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博士(農学)李 鎭河 学位論文題名

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Academic year: 2021

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(1)

     博士(農学)李   鎭河 学位論文題名

Catalytic R/Iechanism and Molecular Structure       of Trehalase from Honeybee

( ミツノヾ チTrehalaseの反応機構およぴ構造に関する研究)

学位論文 内容の要旨

  トレハラーゼ(a,a‑trehalose glucohydrolase,EC 3.2.1.28)は、非還元糖であるトレハロー スのみに特異的に作用し、Q−グルコシド結合を加水分解する酵素である。ヒトの血糖はグルコ

―スであるのに対し、昆虫のそれはトレハ口ースであり、本酵素は昆虫血リンパのトレハロー スをグルコースにする重要な生理的作用を持つ。従って、ミッバチにも強いトレハラーゼ活性 が認められるが、アミノ酸一次配列などの構造情報は明らかにされていないo一方、トレハラ

―ゼは加水分解酵素としても興味深い研究対象である。本酵素は加水分解の際に基質アノマー 構造を反転させ.aとBー型のグルコースを等モル遊離する。反転型酵素の反応において求核 置換反応機構とオキソカルベニウムイオン反応機構が提唱されており、現在、前者が強く支持 されている。また、触媒アミノ酸のうちプロトン供与体はヒスチジン残基と報告され、糖質分 解 酵 素 一 般 で は 酸 性 ア ミ ノ 酸 で あ る の に 対 し 、 極 め て 特 殊 な 存 在 とな っ てい る 。   ミッバチには性質がほぽ一致する遊離型と結合型の2つの酵素が存在する。本研究では、

結合型トレハラーゼに着目し、活性発現に必須な解離基を推定した。次に本酵素の反応機構を 解析するため、【1,11 ̲2H]トレハ口ースを酵素合成した。本基質の加水分解において強いQー第 二次アイソトープ効果を見い出し、これより反応の遷移状態における中間体(オキソカルペニ ウムイオン)を予測した。さらに酵素遺伝字をクロ―ニングし、アミノ酸一次配列を推定する と ともに、 相同解析 から触媒 アミノ酸 はヒスチ ジン残基ではないことを明らかにした。

  (1)酵素の精製、諸性質と活性発現に必須な解離基の推定

  結合型トレハラ―ゼの精製を試みた。ミッバチを30 mMリン酸緩衝液(pH 6.3)中で磨砕後、

得られた残渣に洗浄操作(緩衝液添加・撹拌抽出・遠心分離)を行い、上清に活性が認められ なくなるまで同操作を繰り返した。酵素の可溶化は、沈殿懸濁液のpHを8.0に調整すること で行った。その後、硫安分画、イオン交換、疎水およびゲル濾過の各クロマト操作により約 20%の収率で電気泳動的に単一な酵素標品を単離した。得られた精製酵素の諸性質を調べた

( 分子量約69,000;至適pH,6.8; pH安定域pH 4.5ー12.5;温度安定曦,15分の処理で40℃ 以下)。本酵素iまトレハ口ースに対してのみ活性があり、他のニ糖類や合成基質には作用を示 さなかった。

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(2)

  活 性発 現 に 必須 な 解 離基 を 動 的解 析 で 推定 し た。至適pHよルア ルカリ側 において 緩衝液 に よ る塩濃度 依存的 な阻害が 見い出さ れた。 この現象1ま 用いた5種類の 緩衝液 全てで認 められ、

そ れ ら に 共 通 な 成分 は な かっ た 。 その 阻 害 様式 は 拮 抗型 で 、Ki値 はpHで 異 な るが 約40ー80 mMの 範囲 で あ った 。 低 濃度 の 緩 衝液 に お いて 活 性低下が 大きいこ とが認 められた ので、 反応 速 度の緩衝 液濃度 依存性か ら¨真の 反応速 度¨を算 出レた 。この取 り扱い を各基質 濃度さらに 各pHで 行 い 、 速 度 パ ラ メ ー タ ー を 求 め 、 レ / 瓦 値 とpHの 関 係 か ら アル カ リ 側の 解 離 基の p疋 値 を 推 定 し た 。 至 適pHや 酸 性 領 域 で はこ の よ うな 阻 害 現象 は 認 め られ ず 、 レ/jm値の pH依 存性 か ら 酸性 側 解 離基 のp瓩値 を 求 めた 。 さ ら に同 様 な 手法 を 用 いて 、解離 熱や低 誘電 率 の 溶 媒に お け るp矼値 の変化 を調べ、 酸性側・ アルカ リ側の活 性解離 基はとも にカル ボキシ ル 基である と推定 レた。ま た、カル ポキシ ル基に高 い特異 性を示す 水溶性 カルボジ イミドを用 い た 化 学 修 飾 実 験 か ら も 、 活 性 部 位 に 酸 性 ア ミ ノ 酸 残 基 が 存 在 す る 結 果 が 得 ら れ た 。

