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地方都市における教育意識の構造 讐 一茨城県下館市の場合(その2)一

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(1)

地方都市における教育意識の構造

讐      一茨城県下館市の場合(その2)一

小 島 秀 夫

(1983年10月29日受理)

学 歴 観

ここでは親の学歴観について明らかにしてみよう。学歴社会をめぐっては,ジャーナリスティッ クなものを含め,これまでにおびただしい数の研究がなされてきており夕それらを整理するだけ でもかなりの努力が必要であるため,ここでは親が学歴についてどのような意識を有しているのか,

学歴についての公正意識学歴社会の将来についての意識の三点について明らかにしてみることと

する。

学歴観本研究では親の学歴観を明らかにするために,次のような8つの意見に対して,「大い にそう思う」から「ぜったいにそうは思わない」の5段階の回答のなかから,それぞれ1つを選択

してもらった。以下に質問項目と「大いにそう思う」と「どちらかといえばそう思う」を合計した 比率を示しておこう。

(1) 「日本では,大学出の人のほうが,出ていない人よりも就職に有利である」(70.4%)

(2) 「学歴の低い人は,よい仕事がえられないので,実力があっても発揮できない」(48.1%)

(3) 「日本の大企業や官庁では,大学出でなければ,いくら努力しても昇進はむずかしい」

(80.3%)

(4) 「大学出はそれだけで世間で高く評価されているので,なにかと得なことが多い」(69.6%)

⑤ 「大企業には,特定の有名大学の卒業者でなければ」はじめから採用しないところが多い」

(65.6%)

㈲ 「大企業や官庁には,特定の有名大学出身者の学閥があるそうで,そうでない人は,実力を 発揮することができない」(64.3%)

(7) 「大企業や官庁では,トップの地位を特定の有名大学出身者が占めているので,そうでない 人は,昇進に限度がある」(66.7%)

⑧  「特定の有名大学の卒業者は,本人の能力や人物と関係なくその大学出身だというだけで世 間的に高く評価されている」(63.2%)

ここに示された結果からも明らかなように,多くの人々は,大学卒業者は大学を卒業したという

ことのみで利益を受けており,特に就職の際に利益を受けていると考えていることがわかる。さら

に,大学卒業ということ自体についてみても,ただたんに大学を出るというのではなしに,特定の

有名大学を卒業しているということが,大企業や官庁においては重要であると考えていることが明

らかにされる。すなわち,こうした単純集計の結果をみるだけでも,人々のとらえる学歴社会とい

うものには,二つの次元があることが理解される。その一つは,高校卒に対する大学卒という次元

と,大学卒のなかでも特定の有名大学卒という次元である。こうした学歴観にささえられて,日本

(2)

72      茨城大学教育学部教育研究所紀要16号(1984)

@      1

@ 表6 学歴観の因子分析    の学歴社会は存立しているといえる。

(バリマックス回転後の因子負荷量)

