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博士(工学)花島直彦 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)花島直彦 学位論文題名

口バ ストモデルマッチングによる柔軟構造物の 位置・姿 勢制御系設計に関する研究

学位論文内容の要旨

  最近,ロポットマニピュレータや宇宙機などの分野で,制御系を構成する際に無視できない柔 軟性を持つ機器が現れている.本研究では,このような柔軟構造物の位置・姿勢制御(並進運動 と回転運動を制御することに相当)を精度良く高速に行うための制御系設計法の提案を行った.

  柔軟構造物の制御の難しさはその低剛性に起因する弾性振動が生じることにある,柔軟構造物 の位置决めや姿勢を変えるなどの制御をする場合,弾性振動を抑制しつっその動作を完了する必 要がある.柔軟構造物の制御の研究は特に航空宇宙の分野などで盛んであるが,このような研究 がされる背景として,宇宙構造物が打ち上げコスト軽減などの理由で非常に軽量化され,そのう え大型化する傾向にあり;その剛性を高めることが困難であること,その一方でこれらの制御に 対 し て こ れ ま で 以 上 の 制 御 性 能 が 求 め ら れ て い る こ と な ど が あ げ ら れ る .   このような柔軟構造物の制御に対する要求に応えるために,これまで培われてきた現代制御の 成果を活かそうと考えるのは当然であろう.柔軟構造系は非線形偏微分方程式で記述される分布 系であるため,現代制御理論を適用するためには線形化だけなく集中化が不可欠である.柔軟構 造物の解析に関して,モード解析や有限要素法などの手法が発達し,柔軟系の持つ弾性振動を適 当なバネ系に置き換えることで,柔軟構造物のモデルを集中系として表現する手法が確立してく ると,現代制御理論の特に最適レギュレータの応用に関する研究が盛んとなった.バネ系によっ て表現される柔軟構造系の制御設計用の線型モデルは簡潔で理解しやすく,柔軟系の挙動をよく 表し,その妥当性が認められてはいるが,実際の制御系ではモデル化されない誤差の影響で,柔 軟構造系の弾性振動を要求どおりに抑えられないことがあり,時にはスピルオーバ現象を引き起 こし系が不安定となる.モデル化誤差は制御対象の変動に強い制御を一般にロバスト制御と呼ぷ が ,′ 柔軟 構造 系の 制御 では上のような理由からロバスト制御が実用上 必要不可欠である.

  柔軟構造系の線型制御モデルのモデル化誤差はパラメータ誤差と低次元化による誤差に大きく 分けられる.周波数領域ではそれぞれ,パラメータ誤差は低周波域で,低次元化による誤差は高 周波域で顕著であるが,最適レギュレータは高周波域のモデル化誤差に対しロバスト安定性の面 で十分ではなかっ た.このため,LQG/I」TR,nequency‐Shapedレギュレータなどの手法が低次 元化による誤差の対策のために取り入れらている,また,モデル化誤差の性質に着目して,周波 数領域での整形がおこなえる日oo制御の適用も試みられている.特に,混合感度問題では感度と ロバスト安定性がーつの評価関数で扱え,それらのトレードオフを周波数重みによって合理的に 行うことができる .

  一方,これらとは別のロバスト制御の考え方にロバストモデルマッチソグがある.ロバストモ デルマッチングは既存の制御系にロバスト補償器と呼ばれるフィードバック制御器を新たに付加 することによって,制御対象のパラメータ変動に対する低感度特性を改善するロバスト制御設計

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法である.ロバスト補償器の付加によって制御系の目標値応答は変化せず,低感度特性の調節が 既 存 の 制 御 系 と は 独 立 に ロ バ ス ト 補 償 器 の み で 行 え る と い う 特 徴 を 持 っ て い る .   本研究では,モデルマッチング等の手法で希望の目標値応答特性が実現されている柔軟構造物 の位置・姿勢制御系に,ロバスト補償器を付加することによってモデル化誤差に対する低感度性 とロバスト安定性を考慮する問題について考察した.そして,次のニつの設計法の提案を行った.

  一っは,線形モデルで表される柔軟構造物の制御系に一般的に適用でぎる手法である,一般の 柔軟構造物は非最小位相系と呼ばれる,安定性の面で制御しにくい制御対象となり,これに対す る従来のロバスト補償器の設計法では十分にロバスト安定性を考慮にいれた設計が難しかった.

