伝 子 診 断 法 の開 発 : 日 本 産 罹病 キ ク か ら 抽 出 し た低 分 子RNAを , キ ク , トマ ト 及 び , ビ口 ー ド サ ン シ チに 接 種 す る と, キ ク ( ミ ス ルト品 種)に は黄色 斑点 ,トマ トには無病徴,及び,ビロードサンシチには葉巻症状が現れた。

  罹 病 キ ク ( 品 種 ポ ピ ュ ラ 一 ) よ り 抽 出 し た 低 分 子RNAを 鋳 型 と し , 逆 転 写 し たcDNAを PCR法 に よ り 増 幅 後 , 制 限 酵 素BamHI分 解 に よ っ て 得 ら れ た 完 全 な 長 さ のCSVd. cDNA をpUC119のBamHI切 断 部 位 に 挿 入 し , ク ロ ー ニ ン グ し た 。 そ し て ,CSVdの 全 塩 基 配 列 を 決 定 し ,354塩 基 か ら な っ て い る こと を 明 ら か にし た 。 イ ギ リス 分 離 株(CSVd・E)と 比 較 す る と 4塩 基 の 置 換 が 認 め ら れ , こ れ ら 分 離 株 をCSVd亠J(日 本 株 ) と し た 。   こ れま で , 日 本 で はCSVdが報 告 さ れ て いた が , こ れ は単 な る 伝 搬 試験 による もので ,著 者 は キ ク か ら 抽 出 し た 全 核 酸 , 及 び , 低 分 子RNAを 用 い て ,PAGE検 定 ,3ZP, 及び , ジ ゴ キ シ ゲ ニ ン(DIG)標 識CSVd. cDNAを プ 口 ー ブ とし て 用 い た ドッ ト ブ 口 ッ トハ イ プ リ ダ イゼ ー シ ョ ン に より , 北 海 道 ,栃 木 県 , 静 岡県 , 及 び , 香 川県 産 キ ク よ りCSVdが検 出され ,日本 に 広 く分布 してい ること を初 めて明 確にし た。

  キ ク か ら 抽 出 し た 低 分 子RNAとDIGで 標 識 し たCSVd. cDNAプ 口 ー ブ と ド ッ ト ブ 口 ッ ト ハイブ リダイ ゼーシ ョン を行っ た後, 発色反 応,及 び, 発光反 応の検 出感度を比較した結果,

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両 反 応 の 間 で は 差 異 が 認 め ら れ ず , い ず れ も 低 分 子RNA2ngま で 検 出 で き た 。 ま た ,CSVd 感 染 キ ク よ り 抽 出 し た 全 核 酸 を 用 い て も 低 分 子RNAと 同 様 ,CSVd. cDNAプロ ー ブ と 特 異 的に ハ イ ブ リ ダイ ゼ ー シ ョ ンす る こ と が 明ら か と な っ た 。本 法 は 少 なくと も7.5%リタ ーン PAGEよ り検 出 感 度 が100倍 高 く ,ま た , プ 口 一ブ の作製 が簡 単で, 放射性 同位元 素の ような 半 減 期 が な く , 取 扱 い が 安 全 で あ る こ と か ら , 優 れ た 遺 伝 子 診 断 法 を 確 立 し た と 言え る 。   逆 転 写 ー ポ リ メ ラ ー ゼ ・ チ ェ イ ン ・ リ ア ク シ ョ ン(RT・PCR)法 で 増 幅 し たCSVd. cDNA をDIG標 識し た プ 口 ー ブと ポ リ ス チ レ ン製 の マ イク ロプレ ートで ハイブ リダ イゼー ション を行 い , そ の 後 ア ル カ リ ホ ス フ ァ 夕 一 ゼ 標 識 抗DIG抗 体と 反 応 さ せ ,発 色 反 応 に より 検 出 す る PCRー マ イク 口 プ レ ー 卜ハ イ ブ リ ダ イ ゼー シ ョ ン に よるCSVdの 検 定 の 結 果, 高 感 度 の 遺 伝子 診 断 法 と し て 実 用 性 が 高 く , CSVdの 検 出 に 有 効 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。   以 上 の よ う に 病 原 不 明 の 果 樹 類 か ら 抽 出 し た 低 分子RNAの 接種 実 験 ,PAGE検 定 ,遺 伝 子 診断, ウイロ イドゲ ノムの 構造 解析を 通して ,ウイ ロイ ドが果 樹類に 広く分 布していることを確 認した 。また ,・キ ク矮化 ウイ ロイドを中心としたウイロイドの検出法の開発を試み,実用的かっ 簡易的 な遺伝 子診断 法を確 立し た。こ れらの 研究は ウイ ロイド 研究上 重要な 基礎的知見を与える もので ,ウイ 口イド の研究 上寄 与する ところ が極め て大 きく, この成 果は高 く評価されている。

  よ っ て 審査 員 一 同 は 最終 試験の 結果と 合わ せて, 本論文 の提出 者李世 訪は 博士( 農学) の学 位を受 けるのに十分な資格があるものと認定した。

参照

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