こうした事実を,統計的手法を使用して明らかにしてみよ

項     目

第1因子第2因子 う。その目的に適する分析方法は,因子分析である。表6に

日本では,大学出の人のほ

は,「大いにそう思う」に5点「どちらかといえばそう思う」

うが,出ていない人よりも A職に有利である。

113

@ 722 に4点 「どちらともいえない」に3点「どちらかといえば

学歴の低い人は,よい仕事

そうは思わない」に2点,「ぜったいにそうは思わない」に1

がえられないので,実力が

?チても発揮できない。

゜196

@°755点を与え,8項目について因子分析をした結果が示されてい

日本の大企業や官庁では,

る。分析では8因子まで析出されたカ㍉ここでは寄与率の大

大学出でなければ,いくら w力しても昇進はむずかしい。

.438  .527

@     きい第1因子と第2因子のみが示されている。また,この2

大学出はそ減だけで世間で

つの因子で項目間の関連構造がうまく説明されるように思わ

高く評価されているので, .254  .737

なにかと得なことが多い。 れる。

大企業には,特定の有名大

図2には,因子分析の結果が図示されている。表6および

学の卒業者でなければ,は じめから採用しないところ ェ多い。

゜677 @ 218 図2をみることによって容易に明らかにされることは,この

大企業や官庁には,特定の

調査の対象者がいだいている学歴観は二つの因子に分解され

有名大学出身者の学閥があ 驍サうで,そうでない人は

      うるということである。第1の因子は,「大企業には,特定.813  。203

実力を発揮することができ

ネい。

の有名大学の卒業者でなければ,はじめから採用しないとこ

大企業や官庁では,トップ

うが多い」や「大企業や官庁では,トップの地位を特定の有

の地位を特定の有名大学出

g者が占めているので,そ 脚  .172名大学出身者が占めているので,そうでない人は,昇進に限

うでない人は,昇進に限度

ェある。

度がある」といった質問項目に代表されるような,大学卒の

特定の有名大学の卒業者は

なかでも特定の有名大学卒であることを重視する因子である。

本人の能力や人物と関係な

ュ,その大学出身だという

.675 .217第2因子は,「日本では,大学出の人のほうカ㍉出ていない

だけで,世間的に高く評価

ウれている。

人よりも就職に有利である」や「学歴の低い人は,よい仕事

個有値 3.604 1.050がえられないので実力があっても発揮できない」といった質

寄与率圃

45.1   13.1

@     問項目に代表されるように,大学卒の有利さを重視するもの である。「日本の大企業や官庁では,大学出でなければ,い 図2 @因子分析結果(第1軸×第2軸) くら努力しても昇進はむずかしい」という質問項目は,第1

kO      因子にも第2因子にも属していない。 2軸

これまでみたように,人々のいだいている学歴観には二っ

(三)      の次元があることが明らかにされた.その一つぽ大学卒業 それ自体が重要であるとするものと,他の一つは大学卒を重

0.5 .3

視する帆特にそのなかでも特定の有名大学の卒業であるこ         とを重視するものである。

T         では,こうした学歴観を構成する質問項目に対する回答は,        対象者の学歴や性別によってどのように異なっているのであ

0

0.5

 1軸10

ろうか。学歴をどのように考えるかは自分の得た学歴によっ て異なることは容易に予想されることであるし,また性別によって異なることが予想される。こう

した複数の変数間の関連を明らかにする目的に適した分析方法は,ログリニア分析5)である。すな

わち,回答者自身の学歴×学歴観×性別の三重クロス表が与えられた場合どのようなモデルが成

立するのかをみることによって,変数間の関連をみようというものである。以下の分析では,カテ

(3)

ゴリー数が学歴(3カテゴリー)×学歴観(3カテゴリー)×性別(2カテゴリー)の三重クロス 表が使用される。

次に,分析のロジックについて説明しておこう。表7に示されたような三重クロス表が与えられ た場合,飽和モデル(saturated model)は,加法モデルでは,

鰯ドμ+μ2+μ7+μ莞+μ2夢+μ2莞+μ亨葦+μ鱗  (1)

表7学歴×〈大学出は有利〉×性別 と表わされる。ここで!崩は卿番目のセルの度数であり・

oは質問項目に対する反応,Eは学歴, sは性別である。こ

性別

学歴

するのには便利である。

86 @33 18 (1)式においてμは辮均である・μ2・略μ莞は,そ

母親

100 @ 24  8 れそれZog∫励に対する反応学歴性別の与える効果であ

13 @1 3る.μ%,μ2莞,μ奮拠質問囎1こ対する反応と学歴の

      交互作用,質問項目に対する反応と性別の交互作用,学歴と37   13   3

父親

45  11  6 性別の交互作用がそれぞれZog∫離に与える効果を示して

15 5 3いる・μ霧は3変数間の交互作用力・Z・9伽に与える効

E8〕 と表わされる。このモデルが〔OES〕と表わされることからも明らかなように,より高次の 交互作用が存在すればより低次の交互作用は必ず存在する。前述したように,飽和モデルのもと では期待度数と実測度数が必ず一致するために,分析的意味はない。ここでのわれわれの関心は,