  (2)加水分解反応におけるa‑第二次アイソト―プ効果

  糖質加 水分解 酵素の反 応におい て求核 置換反応 機構と オキソカ ルペニ ウムイオ ン反応機構が 提唱さ れている 。両機 構1ま 、基質 の加水分 解反応に おけるアイソトープ効果の測定で区別でき る。測 定の際、 基質と なる【1,1|̲2H]トレハロースを本酵素の縮合反応で調製した。縮合反応 の作用条件を検討後、最適条件下で[1‐砠]グルコースから[1,1|̲2H]トレハロースの合成を行 っ た。 ま た 、同 様な手 法で軽 水素標識 のトレ ハ口ース も調製し た。得 られた2種類 の生成物 を 単離精製後、それらの構造を解析し、目的の[1,11‐1H]および[1,1|̲2H]トレハロースであるこ と を確 認 し た。 両基質 に酵素 を作用さ せ、速 度パラメ 一夕ーを 求めた 。Kカ 値は同 ーであっ た カ丶重 水素標識 基質に 対するko値 び大き く低下し 、軽水 素基質の 約60%と なった。この比は、

こ れま で 報 告さ れた糖 質加水 分解酵素(77 ‑ 88%)よ り約20 ‑ 30%も低 い値で あり、最 大級 のct ‑第二 次アイ ソトープ 効果が 観察され た。従っ て、反 応の遷移 状態に おいてオキソカルベ ニ ウ ム イ オ ン 中 間 体 が 存 在 す る こ と 、 こ の 形 成 が 律 速 に な っ て い るこ と が 想定 さ れ た。

  (3)酵素遺伝子のクローニングと推定アミノ酸一次配列

  精 製 酵 素のN末端 および内 部アミノ 酸配列 を調べた 。トレ ハラーゼ を還元 条件化で ピリジル エチル 化後、 プロテア ーゼ消化 を行い 、ペプチ ド断片 を単離し た。こ れらの酵素や各断片をエ ドマン分解に供し丶得られたアミノ酸酉己歹IJに基づL丶てオリゴヌクレオチドプライマーを合成レ、

ミ ッ バ チ 成 虫 か ら 調 製 し たcDNAラ イ ブラ リ ー に対 しRT‑P CRを 行 った 。 増 幅断 片 か ら プラ イ マ ー を 作 成 後 、 5'RACEお よ び31RACEにnested PCRを 組 み 合 わ せ て 行 い 、cDNAを ク 口 ー ニン グ レ た。cDNAは 全 長3,002bpからな り、51‐URTコ870bp、ORF,1,881bp、3t‐URT 233bpヽp01y(A) ,18bpを含 ん で いた 。0RFか ら推定 されるア ミノ酸 配列の長 さは626残基で あ り、N‐ グリ コ シ ド型 糖 鎖 の結 合 部 位 が6か 所 見い 出 さ れた 。N末 端側の17アミノ酸 がシグ ナル配 列であ り、成熟 酵素の分 子量は69,177と 算出さ れた。こ の値は 、SDS_電気泳動法で得 ら れた 約69,000と一 致した。 さらに 、エドマ ン分解で 求めた 全てのぺ プチド のアミノ 酸配列 が 認 め ら れ 、 本 遺 伝 子 が ミ ツ パ チ の 結 合 型 ト レ ハ ラ ー ゼ の も の で あ る と 推 定 し た 。

(3)

  報告された他起源のトレハラーゼやそのホモ口グとの構造に関する相同解析を行った。一次 構造ヒで約35から40%の高い保存性があること、予想さぬる二次構造もほぼ一致すること カく認められた。しかし、酵素活牡に必須であると報告されたヒスチジンは1残基も保存されて おらず、触媒残基ではないことが明らかになった。これは(1)の結果を支持するものである。

動的解析で触媒残基と推定した酸性アミノ酸iま5残基保存され、そのうち4残基は高度に保存 された領域中に存在する。これらのうち2残基が本酵素の触媒基、すなわち求核基とプ口トン 供与体であると予想された。

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(4)

学 位 論 文 審 査 の 要 旨

     学位論文題名

Catalytic R/Iechanism and rvIolecular Structure     of Trehalase from Honeybee

(ミ ッ バ チTrehalaseの 反 応 機構およ び構造に 関する研 究)

  本 論 文は 、 英 文79頁 、図4 2‑表5‑5章か らなり、 他に参考 論文3編が 添えれて いる。

  トレハラーゼ(EC3.2.1.28)1まトレハ口ースのみを特異的に加水分解する酵素である。昆 虫の血糖はトレハロースであり、本酵素は昆虫血リンパのトレハ口ースをグルコースにする重 要な生理的作用を持つ。従って、ミツパチにも強い酵素活性が認められるカ廴アミノ酸一次配 列などの構造情報は明らかにされていない。一方、トレハラーゼは加水分解酵素としても興味 深い研究対象である。本酵素は加水分解の際に基質アノマー構造を反転させる。反転型酵素の 反応において求核置換反応機構とオキソカルベニウムイオン反応機構が提唱されており、現在、

