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博 士 ( 農 学 ) 牛 木 純

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 牛 木    純

学 位 論 文 題 名

     抗 菌 性 物 質 を 含 有 す る 植 物 を 利 用 し た ジ ャ ガ イ モ そ う か 病の 生 態 的 制御 法 に 関 する 研 究

学 位 論文 内 容 の 要旨

  ジャガイモそうか病は、その病害が確認されて170年以上経った現在においても効果 的な防 除法が確立 されておらず、北海道をはじめとする我が国のバレイショ生産地ば かりでなく、世界各国の生産地で重大な問題となっている土壌病害のーつである。ジャ ガイモ そうか病の みならず、全ての土壌病害に共通する基本的かつ効果的な防除方法 として 輪作が励行 されているが、発病程度が高い場合にはその効果はほとんど見られ ないか 、その効果 の発現に長期間を要する。一方、植物より分泌される、あるいは枯 死植物 から放出さ れる物質は、植物あるいは動物や微生物に対して影響を及ばし、植 物根圏 においては そのような物質によって特異的な土壌微生物相が形成されることが 多い。 特に、植物 の防御機構に関係すると考えられている抗菌性物質は、土壌に供給 される ことによっ て、土壌病原菌の感染能カを低下させる効果が期待できる。以上の 観点か ら、本研究 では、ジャガイモそうか病菌をはじめとする土壌病原菌に対する抗 菌性物 質を含む植 物種を検索し、それらの植物を輪作等の作付体系の中で利用するこ とによ り、ジャガ イモそうか病を制御し得る可能性について、作物栄養学的および有 機 化 学 的 手 法 を 用 い て 検 討 し た 。 得 ら れ た 結 果 は 次 の 通 り で あ る 。

  (1)ジャガイモそうか病菌(Streptomyces scabies,放線菌)ならびに5種の土壌病原 性糸状菌(Fusarium oxysporum、Verticillium dahliae、Rhizoctonia so加ペゥ必珊 甜血衄、跚f印由曲o.ra皿轡印c皿a)に対して罹病性である植物の報告数と、植物根の 水抽出液に対する上記の病原菌の感受性とを寒天拡散法によって比較した結果、罹病 性植物の報告数が少ない病原菌ほど抽出液によって生育が阻害される割合が高いこと が示され、根に含まれる抗菌性物質が土壌病原菌に対する抵抗因子として重要な役割 を果たしていることが示唆された。上記の方法で検定した結果、ジャガイモそうか病 菌は 、 多 くの 植 物の 根抽出液に よってそ の生育が 阻害され 、特にフ ウロソウ 科の

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Geranium pratenseお よびバラ科のワレモコウ(Sanguめ向磁瓶na仏)の根抽出液に よって、その生育が強く阻害された。以上の結果から、ジャガイモそうか病菌の制御 の ため に、抗 菌性 物質 を含有する植物が効果的に利用される可能性が示唆された。

  (2)ジャガイモそうか病菌に対する抗菌性物質を根に含有する植物とバレイショを ポット条件下で混植栽培することによって、そうか病の発病抑制効果を検定した結果、

多くのフウロソウ科フウロソウ属植物が、そうか病の発病を顕著に抑制した。実生よ り栽培したフウロソウ属植物22種の根の水抽出液について、ジャガイモそうか病菌に 対する抗菌活性を検定した結果、俛脚血m田紬eおよびG.町ロ珊庇 mは強い抗菌性物 質を生育の全期間にわたって安定レて含有することが示された。活性炭を含む培地で 栽培レたフウロソウ属植物8種の根滲出物について、ジャガイモそうか病菌に対する抗 菌活性を検定した結果、G.田畑seおよびG.Py.陀naた卿の根滲出物は、他の植物種のそ れに較べて高い抗菌活性を示した。以上の結果から、供試した植物種中ではフウ口ソ ウ科フウロソウ属の植物であるG.即f伽seが、ジャガイモそうか病菌の制御への利用に 最も有望であると判断した。