次に示されるような別のモデルが成立するかどうかということである。3変数である場合には,す べてのモデルをテストすることは容易である。次のテストされるべきモデルは,

如脈一μ+μ曾+μ夢+μ莞+μ2夢+μ曾葦+μ魏   (2)

である。このモデルは,モデルの表記としては〔OE〕〔OS〕〔ES〕で表わさ才㍉ 」暁顕は,このモ デルのもとでもとめられた期待度数である。このモデルが成立する場合の意味は,質問項目に対す る反応と学歴性別にそれぞれ交互作用が存在し,学歴と性別にも交互作用が存在するというもの である。このモデルも,それぞれの変数間に関連がみられるということを示すものであるから,あ まり実質的に興味のあるものではない。われわれの関心は,より低次のレベルのモデルが成立する かどうかにある。したがって,次にテストされるモデルは以下のようなものである。

鋤脈一μ+μ2+μ望+μ莞+昭+μ2莞     (3)

鋤砺ん一μ+μ2+μ夢+μ葦+μ曾夢+μ舞     (4)

鋤取一μ+μ2+μぢ+μ翌+μ2琵+μ7莞     (5)

(3×4×5)式で示されるモデルは,それぞれモデルの表記では〔01勾〔08〕,〔OE〕〔ES〕,〔os〕

〔E8〕と表わされる。 〔OE〕〔08〕は質問項目に対する反応と学歴,性別の間には交互作用が

存在するが学歴と性別の間には交互作用は存在しないというものである。〔OE〕〔ES〕,〔os〕

(4)

74      茨城大学教育学部教育研究所紀要16号(1984)

〔ES〕についても同様の解釈がなされる。すなわち,カッコ内に含まれない変数間の交互作用は存 在しないのである。

より単純なモデルもテストすることにする。それらのモデルは,

痂・琳一μ+μ2+μ夢+μ葦+μ%      (6)

あ疎一μ+μ2+μ7+μ翌+μ曾葦      (7)

嬬ゴん一μ+μ2+μ7+μ翌+μ聚      (8)

である。(6×7×8)のモデルは,それぞれモデルの表記ではts〕〔OE〕,〔E〕〔os〕,〔o〕〔ES〕と 表わされる。〔s〕〔o刃〕は,質問項目に対する反応と学歴の間には交互作用は存在するが,性別

との間には交互作用は存在しないというものである。すなわち,このモデルが成立する場合,ある 質問項目に対する反応には学歴のみが関連していて,性別は関連がないといえる。

最も単純なモデルは,

ん幽一μ+μ2+μ夢+μ葦        (9)

で表わされる。このモデルは,モデルの表記では〔0〕〔E〕〔S〕と表わされ,どの変数間にも交互 作用が存在していないことを示している。

このように3変数の場合には,考えられうるすべてのモデルをテストしても,その数は限られた ものであるため,わずらわしくはないが,変数がさらにふえて4変数,5変数になると,最適モデ ルの選択は複雑なものとなる。

こうしたログリニア・モデルの適合性は尤度比統計量(1ikelihood−ratio test statistics)と 自由度を求めることによって決あられ魂G2は近似的にz2分布をすることが知られており,モデ ルの決定サこは5%の有意水準が通常とられる。Z2値を使用することによってもモデルの選択は可 能であるが,モデルどうしを比較する場合には,z2よりもG2のほうが適しているという理由で G2が使用されている。また,ログリニア分析では質的データを扱うのであるから,サンプリング・

ゼロのセルがある場合には,統計処理をする際に問題が生ずる。こうした問題をなくすために,多 くの統計学者は各々のセルにα5を加えることを提言しているが1}ここでの分析では,サンプリン グ・ゼロのセルがある場合には,すべてのセルに1を加えることとした。そのことによって,分析 結果に大きな変化が生ずることはない。