前者が強く支持されている。また、触媒アミノ酸のうちプロトン供与体tまヒスチジン残基と報 告され、糖質分解酵素一般では酸性アミノ酸であるのに対し、極めて特殊な存在である。

  ミッバチには結合型と遊離型の2つのトレハラーゼが存在するが、本研究では結合型酵素に ついて、1)動的解析による活性に必須なアミノ酸残基の推定‑ 2)反応の遷移状態における 中間体と反応機構の推定‑ 3)酵素遺伝子クローニングによるアミノ酸一次配列の推定と相同 解析を目的に行われた。

  1.酵素の精製、諸性質と活性発現に必須な解離基の推定

  結合型トレハラーゼの精製法を確立し、電気泳動的に単一な酵素標品を単離した。精製酵素 の諸性質を調べた(分子量,約69,000;至適pH,6.8; pH安定域,pH 4.5 ‑ 12.5;温度安定域,

15分 の 処 理 で40℃ 以 下 ) 。 本 酵 素 は ト レ ハ 口 一 ス に 対 し て の み 活 性 を 示 し た 。   活性発現に必須な解離基を動的解析で推定した。至適pHよルアルカリ側で緩衝液による阻 害カ混い出された。阻害様式は拮抗型で、Ki値はpHで異なるが約r40 ‑ 80 mMの範囲であっ た。低濃度の緩衝液において活性低下が大きいので、反応速度の緩衝液濃度依存性から 真の

夫 哲

淳  

  久

村 藤

木 内

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

反応速度 を算出した。この取り扱いを各基質濃度さらに各pHで行い、レ/j廴値を求め、

pHとの関係からアルカリ側の解離基のpK。値を推定した。至適pHや酸性領域ではこのよう な阻害現象は認められず、レ/j廴値のpH依存陸から酸性側解離基のp疋値を求めた。さらに 同様な手法を用いて、解離熱や低誘電率の溶媒における皿値の変化を調べ、酸性側・アルカ リ側の活性解離基はともにカルボキシル基であると推定した。また、化学修飾の実験からも活 性部位に酸性アミノ酸残基が存在する結果が得られた。

  2.加水分解反応におけるa‐第二次アイソト―プ効果

  糖質加水分解酵素の反応において求核置換反応機構とオキソカルペニウムイオン反応機構が 提唱されている。両機構tま、基質の加水分解反応におけるアイソトープ効果の測定で区別でき る。測定の際、基質となる[1,1t‐亀]トレハロースを本酵素の縮合反応で調製した。縮合反応 の最適条件を求め、軽水素標識のトレハ口一スも調製レた。得られた2種類の生成物を単離・

構造解析を行い、目的のものであることを確認した。両基質に酵素を作用させ、速度パラメー ターを求めた。瓦値は同一であったが、重水素標識基質に対するん値カ汰きく低下し、軽水 素基質の約60%となった。この比は、これまで報告された糖質加水分解酵素(77 ‑ 88%)よ り約20 ‑ 30%も低い値であり、最大級のQ‐第二次アイソトープ効果が観察された。従って、

反応の遷移状態においてオキソカルベニウムイオン中間体が存在すること、この形成カ繊に なっていることが想定された。

  3,酵素遺伝子のクローニングと推定アミノ酸一次配列

  精製酵素のN末端および内部アミソ酸配列を調べた。得られたアミノ酸配列に基づいてオリ ゴヌクレオチドプライマーを合成し、ミツバチ成虫から調製したcI玳Aライブラリーに対し 各 種PCR法を組 み合わせ 、cDNAをクロ ーニング した。得 られたアミノ酸一次配列のN末端 17アミノ酸がシグナル配列であった。エドマン分解で求めた全ての内部配列が認められ、本 遺伝子がミッバチの結合型トレハラーゼのものであると推定した。

  他起源のトレハラーゼやそのホモ口グとの構造に関する相同解析を行った。一次構造上で約 35から40%の高い保存性があり、予想される二次構造もほぼ一致した。しかし、酵素活性 に必須であると報告されたヒスチジンは1残基も保存されておらず、触媒残基ではないことが 明らかになった。これは1.の結果を支持するものである。動的解析で触媒残基と推定した酸 性アミノ酸は5残基保存されていた。これらのうち2残基カ鉢酵素の触媒基、すなわち求該基 とプロトン供与体と予想された。

  以上のように本研究は、ミツバチが持っトレハラーゼの触媒アミノ酸残基、反応機構、一次 構造の推定をを行ったものであり、トレハラーゼの触媒反応を考えるうえで学術的に貴重な基

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(6)

礎的知見を提供レている。

  よって審査員一同は、Jin‑Ha Leeが博士(農学)の学位を受けるに十分な資格を有するもの と認めた。

参照

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