博士(医学)下田直彦 学位論文題名
腎 虚 血 再 灌 流 障 害 に お け る 好中球 より分泌さ れる cathepsinG の役割
学位論文内容の要旨
緒言 : 臓器 移随 において臓器の虚血は不回避であり、しばしば重大 な移植臓器障害をもたら すふ ま た阻 血時 間の延長は移植臓器機能発現を遅延させるだけでな く、急性拒絶反応や細織 の線維化、act:{iopathyといった慢性臓器障害を発生させる。虚血臓器への血液の再灌流により 組織 中 にサ イト カイ ン、 ケモ カイ ンが 産生 され、接着因子、MHC分 子が高度に発現するが、
これ ら の因 子は 虚血再潅流を受けた臓器へ好中球を遊走させ、組織 障害を惹起する。動物実 験モデンレでは再灌流前に好中 球をdepleteすることや虚血再灌流後の臓器へ好中球の遊走を阻 害 す る こと によ り障 害を 軽減 する こと が 可能 であ った 。補 体活 性化 物質 やCXC、CCケモ カ イ ン は 炎 症 馴 蟄 、 好 中 球 を 遊 走 さ せ、 それ に加 え、CXCR1とCXCR2に 対す るり ガン ドは 好 中球を牽囀えし、プロテアーゼ 、サイトカイン、ケモカインやほかの走化因子を含む孵弛を放 出させ、組織炎症を増幅、持続 させる。 adhepsinGは好中球が放出するセリンプロテアーゼで あり 、 アズ ッレ 顆粒蛋白の約加%を占め、その働きには細胞外基質 やサイトカインの前駆体 を 分 解 する こと 、好 中球 上の イン テグ リ ンク ラス タを 調節 する こと 、Tリ ンノ 嚇ほ かの 自 血球 を 炎症 部位 ヘ遊走させることが挙げられる。ところで、虚血再 灌流障害を生じるメカニ ズム を 解明 し、 その障害を軽減する方法を確立することは臓器移随 などの臨床の場において 重要 な こと であ る。虚血再潅凋箪害を惹起する好中球の主たる産生 物質を同定することは、
この障害を回避0尹るためのストラテジーを描く上で有効なターゲットとなりうる可育旨陸があ る。今回、私は腎の虚cf.再潅 流障害の免疫反応や病理*B織形成における好中球、また放出さ れ る cathepsinGの 役 割 に つ い てcathepsinG欠 損 マ ウ ス を 使 用 し て 検 討 し た 。
方法: 129tSv野生型マウス(嗣出M汐マウス)およぴ嚠塒泣lG欠損マウス( 雄陸、81也週)に 腎 虚血 再潅 流障害を与えた。麻酔下に両側の腎血管 をクランプし、32℃の温虚血を60分与え た 後に クラ ンプを外し、血液を再灌流させた。再灌 流後舛時間ごとに血清クレアチニン値を 測 定 丶 生 存 率 を 検 討 し た 再 灌 流舛 時 間、30日 後の 聞蔵 を摘 出しmTぬ 嚠irトeo幽母 ・ml丶 お よ びMl巛m缸 恤xm染 色 を 施 行 し 、 腎 組 織 の 形 態 、 線 維 化 を評 価し 也ま た、 再潅 流斟 時 間後の腎切片にお いて爪胤日ー法を用いアポトーシス細胞を検出し両群を 比較した。再漕流9 及 び舛 時間 後に腎臓の凍結切片を作成し、一次抗体 として顆粒球の表面抗原に対するラット 抗 マウ ス( 翻肛y弼抗 体RB韻℃5を 用 い免 疫細 織染 色を 施行 し、 虚血再灌流後の好中球の浸 潤 にっ い て比 較し た。 虚血 再灌 流9及 び斟 時間 後の 腎細 織内 のQaくL1蛋白 、O(CL2蛋白 と n蜘k驛卿翻織叫瞰 :)ほ白の産生をHBA法にて 測定した。
結果: 64%のwnd‑typeマウスが60分の虚血再灌流後4日以内に死亡し、その一方でcathepsinG 欠 損 マ ウ ス では 全例 が 生存 した 。血 清ク レア チニ ン値 は両 群と も同 様に 掬多 し2時 間後 に peakに達 し 、96時間 後ま でに は正 常レqレま で戻った。腎 組織内への好中球浸潤は両群とも 再 灌 流9時 間 後で は高 度で あっ たが 、24時間 後に はcathepsG欠損 マウ スで は弸1幽ypeマ ウ スに 比し て 有意 に減 少し た。 虚血 再灌 流舛 時間 後、硼出ypeマウスでは高度な尿細管壊死と 尿細 管細 胞 のア ポト ーシ スを 生じ 、30日後 にi瑚鯔匕、尿 細管の減少を広範囲に認めた。一 方 、 虚 血 再 灌流 舛時 間 後の 例均 血G欠損 マウ スで は 尿細 管壊 死は 軽く 、尿 細管 細胞 のア ポ ト ー シ ス は 有 意 に 減 少 、 繊 維 化 の 形 成 は 認 め な か っ た 。 腎 組 織 のQぬi、O【Q2とM恥 蛋 白蛋 白産 生 は再 灌流9時 間後 では 両群 い ずれ も高く、有意 な差は認めなかったが、再灌流舛 時 間 後 のQぬJ、O。 〔 ユ2とMPO蛋 白 産 生 は 倒t印 血G欠 損 マ ウ ス で はw丑ypeマ ウス に比 し て有意に低下していた。