以下ではその分析結果について明らかにしてみよう。表8には,それぞれのモテルをあてはめた 場合の結果が示されている。その結果についてみると, モデル〔0〕〔E〕〔S〕 は4ノが12である

のに対しG2は24.39であり,統計的に有意であり,このモデルは成立しない。モデル〔o〕〔ES〕

は4∫が10であるのに対しG2は11.96で統計的に有意でなく,このモデルを採用することができ る。モデル〔刃〕〔os〕,〔s〕〔OE〕は成立しない。ログリニア・モデルの場合には,より低次の モデルが成立すれば,それらの変数を含むより高次のモデルは必ず成立する。ここでも,モデル

〔OS〕〔Eβ〕,〔ES〕〔OE〕,〔OE〕〔08〕〔刃S〕が成立している。

モデル〔o〕〔ES〕が成立するということの意味はこうである。人々が「日本では,大学出の人

のほうが,出ていない人よりも就職に有利である」と考えるかどうかは,人々がどのような学歴を

もっているかに関連はないし,また性別にも関連がないのである。このことは,われわれが日常い

(5)

小島:地方都市における教育意識の構造      75

だいている学歴についての印象とは大きく異なるものである。すなわち,人々のいだく学歴意織と いったものは,学歴や性別には関係なく人々の心の深層に根ざしているのである。このことをさら に明らかにするために,学歴観を構成するそれぞれの項目についてログリニア分析を実施した。こ こでは紙数の関係で,それぞれの分析結果を示すというのではなしに,最適モデルのみが示されて

いる。

表8 ログリニア分析結果       表9 質問項目別ログリニァ分析結果

モ デ ル   G2  d∫  P    質問項目  最適モデル  G2 ガ   P

〔0〕〔E〕〔S〕        24.39  12  .018        (1)    〔01〕〔ES〕   11.96  10   。287

〔0〕〔ES〕         11.96  10  .287        (2)    〔02〕〔ES〕    9.65  10   .471

〔E〕〔OS〕         2415  10  .007        (3)    〔03〕〔ES〕   13.42  10   .201

〔S〕〔OE〕         17.87   8  .022        (4)    〔04〕〔ES〕   16.41  10   .088

〔OE〕〔OS〕        17.63   6  .007        (5)    〔ES〕〔EO5〕  11.15   6   .083

〔OS〕〔ES〕        11.73   8  .163        (6)    〔06〕〔ES〕   17.00  10   。074

〔ES〕〔OE〕         5.44   6  .488        (7)    〔07〕〔ES〕   1400  10   .173

〔OE〕〔OS〕〔ES〕     4.94   4  .293        (8)    〔08〕〔ES〕   1a61  10   .191

表9には,それぞれの質問項目に対してログリニア分析を実施した場合の最適モデルが示されて いる。変数oの下の数字はそれぞれの質問番号を示したものである。表9に示された結果からも明

らかなように,「大企業には,特定の有名大学の卒業者でなければ,はじめから採用しないところ が多い」という項目についてのみ,学歴との関連がみられるのを除いて,他の質問項目については 同じモデルが成立しているのである。「大企業には,特定の有名大学の卒業者でなければはじめ から採用しないところが多い」という項目についてのみ,毛デル』吻s〕〔刃05〕が成立するとい うのは,この質問項目に対する認識は学歴が高くなければ多くなるということによると思われる。

このように,一つの項目を除いた他の項目について同じモデルが成立するということは,学歴意識 が人々の深層にまでおよんでいるということを示すものと判断できよう。

このことをさらに明らかにするために,以下では階層帰属意識をも含めたモデルを検討してみる こととする。すなわち,「大学出は就職に有利」という意見に対する反応を本人の学歴別,階層別,