  (3)ジャガイモそうか病菌に対する抗菌活性を指標として、Gpra蜘seの根に含有 さ れる 抗菌性 物質 の検 索を 行い 、結 晶性 の析 出物 を単離した。各種NMRおよびMS等 の機器分析によりこの物質の構造を検討し、既知の化合物であるgeraniinであると同定 レた。geraniinはG.閏f伽seの根に乾物重の約15%と多量に含有され、その抗菌活性は 抗生物質であるstreptomycmの約80分の1と植物由来の抗菌性物質としては比較的高い ことから、この物質がG.田加seの根に含有される主要な抗菌性物質であると判断した れき耕栽培したG.即f伽seの根圏を水で洗浄することにより根滲出物を回収レ、その洗 浄液をHPLCで分析した結果geraniinが検出され、その洗浄液中に含まれる濃度から4ル g/plant/day以 上 のgeraniinがG即 加seの 根 か ら 滲 出 し て い る と 算 出 し た 。   (4)ポット栽培条件下において、ジャガイモそうか病が軽度(病斑面積率で10%程 度)に発病する土壌で、G.卩紬seとバレイショを混植栽培した結果、混植密度の増加 に伴ってそうか病の発病が抑制された。これに対し、ダイズを同様に混植栽培したと きの発病抑制効果は認められなかった。ジャガイモそうか病が強度(病斑面積率で20

%程度)に発病する土壌に、G.田舳seの根あるいは根抽出物を土壌に添加してバレイ ショを栽培した結果、そうか病の発病が抑制された。これに対し、根の抽出残渣を添 加したときの発病抑制効果は認められなかった。G・卩f伽即の根抽出物を大量に土壌に 添 加 す る こ と に よ り 、 ほ ぼ 完 全 に ジ ャ ガ イ モ そ う か 病 の発 病 が 回 避 さ れ た 。

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  以上の結果から、土壌に供給される抗菌性物質(geraniin)の量の増加に伴い、ジャ ガイモそうか病の発病が軽減されることを確認した。

  しかしながら、一般的なそうか病の制御法のーつである土壌pH低下処理と根抽出物 添加処理を組み合わせた処理による発病抑制効果は、各々の処理によるそれと差が認 められなかった。また、G・ pratenseの根抽出物を大量に土壌に供給することにより、バ レイショの塊茎収量が低下したことから、G・ pratenseのように抗菌性物質を含有する植 物を利用するにあたっては、生育阻害物質の有無についても考慮する必要があること が示された。

  以上の結果から、ジャガイモそうか病の生態的制御を目的とした輪作体系の確立に あたり、ジャガイモそうか病菌に対して抗菌性を持つ物質を含有する植物あるいはそ の抗菌性物質の有効利用は、積極的に考慮すべき重要な一方策であると結論した。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

     抗 菌 性 物 質 を 含 有 す る 植 物 を 利 用 し た ジャ ガイモそ うか病の生態的制御法に関する研究

  本 論 文 は 、 図86、 表57、写 真13、引 用 文献91を 含み 、7章か らな る 総頁 数246の 和文 論 文 で あ る 。 別 に 参 考 論 文2編 が 添 え ら れ て い る 。

  ジ ャ ガ イ モ そ うか 病は 、そ の病 害が 確認 され て170年以 上経 った 現在 にお いて も、 効 果 的 な 防 除 法 が 確 立 さ れ て お ら ず 、 北 海 道 をは じめ とす る我 が国 のバ レイ ショ 生産 地 な か り で な く 、 世 界 各 地 の 生 産 地 で 重 大 な 問題 とな って いる 土壌 病害 であ る。 本論 文 は 、 ジ ャ ガ イ モ そ う か 病 菌 に 対 す る 抗 菌 性 物質 を含 む植 物種 を検 索し 、そ れら の植 物 を 輪 作 等 の 作 付 体 系 の 中 で 利 用 す る こ と に より 、ジ ャガ イモ そう か病 を制 御し 得る 可 能 性 に つ い て 、 作 物 栄 養 学 的 お よ び 有 機 化 学的 手法 を用 いて 検討 する こと を目 的と し て 実 施 し た 研 究 の 結 果 を と り ま と め た も の であ り、 その 内容 は下 記の ごと く要 約さ れ る 。

  (1) ジャ ガイ モそ う か病菌(Streptomyces scabies,放線菌)ならびに5種の土壌病原 性 糸 状 菌(Fusarium oxysporum、Vertiallium dahliae、Rhizoctonia solani丶Pythium ultim um、Phytophthora megasperma)に 対し て罹 病性である植物の報告数と、植物根の 水 抽 出 液 に 対 す る 上 記 の 病 原 菌 の 感 受 性 と を比 較レ た結 果、 根に 含ま れる 抗菌 性物 質 が 土 壌 病 原 菌 に 対 す る 抵 抗 因 子 と し て 重 要 な役 割を 果た して いる こと が示 唆さ れた 。 ジ ャ ガ イ モ そ う か 病 菌 の 生 育 は 、 多 く の 植 物の 根抽 出液 によ って 阻害 され 、特 にフ ウ 口ソ ウ科 のGeranium pratenseお よび バラ 科の ワレ モコ ウ( .Sangu面 めaD艦洫淞)の根 抽 出 液 に よ っ て 強 く 阻 害 さ れ た 。 こ れ ら の 結果 から 、ジ ャガ イモ そう か病 菌の 制御 の た め に 、 抗 菌 性 物 質 を 含 有 す る 植 物 を 効 果 的 に 利 用 し 得 る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。   (2) ジ ャ ガ イモ そう か病 菌に 対す る 抗菌 性物 質を 根に 含有 する 植物 とバ レイ ショ を