柔軟構造物の不安定化はその振動モードが原因であることがほとんどである.そこで制御対象の 振動モードと制御系全体のモードの関係をうまく調節すれば,この問題を解決できると考え.口 バスト安定性を考慮できる口バスト補償器の設計法を考案した.この手法の設計例として柔軟人 工衛星実験装置を用いたシミュレーションを行い,これよルモデル化誤差に対する十分なロバス ト安定性と優れた低感度性が確認でぎた.ここで導入した手法はロoo制御のようにあるクラスの 全ての変動に対する口バスト安定化を保証するものではないが,典型的な変動を考慮することに よ っ て , 本 手 法 に よ っ て も ロ バ ス ト 安定 性の 高い 系の 設計 が可 能で ある と考 えら れ る.

  二つ目の方法は,柔軟構造系のカ学的な安定条件を満足すると言われているcollocated feedback 制御とロバストモデルマッチングを両立させる手法である.この手法によってcollocated feedback の制振効果を保持したまま,トルク外乱,モデル誤差等に対するロパスト性を向上できると期待 できる.

  ロバスト制御では柔軟構造系の不確かさを非構造的なものとして取り扱うが,柔軟構造系のカ学 的な構造を積極的に利用するDVFB (Direct Velocity FeedBack)制御やDVDFB (Direct Velocity and Displacement FeedBack)制御等のcollocated feedback制御がある.Collocated feedback制 御はセンサとアクチュエータが同位置に配置されるcollocationと呼ばれる条件が成り立っ場合,

力学系固有の安定条件を利用し柔軟構造系のロバスト安定性や制振性を保証する.Collocation系 は最小位相であることが知られており,その意味からも制御に都合のよぃ性質を持つ.Collocated

feedback制御の有効性は既に多くの研究で明らかで あるが,それのみではトルク外乱,モデル

誤差に対する低感度特性が十分に得られないことが 指摘され,上述のロバスト制御と併用する LAC/HAC (LawAuthorityControl/HighAutorityContr01) の手 法や 最適 レギュレータの逆問 題の応用が研究されている.

  ここでは,couocation系が最小位相であることに着目し,最小位相系に適用可能なロバスト補 償器の設計法,ゼロイング法を,c0110catedfeedback制御系に適用し,DVFB制御によって達成 されるc0110catedfeedbackの制振効果を保持したまま,トルク外乱,モデル誤差等に対するロパ スト性を向上させるためのロパスト補償器の設計条件を示した.さらに,片持ち柔軟アームの位 置制御系を構成し,実験により本手法の効果を確認した.本手法によって得られる制御系は,既 存のcollocatedfee(lback制御系に口バスト補償器を付加する構造であるので,現在実際に用いら れているc0110catedfeedback制御系に本手法を適用することで,ロバスト性の向上が比較的容易 に実現できる.

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学位論文審査の要旨 主 査    教 授    土 谷 武 士 副査    教授    長谷川    淳 副 査    教 授    島    公 脩

学 位 論 文 題 名

口 バストモデルマッチングによる柔軟構造物の 位置・姿 勢制御系設計に関する研究

  近 年 , ロ ポ ッ ト マ ニ ピュ レー タ や宇 宙機 など の分 野 で柔 軟性 を持 つ 機器 の制 御系 構成 法 に関 す る 研究 が 盛ん であ る. し かし ,こ れま そ提 案 され た方 法の 多く は ,最 適制御を拡張す るといった手 法 が 多 く , こ れ ら の 方 法で は制 御 系の 応答 を望 みの も のに 設計 する こ とが 困難 であ る. ま た, 制 御 系 の 極 配 置 が 任 意 に 設定 でき な いた めに ,外 乱に 対 する 応答 特性 に おい て望 みの 性能 が 得ら れ な い こ と が 多 い , 本 論 文は ,ロ バ スト モデ ルマ ッチ ン グと 呼ば れる 制 御系 設計 法を 用い て この 問 題の解決を図ったものである.