性別に分類した四重クロス表をもとにして分析することとする。ここでは意見に対する反応が3カ テゴリーに,学歴が3カテゴリーに,階層が2カテゴリーに,性別が2カテゴリーにまとめられて 使用されている。階層区分は,「かりに現在の日本の社会全体を,以下のように5つの階層に分け るとすれば,あなた自身は,このどれに入ると思いますか」という質問に対する回答を,f上」と

「中の上」を一つにし,「中の下」はそのままにし,「下の上」と「下の下」をまとめたものが使用 されている。このようにまとめられたのは,「上」と回答した人の比率が低かったことと,「中の下」

と回答した人の比率が高かったことによる。

この四重クロス表を使用してログリニア分析を行なった結果が表10に示されている。表10にお いて,8は性別,Eは教育, Kは階層,0は意見に対する反応を示している。4変数の場合には3 変数の場合とは異なり,変数間の組合せは多く,考えられうるモデル全部をテストすることは不 可能ではないにしても,かなりの労力が必要とされる。

以下では最適モデル発見のプロセスについて説明しておこう。ここでは最初のモデルとして

〔8別(〕〔o〕を設定した。このモデルは,意見に対する反応は,学歴や性別や階層には関係なく

(6)

76       茨城大学教育学部教育研究所紀要16号(1984)

形成されているものであるという仮説に立って作られた    表10・グリニア分析結果 ものである。このモデルでは,G2が19.41で♂∫が22

であり統計的に有意でなく,モデルは成立する。したがっ   モ デ ル   G2 4∫ P

て,この段階で,学歴についての意識は本人の学歴や性      〔SEK〕〔0〕      19.41   22  .620

別,階層とは関係なく形成されるという仮説が証明され 〔OS幻〔幻     57.52 22.000 たと判断してもよいかもしれない。しかしながら,より 〔EK〕〔SE〕〔OE〕〔0幻  19.63 19.417 低次のモデルが成立するかどうかを明らかにすることに 〔E幻〔S幻〔0幻    26・02 23・300

      〔EK〕〔81り〕〔0〕         27.26   25  .343よって,他の3変数間の関連が明らかにできるため,別

〔EK〕〔S〕〔01の      34.37   23  .060

のモデルを求めてみることとする。         @幻〔S〕〔0〕    41.13 27.040 ここでとられる最適モデル発見のための方法は,モデ 〔K〕〔SE〕〔o〕    4678 27.010 ル間のG2とd∫の差を比較して,比較される一一方のモ

デルには含まれているが,他のモデルには含まれていない変数の有意性を明らかにするという方法 である。その目的で,次にモデル〔E、K〕〔SE〕〔OE〕〔OK〕をあてはめてみた。その結果,このモ デルもうまくデータに適合することが明らかにされた。さらに交互作用〔OE〕を除いたモデル

〔EK〕〔SE〕〔OK 〕をあてはめてみた。その結果,このモデルも適合することが明らかにされた。

さらに,より単純なモデル〔EK〕〔SE〕〔o〕をあてはめてみても適合することが明らかにされ た。この段階で,モデル〔E K 〕〔s〕〔OE〕もあてはめてみたが,このモデルもうまく適合する ことが明らかにされた。ここでモデル〔EK〕〔S〕〔OE〕よりもモデル〔EK〕〔SE 〕〔0〕のほ うが,よりよく適合していることを考慮し,モデル 〔EK〕〔s〕〔o〕をテストしてみることとし た。その結果,このモデルもかなりよく適合することが明らかにされた。したがって,最適モデル としては,モデル〔EK〕〔SE〕〔0〕,〔EK〕〔S〕〔0渥〕,〔EK〕〔S〕〔0〕の三種類が考えられ る。ここでモデル〔EK〕〔SE〕〔o〕と〔EK〕〔s〕〔OE〕の二つを比較した場合,前者のモデ ルが後者のモデルよりもよりよく適合していることが明らかにされる。したがって,この段階でモ デル〔E.K〕〔S〕〔OE〕を除外できる。モデル〔EK〕〔SE〕〔0〕と〔刃K〕〔8〕〔0〕を比較し