秋 士 六 利哲 喜 野原 林 但 田 小 授授 授       教 教教 助 査査 査 主副 副

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混 植栽培す ることに よって、そうか病の発病抑制効果を検定した結果、多くのフウ口 ソ ウ科フウ 口ソウ属 植物がそうか病の発病を顕著に抑制した。実生より栽培したフウ 口 ソウ属植 物22種の根 の水抽出液について、ジャガイモそうか病菌に対する抗菌活性 を検定した結果、Geran血mpraた岨開およびG.印灯瑚血umは強い抗菌活性を持つ物質を生 育 の全期間 にわたっ て安定して含有した。活性炭を含む培地で栽培したフウ口ソウ属 植 物8種の根 滲出物の ジャガイ モそうか 病菌に対す る抗菌活 性を検定 した結果 、G. p′aた梛eおよびGpyreロa血膕の根滲出物が特に高い抗菌活性を示した。したがって、供 試した植物種中ではG.pra知seがジャガイモそうか病菌の制御への利用に最も有望であ ると判断した。

  (3)ジャガイモそうか病菌に対する抗菌活性を指標として、G.pra舳館の根に含有 さ れ る 抗菌 性 物質 の 検 索を 行 い、結 晶性の析出 物を単離 した。各 種NMRおよびMS等 の機器分析によりこの物質の構造を検討し、既知の化合物であるgeraniinであると同定 した。geraniinはG即feロseの根に乾物重の約15%と多量に含有され、その抗菌活性は streptomycmの約80分の1であり、植物由来の抗菌性物質としては比較的高いことから、

この物質がG・卩紬seの根に含有される主要な抗菌性物質であると判断した。れき耕栽 培をレたG.卩舳seより根滲出物を回収し、HPLCで分析した結果geraniinが検出され、

そ の滲出液 中に含ま れる濃度から4¢g/pla剛day以上のgeraniinがG卩紬seの根から滲 出していると算出した。

    (4)ジャガイモそうか病が軽度(病斑面積率で10%程度)に発病する土壌で、.6 卩鰄骼eとバレイショを混植栽培した結果、混植密度の増加に伴ってそうか病の発病が 抑 制された 。ダイズ を混植栽培した場合には発病抑制効果は認められなかった。ジャ ガイモそうか病が強度(病斑面積率で20%程度)に発病する土壌に、G.閉紬即の根あ る いは根抽 出物を土 壌に添加してバレイショを栽培した結果、そうか病の発病が抑制 さ れ た 。 根 の 抽 出 残 渣 を 添 加 レ た 場 合 には 発 病抑 制 効 果は 認 め られ な かっ た 。 G・閏飽郷eの根抽出物を大量に土壌に添加することにより、ジャガイモそうか病の発病 は ほ ば 完 全 に 回 避 さ れ た 。 こ れ ら の 結 果に よ り、 土 壌 に供 給 さ れる 抗 菌性 物 質   (geraniin)の量の増加に伴い、ジャガイモそうか病の発病が軽減されることを確認し た。

  以上の結果から、ジャガイモそうか病の生態的制御を目的とした輪作体系の確立に あたり、ジャガイモそうか病菌に対レて抗菌性を持つ物質を含有する植物あるいはそ の抗菌 性物質の 有効利用 は、積極的に考慮すべき重要な一方策であると結論レた。

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  以上のように、本研究は、バレイショ生産地において世界的に重大な問題になって いるジャガイモそうか病の生態的制御法について重要な新知見を提供したものであり、

得られた結果は既に学術的に高く評価されているばかりでなく、実際の農業の場にお いても貢献するところが極めて大きい。よって、審査員一同は、別に実施した最終試 験の 結果と合 わせて、 本論文の 提出者牛木 純は博士 (農学)の学位を受けるのに十 分な資格があるものと認定した。

参照

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