  柔 軟 構 造 物 の 位 置 決 めや 姿勢 を 変え るな どの 制御 を する 場合 ,そ の 柔軟 性に 起因 する 弾 性振 動 を 抑制 し つつ ,そ の動 作 を完 了す る 必要 が ある ,柔 軟構 造系 の 制御 設計用の線形モ デルは柔軟系 の 挙 動 を よ く 表 す が , 実際 のモ デ ルに 含ま れな いモ デ ル化 誤差 の影 響 で, 柔軟 構造 系の 弾 性振 動 を 抑 え ら れ な い な ど の 制御 性能 の 劣化 が問 題と なる . 制御 対象 の変 動 に強 い制 御を 一般 に ロバ ス ト 制 御 と 呼 ぷ が , 柔 軟 構 造 系 の 制 御 で は ロ バ ス ト 制 御 が 実 用 上 必 要 不 可 欠 で あ る .   口 バ ス ト モ デ ル マ ッ チン グは 既 存の 制御 系に ロバ ス ト補 償器 と呼 ば れる フィ ード バッ ク 制御 器 を 新 た に 付 加 し , 制 御 対象 の低 感 度特 性を 改善 する ロ バス ト制 御設 計 法で ある .ロ バス ト 補償 器 の 付 加 に よ っ て 制 御 系 の目 標値 応 答は 変化 せず ,低 感 度特 性の 調節 が 既存 の制 御系 とは 独 立に ロ バ ス ト 補 償 器 の み で 行 える とい う 特徴 があ る. また , 系の 極配 置が 任 意に 設定 でき ると い う特 徴 も 持 つ . 本 論 文 で は , この ロバ ス トモ デル マッ チン グ の特 徴を 活か し ,一 般的 な柔 軟構 造 物に 対 し て 適 用 で ぎ る 設 計 手 法と ,柔 軟 構造 物が あろ 物理 的 な構 造を 有す る 場合 に適 用で きる 設 計手 法 とを提案している.

  ま ず ー つ 目 の 方 法 は ,線 形モ デ ルで 表さ れる 柔軟 構 造物 の制 御系 に 一般 的に 適用 でき る 手法 で あ る. 一 般の 柔軟 構造 物 は非 最小 位相 系と 呼 ばれ る, 安定 性の 面 で制 御しにくい制御 対象となり,

こ れ に 対 す る 従 来 の ロ バス ト補 償 器の 設計 法で は十 分 にロ バス ト安 定 性を 考慮 にい れた 設 計が 難 し か っ た . 柔 軟 構 造 物 の不 安定 化 はそ の振 動モ ード が 原因 であ るこ と がほ とん どで ある . そこ で 制 御 対 象 の 振 動 モ ー ド と制 御系 全 体の モー ドの 関係 を 調節 し, ロバ ス ト安 定性 を考 慮で き るロ パ ス ト 補 償 器 の 設 計 法 を 考案 する こ とで ,こ の問 題の 解 決を 試み てい る .こ の手 法の 設計 例 とし て 柔 軟 人 工 衛 星 実 験 装 置 を用 いた シ ミュ レー ショ ンを 示 し, これ よル モ デル 化誤 差に 対す る 十分 な ロバスト安定性と優れた低感度性を確認している.

  二つ目の方法は,柔軟構造系のカ学的な安定条件を満足すると言われているcoll()t:眦cdfec(ll)atニk 制 御と ロ バス トモ デル マ ッチ ング を両 立さ せ る手 法で ある .ロ バ スト 制御では柔軟構 造系の不確か

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さを非構造的なものとして取り扱うが,柔軟構造系のカ学的な構造を積極的に利用するcollocated feedback制御がある.Collocated feedback制御はセンサとアクチュエータが同位置に配置される

collocationと呼ばれる条件が成り立っ場合,力学系固有の安定条件を利用し柔軟構造系のロバス

ト安定性や制振性を保証する.ここでは,collocation系が最小位相であることに着目し,最小位 相系に適用可能なロバスト補償器の設計法,ゼロイング法を,collocated feedback制御系に適用 し,DVFB制 御によ って達成 されるcollocated feedbackの制振効果を保持したまま,トルク外 乱,モデル誤差等に対するロバスト性を向上させるためのロバスト補償器の設計条件を示してい る.さらに,片持ち柔軟アームの位置制御系を構成し,実験により本手法の効果を確認している.

  これを要するに,著者は柔軟構造物の制御系設計にロバストモデルマッチソグと呼ばれる手法 を巧みに適用することによって,これまで得ることが難しかった制御特性の実現を可能にし,産 業 応 用 上 有 益 な 知 見 を 得 て お り , 制 御 工 学 の 進 歩 に 寄 与 す る と こ ろ 大 で あ る .   よ っ て 著者 は , 北海 道 大 学博 士 ( 工学 ) の 学 位を 授 与 され る 資 格あ る も のと認 める.

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