た場合に,G2の差は13.87であり己∫の差は2であるから統計的に有意であることと,モデル

〔EK〕〔s〕〔o〕 のほうがより単純であるという理由で,最適モデルとして〔EK〕〔s〕〔o〕を 採用することができる。ここで,モデル〔K〕〔SE〕〔o〕は成立しない。モデル〔EK〕〔s〕〔o〕

の意味は,学歴と階層には交互作用がみられるが,それらは性別とも意見に対する反応とも関係が ないことを示し,かつ性別と意見に対する反応との間にも関連がみられないということである。し たがって,「大学出は就職に有利」という意見に対する反応は,本人の学歴にも,性別にも関連し ていないことが明らかにされた。つまり,人々の学歴に対する意識は,社会学的な属性によっては説 明されない所で形成されているといえる。どのような人でも,大学卒はそうでない人々よりも社会 生活のいろいろな場面で利益を受けていると考えているし,大学卒でも特に有名大学を卒業してい るということは,さらに大きな利益を受けると考えているのである。

こうしたことは,現代の日本社会にみられる受験競争などを考える場合に重要なことである。す

なわち,意識の面ではすべての人々がより高い学歴,よりよい大学を目ざそうという意識を有して

おり,すべての人々は条件が許せば(たとえば,経済的条件や地理的条件など)受験競争に参入す

る状態になっているためである。社会政策的視点からすれば,学歴の高い人や父親あるいは母親の

みが学歴に対して特定の意識を有しているのであれば,そうした変数をコントロールすることに

(7)

よって学歴社会を変えることも可能である。しかしながら,現実にはだれもが社会的属性に関係な く形成される学歴観を有しているのである。

 以上の分析では,人々はその社会的属性にかかわりなく学歴を重視していることが明らかにされ      o

ス。では,人々は学歴についての公正さに対してはどのような意識を有しているのであろうか。次 に,その分析結果をみてみよう。

学歴にっいての公正意識学歴についての公正意識を明らかにするために,以下のような三つの 質問が用意された。そして,それぞれの質問に対して,「大いに賛成」から「ぜったいに反対」の 5段階のなかから1つを選択してもらった。以下では質問項目と「大いに賛成」と「どちらかとい えば賛成」を合計した比率を示しておこう。

(1) 「大学出であるからといって,就職後仕事上の能力があることにはならないので,それで採 用・不採用を決めるのは不公平だ」(78.4%)

(2) 「会社や官庁で実際の能力ではなく学歴で昇進を決めるのは不公平だ」 (72.6%)

(3) 「会社や官庁で,大学出や特定の大学出身者にだけ,実力発揮の機会を与えているのは,不

公平だ」 (68.4%)

この単純集計の結果からも明らかなように,大学出あるいは特定の有名大学出身者にのみ就職や 実力発揮の機会を与えるのは不公平だと多くの人が考えていることが明らかにされる。特に,大学 出であるかどうかによって採用・不採用を決めることについて不公平であると考える人の比率が約

80%である点は注目されよう。ここで注意すべき点は,学歴観のところでも明らかにされたよう に,人々は大学出の人のほうが就職に有利であると考える一方では,大学出であるかどうかという ことによって採用・不採用を決めるのは不公平であると考えているのである。すなわち,人々は一 方では学歴により就職などの機会を閉ざすのは不公平であると考えてはいるが,一方では事実とし て大学出の人の方がそうでない人よりも,就職などにおいて有利であると考えているのである。こ

うした点は,日本の学歴社会や受験競争を考える際に重要な社会心理学的側面であろう。

ここでも,それぞれの質問項目を本人の学歴別,性別に分類した三重クロス表を作り,ログリニ ア分析を試みた。その結果が,表11に示されている。

表11の結果をみてみよう。ここでも,Eは本人の学歴,0は質問項目に対する反応, Sは性別 を示す。「大学出であるからといって,採用・不採用を決めるのは不公平だ」という質問項目につ いては,最適モデルとして〔Es〕〔FO1〕が発見された。このモデルは,学歴と性別には関連が あり・学歴と意識に対する反応にも関連があるが・性別      表11最適モデル

