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博 士 ( 農 学 ) 郭 桂 芬 学 位 論 文 題 名

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博 士 ( 農 学 ) 郭    桂 芬

学 位 論 文 題 名

毛 管 現 象 の 遮 断 に よ る ア ル カ リ 土 壌 の改 良 学 位 論 文 内 容 の要 旨

1.はじめに

  アルカリ土壌は乾燥地帯に生成され,世界中に広く分布しており塩類が大量に含まれているた め,植生貧弱で食糧生産性が極めて低い土壌である。中国のアルカリ土壌は2種類あり,一っは ソロンチャクに分類される自干土と呼ばれる河北省と内蒙古自治区に広く分布している土壌で,

他のーっはソロネッツに分類される草旬アルカリ土と呼ばれている土壌で,中国の黒龍江省およ び古林省に広く分布している。アルカリ土壌の改良方法としては,比較的低塩類濃度の水あるい は真水を大量に灌漑,排水して,塩類濃度を溶脱することにより,土壌中の塩分を除去する方法 がある。しかし,これらのアルカリ土壌は緻密な土層の存在によって透水性が著しく低下してお り,溶脱による除塩効果が期待できず,また,アルカリ土壌の存在するところは乾燥地帯である ので,大量の真水を確保するのは一般に難しい。そこで,夏にある程度雨が降る地帯のアルカリ 土壌の新しい改良方法として,心土層の下に粗粒層を設置し,塩類がたくさん含まれている地下 水の毛管現象を遮断する方法を考案した。本研究では,粗粒層の設置によるアルカリ土壌の改良 効果と,粗粒層を設置する方法について検討した。

2.粗粒眉による毛管現象の遮断効果

  粗粒層による毛管現象の遮断効果を確認するためにシリンダ状の土壌槽を2本用いて室内実験 を行った。1本のシリンダには人工的に作ったアルカリ土壌を充填した。他のシリンダには上か ら400mmの所に平均粒径9mmの粗粒層(礫層)を設置した。さらに夏の降雨を模して,地表に 蒸留水を供給した。これによって土壌中のpH値,EC値が減少するかについて調べた。その結果 粗粒層を持つ土層のpH値は給水によって徐徐に減少し,3900mmの降雨に相当する給水の後,

給水前のpHllからpH7.5に減少した。EC値は給水前の230〜460mSm‑lから徐徐に減少し,約 50mSm‑1の値に収斂した。

  次いで,中国河北省で圃場試験を行った。5mx5mの処理区に砂層を粗粒層として心土層である B層の下に設置した。施工1年後に土壌特性の変化およぴ地表植生について調査した。その結果,

粗粒層を設置することによって,アルカリ土壌である表土のpH値とEC値の減少およぴ土壌硬 度の改善が認められた。

  以上の結果からアルカリ土壌の心土層の下に粗粒層を設置することにより地下水の毛管現象を 遮断できることが認められた。またすでに表土に蓄積された塩類を洗い流す効果も認められた。

したがって,アルカリ土壌の心土層の下に粗粒層を設置することはアルカリ土壌の改良に有効で あるとの結論を得た。

3.土壌の焼結による粗粒層の形成

  粗粒層を形成する方法として土壌を焼結し粗粒化することを考えた。土壌を800℃以上で焼結 すると土壌が粗粒化して,平均粒径は7 mm以上の土塊となった。焼結した土壌を蒸留水の中に

‑ 1272

(2)

浸潤させても, 全く土粒子の水中分散は見ら れず,水は透明のままであ った。焼結した土壌の空 隙 率は0.75とな り, 毛 管上 昇高 さは0.09m以 下と なった。以上より土を 粗粒化することにより 毛管上昇による 地下水の上昇を遮断できるこ とが認められた。次に,ア ルカリ土壌の熱物性につ いて測定したと ころ,比熱は温度が増加する と減少するという傾向を示 した。50〜 400℃の範囲 では,比熱は0.8〜l.lkjkg・iK・1で一定と なり,温度が600℃以上になるとさらに少し大きく0.6

〜0.7kjkg‑lK.lで一定となった。供試土壌 表面への熱伝達率は表面温度が約700〜1000℃の範囲 で,約60WDl‑2K‑1であった。温度約900℃, 含水比0%d.b.で熱伝導率も0.1〜 0.3Wm.iK・1にな った。また,土 壌焼結する際の熱効率は30% であった。

  土壌を一度焼 結すると,降雨などがあって も長期間にわたって細粒化 しないと考えられ,心土 で あ るBcaま た はB層 の 下 部 に 約100 mmの厚 さの 土 壌を 焼結 する こと が でき れば ,毛 管上 昇 による地下水の 上昇を遮断することができる と考えられる。従って土壌 焼結方法は,一度施工す れぱ再度施工す る必要がないという利点があ るが,多大なエネルギーを 消費するという欠点があ った。