考 察 : cathepsinGは 好 中 球 の 一 次 顆 粒 で 、 細 胞 外 基 質 を 分 解 し、 ケモ カ イン やMatrix Metaolxoteinase (MMP)の前駆体を 分解することでそれらを活性化するセリンプロテアーゼで ある。活幽匕された好中球はreactive oxygen species (ROS)を産生し、蛋白質鋤釋織きや他の白血 球 の 走 化 因 子 を 含 有 し た 立 を 細 織 中 | こ 放 出 す る こ と に よ り 障 害 を 引 き 起 こ す ふ cathepsinG欠損マウスでは虚血,再灌流の好中球浸潤が持続しない。これは組織中の好中球のケ モ カイ ン(CXCL1、CXCI2)の産生が24時間後 には低下していることが関係している。cathepsm Gは接着因子の発現、活陞牝も調節 すると報告されている。cathepsinG欠損マウスではこれら が 抑制 され て いる可能陸があり、好中球の 浸潤の持続と関係しているかもしれない。好中球 活 陸を 示すMPO放 出は再灌流24時間後ではwild‑typeマウスに比してcathepsinG欠損マウスで 低 下し てい る 。MPOは 過酸 化水 素を さら に 活陸を有する次亜塩素酸や次亜臭素酸などの生成 を すす める こ とで細織障害を引き起こす。 cathepsinG欠損マウスでは 虚血再灌流後のMPO放 出 が減 少す る ため 組織 内のROSの生 成が 減 少し てい る可 能性 があ る。 生成されたROS、次亜 塩素酸 は障害された組織にアポトーシスを誘導する重要な因子であり、cathepsinG欠損マウス では虚 血再灌流後の尿細管上皮のアポトーシスが減少している。腎の虚血,再潅凋章害に韜い て 尿細 管上 皮 細胞のアポトーシスの誘導が 組織の線維化を導く重要な因子であると報告され ており 、この研究でもadhepsinG欠損マウスではwD̲d‑typeマウスと比較して虚血,再潅流障害後 30日の腎臓の線維化は有意1こ減少した。
結語: cathepsinGは腎臓の虚血再灌流後に好中球が惹起する障害を持続させ、その結果として 組織 の線維化を引き起こす重要な因子であり、虚血 再潅流後の組織障害を軽減する効果的な ス ト ラ テ ジ ー を 描 く 上 でcathepsinGは 有 効 な タ ー ゲ ッ ト と な る 可 能 陸 が 示 唆さ れた 。
学位論文審査の要旨 主査 教授 野々村克也 副査 教授 笠 原正典 副査 教授 藤 堂 省
学位論文題名
腎虚血再灌流障害における
好中 球より分 泌される cathepsinG の役割
こ の論文は 、cathepsinG欠損マウスとそのwildーtypeマウスを用いることで腎虚血再灌流 障 害 に お け る 好中 球 のセ リ ン プロ テ アー ゼ で あるcathepsinGの 役 割 を検 討 して い る 。 camepsinG欠 損マ ウスの虚 血再灌流 後の腎組 織では急 性尿細管壊 死とその 後Blき起こ され る 組織の線 維化が軽減 しており 、理由と して再灌 流後早期 に起こる 好中球の浸潤、集積が 持 続 し な い こ とが 原 因と し て いる 。 その メ カ ニズ ム とし て 好 中球 の ケ モカ イ ンで あ る KC/CXCL1とMIP‐2/CXC12の産 生 が持 続 し ない こ とが 挙 げ られ 、 好 中球 浸潤が持 続しな い ことはmyelopero虹dase活性、尿細 管上皮のアポトーシス誘導を低下させると報告してい る。
質 疑応答で は副査の笠 原正典教 授から、 他の好中球のセリンプロテアーゼよりcathepsin Gを阻 害 する こと の有効性 、ケモカ インに対 するcathepsinGによる 制御につ いて質問 あっ た 。これら の質問に対 し申請者 は、cathepsinGの阻 害の研究 は未だに 未解明のことが多い 分 野であり 他のプロテ アーゼ阻 害と直接 比較検討 すること はできな いが、cathepsinGは好 中 球の放出 するアズー ル顆粒の20%を占め ることを 考えると 、他のプ ロテアーゼを阻害す る のと同等 以上の効果 が期待で きること 、またcathepsinGは 様々なケ モカインをcleaveす る ことで活 性化するこ とが既に 報告され ており、 一例とし てりンパ 球やマクロファージの ケ モ カイ ン で あるCCR1に 対す る り ガン ド を制御 しているこ とを挙げ 解答した 。次いで 、 副 査の藤堂 省教授から、虚血再灌流障害に対する治療ではelastaseの阻害よりP一selecti11 glycoproteinligand−1(PSGし1)を阻害することの方が有効であるとの知見から、虚血再灌流 障 害治療の より効果的 なタイミ ングにつ いて、ま た腎移植 後慢性期 の線維化は解決すべき 問 題であり 、虚血再灌流障害後の組織線維化にはアポトーシスの以外の系も関係しており、
そ の考え得 る他のメカ ニズムに ついて質 問があっ た。これ らの質問 に対し申請者は、虚血 再 灌流障害 を好中球の 一機能を 阻害する だけでは 治療とし ては不十 分であり、それにはよ り 早いstageの治 療、例えばE,Pselectin等の接着因子の阻害をcathepsinGの阻害に併用す