と反応には関連がないというものである。そこで,学歴

と反応にはどのような関齢みられるのかを明らかにす難最適モデルG2ガP

るために,性別の学歴×反応のクロス表を調べてみた。

      (1) 〔五ノS〕〔EO1〕 5.06   6  .536その結果,「大学出であるからといって,採用・不採用      (2) 〔02〕〔ES〕  14.68  10  .144

を決めるのは不公平だ」という項目に対する賛成意見 (3)〔0,〕〔ES〕 18.15 10 .052

(すなわち不公平感)は,男女ともに,学歴が高くなる

につれてその比率も上昇していることが明らかにされた。父親の場合には,中学卒では賛成の比率 が54.6%であるのに対し大学卒では78.3%となっており,母親の場合には,中卒では62.5%で

あるものが,大学卒では85.7%となっているのである。この事実は興味のあることである。なぜ ならば,高学歴の人ほど社会生活のいろいろな場面でより多くの利益を受けているにもかかわらず

(8)

78      茨城大学教育学部教育研究所紀要16号(1984)

高学歴の人ほどそうしたことに対する不公正感が強くなっているためである。すなわち,より高学 歴の人はその学歴を肯定的に評価するよりも,なんらかのうしろめたさを感じつつ評価していると いえよう。換言すれば,高学歴の人ほど自分の学歴に対してアンビバレントな意識を有していると

いえよう。

次に,「会社や官庁で実際の能力ではなく学歴で昇進を決めるのは不公平だ」についてみると,

モデル〔02〕〔ES〕が成立している。また,「会社や官庁で,大学出や特定の大学出身者にだけ,

実力発揮の機会を与えているのは不公平だ」についてみても,モデル〔03〕〔ES〕が成立するこ とが明らかにされた。したがって,これら二つについては,学歴や性別に関係なく意識が形成され ているといえる。

学歴社会の将来 大学進学者が増加するとともに,大学進学に対する価値意識も変化してきてい るといわれている。こうしたなかにあって,人々は学歴社会の将来についてどう考えているのであ ろうか。以下では紙数の関係で質問文と回答の比率を示すにとどめておこう。

現代の日本社会は「学歴社会」だといわれ,また大学に進学する人の数も年々増加しています。

それでは,将来「学歴社会」はどのようになるとお考えですか? 次のうち,あなたの考えにもっ とも近いものを1つ選んで下さい,と質問し,次のような選択肢を用意した。

「だれでも希望する人は大学にいくようになるので,大学出ということが,特別有利ではなくな

るだろう」 (19.7%)

「だれもが大学にいくことを望むため,受験競争が激化し,大学間の格差がますます拡大するだ

ろう」(23.0%)

「だれもが大学にいくようになるため,大学出という学歴は社会的にあまり役に立たなくなり,

さらに大学院の学歴をもつ人が有利な社会になるだろう」 (11.8%)

「大学出や特定の大学出身であることが,意味をもたなくなり,実力の社会になるだろう」

(43.0%)

       注

S)たとえば最近のものとしては,岩田龍子『学歴主義の発展構造』(日本評論社,1981)などがある。

5)ログリニア(1091inear)分析については,現在のところ日本語で書かれた適切な解説書がない。英文で は次のものが初歩的なもので参考になる。David Knoke&Peter J. Burke,乙09一あπεαγMα弼3.

(Sage Publications.1980),Beverly Hills.

6)尤度比統計量の求め方や,自由度の求め方については,David Khoke&Peter J.Burke,前掲書を参考 にせよ。構造的ゼロ(structural zero)がない場合は自由度の計算は簡単である。

7)ECTAやBMDPではサンプリング・ゼロがある場合には全セルに0.5を加えるようになっているが,

それは理論的なものではない。

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