4.心土 層の深耕による粗粒層の設 置

  実用 的 に粗 粒層 を設 置す る 方法 とし て, 深さ 約600 mmの 心土 (C層) まで 特殊プ ラウで耕起 し ,心 土(B層およぴC層)に 土塊を形成し,毛管現象を遮 断することを考えた。この 方法は毛管 現象の 遮断効果が永久的ではなく, 何年か後に再度,施工が必要であるという欠点はあるが,施工 コスト は安いという利点がある。心 土層の深耕を目的として4段 式心土混層プラウを試作した。こ の方法 により,プラウで心土を耕起 して得られた土塊により粗粒層を設置し,毛管現象の遮断効果 を検討 した。

  4段 式心 土混 層プ ラ ウの 牽引 抵抗の合計は38kNであった 。これは実用的な作業を行 うことが充 分 可能 な値である。アルカリ 土壌は非常に硬いが,比較的 脆く,壊れ易い性質がある ことが認め ら れた 。このことが土壌強度 は強いのに牽引抵抗が比較的 小さい理由と考えられる。 心土層の破 壊 と狭 雑物の混合によって, 膨軟になり,透水性が改善さ れた。夏期に集中して降雨 があれば,

こ の部 分 に含 まれ るCaC03が洗 い流 さ れ, より 下の 層ヘCaC03が移動することが期待 される。し たがっ て表土,心土ともpH値が低下 するものと考える。

5.心土層の深耕によるアル カリ土壌の改良効果

  アルカリ土壌を改良するこ とを目的とした粗粒層の設 置方法として特殊な4段式心 土混層プラ ウを供試し,心土層の耕起に より作られた土塊を粗粒層 として地下水の毛管現象を遮断する方法 を試みた。カルシューム系アルカリ土壌であるソロンチャク地域〔中国内蒙古自治区)およびナト リューム系アルカリ土壌であるソロネッツ地域(中国黒龍江省大慶市)において,4段式心土混層プ ラウの深耕により圃場試験を行った。心土を耕起し,土塊を作ることによって毛管現象を遮断し,

アルカリ土壌の改良効果があ るかどうかについて作物を 栽培し調査を行った。その結果心土層の 深耕 はア ルカ リ土 壌 の植生,土壌 硬度の減少,pH値およびEC値 の減少,作物の収量増加, 土壌 の保水性の改善などに効果が あった。

  以上の結果より,4段式心 土混層プラウでアルカリ土壌 を深耕する方法はアルカリ 土壌の改良 に有効であると認められた。

6.まとめ

  夏にある程度雨が降る地帯 のアルカリ土壌を改良する ために心土層の下に粗粒層を設置し,毛 管現象の遮断による改良効果 とその設置方法について検 討した。その結果,粗粒層の設置により 土壌にすでに蓄積されている 塩類は降雨で下層へ洗い流 され,粗粒層の設置効果が室内実験およ ぴ圃場実験により確認された 。次いで,粗粒層を設置す る方法としては,4段式心土 混層プラウ の深耕により粗粒層を形成す る方法を考案し,その効果 について中国において圃場試験を実施し

1273

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た。その結果,4段式心土混層プラウの深耕はアルカリ土壌の改良に有効であることが認められ た。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

准教授 教授 教授 准教授

近江谷 柴田 長谷川 片岡

学 位 論 文 題 名

和彦 洋一 周一     崇

毛 管現象の遮断によ るアルカリ土壌の改良

  本論 文 は ,全6章 から な る 総頁 数192の 和 文論 文である 。論文 には図84, 表19,引 用文献 111が含まれ ている 。

    アル カリ土 壌は乾燥 地帯に生 成され ,世界中 に広く 分布して おり塩 類が大量 に含まれて いる ため,植 生貧弱 で食糧生 産性が 極めて低 い土壌で ある。 夏にある 程度雨 が降る地帯のア ルカ リ土壌の 新しい 改良方法 として ,心土層 の下に粗 粒層を 設置し, 塩類が たくさん含まれ てい る地下水 の毛管 現象を遮 断する 方法を考 案した。 本研究 は,粗粒 層の設 置による毛管現 象の 遮断効果 と,粗 粒層を設 置する 方法およ び毛管現 象の遮 断による アルカ リ土壌の改良効 果を 明らかに するこ とを目的 とした 。

1.粗粒 層による 毛管現 象の遮断 効果

  粗 粒層 に よ る毛 管 現 象の遮 断効果 を確認す るため にシリン ダ状の土 壌槽を2本用 いて実 験 を 行 っ た。1本 のシ リ ン ダには人 工的に 作ったア ルカリ 土壌を充 填した 。他のシ リンダに は 上 か ら400mmの 所 に 平 均 粒径9mmの 粗 粒 層を 設 置 した 。 さ らに 夏 の 降雨 を 模 し て, 地 表 に 蒸 留 水 を供 給 し ,土 壌 中 のpH,ECが 減 少す る か に ついて調 べた。そ の結果 粗粒層を 持つ土 層 のpHは 給 水 に よっ て 徐 徐 に減 少 し ,3900mmの 降雨 に 相 当す る 給 水の 後 , 給 水前 のpHll か らpH7.5に減 少 し た。EC値は 給 水 前の3.6dSm.lか ら 徐 徐に 減 少 し, 約0.2dSm‑lの 値に収 斂 した。

  次 いで , 中 国河 北 省 で圃場 試験を 行い,5mX5mの処 理区に砂 層を粗 粒層とし て心土層 であ るB層 の下 に 設 置し た 。 施工1年 後お よ ぴ2年 後 に 土 壌特 性 の 変化 お よ び地 表 植生 につい て 調 査 し た結 果 , 粗粒 層 を 設置 す る こと に よ って , アル カリ土壌 である 表土のpH値 とEC値の 減 少が認め られた 。

  以 上の結果 からア ルカリ土 壌の心 土層の下 に粗粒層 を設置 すること により 地下水の 毛管現 象 を遮断し ,すで に表土に 蓄積され た塩類 を洗い流 す効果 も認めら れた。 従って, アルカリ 土 壌の心土 層の下 に粗粒層 を設置す ること はアルカ リ土壌 の改良に 有効で あるとの 結論を得 た 。

1275 ‑

(5)

2

.土壌の焼結による粗粒層の形成

  

粗粒層を形成する方法として土壌を焼結し粗粒化することを考えた。土壌を

800

℃以上で 焼結すると土壌が粗粒化して,平均粒径は

7 mm

以上の土塊となった。焼結した土壌の空隙 率は0.75 となり,毛管上昇高さは

0.09m

以下であり,蒸留水の中に浸潤させても,土粒子の 水中分散は見られず,水は透明のままであった。以上より土を粗粒化することにより毛管上 昇による地下水の上昇を遮断できることが認められた。次に,アルカリ土壌の熱物性につい て測定した。

  

土壌焼結方法は,一度施工すれば再度施工する必要がなぃという利点があるが,土壌焼結 す る 際 の 熱 効 率 は

30

% で 多 大 な エ ネ ル ギ ー を 消 費 す る と い う 欠 点 が あ っ た 。

3

.心土層の深耕による粗粒層の設置

  

実用的に粗粒層を設置する方法として,心土まで特殊プラウで耕起し,心土に土塊を形成し,

毛管現象を遮断することを考えた。心土層の深耕を目的として4 段式心土混層プラウを使用し た。この方法により,プラウで心土を耕起して得られた土塊により粗粒層を設置し,毛管現象 の遮断効果を検討した。

  4

段式心土混層プラウの牽引抵抗は38kN であった。これは実用的な作業を行うことが充分 可能な値である。心土層の破壊と狭雑物の混合によって,膨軟になり,透水性が改善された。

夏期に集中して降雨があれば,この部分に含まれるCaC03 が洗い流され,表土,心土ともpH 値が低下するものと考える。

4

.心土層の深耕によるアルカリ土壌の改良効果

  

アルカリ土壌を改良するため,粗粒層の設置方法として特殊な4 段式心土混層プラウを供 試し,心土層の耕起により作られた土塊を粗粒層として地下水の毛管現象を遮断する方法を 試みた。心土を耕起し,土塊を作ることによって毛管現象を遮断し,アルカリ土壌の改良効 果があるかどうかについて作物を栽培し調査を行った結果,心土層の深耕はアルカリ土壌の 植 生 , 土 壌 硬 度 の 低 減 ,

pH

お よ ぴ

EC

の 減 少 な ど に 効 果 が あ っ た 。

  

以上の結果より,

4

段式心土混層プラウでアルカリ土壌を深耕する方法はアルカリ土壌の 改良に有効であると認められた。

  

ある程度雨が降る地帯のアルカリ土壌を改良するために心土層の下に粗粒層を設置し,毛 管現象の遮断による改良効果とその設置方法について検討した。その結果,粗粒層の設置に より土壌にすでに蓄積されている塩類は降雨で下層ヘ洗い流され,粗粒層の設置効果が室内 実験および圃場実験により確認された。次いで,粗粒層を設置する方法としては,4 段式心 土混層プラウの深耕により粗粒層を形成する方法を考案し,その効果について中国において 圃場試験を実施した。その結果,4 段式心土混層プラウの深耕はアルカリ土壌の改良に有効 であることが認められた。現在,このプラウは中国で試作され実用化試験を行っており,ア ルカリ土壌の改良が期待されている。

よって,審査員一同は,郭桂芬が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有するも のと認めた。

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参照

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